J1参入プレーオフの問題点とは? 漂う不公平さ、海外ではどうしている?
2019.12.16 07:00 Mon
14日、J1参入プレーオフの決勝戦が行われ、2019シーズンのJリーグが幕を下ろした。
最後の試合となった一戦は、J1で16位に終わった湘南ベルマーレと、J2で4位に終わり、J1参入プレーオフの2試合を勝ち上がった徳島ヴォルティスが対戦。試合は1-1のドローに終わり、湘南が来シーズンもJ1で戦うことが決定。徳島は、2014年以来のJ1復帰を逃した。
試合は、徳島が主導権を握る展開となり、20分に鈴木徳真が先制ゴールを記録。そのまま試合は経過したが、64分に松田天馬がネットを揺らして同点に。その後は、徳島が2点目を奪いに行くも、湘南が守備を固めて守り切る形となった。
引き分けでの決着──このルールで実施されることは決定していたため、今回の結果に対しては何ら異論はない。湘南は厳しいシーズンの中、よく残留を勝ち取ったと思う。ルールに則っただけだ。
しかし、現行のJ1参入プレーオフのレギュレーションについては、各方面から多くの疑問符が投げかけられていた。そのルールについて、改めて振り返ってみたい。
おさらいすると、J1参入プレーオフは2018シーズンから導入された制度。2012年から2017年まで行われていたJ1昇格プレーオフとは様式が異なる。
J1昇格プレーオフは、J2の3位から6位までの4クラブがトーナメントで戦い、勝ち残ったクラブがJ1昇格。J1の16位〜18位が自動降格となっていた。
しかし、6シーズン行われたこの昇格プレーオフだが、昇格した6クラブのうち翌シーズンJ1残留を決めたのは、2016年のセレッソ大阪と2017年の名古屋グランパスのみ。残りの4クラブは1年でJ2に逆戻りすることとなり、昇格プレーオフのあり方が議論されることとなった。
そして新たにスタートしたのがJ1参入プレーオフだ。これは昇格プレーオフ同様にJ2の3位から6位がトーナメントで戦い、勝ち上がった1クラブがJ1の16位クラブと決勝戦を行うというものだ。
J1参入プレーオフが導入されて2シーズン。結果は2018年がジュビロ磐田、2019年が湘南ベルマーレとどちらもJ1の16位クラブが残留することとなった。
結果だけを見れば、J2クラブの代表として勝ち上がった東京ヴェルディ(2018年)、徳島ヴォルティス(2019年)の力がなかったということだろう。しかし、この結果にはレギュレーションの影響もあると考えられる。
J1クラブはシーズン終了後、1試合を戦う。さらに、試合はホームで行われ、引き分け以上の結果で残留が決定するのだ。
一方で、J2クラブはJ1より多い42試合のシーズンを戦い、J2勢と2試合を戦った上で、J1クラブと対戦する。さらに、最後は勝利以外の道はない。
昨シーズンの東京Vにしても、今シーズンの徳島にしても、J1クラブ相手に勝利を目指すというのは非常に難しいミッションだ。一方で、J1クラブは引き分けでも良い戦いとなり、展開によっては優位に進めることが可能だ。
前述の通り、J2の3番手クラブがJ1で戦う力が足りないと判断できる結果となっているだけに、最後のJ1クラブに勝利しなければ昇格の価値がないと言われるのは一理ある。
一方で、違うカテゴリの2クラブが対戦するにも関わらず、J1クラブがあまりにも有利過ぎるという見方が出るのも仕方のないことだろう。その理由は、どことなく感じる“不公平”さだ。
まず、2つのクラブは1シーズン違うリーグを戦っている。J1とJ2のクラブが対戦する機会は、リーグ戦では存在しない。(カップ戦ではある)
さらに、1つは上位リーグで力のなかったクラブ、1つは下位リーグで力のあったクラブという点だ。今シーズンで言えば、湘南は勝てずにプレーオフヘまわり、徳島は勝ってプレーオフにまわった。2クラブが歩んできた道は、リーグが違えどベクトルは真逆と言える。
また、同じJ1を目指すと行っても、1つは残留、1つは昇格だ。そもそも、始まる前から残留を目指して戦っているJ1クラブはほとんどなく、結果が伴わないが故に最後の手段として残留を目指すことになっていくのだ。つまり、結果論。昇格を目指すクラブは、開幕から昇格を目指し続けて、掴んだものということだ。
この3点から考えても、両者に差が出るのは不当であり、平等に扱われるべきだと思われるのは普通のことだろう。徳島のリカルド・ロドリゲス監督が「このシステムはJ2には不公平だ」と試合後に語ったのも理解できる。
シーズンを通して結果を残せなかったJ1クラブが、ホームアドバンテージに加え、引き分けでも良いというアドバンテージを持つからこそ、“不公平”だと感じられてしまうのだ。
では、世界に目を向けたらどうだろうか。例えばイングランドだ。プレミアリーグが最上位リーグであるが、下位の3クラブは自動降格となり、チャンピオンシップ(2部)は上位2クラブが自動昇格、3位〜6位がプレーオフを行い、優勝クラブが昇格する。
スペインも同様だ。ラ・リーガの下位3クラブが降格し、上位2クラブ+プレーオフ勝者が昇格する。
