開幕したJリーグに思うこと/六川亨の日本サッカーの歩み
2020.02.25 16:00 Tue
28年目を迎えたJ1リーグが2月21日の“金J”で開幕した。湘南対浦和戦では、J3 鳥取とJ2新潟で2年連続して得点王を獲得した浦和のレオナルドが、巧みなポジショニングからゴールを決めて3-2の勝利に貢献。
22日は川崎Fが鳥栖と引き分けたのは意外だったが、例年スロースターターの川崎Fだけに、これから徐々にギアを上げてくる可能性もある。
想定外だったのが23日に行われた4試合だ。前年覇者の横浜FMはG大阪に1-2と敗れた。この試合ではG大阪の遠藤保仁がスタメンでJ1リーグ出場631試合を飾り、GK楢﨑正剛の最多出場記録に並んだ。記録の更新は間違いなく、恐らく今後も破られない記録を更新し続けるだろう。
フィジカルが強いわけでもなく、足も速くない。得意とするフェイントも特にないため、当時のライバルである中田英寿、中村俊輔、小野伸二、小笠原満男らの陰に隠れる存在だった。しかしオシム・ジャパンになってからは、中盤で独特のタメから“違いを作れる選手”として存在感を発揮。病でピッチを離れることもあったが、「無事これ名馬」の喩え通り、日本代表とG大阪で出場を重ね、10年の南アW杯ではベスト16進出に貢献。G大阪でも数々のタイトルをもたらした。
そして前年覇者の横浜FMの黒星スタートに続き、天皇杯優勝の神戸も昇格組の横浜FCの抵抗に苦しんだ。前半24分に先制され劣勢を強いられる。イニエスタは好プレーを連発するも、それがゴールに結びつかず、なんとかドローに持ち込んで面目を保った。
衝撃的だったのは、鹿島が広島に0-3と敗れたことだ。昨シーズンも一時は首位に立ち、3位でシーズンを終えた鹿島である。監督が代わり、選手も大幅に入れ替わった。とはいえ鹿島について、広島の城福浩監督は14日のキックオフカンファレンスで「勝負強いチーム。伝統があるし、ACLではああいう結果(プレーオフでメルボルン・ビクトリーに0-1)になったので、逆に厳しい相手」と警戒を緩めなかった。
実際、サッカー専門誌「サッカーダイジェスト」のJ1リーグ予想順位では横浜FM、川崎Fに続き3位にランクインしている。優勝候補の本命に推す記者も2名いた。それだけ堅実なサッカーで大崩れしない伝統を評価したのだろう。
ところが広島に0-3と完敗したことで、第1節の順位は最下位である。これは93年にJリーグが開幕して以来、クラブ史上初めての屈辱でもあるし、正直、鹿島が最下位になることなどまったく想定していなかった。
その原因としては、先にも書いたように監督の交代と選手の入れ替わりが指摘されるが、それに加えてサッカースタイルの変化も考えられる。
今シーズン、監督に就任したザーゴ監督は、かつて柏でアントニオ・カルロスという名で活躍したCBだ。柏では1年しかプレーしなかったが、それはチームメイトのFWアジウソン(96年のJ1リーグで1試合5ゴールのリーグタイ記録を樹立した俊敏なストライカーで、02年日韓W杯の優勝メンバー)と仲が悪かったからと言われている。
柏からコリンチャンスを経由してASローマに移籍すると、アントニオ・カルロスから登録名をザーゴに変え、ローマでは01年に中田英とともにスクデット獲得に貢献した。
そんなザーゴ監督が目指しているのが、DFラインから攻撃を組み立て、守備では前線から奪いにいくサッカーという、鹿島の伝統を放棄するスタイルでもある。これはこれで、間違っていないだろう。横浜FMのポステゴグルー監督はそれで結果を出したし、柏のネルシーニョ監督も今シーズンのテーマにハイプレスによるショートカウンターをチーム戦術の核にしている。
懸念があるとすれば、鹿島はジーコが現役時代から4-4-2のシステムよるボックス型の中盤から、両サイドバックの攻撃参加によるカウンタースタイルを採用してきたことだ。前線からプレスをかけるのではなく、自陣でリトリートして、“守備からのカウンター”をチーム戦術の伝統としてきた。
伝統か変革か。これまで93年のJリーグ開幕に参加した10チーム、いわゆる「オリジナル10」でJ2に降格したことがないのは鹿島と横浜FMの2チームだけだが、最多タイトル獲得の鹿島がどんな選択をして、どこを目指しているのか。親会社になったメルカリの方針も含めて気になる今シーズンの鹿島と言える。
