コパ・アメリカで明確化された課題、現実から目を離さずに成長の糧とできるか/日本代表コラム
2019.06.27 15:00 Thu
勝てばベスト8進出となるベネズエラ代表戦で、1-1のドローに終わった日本代表。これにより、2度目のコパ・アメリカは2分け1敗となり敗退が決定した。
招待国としてカタール代表とともに出場した日本だったが、1999年大会と同様に1勝もできずに去ることとなった。この20年で多くの成長が見られ、日本サッカーは発展を繰り返してきたが、足りないものは今大会でも改めて明確となった。
◆永遠の課題「決定力」
今大会、多くの注目は18歳の久保建英(レアル・マドリー)に注がれたはずだ。大会直前に古巣のバルセロナではなく、最大のライバルにあたるレアル・マドリー(Bチーム登録)入りが決定したことで、日本だけでなく、世界からの視線を集めた。その久保は、初戦のチリ代表戦でも違いを見せるプレーを披露し、各国メディアでも称賛を受けていた。
もちろん、チームが0-4で敗戦したこともあり、最大の評価はされないものの、随所に見せるプレーレベルの高さは、世界も認めるほど。レアル・マドリー行きが“まぐれ”ではないことを、世界にも知らしめることとなった。
その中で、大きな注目を集めることとなった選手がもう1人いる。それが、唯一の大学生メンバーであるFW上田綺世(法政大学)だ。コパ・アメリカの舞台で代表初キャップを記録した上田は、持ち前のポジショニングの良さや抜け出しのうまさ、相手DFとの駆け引きなど、ストロングポイントをいきなり発揮する。しかし、何度となく迎えた決定機を全て失敗。特に、シュートが枠に飛ばないことが続き、流れを引き寄せられなかった要因となってしまった。
1-1で迎えた後半、ウルグアイ戦同様に上田は途中出場する。すると、この試合でも決定機が訪れる。しかし、ここでもシュートが枠に飛ばず。後半アディショナルタイムには、途中出場のFW前田大然(松本山雅FC)がスルーパスを受けて決定的なシーンを作るも、シュートをうまく打てず。こぼれ球を拾った上田は、ボックス内からシュートを放つも、枠の遥か彼方へとボールは飛んでいった。
グループステージ3試合に途中出場を含めて全試合に出場した上田。大会のスタッツでは、「最もチャンスでミスをした選手」として上田がワースト記録を叩き出している。本人も当然感じてはいることだろうが、明らかな決定機で、シュートが枠に飛ばなかったのはストライカーとしては残念でならない。
以前のコラムでも指摘したように、シュートまでのプレーに関しては、チリ、ウルグアイ、そしてエクアドルと、どの国のディフェンダーに対しても一定のプレーを見せた。決定機を作れたということは、上田の特徴が通用しているということでもある。ただ、「決定力」が決定的に足りないことが明確になった。
この「決定力」とは、日本サッカー界の永遠の課題とも言えるもの。シュートが枠に飛ばなければ、ゴールのチャンスはほぼゼロだ。どれだけ華麗に崩しても、どれだけ相手選手の裏を突いても、どれだけGKとの一対一のシーンを作ろうとも、シュートが枠に行かなければ、ゴールは生まれないのだ。
長い期間、この「決定力不足」が事あるごとにフォーカスされてきたが、今大会ほど明確に足りていないことを痛感したことはないかもしれない。これは上田に限ったことではなく、日本の多くのストライカーに言えること。少ないチャンスを決め切る南米のストライカーとの差は痛感したはずだ。上田は、鍛え方次第ではまだまだ上手くなる伸び代があるだけに、一刻も早く高いレベル、“プロ”の世界で揉まれることをオススメしたい。“シュート”以外の部分が十分通用するだけに、足りない部分をしっかりと伸ばしてもらいたい。
◆動じないメンタルと正確な判断
そして、南米3カ国と本気で戦ったことで浮き彫りとなったのは、ブレないメンタルと早く正確な判断力の不足だ。
初戦のチリ戦でボランチに入ったMF中山雄太(ズヴォレ)、ウルグアイ戦とベネズエラ戦でボランチに入ったDF板倉滉(フローニンヘン)の2人がMF柴崎岳(ヘタフェ)の相棒を務めた。
中山は初戦のチリ戦で久々にボランチでプレー。試合勘のなさを露呈すると、相手の狙い所となってしまい、本人も立ち位置を見失ってしまった。柴崎がプレスをかけているタイミングで、同じようにプレスに出てポジションを空けてカウンターの餌食になったり、攻撃面でもパスミスが散見され、完全に相手に飲まれてしまった印象だ。競り合いでも狙い所となるなど、世界のレベルを突き付けられてしまった。