イタリアも形式は同様だ。セリエAの下位3クラブが自動降格し、セリエBの上位2クラブとプレーオフ勝者の1クラブがセリエAへ昇格する。しかし、このプレーオフは3位〜6位のクラブがホーム&アウェイ方式で戦い、昇格クラブを決めるというもの。さらに、3位と4位の勝ち点差が10以上離れている場合はプレーオフを行わずに3位が昇格するシステムとなっている。
ドイツはまた異なる。ブンデスリーガの下位2クラブが自動降格、2部の上位2クラブが自動昇格。1部の16位クラブと2部の3位クラブがプレーオフを行う。ホーム&アウェイで2試合戦い、勝者が翌シーズンを1部で戦うのだ。
4つ例を挙げたが、ヨーロッパの主要リーグでは現行のJ1参入プレーオフの形式は取られておらず、2017年まで導入されたJ1昇格プレーオフのパターンか、かつてJリーグでもあった入れ替え戦が採用されているのだ。
JリーグがJ1昇格プレーオフからJ1参入プレーオフに形式を変更したのにも、当然理由がある。しかし、昨シーズンはなんとか残留した磐田は、今シーズンはJ2に降格した。今シーズン引き分けてなんとか残留した湘南は、来シーズンが勝負の年となるだろう。降格していては、救済された意味をなさない。
立場が違えば、それぞれに言い分があるのは事実。J1側から見たもの、J2側から見たものは景色が異なるのだから、どちらの意見も間違いではない。
しかし、観るものが、戦うものが不公平さを感じてしまうのはフェアではないだろう。
日程の問題など、色々と影響があることも当然理解している。だから、ホーム&アウェイで2試合を行うのは難しいかもしれない。
しかし、違うベクトルで1年間戦ってきた両者の決着は、白黒ハッキリつけた方が、誰しもが納得いく結果なのではないかと思う。引き分けを認めるのではなく、延長戦までやって決着をつけるのか、PK戦で決着をつけるのか。何れにしてもだ。
次の1年間を戦うリーグを決める戦いが、グレーのまま決着を迎えるというのは、なんとも日本らしいとも言えなくはない。しかし、勝負の世界。ぜひ、決着がつくまで戦ってみる方式を再び取るのも良いのではないだろうか。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
最後の試合となった一戦は、J1で16位に終わった湘南ベルマーレと、J2で4位に終わり、J1参入プレーオフの2試合を勝ち上がった徳島ヴォルティスが対戦。試合は1-1のドローに終わり、湘南が来シーズンもJ1で戦うことが決定。徳島は、2014年以来のJ1復帰を逃した。
試合は、徳島が主導権を握る展開となり、20分に鈴木徳真が先制ゴールを記録。そのまま試合は経過したが、64分に松田天馬がネットを揺らして同点に。その後は、徳島が2点目を奪いに行くも、湘南が守備を固めて守り切る形となった。
しかし、現行のJ1参入プレーオフのレギュレーションについては、各方面から多くの疑問符が投げかけられていた。そのルールについて、改めて振り返ってみたい。
◆J1昇格プレーオフとJ1参入プレーオフ
©︎J.LEAGUE
おさらいすると、J1参入プレーオフは2018シーズンから導入された制度。2012年から2017年まで行われていたJ1昇格プレーオフとは様式が異なる。
J1昇格プレーオフは、J2の3位から6位までの4クラブがトーナメントで戦い、勝ち残ったクラブがJ1昇格。J1の16位〜18位が自動降格となっていた。
しかし、6シーズン行われたこの昇格プレーオフだが、昇格した6クラブのうち翌シーズンJ1残留を決めたのは、2016年のセレッソ大阪と2017年の名古屋グランパスのみ。残りの4クラブは1年でJ2に逆戻りすることとなり、昇格プレーオフのあり方が議論されることとなった。
©︎J.LEAGUE
そして新たにスタートしたのがJ1参入プレーオフだ。これは昇格プレーオフ同様にJ2の3位から6位がトーナメントで戦い、勝ち上がった1クラブがJ1の16位クラブと決勝戦を行うというものだ。
◆J2クラブにとっては大きな足かせ
©︎J.LEAGUE
J1参入プレーオフが導入されて2シーズン。結果は2018年がジュビロ磐田、2019年が湘南ベルマーレとどちらもJ1の16位クラブが残留することとなった。
結果だけを見れば、J2クラブの代表として勝ち上がった東京ヴェルディ(2018年)、徳島ヴォルティス(2019年)の力がなかったということだろう。しかし、この結果にはレギュレーションの影響もあると考えられる。
J1クラブはシーズン終了後、1試合を戦う。さらに、試合はホームで行われ、引き分け以上の結果で残留が決定するのだ。
一方で、J2クラブはJ1より多い42試合のシーズンを戦い、J2勢と2試合を戦った上で、J1クラブと対戦する。さらに、最後は勝利以外の道はない。
昨シーズンの東京Vにしても、今シーズンの徳島にしても、J1クラブ相手に勝利を目指すというのは非常に難しいミッションだ。一方で、J1クラブは引き分けでも良い戦いとなり、展開によっては優位に進めることが可能だ。
前述の通り、J2の3番手クラブがJ1で戦う力が足りないと判断できる結果となっているだけに、最後のJ1クラブに勝利しなければ昇格の価値がないと言われるのは一理ある。
◆漂う不公平さ…その理由は?
