無観客試合で聞こえる選手の声/六川亨の日本サッカーの歩み
2020.06.24 21:45 Wed
3月19日に始まったJリーグのwebブリーフィングは、6月23日の臨時理事会のブリーフィングで33回目を迎えた。週に換算すると15週になるので、単純計算で毎週2回はNPBとJリーグの対策連絡会議(計10回)か、Jリーグの理事会と臨時理事会、実行委員会と臨時実行委員会が開催されたことになる。
そして23日には17時30分から前日の臨時実行委員会を受け、臨時理事会が開催され、新型コロナウイルスの影響で変更された決議事項が承認された。
それぞれのブリーフィングで興味深かったことを上げると、対策連絡会議では三鴨ドクターが「(プロ野球もJリーグも)試合の中止については行政との関連が一番大きい。スポーツ庁と自治体、知事ら行政の決定に従っていく。知事に逆らって(専門家が)やることはない」と、試合開催の可否は知事の権限であることを改めて明言した。
そして観客を入れての試合開催に関しても、館田ドクターは「患者数を見つつ、我々の情報分析でやるべきでないと判断したら、やめないといけない。7月10日はあくまで予定」と慎重な態度を崩さなかった。
Jリーグは再開・開幕へ大きく前進したものの、常に感染拡大のリスクはつきまとうので、「喉元過ぎれば」の例えではないけれど、あえて警鐘を鳴らしたのだろう。
続く臨時理事会で結論が出なかったのは、観客を入れた試合の際にアルコールの販売をどうするかということと、「投げ銭」に関してだった。アルコール(ビール)は利益率が一番大きい飲食でもある。クラブによっては1試合3千万円ほどの収益になる。スタンドを歩きながら販売する、いわゆる「売り子」は時期尚早として退けられたが、売店での販売に関しては「許容範囲」とという意見もあり、23日の臨時理事会後、専門家の意見を聞くことになった。
「投げ銭」については、何に対して支払うのか明確にしないと資金決済上でグレーになり、マネーローンダリングの疑いを持たれるかもしれないので、想定されるリスクをJリーグが提示し、クラブに判断してもらうことになった。こちらは法律の解釈の問題として、クラブのマーケティング担当と継続審議中だ。
興味深かったのは、19日に開幕したプロ野球で、無観客試合のためネット裏の放送席の解説者の声がバッターに筒抜けだったということで、Jリーグではどんな弊害があるかという質問だった。村井チェアマンの答は「監督の指示は聞こえるが、むしろ観客、ファン・サポーターには選手がどんな指示をしているか聞こえる、貴重な場ではないでしょうか」というものだった。
Jリーグはもちろん、日本代表でも試合が始まればゴール裏のサポーターの声援で選手の声はまるで聞こえない。しかしJリーグ開幕以前、1980年代のJSL(日本サッカーリーグ)では、メインスタンドにある記者席からバックスタンドの観客数をカウントできるくらいガラガラだった。「閑古鳥が鳴いている」という表現がぴったりのスタジアムだった。
サッカー専用の西が丘サッカー場(現・味の素フィールド西が丘)ではさらにピッチが近いため、選手の声は筒抜けだった。とはいえ、それが特別な指示だったかというと答はノーだ。考えてみて欲しい。サッカーは試合中に局面がすぐに変わるスポーツでもある。このため指示の声も複雑なものではなく、単純かつ簡潔だった。
例をあげるなら「行け」、「待て(ディレイ)」、「フリー」、「背負った」、「勝負」といった具合に一瞬で状況を現す言葉だった。後はシュートミスした時などに、選手が自分自身に向けて悔しさを現す言葉くらいだろう。
とはいえ、それらを聞けるのも数試合に限られているだけに、無観客試合を観戦できるファン・サポーターにとっては村井チェアマンが言う通り貴重な場であるといえる。
JFAの女子W杯に関するブリーフィングと、23日の臨時理事会後のブリーフィングについては、今週木曜のコラムで紹介することにしよう。
