改めて唾吐きと飲水を考える/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.06.11 22:00 Thu
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©︎J.LEAGUE
Jリーグは6月9日、webによる実行委員会を開催し、27日に無観客で再開・開幕するJ2リーグとJ3リーグは、7月10日から観客を入れることで合意した。J1リーグは7月4日から同じく無観客で再開し、各スタジアムはキャパシティが異なるため第4節から5000人、あるいは収容人員の50%の観客を入れることで合意した。

正直、ようやくここまでこぎ着けられたという安堵感と、まだ開幕・再開までには2週間以上あるため油断はできないという警戒感の入り交じった心境だ。

気になる日程だが、今後のスケジュールとしては12日に「移動等のガイドライン」が発表され、来週15日17時予定でJ1は第2節から第13節まで、J2は第2節から第15節まで、そしてJ3は第1節から第12節までが発表される。そして翌16日はそれ以降のリーグ戦の開催候補日(週末の場合は土曜日か日曜日か)が発表される予定だ。

すでに試合前の両チームの選手による握手、ゴール後のハイタッチなどによるゴールパフォーマンスは禁じられている。プロ野球のオープン戦でもホームラン後の選手は、ベンチで祝福するチームメイトと距離をとって喜びを共有していた。しかし野球の場合は選手がダイヤモンドを1周している間に冷静になれるだろう。

しかしサッカーの場合は瞬間のスポーツだけに、選手はよほど意識しないと難しいかもしれない。実際、新型コロナウイルスで自粛中に行われたプレマッチで、ゴール後に思わずハイタッチをしていた選手がいた。こちらは、これから始まるプレマッチで慣れていくしかないかもしれない。

実際、「試合中は激しく競り合っている(密になっている)のに、ゴールセレブレーションは離れるのはどうなの」(藤村特命担当部長)という意見もあったという。こちらに関しては「適用を考えていきたい」と、Jリーグとしても検討中のようだ。

さらに、専門家からは「唾吐き、水の吐き出しは控えるように」と言われている。しかし唾吐きは自然現象だし、ウガイしたあとに水を吐き出したいのも生理現象だろう。さらに、日本選手には少ないものの片手で鼻をかむ(手鼻)選手もいるし、レフェリーも当てはまるかもしれない。

この件に関しては5月上旬にFIFA(国際サッカー連盟)が「唾吐き禁止」を検討していることで疑問を呈したことがある。その後FIFAからは何のリリースもないと記憶しているので、やはり規制は難しかったのか。

1970年代のサッカーパンツには、なぜかお尻にポケットがついていた(使ったことはなかったが)。新型コロナウイルスとして両サイドにポケット付きのサッカーパンツにして、ティッシュなどを入れてプレーすることになるのだろうか。水吐きに関しては、ピッチ外の決められた場所――選手が水分を補強する可能性が高いのはCK時のため両ゴール裏と、ベンチの指示を聞く際のセンターライン付近――にバケツなどを置くのだろうか。

Jリーグが再開・開幕する6月下旬は梅雨も明けている可能性が高い。当然、夏本番を迎えるだけに、前後半途中での給水タイムが必要になるかもしれない。その際にも密にならず飲水し、吐き出せる場所をどう確保するか。

再開・開幕に向けて、まだまだ課題は多いと言わざるをえないようだ。

【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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J親子対決が4年ぶりに実現/六川亨の日本サッカー見聞録