板倉もウルグアイ戦では立ち上がりにルーズな対応をしたことで、ルイス・スアレス(バルセロナ)にあわやのロングシュートを放たれてしまった。それに物怖じしたのか、積極的なプレーに出ることがなかなかできず、後半途中まで低調なパフォーマンスに終始した。後半は徐々に持ち味を出したが、積極性という点では苦しい試合となっただろう。
この2人はクラブチームでの出場機会が少なく、試合勘がなかったことも要因ではある。しかし、一度相手によって崩され、ペースを作られたことで、積極的なプレーを選択できなくなり、特徴を出すまでに至らなかったのだ。失点することもミスすることもピッチ上では誰しもが起こす可能性がある。しかし、相手にその隙を与えているようでは、特に南米勢はしたたかにそこを突き、とどめを刺しにくる。中山、板倉が狙い所をなっていたことは、本人たちも気付いているはずだ。
そして、判断力といえば、光るプレーも見せていたMF中島翔哉(アル・ドゥハイル)にも言えることだ。プレースピードに判断が追いついていない印象を持った。中島の特徴はドリブルであることは日本人はおろか、スカウティングした相手チームも知っていること。持ち味であり、相手をかわして強烈なシュートを放つというのが1つの形ではあるが、今大会では独善的なプレーも散見された。
アジアでの戦いであれば、中島が1人で試合を決定づけることも可能だろう。また、キリンチャレンジカップのようなホームでのフレンドリーマッチであっても、その力は発揮できるはずだ。しかし、本気の南米相手には、要所では効果的であったものの、簡単にボールをロストし、逆襲を喰らうシーンが何度も見られた。
もちろん、周りの選手のポジショニングや動き出しのタイミングなど、要因は多岐にわたるものの、その判断の誤りが散見されたからこそ、同サイドで3試合連続フル出場を果たしたDF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)は高い位置を取る回数を減らし、後ろ重心で戦うこととなっていた。日本の左サイドはチリ戦から狙われ続け、杉岡としては攻撃参加したいタイミングでも、積極的に前にポジションを取ることはできなかったのかもしれない。
ピッチ上でボールを持ちながら正確な判断に基づいてプレーできるかどうか。今大会の印象で言えば、中島からは若干の危うさを感じ、久保からは将来への期待感を抱くこととなった。個人技という特長は最大限に活かし続けること、またストロングポイントを伸ばすことは当然大事ではあるが、勝利という目的を達成するためには、味方を使うプレー、相手が嫌がるプレーを選択できるかどうかが、今後に向けては重要になるだろう。
◆勝利なしという現実
忘れてはいけないのが、今大会では「勝利」を挙げられていないということだ。善戦したことがフォーカスされるが、この点から目を逸らしてはいけない。
東京オリンピック世代が中心ということは少なからず影響はあるものの、A代表としてコパ・アメリカに参加していることも事実。初戦のチリ戦こそ0-4で大敗したが、続くウルグアイ戦は終始リードしながら2-2のドロー。エクアドル戦も先制しながら追いつかれて1-1のドローに終わった。経験の少ない若い選手たちが中心のチームと考えれば、2分け1敗という結果は「よくやった」と言ってもいいのかもしれない。しかし、2度リードを追いつかれたこと、先制して追いつかれ、決定機を生かせずに引き分けたことを考えると、勝ちゲームを2つ落としているとも捉えられる。つまり、勝利を手放してしまったという事実がそこにはある。
「タラレバ」が存在しないことは百も承知だが、「あのシュートが決まっていれば」というシーンがあることも明白。そこまで相手を追い込んでいながら、決め切れないという“実力不足”が原因であるということを忘れてはいけない。よくやった、惜しかったというレベルを超えていく必要がある。
この問題から目を逸らしていれば、ロシア・ワールドカップのラウンド16・ベルギー代表戦で味わった悔しさを、今後晴らすことはできないかもしれない。本気の南米勢とはワールドカップで当たる可能性は高く、この大会で経験したことをどこまで繋げるのか。現実から目を逸らさず、課題をしっかりと、いかに克服していくかで、今大会の評価は決まるだろう。勝利に向けた南米勢のメンタルの強さ、チームとしてのベクトルを感じられたことがプラスに働いて欲しいものだ。
◆“チャレンジ”と“成長”
結果という意味では、「実力が足りていない」という現実を見せられたが、局面では相手を脅かすシーンがいくつもあった。A代表を送り込まないことで少なからず批判もあった日本代表だが、ウルグアイ、エクアドルとの戦いを見れば、批判が見当違いであったこともわかるはずだ。「よく戦えた」レベルまではいっている。あとは、永遠の課題でもある「どう勝つか」だ。