©︎J.LEAGUE
一方で、違うカテゴリの2クラブが対戦するにも関わらず、J1クラブがあまりにも有利過ぎるという見方が出るのも仕方のないことだろう。その理由は、どことなく感じる“不公平”さだ。
まず、2つのクラブは1シーズン違うリーグを戦っている。J1とJ2のクラブが対戦する機会は、リーグ戦では存在しない。(カップ戦ではある)
さらに、1つは上位リーグで力のなかったクラブ、1つは下位リーグで力のあったクラブという点だ。今シーズンで言えば、湘南は勝てずにプレーオフヘまわり、徳島は勝ってプレーオフにまわった。2クラブが歩んできた道は、リーグが違えどベクトルは真逆と言える。
また、同じJ1を目指すと行っても、1つは残留、1つは昇格だ。そもそも、始まる前から残留を目指して戦っているJ1クラブはほとんどなく、結果が伴わないが故に最後の手段として残留を目指すことになっていくのだ。つまり、結果論。昇格を目指すクラブは、開幕から昇格を目指し続けて、掴んだものということだ。
この3点から考えても、両者に差が出るのは不当であり、平等に扱われるべきだと思われるのは普通のことだろう。徳島のリカルド・ロドリゲス監督が「このシステムはJ2には不公平だ」と試合後に語ったのも理解できる。
シーズンを通して結果を残せなかったJ1クラブが、ホームアドバンテージに加え、引き分けでも良いというアドバンテージを持つからこそ、“不公平”だと感じられてしまうのだ。
◆J1参入プレーオフの形式は珍しい
Getty Images
では、世界に目を向けたらどうだろうか。例えばイングランドだ。プレミアリーグが最上位リーグであるが、下位の3クラブは自動降格となり、チャンピオンシップ(2部)は上位2クラブが自動昇格、3位〜6位がプレーオフを行い、優勝クラブが昇格する。
スペインも同様だ。ラ・リーガの下位3クラブが降格し、上位2クラブ+プレーオフ勝者が昇格する。
イタリアも形式は同様だ。セリエAの下位3クラブが自動降格し、セリエBの上位2クラブとプレーオフ勝者の1クラブがセリエAへ昇格する。しかし、このプレーオフは3位〜6位のクラブがホーム&アウェイ方式で戦い、昇格クラブを決めるというもの。さらに、3位と4位の勝ち点差が10以上離れている場合はプレーオフを行わずに3位が昇格するシステムとなっている。
ドイツはまた異なる。ブンデスリーガの下位2クラブが自動降格、2部の上位2クラブが自動昇格。1部の16位クラブと2部の3位クラブがプレーオフを行う。ホーム&アウェイで2試合戦い、勝者が翌シーズンを1部で戦うのだ。
4つ例を挙げたが、ヨーロッパの主要リーグでは現行のJ1参入プレーオフの形式は取られておらず、2017年まで導入されたJ1昇格プレーオフのパターンか、かつてJリーグでもあった入れ替え戦が採用されているのだ。
◆来季以降とるべき道は
©︎J.LEAGUE
JリーグがJ1昇格プレーオフからJ1参入プレーオフに形式を変更したのにも、当然理由がある。しかし、昨シーズンはなんとか残留した磐田は、今シーズンはJ2に降格した。今シーズン引き分けてなんとか残留した湘南は、来シーズンが勝負の年となるだろう。降格していては、救済された意味をなさない。
立場が違えば、それぞれに言い分があるのは事実。J1側から見たもの、J2側から見たものは景色が異なるのだから、どちらの意見も間違いではない。
しかし、観るものが、戦うものが不公平さを感じてしまうのはフェアではないだろう。
日程の問題など、色々と影響があることも当然理解している。だから、ホーム&アウェイで2試合を行うのは難しいかもしれない。
しかし、違うベクトルで1年間戦ってきた両者の決着は、白黒ハッキリつけた方が、誰しもが納得いく結果なのではないかと思う。引き分けを認めるのではなく、延長戦までやって決着をつけるのか、PK戦で決着をつけるのか。何れにしてもだ。
次の1年間を戦うリーグを決める戦いが、グレーのまま決着を迎えるというのは、なんとも日本らしいとも言えなくはない。しかし、勝負の世界。ぜひ、決着がつくまで戦ってみる方式を再び取るのも良いのではないだろうか。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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