6月27日に再開・開幕したJリーグも約1ヶ月が過ぎた。当初は新型コロナの感染拡大を防ぐため、移動のリスクを減らそうとチームを東西に分けての対戦だった。そして8月1日からは「超」厳戒態勢を厳戒体制に変更。東西のチーム分けはやめ、5000人か50%を上限に入場者数の引き上げやビジタ-席の開放を実施する予定だった。 しかし村井満チェアマンは東京都の感染拡大を受け、1日からの制限緩和を10日に延長し、さらにNPB(日本野球機構)と専門家による対策連絡会議の結果、政府の方針通り8月31日まで超厳戒態勢を継続することを決めた。 悪いことは重なるもので、先週末は名古屋の選手・スタッフに感染者が出たことと、濃厚接触者の特定に時間がかかったため、広島対名古屋戦は中止になった。その後は名古屋の選手寮の調理師、福岡のスタッフにも感染者が出た。 7月30日現在、東京都の1日の感染者は過去最多の367人を記録。名古屋市も初めて感染者が100名を越すなど、全国各地で感染拡大が拡がっている。 こうした状況で週末の8月1、2日にはJ1、J2、J3のリーグ戦が予定されていて、来週5日にはルヴァン杯も再開される。8月といえば、例年なら小中高校生は夏休みに入り、Jリーグにとってもゴールデンウィーク(今年はなかったが)に続く「かき入れ時」でもある。実際、8月は毎週末と水曜にJ1~J3の試合が組まれている。 果たして無事に8月を乗り切れるのかどうか。Jリーグに関わるすべての人が不安に感じていることだろう。 そんな不安とは裏腹に、ピッチでは毎週のように熱い戦いが繰り広げられている。先週末の25日はJ2の大宮対松本、そして今週の29日は東京V対新潟を取材した。渡邉(新潟)のアディショナルタイムの同点弾で1-1と勝点を分け合った東京V対新潟戦には、将来が楽しみな10代の選手が自信に満ちたプレーを披露したが、こちらの話題はまたの機会に譲ろう。 そして戸島の決勝点で松本を1-0と下して大宮が連敗を2でストップした試合では、4年ぶりに監督と選手の“親子対決"が実現した。 前半、メインスタンドから見て左側のベンチにいる高木琢也監督の目前を、松本の左サイドMF高木利弥が何度となく上下動する。飲水タイムには言葉を交わす機会があるのかどうか期待したが、さすがにそれはなかった。 2人の親子対決が初めて実現したのは2016年のこと。現役時代は「アジアの大砲」と言われ、16年当時は長崎を率いていた高木監督が、山形に加入して2年目の息子・利弥君と敵味方にわかれて戦ったのだった。 しかし、それまでも「親子Jリーガー」がいないわけではなかった。 日本国籍を取得したハーフナー・ディドは横浜MのGKコーチ時代、息子であり元日本代表FWのハーフナー・マイク(当時19歳)と2006年に1シーズンをともに過ごしたことがある。その横浜Mでは、水沼貴史と水沼宏太の親子もともにプレーした。父親である水沼貴史は2007年に横浜Mの監督を務め、その時は宏太君も3試合ほどJ1リーグでプレーしている。 彼らに続くのが、2017年に名古屋を率いていた風間八宏監督が、岐阜(当時はJ2)戦で次男の宏矢君と対戦したケースだ。こうして振り返ると、親子対決の実現した父親は1960年以降生まれで、1993年のJリーグ開幕時に現役としてプレーした世代が条件の1つになっているようだ(ディドは1957年生まれで一度は引退したが、Jリーグの開幕により現役に復帰)。 変わったところでは、大宮戦ではスタメン出場でチームを牽引した松本のレジェンド田中隼磨(38歳)の長男、新保海鈴(しんぼ かいり)君が、7月5日のJ3リーグでC大阪Uー23の一員として後半20分にデビューした(G大阪Uー23戦)。まだ高校3年生(17歳)のため出場機会も限られるだろうが、今シーズンは松本のJ1昇格により選手として初の“親子対決"が見られるかもしれない。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】</br>1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.07.30 22:25 Thu
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ベベットに思う栄枯盛衰/六川亨の日本サッカー見聞録

