地場産業の雇用をも創出しているJリーグ/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.03.06 15:05 Fri
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©︎CWS Brains, LTD.
新型コロナウイルスの猛威により、大相撲に続き春の選抜甲子園も無観客試合で開催されることが決まった。両団体とも、1人でも競技者に観戦者が出れば中止という条件つきだ。

そしてJリーグとNPB(日本野球機構)は、3月3日の第1回「新型コロナウイルス対策連絡会議」で感染症の専門家3人を招いて新型コロナウイルスへの対処法と今後の方針を確認した。

対処法としては「2メートル以内で密閉された空間で、大声で話す」ことが感染につながると警告され、これらはJリーグの各クラブ、選手とその家族にも翌日伝えられた。ヨガなどのスポーツジム、ライブのコンサートなどで感染者が確認されたことからも、その危険度がうかがえる。

そして村井満チェアマンは会見で「確定しているのは(9日の)2回の会議まで」と話すにとどめ、さらなる延期の可能性も示唆した。Jリーグとしては、12日に定例理事会があるため、9日の会議で18日からの開催に向けて前向きな提案があれば検討したいとう意向がある。

難しいのは、プロ野球は12球団に比べ、JリーグはJ1からJ3まで56クラブと全国的な広がりを見せていることだ。このため「各地域のドクターとも相談できる」(村井チェアマン)態勢を作りにも追われている。どこまでフォローできるのか、こちらはこちらで気がかりな点でもあるが、村井チェアマンの言葉を信じたい。

Jリーグは2月21日の湘南対浦和戦を皮切りに、J1とJ2の第1節を開催した。その是非は後述するとして、プロ野球は現在オープン戦を無観客試合で実施している。Jリーグはその反省からエスコートキッズと選手が手をつないで入場すること、マスコットとファンのハイタッチなどを禁止したほうがいいという教訓を得た。

おそらくプロ野球からは、無観客試合によるメリット(?)、デメリットなどの情報を共有することだろう。それだけでも、村井チェアマンがプロ野球に連係を求めた意義は深いと推測する。

そして、それ以上に大きいのは、村井チェアマンが「無観客試合」の開催を「プロの興行」として否定したことだ。

というのも、安倍晋三首相はつい先日、小中学校の臨時休校を決めた。その結果、FBでは牛乳や野菜のキャンセルにより酪農家や農家が困っているので積極的に買って欲しいというメッセージが届いた。せめて1週間後に休校にするとアナウンスすれば、酪農家も農家も出荷の調整ができたかもしれない。場当たり的な対応が、国民の生活を圧迫した悪例とも言える。

その点、村井チェアマンは3日の会見で「プロの興行は裾野が広く、多くの企業に支えられています。スタジアムでの飲食、公共交通機関、警備に当たる人たちに支えられているので、彼らの生活も考慮しないといけないし、クラブの収益も考慮しないといけないが、今はすべての人の安心・安全を考慮しないといけない。収益だけで判断してはいけない」と話した。

サッカーがあることで、スタジアムには人が集う。スタグルを楽しみにしているファンもいるだろう。地方のクラブはファン・サポーター用に離れた場所に駐車場があるかもしれないが、都心のクラブは公共交通機関で往復せざるを得ないだろう。そして、その駐車場や入場ゲートではJリーグの開幕以来、警備を請け負っている会社がある。

いまやJクラブは、クラブが存続するためにはもちろんのこと、地域密着がゆえに地場産業の雇用も創出している。彼らの生活を支えているのがJリーグといえる。

キャッチフレーズである「あなたの町にも、Jリーグがある」。それは新型コロナウイルスに負けない力があると信じたい。

【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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