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翌22日は4試合が行われ、J2から昇格した柏はJリーグ初のケニア人FWオルンガが2ゴールを決める活躍で札幌を4-2と粉砕した。オルンガは昨シーズンのJ2でレオナルドの28点に次ぐ27点を稼ぎ得点ランキング2位。最終戦の京都戦では8ゴールを決めてJリーグ新記録を作ったストライカーだ。レオナルドとオルンガの得点王争いは楽しみだが、J1リーグで活躍すればするほど、夏の移籍市場でヨーロッパに新天地を求めるかもしれない。想定外だったのが23日に行われた4試合だ。前年覇者の横浜FMはG大阪に1-2と敗れた。この試合ではG大阪の遠藤保仁がスタメンでJ1リーグ出場631試合を飾り、GK楢﨑正剛の最多出場記録に並んだ。記録の更新は間違いなく、恐らく今後も破られない記録を更新し続けるだろう。
遠藤と言えば、99年のワールドユース(現U-20W杯)の準優勝メンバーだが、06年のドイツW杯で「フィールドプレーヤーとして唯一出場機会のない選手」というレッテルを貼られていた。
フィジカルが強いわけでもなく、足も速くない。得意とするフェイントも特にないため、当時のライバルである中田英寿、中村俊輔、小野伸二、小笠原満男らの陰に隠れる存在だった。しかしオシム・ジャパンになってからは、中盤で独特のタメから“違いを作れる選手”として存在感を発揮。病でピッチを離れることもあったが、「無事これ名馬」の喩え通り、日本代表とG大阪で出場を重ね、10年の南アW杯ではベスト16進出に貢献。G大阪でも数々のタイトルをもたらした。
そして前年覇者の横浜FMの黒星スタートに続き、天皇杯優勝の神戸も昇格組の横浜FCの抵抗に苦しんだ。前半24分に先制され劣勢を強いられる。イニエスタは好プレーを連発するも、それがゴールに結びつかず、なんとかドローに持ち込んで面目を保った。
衝撃的だったのは、鹿島が広島に0-3と敗れたことだ。昨シーズンも一時は首位に立ち、3位でシーズンを終えた鹿島である。監督が代わり、選手も大幅に入れ替わった。とはいえ鹿島について、広島の城福浩監督は14日のキックオフカンファレンスで「勝負強いチーム。伝統があるし、ACLではああいう結果(プレーオフでメルボルン・ビクトリーに0-1)になったので、逆に厳しい相手」と警戒を緩めなかった。
実際、サッカー専門誌「サッカーダイジェスト」のJ1リーグ予想順位では横浜FM、川崎Fに続き3位にランクインしている。優勝候補の本命に推す記者も2名いた。それだけ堅実なサッカーで大崩れしない伝統を評価したのだろう。
ところが広島に0-3と完敗したことで、第1節の順位は最下位である。これは93年にJリーグが開幕して以来、クラブ史上初めての屈辱でもあるし、正直、鹿島が最下位になることなどまったく想定していなかった。
その原因としては、先にも書いたように監督の交代と選手の入れ替わりが指摘されるが、それに加えてサッカースタイルの変化も考えられる。
今シーズン、監督に就任したザーゴ監督は、かつて柏でアントニオ・カルロスという名で活躍したCBだ。柏では1年しかプレーしなかったが、それはチームメイトのFWアジウソン(96年のJ1リーグで1試合5ゴールのリーグタイ記録を樹立した俊敏なストライカーで、02年日韓W杯の優勝メンバー)と仲が悪かったからと言われている。
柏からコリンチャンスを経由してASローマに移籍すると、アントニオ・カルロスから登録名をザーゴに変え、ローマでは01年に中田英とともにスクデット獲得に貢献した。
そんなザーゴ監督が目指しているのが、DFラインから攻撃を組み立て、守備では前線から奪いにいくサッカーという、鹿島の伝統を放棄するスタイルでもある。これはこれで、間違っていないだろう。横浜FMのポステゴグルー監督はそれで結果を出したし、柏のネルシーニョ監督も今シーズンのテーマにハイプレスによるショートカウンターをチーム戦術の核にしている。
懸念があるとすれば、鹿島はジーコが現役時代から4-4-2のシステムよるボックス型の中盤から、両サイドバックの攻撃参加によるカウンタースタイルを採用してきたことだ。前線からプレスをかけるのではなく、自陣でリトリートして、“守備からのカウンター”をチーム戦術の伝統としてきた。
伝統か変革か。これまで93年のJリーグ開幕に参加した10チーム、いわゆる「オリジナル10」でJ2に降格したことがないのは鹿島と横浜FMの2チームだけだが、最多タイトル獲得の鹿島がどんな選択をして、どこを目指しているのか。親会社になったメルカリの方針も含めて気になる今シーズンの鹿島と言える。
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