J1リーグは22日に第6節を終了。仙台に0-2とリードされながら、小林悠の2ゴールなどで3-2と逆転した川崎Fが首位(勝点16)を守った。同じく無敗の名古屋が勝点2差で2位につけているのは正直意外ではあるが、今シーズンのJ1リーグは早くも川崎Fが優勝争いの主役になりつつあるようだ。 といったところで政府は22日、大規模イベントの人数制限緩和を1ヶ月延長することを決めた。Go To初日の22日に全国の新規感染者が過去最多の795人が確認されたのだから、当然の措置だろう。23日には都内の感染者が、こちらも過去最多の366人を記録した。 そしてJリーグは政府の指針より一足早く20日に規制緩和を8月10日まで延長することを決めた。チケットの販売には逆算して2週間の準備期間が必要なこと、「国民感情が非常に慎重になってきている」(村井満チェアマン)などが延長した理由で、プロ野球も23日の臨時実行委員会で政府の方針に従う可能性が高い。 相変わらず決断の早い村井チェアマンとJリーグに比べ、後手を踏む政府ではあるが、その背景を考えれば仕方のないことだろう。何度も繰り返すが、この100年に1度という非常事態に村井チェアマンがいたことの巡り合わせに感謝せずにはいられない。 さて海外に目を向けると、各国ともリーグ優勝や降格チームが決まってきた。久保建英の新チームがどこになるか、しばらくは日本に限らずメディアの注目を集めるに違いない。久保と同様にFC東京から海外に挑戦した中島翔哉は、ポルトガルの名門ポルトに残留するのかどうか気になるところだし、柴崎岳のデポルティボ・ラ・コルーニャは40年ぶりに3部へと降格してしまった。 デポルティボと言えば、1990年代は(当時はラ・コルーニャと日本では呼ばれていた)バルセロナと優勝争いを演じた強豪だった。とはいえ、大西洋に面した港町の存在を知ったのは、ラ・コルーニャが1部に昇格して優勝争いを演じたことと、チームの中心選手がアメリカW杯でブラジルを24年ぶりの優勝に導いたベベットがいたからだった。 92ー93シーズンにラ・コルーニャへ移籍したベベットは、1年目で37試合29ゴールの活躍から得点王に輝いた。翌シーズンは首位を快走し、優勝まであと1歩と迫りながら、最終戦でのドロー(対バレンシア戦)でバルサに逆転優勝を許してしまった。 96年に母国のフラメンゴへ復帰したが、スペインでの4シーズンで131試合86ゴールはストライカーとして非凡な才能の持ち主であることを証明したと言える。優勝したアメリカW杯では、ゴール後のパフォーマンス「ゆりかごダンス」が有名になり、それは今でも他の選手に受け継がれている。そのパフォーマンスだが、ベベットの息子はマテウスと名付けられた。元ドイツ代表の名選手の名前から取ったのは言うまでもない(今シーズンから東京Vに加入したGKマテウスは別人)。 96年アトランタ五輪では初戦で日本に敗れたものの、その後は順当に勝ち進んで銅メダルを獲得した。そんなベベットがジーコの誘いに応じて鹿島に加入したのが2000年のこと。大きな注目を集めたが、すでに36歳とピークは過ぎており、さらにブラジル人選手特有のシーズン序盤は太り気味だったことも災いし、8試合1ゴールで鹿島を退団した。 その翌年に鹿島入りしたのが柴崎でもあった。 鹿島と言えば、totoでは“鉄板"でもあった。そんな鹿島が、今シーズンは再開後のリーグでも不振から抜け出せないでいる。第5節の横浜FM戦で今シーズン初勝利をマークしたが、22日の第6節では湘南に初勝利をプレゼントして17位に沈んでいる。横浜FM戦では勝利の立役者となった上田綺世が2ゴールを奪ったものの、湘南戦で右足首を負傷して全治1ヶ月の診断が下された。 40年ぶりに3部リーグへ降格したラ・コルーニャと違い、今シーズンの鹿島は降格の危機を免れている。とはいえ洋の東西を問わず、「栄枯盛衰」は世の習いであることを実感したコロナ禍でのリーグ戦である。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】</br>1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.07.24 17:40 Fri
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規制緩和も難しいチケッティング/六川亨の日本サッカー見聞録

