Jクラブの救済の前にやるべきこと/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.04.17 10:00 Fri
©︎J.LEAGUE
Jリーグは4月15日、臨時理事会の終了後、ビデオ通話アプリZOOMを使ったメディアブリーフィングを実施した。決議事項はJエリートリーグの中止、新型コロナウイルスの影響の場合はクラブライセンスの特例措置、安定開催融資の返済期限を3年にするなどの3点を決定した。
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そして報告事項としてJ1昇格プレーオフの中止。J2からJ1への昇格は2チーム、同じくJ3からJ2への昇格は2チームだが、クラブライセンスがない場合は昇格できず、3位以下のチームの繰り上げはしない。シーズンは全試合の75%か、全クラブが50%以上消化したら成立とし、それに満たない場合、シーズンはないものとして賞金と表彰は取りやめるものの、個人の記録は生かされる、などだった。決議事項は4月1日の臨時実行委員会で話し合われた内容が、正式に理事会で承認されたことで、それほど目新しい話題ではない。そしてリーグの再開見通しについても村井満チェアマンは「5月6日の緊急事態宣言の様子を見て、6月に再開が可能なのか、7月になるのか、8月になるのか、もっと深いところになるのか。このあたりは今日の段階で私の方から申し上げることはできません」と述べつつ、「1か月のターム(単位)でプロジェクトを検討している」と述べた。
興味深いのは、「恐らく21年もコロナのリソース(財源)が必要になるだろう。3億を上限に、コロナ対策費を理事会に諮らずチェアマン決定により使えるようにする」としたことだ。

すでに安定開催融資として10億円の予算を取っているが(J1 は3.5億、J2は1.5億、J3は3千万円)、たぶん10億円の原資ではカバーできないと危機感を募らせている可能性が高い。このため村井チェアマンは「具体的なシミュレーションはありませんが」と断った上で、「(予算の)100億~130億円から少なくとも30%、最大で50%(30~50億円)の削減でコロナ対策に充当したい」とも語った。
ただし「具体的な策があるわけではなく、どこで削減できるか皆で考えようと号令をかけただけです」と苦しい台所事情を明かした。

そして、いつ収束するか先の見えない新型コロナウイルスに苦しめられているのはサッカー界だけではない。このため村井チェアマンは「コスト削減にも限度があります。融資に減免があっても融資に変わりはありません。日本のスポーツ文化を守るために、他のスポーツと共同して政府に働きかけることもこれから検討していきます」と次の一手も視野に入れていることを明かした。

リーグ戦に関しては、すでに須原清貴JFA(日本サッカー協会)専務理事が「天皇杯の日程もJリーグのために変える」ことを村井チェアマンに伝えたという。さらに6月以降のIMD(インターナショナルマッチデー。実際には9月以降)でもJリーグの試合を開催する可能性と、ルヴァン杯の大会方式の変更についても示唆した。

Jリーグとしては、打てる手は可能な限り準備していると言っていい。問題は全国にある56クラブの体力がどこまで持つかだ。経済活動が停滞するなか、テレビのCMから自動車業界のオンエアがなくなった。果たして親会社からの補填がどれだけ受けられるのか、不安は尽きない。

財務担当の鈴木徳昭氏は「(再開が)6月以降になったことで、観客が50%なのか、無観客なのか、100%などで(各クラブの)資金繰りも変わってくる。このためまだ発表できる段階ではないですし、自治体と交渉しているクラブもある」と報告した。

ただ、自治体としてもJクラブへの融資より、いまは休業要請を受けて営業を自粛している飲食店などや、生活困窮者への救済を優先するはずだ。かくいう私もフリーランスとして生計を立てているが、Jリーグと日本代表の試合の延期で月収は半減した。それでもまだ、試合がなくてもこうして新型コロナウイルスの原稿を書くことはできる。しかしフリーのカメラマンやアナウンサーは、Jリーグの試合がなければ収入もない。

同じことは各地のJクラブの地元飲食店やスタジアムグルメ、警備会社で働くパートタイマーやアルバイトにも当てはまるだろう。Jクラブを救うためにファン・サポーターは募金活動などで協力しようという意見もあるが、その前にファン・サポーターの生活の安定を優先すべきではないだろうか。それだけ切実な問題だと思うからだ。


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