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Jリーグの再開・開幕に向け、多くの関係者が寸暇を惜しんで議論を重ね、最善の道を模索した33回の会議でもあった。そしてその努力は実り、いよいよ今週末からJ2リーグとJ3リーグが再開・開幕する。22日には10時30分から対策連絡会議のブリーフィングが、16時からはJリーグの臨時実行委員会のブリーフィングが、そして17時30分からは急きょJFA(日本サッカー協会)理事会ブリーフィングと1日3回、トータル124分のリモート会議が行われた。それぞれのブリーフィングで興味深かったことを上げると、対策連絡会議では三鴨ドクターが「(プロ野球もJリーグも)試合の中止については行政との関連が一番大きい。スポーツ庁と自治体、知事ら行政の決定に従っていく。知事に逆らって(専門家が)やることはない」と、試合開催の可否は知事の権限であることを改めて明言した。
Jクラブは56もあり、その規模は全国的だ。そして未だ感染者がゼロの岩手県もあれば、東京では連日のように感染者が報告されるなど、地域によってバラツキがある。村井チェアマンも「(56クラブの)難しさは全国一律ではなく地域、地域で一様ではないので、再開の難易度も高かった」と振り返る。このため各都道府県知事が最終判断を下すのは、当然と言えば当然と言えるだろう。
そして観客を入れての試合開催に関しても、館田ドクターは「患者数を見つつ、我々の情報分析でやるべきでないと判断したら、やめないといけない。7月10日はあくまで予定」と慎重な態度を崩さなかった。
Jリーグは再開・開幕へ大きく前進したものの、常に感染拡大のリスクはつきまとうので、「喉元過ぎれば」の例えではないけれど、あえて警鐘を鳴らしたのだろう。
続く臨時理事会で結論が出なかったのは、観客を入れた試合の際にアルコールの販売をどうするかということと、「投げ銭」に関してだった。アルコール(ビール)は利益率が一番大きい飲食でもある。クラブによっては1試合3千万円ほどの収益になる。スタンドを歩きながら販売する、いわゆる「売り子」は時期尚早として退けられたが、売店での販売に関しては「許容範囲」とという意見もあり、23日の臨時理事会後、専門家の意見を聞くことになった。
「投げ銭」については、何に対して支払うのか明確にしないと資金決済上でグレーになり、マネーローンダリングの疑いを持たれるかもしれないので、想定されるリスクをJリーグが提示し、クラブに判断してもらうことになった。こちらは法律の解釈の問題として、クラブのマーケティング担当と継続審議中だ。
興味深かったのは、19日に開幕したプロ野球で、無観客試合のためネット裏の放送席の解説者の声がバッターに筒抜けだったということで、Jリーグではどんな弊害があるかという質問だった。村井チェアマンの答は「監督の指示は聞こえるが、むしろ観客、ファン・サポーターには選手がどんな指示をしているか聞こえる、貴重な場ではないでしょうか」というものだった。
Jリーグはもちろん、日本代表でも試合が始まればゴール裏のサポーターの声援で選手の声はまるで聞こえない。しかしJリーグ開幕以前、1980年代のJSL(日本サッカーリーグ)では、メインスタンドにある記者席からバックスタンドの観客数をカウントできるくらいガラガラだった。「閑古鳥が鳴いている」という表現がぴったりのスタジアムだった。
サッカー専用の西が丘サッカー場(現・味の素フィールド西が丘)ではさらにピッチが近いため、選手の声は筒抜けだった。とはいえ、それが特別な指示だったかというと答はノーだ。考えてみて欲しい。サッカーは試合中に局面がすぐに変わるスポーツでもある。このため指示の声も複雑なものではなく、単純かつ簡潔だった。
例をあげるなら「行け」、「待て(ディレイ)」、「フリー」、「背負った」、「勝負」といった具合に一瞬で状況を現す言葉だった。後はシュートミスした時などに、選手が自分自身に向けて悔しさを現す言葉くらいだろう。
とはいえ、それらを聞けるのも数試合に限られているだけに、無観客試合を観戦できるファン・サポーターにとっては村井チェアマンが言う通り貴重な場であるといえる。
JFAの女子W杯に関するブリーフィングと、23日の臨時理事会後のブリーフィングについては、今週木曜のコラムで紹介することにしよう。
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