Jリーグは7月16日の実行委員会で、8月1日からは「政府の方針」に則り、「超厳戒態勢」から「厳戒態勢」に移り、入場規制の緩和を方針通り実施することを明らかにした。7月内のJリーグは、有観客試合ながらマックス5000人以下か、収容人数の50%の少ない方に規制されていた。それが8月からは、収容人数の50%以内へと緩和されることになる。 例えば先週末の横浜M対FC東京戦の観客は、4769人だった。日産スタジアムの収容人員は7,2081人だから、50%だと3万6040人になる。当然、少ない方の5000人以下となったわけだ。それが8月からは、3万人の入場が可能になる。 ただ、村井満チェアマンは16日の会見で、「上限が50%であって、5000人を超えて(最大)50%にならなければいけないものではない」と警告しつつ、「上限通りでチケッティングをするか、場合によっては上限より下でチケッティングするか。クラブの置かれた(地域の)感染状況など様々な要因を勘案してクラブが個々に決める」と、地域の事情やスタジアムの規模と形状などを考慮して、個別の対応をクラブに求めた。 それも当然だろう。“超”が取れて「厳戒態勢」になっても、ファン・サポーターには以下の行為が禁止されていることに変わりはない。 1)応援を扇動する。 2)歌を歌うなど声を出しての応援、指笛。 3)手拍子。 4)タオルマフラー、大旗を含むフラッグなどを“振る”もしくは“回す”。 5)トラメガ(トランジスタメガホンの略。増幅器内蔵で電源を使う。ハンドマイクとも呼ばれる)を含むメガホンの使用。 6)太鼓等の鳴り物。 7)ハイタッチ、肩組み。 8)ビッグフラッグ(ただし観客のいない席に掲出する場合は容認される。横断幕の掲出は容認)。 さらに、「ビジター席は設置する」とガイドラインに記載されているものの、チケット販売に関しても 1)1試合毎の販売。 2)販売期間は1週間程度。 3)一般発売は有りとする。 と、「超戒厳態勢時」との違いは3の「一般発売有無はクラブにて決定する」が「有りとする」に変わっただけで、チケットを入手するための制限に変わりはない。そして実際のところ、「1試合毎の販売で、1週間程度」となると、購入者もかなり限られるだろう。 FC東京や浦和、大宮などはシーズンチケット購入者に対して全額払い戻しか、寄付金にしてもらい、税法上の優遇を受けられる措置などをコロナ対策として打ち出した。 知人の大宮ファンは、「シーズンチケット代は強化費に充ててもらえばと寄付しました。代わりにネットでシーズンチケットを持っているファンに割り当てられた枠に申し込んで購入しました」と11日の東京V戦のチケットの購入方法を教えてくれた。もちろんチケットはスマホに送信されてくるペーパーレスだ。 これがファン・サポーターの不公平感をなくすと同時に、チームにとっても諸々のリスクを最大限に避けた販売方法だと思う。付け加えるなら、NACK5スタジアムはそれほど大きくはないため、普段はビジター用のバックスタンドもホームのファン・サポーター用に開放した。これなどは村井チェアマンの言う、クラブ毎に密を避ける方法と言える。 そこで8月1日からは「ビジター席は設置」し、「一般発売」も開始されるが、いったいどのような方法で販売されるのか気になるところだ。最も確実なのはチームのホームページからの申し込みだろうが、問題はホーム・チームがビジター用に何席提供するかだ。 11日の大宮対東京V戦は、NACK5スタジアムのゴール裏1階はサポーターの写真などを置き観客の間隔をとり、2階にも観客を入れていた。12日の横浜M対FC東京戦は逆にバックスタンド1階に観客を入れ、2階と3階は使用していなかった。 だいたいのクラブにおいて、入場料収入は、それに伴う飲食や物販の販売なども合わせてスポンサー料に次ぐ収入源だ。なるべく多くの観客に入ってもらいたいというのが本音だろう。ところがスタンドを開放することで観客を入れられる代わりに、警備員の確保と試合後の清掃のための人件費などがかかる。この損益分岐点を各クラブはどのように見極めるのか。 販売期間が1週間で1試合毎となると、事前に対戦相手に確認する余裕もないだろう。ここらあたり、過去の対戦からアウェーのサポーターがどのくらいになるか判断するしかない。東京都など一部の地域を除いて沈静化しつつあるコロナの感染状況だが、まだまだ手探りで進まなければならない状況に変わりはない。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】<br />1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.07.18 10:00 Sat
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反町技術委員長の隠された才能/六川亨の日本サッカー見聞録

JFA(日本サッカー協会)は7月9日、定例となる第9回理事会を開き、日本代表の強化スタッフの位置づけを確認したり、21年秋に始まる女子プロリーグ、WEリーグの代表理事(Jリーグにおけるチェアマン)を選出したりした。 他にも理事会では、本来なら1月3日から3月27日までの移籍期間が、新型コロナウイルスの影響でほとんど活動できなかったとして、新たに10月2日から30日までを第3の登録期間としてFIFA(国際サッカー連盟)に承認されたことも発表された。 なお7月21日から8月28日までの第2の登録期間は従来通りである。 まずは簡単なテーマから紹介しよう。WEリーグの新たな“チェア"(呼称)に選ばれた岡島喜久子氏である。彼女の名前を聞くのは初めてだった。 1958年5月5日生まれだから、田嶋幸三会長の1歳年下となる。女子サッカーが黎明期だった70年代、数少ない女子チーム「FCジンナン」でプレーし、日本代表としても海外遠征に参加した。 彼女が凄いのは、仕事におけるキャリアだろう。早稲田大学商学部に在学中、アメリカ留学してスポーツ医学とコーチング学を専攻。そして卒業後はJPモルガン・チェース銀行を始め三菱UFJモルガン・スタンレー証券など金融業界に身を投じ、アメリカでも10年近いキャリアを積んだ。 新型コロナウイルスの世界的な患者数の分析で名前を聞いた読者もいるかもしれないが、ジョンズ・ホプキンス大学で、医学部の女子役員を務めたこともある。これまでのサッカー界にはいなかった異色のキャリアでもあり、改めてサッカー人脈の深さ、広さを痛感せずにはいられなかった。 さて、そろそろ本題に移ろう。日本人で初めてとなるA代表と五輪代表の監督を兼務した森保一監督。就任からの経緯を簡単に振り返ると、森保監督はA代表での活動がメインで、五輪代表は横内昭展監督代行が指揮することが多かった。 初めて森保監督が長期間五輪チームを率いた今年1月のU-23アジア選手権はグループリーグで敗退。兼任監督の是非が問われたのは当然のことだった。 その後は新型コロナウイルスの影響で今年3月と6月のW杯予選は延期され、例年ならU-22日本代表が参加していたトゥーロン国際大会も中止と、代表チームの活動は停止したまま。このため森保監督の兼任の是非を問う声もあがることはなかった。 ただ、サッカー界はいつまでも止まっているわけではない。9月のW杯予選は延期になったが、10月と11月に3試合、ACLも10月から大会方式を変更して再開され、アンダーカテゴリーの大会もスタートする。そこでナショナルコーチングスタッフは会議を開き、強化スタッフの再確認をした。 その前に、まずスケジュールを確認すると、今年10月と11月、来年の3月25日と30日、6月7日と11日にはW杯予選がある(6月3日は親善試合の予定)。4月中旬に五輪本大会の抽選会があり、五輪代表は7月5日から事前キャンプに入るとそのまま20日まで続けて五輪本大会を迎える。 その間、5月9日から15日まで代表の活動期間があるものの、ここはA代表と五輪で重なっている。 以上のことから反町技術委員長は1)「スタッフを代えても生産性がない」、2)「2つのチーム作りも現実的ではない」、3)「来年3月と6月に五輪のベストチームを作るのは不可能」ということから、五輪代表に関しては「頭角を現した選手をキャッチする」方法に方針を変えた。 はいまさら説明の必要もないだろう。時間は“十分"ではないが、ハリルホジッチ前監督のときのように「待ったなし」ではない。 も同様だ。A代表と五輪代表と2つのチームを作り、2人の監督でチームを回すということは、日本も1992年のバルセロナ五輪の時に実践した(山口五輪監督と横山A代表兼総監督)。しかし現在では24歳以下の選手がA代表にも名を連ねている。森保監督の言う「ラージグループ」に両カテゴリーの選手が含まれているのが現状のため、分けるのは難しい。 そこで問題になるのが、A代表と五輪代表の活動期間が重なった時だ。これまでは“横内監督代行"だったが、今後は「監督としてやって欲しい」(反町技術委員長)ということになった。 整理すると、森保監督は五輪代表の監督を兼務し、横内コーチは状況によって五輪監督となる。加えて、技術委員会のトップに技術委員長の反町氏がいて、彼と同格で普及・育成担当の小野剛氏(元日本代表コーチ)がいる。そして反町技術委員長の下にA代表と五輪代表の強化を担当する関塚隆(元五輪監督)テクニカルダイレクターがいる。 それぞれの役割や分担は明確なのだろうが、これに「縦軸」としてアンダーカテゴリーの指導者がクロスオーバーしてきても混乱することはないのかどうか気がかりだ。 それよりも反町技術委員長のweb会見を取材していて感じたことがある。例えば横内監督については「選手は五輪の切符を獲るため目の色を変えると思うので、横内をしっかりサポートしたい」とか、「横内には権限ではなく職務を与えるだけ」。代表選考に関しても「下地造りをするだけで、口を出すつもりはない」、「現場は関塚に任せているので、しっかり整理して欲しい」などなど、理路整然とし、とても歯切れが良く、断言していることだ。 そこで思ったのが、反町氏にはJFAの(広報を含め)報道官をやって欲しいということだ。いまの広報は違うものの、かつての広報は中田英を筆頭にメディアの質問に一切答えようとしない選手がいた。彼だけでなく、ミックスゾーンではヘッドホンをして、無言のうちに質疑応答を拒絶する選手もいた。にもかかわらず広報は彼らの行為を注意することすらしなかった。 最近でこそ少なくなったが、まだJクラブのなかには「メディアから選手を守るのが仕事」と思っている広報もいる。その点、反町氏は、選手はもちろん指導者としても実績があり、さらに弁舌も立つ。何を言っても憎まれない性格も報道官に向いているのではないだろうか。選手が嫌がってもメディアやテレビカメラの前に立たせて質問に答えさせる。それを嫌みなくできるキャラクターの持ち主のような気がしてならない。 ただこれは、私見であることを最後に断っておきたい。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】<br />1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.07.11 12:45 Sat
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再開するJ1を展望/六川亨の日本サッカー見聞録

6月27日に再開・開幕したJ2、J3リーグに続き、7月4日にはJ1リーグが開幕する。再開2試合は安全性を担保するため無観客、通称リモートマッチで開催され、長距離移動による感染拡大を防ぐため、当面は神奈川県から北にある10チームと、静岡県から南にある8チームによるホーム・アンド・アウェーのリーグ戦となっている。 試合を重ねながら安全性が確認されれば様々な規制は緩和されるだろう。だが、変わらないことが2つある。今シーズンは「交代枠が5人」で、「降格チームはない」ということだ。この2点が果たしてチームの戦い方にどんな影響を及ぼすのか考えてみた。 まず監督にとって大きいのは「降格がない」ということだ。例年の7月ならリーグ戦は半分以上を消化し、3~4人の監督が交代していてもおかしくない。しかし今シーズンはこれから開幕するようなもので、降格がないのだからよほどのことがない限り、今後も監督交代はないだろう。 試合の進め方に関して、優勝争いを演じる上位チームは例年とそう変わらない。横浜FMはボールポゼッションにこだわり、攻撃的なサッカーで連覇を狙うはずだ。FC東京は昨シーズン同様「ファストブレイク」で、ディエゴ・オリベイラと永井(昨年12月に肩を出術したが、自粛期間をリハビリに充てられたのは大きい)のスピードを生かすだろう。さらにアダイウトンとレアンドロの加入でサイド攻撃も破壊力が増した。 鹿島は開幕戦で広島に0-3と完敗したが、天皇杯の決勝まで勝ち進んだこととACLのプレーオフがあったため、例年より始動が早く、十分な休養期間を取れなかった。さらにザーゴ新監督に代わったため、コンディションだけでなく戦術面でも意思統が一できなかったのではないか。このため再開されるリーグ戦では「試合巧者」の鹿島が復活すると見ている。 昨シーズン4位の川崎FはベテランMF中村憲とFW大島をケガで欠くが、チームの若返りを図るいいチャンスでもあり、2年目のMF三笘や旗手、五輪代表候補の田中らタレントも豊富なだけに大崩れすることはないだろう。 問題は、こうした上位陣に対して下位チームがどういう戦いを挑むかだ。例年なら序盤戦から中盤戦にかけては理想とするスタイルを追求しつつ、結果も求めようとした。しかし思うように勝点を伸ばせないと、残留争いが始まる終盤戦はひたすら堅守防衛で勝点を拾いつつ、時には予期せぬ番狂わせを演じて優勝戦線をかき回した。 昨シーズンのことだ。首位をひた走るFC東京の長谷川監督に優勝への課題を聞いたところ、「当たり前のことですが、下位チームは残留に向けて必死なので、取りこぼしをしないこと」と話していた。しかし鳥栖に敗れて2位に転落すると、湘南と浦和に引き分けて初優勝は絶望的となった。 しかし今シーズンは降格がないのだから、順位を気にせずクラブと監督が理想とするサッカーを追求することも可能だ。とはいえこれは、現実的にあり得ない。どの監督も戦力に見合った戦い方で理想を追求し、対戦相手の弱点を突いて結果を求めようとするからだ。 そこで逆転の発想ではないが、再開される序盤戦から、例年ならシーズン終盤戦のような勝点を拾う戦い方をしてくる可能性もあるのではないだろうか。というのも、リーグは4ヶ月の中断により再開・開幕後はかなりの過密日程だ。加えて梅雨明けは7月下旬だが、晴天の日は30度を超えることもある。 ただでさえ選手は自粛期間中に自宅での自主トレを余儀なくされ、フィジカルコンディションは例年より劣っていることが予想される。それに加えて例年にはないハードスケジュールである。体力の消耗を避けるサッカーになってもおかしくはない。 交代枠が5人に増えたとはいえ、ターンオーバーできるのは上位チームに限られる。そこで前半はリトリートして体力を温存し、ドローを視野に入れつつ後半から試合状況を見ながら交代カードを切って勝点3を狙うチームが増えるのではないだろうか。こうしたサッカーでそこそこの成果を収められれば、それは4チームに降格の危機が広がる来シーズンにも生きることだろう。 まして東京都は、日に日に新型コロナウイルスの感染者が増加し、2日には5月2日以来2ヶ月ぶりに100人を突破した。開幕2連勝を飾った大宮の高木監督は「この先、また感染が広がって中断する可能性もゼロではない。今シーズンは何があるか分からないと常に感じている。とにかくゲームがある時に勝って、勝ち点3を積み上げていきたい」と言ったそうだ。偽らざる本音だろうし、どの監督も同じ思いかもしれない。 まずは目の前の勝点3を拾う。そうした戦い方をしてきた下位チーム相手に、優勝候補はどう戦うのか。選択肢は2つだろう。それでも力で叩き潰すか。横浜FMのポステゴグルー監督はボールを保持して体力の消耗を防ぎながら、攻撃的なサッカーを貫くに違いない。一方FC東京の長谷川監督はボールポゼッションにこだわらず、ショートカウンターに徹するのではないだろうか。 いずれにしても4日の再開が待ち遠しいことに変わりはない。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】<br />1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。</div> 2020.07.03 11:00 Fri
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