経験、成長という点では、前述の通り上田を始め、多くの選手には大きな糧にしてもらいたい。どこでどのように技術を磨くかはわからないが、必ず日の丸を再び背負うことになるはずだ。そして久保も自身では良いプレーを見せることができたが、結果に繋がらなかったことを考えると悔しさが残っているはずだ。レアル・マドリーという世界最高峰のクラブでどのようなプレーを見せるのか。トップチームデビューを果たせない逸材がたくさんいるものの、久保がピッチに立つ日が来ることを待ちたい。
その他にも、通用した部分、しなかった部分、反省すべき部分、ポジティブに捉える部分と今回のコパ・アメリカ参戦によって多くの気付きがあったはずだ。選手はもちろんのこと、森保一監督以下スタッフたちが、この経験を次のステージでしっかりと発揮できれば、今大会の狙いは成功だったと言えるだろう。
9月からはカタール・ワールドカップのアジア予選が始まる。今回の“チャレンジ”と“成長”がこの先の個人の成功に繋がるならば、このメンバーから何人かが再び日本代表に呼ばれるはずだ。激しい競争はまだ始まったばかりだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
招待国としてカタール代表とともに出場した日本だったが、1999年大会と同様に1勝もできずに去ることとなった。この20年で多くの成長が見られ、日本サッカーは発展を繰り返してきたが、足りないものは今大会でも改めて明確となった。
◆永遠の課題「決定力」

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今大会、多くの注目は18歳の久保建英(レアル・マドリー)に注がれたはずだ。大会直前に古巣のバルセロナではなく、最大のライバルにあたるレアル・マドリー(Bチーム登録)入りが決定したことで、日本だけでなく、世界からの視線を集めた。その久保は、初戦のチリ代表戦でも違いを見せるプレーを披露し、各国メディアでも称賛を受けていた。
その中で、大きな注目を集めることとなった選手がもう1人いる。それが、唯一の大学生メンバーであるFW上田綺世(法政大学)だ。コパ・アメリカの舞台で代表初キャップを記録した上田は、持ち前のポジショニングの良さや抜け出しのうまさ、相手DFとの駆け引きなど、ストロングポイントをいきなり発揮する。しかし、何度となく迎えた決定機を全て失敗。特に、シュートが枠に飛ばないことが続き、流れを引き寄せられなかった要因となってしまった。
続くウルグアイ代表戦ではベンチに座ることとなったが、途中出場を果たす。グループ最終戦のエクアドル代表戦もベンチスタートとなった。
1-1で迎えた後半、ウルグアイ戦同様に上田は途中出場する。すると、この試合でも決定機が訪れる。しかし、ここでもシュートが枠に飛ばず。後半アディショナルタイムには、途中出場のFW前田大然(松本山雅FC)がスルーパスを受けて決定的なシーンを作るも、シュートをうまく打てず。こぼれ球を拾った上田は、ボックス内からシュートを放つも、枠の遥か彼方へとボールは飛んでいった。
グループステージ3試合に途中出場を含めて全試合に出場した上田。大会のスタッツでは、「最もチャンスでミスをした選手」として上田がワースト記録を叩き出している。本人も当然感じてはいることだろうが、明らかな決定機で、シュートが枠に飛ばなかったのはストライカーとしては残念でならない。
以前のコラムでも指摘したように、シュートまでのプレーに関しては、チリ、ウルグアイ、そしてエクアドルと、どの国のディフェンダーに対しても一定のプレーを見せた。決定機を作れたということは、上田の特徴が通用しているということでもある。ただ、「決定力」が決定的に足りないことが明確になった。
この「決定力」とは、日本サッカー界の永遠の課題とも言えるもの。シュートが枠に飛ばなければ、ゴールのチャンスはほぼゼロだ。どれだけ華麗に崩しても、どれだけ相手選手の裏を突いても、どれだけGKとの一対一のシーンを作ろうとも、シュートが枠に行かなければ、ゴールは生まれないのだ。
長い期間、この「決定力不足」が事あるごとにフォーカスされてきたが、今大会ほど明確に足りていないことを痛感したことはないかもしれない。これは上田に限ったことではなく、日本の多くのストライカーに言えること。少ないチャンスを決め切る南米のストライカーとの差は痛感したはずだ。上田は、鍛え方次第ではまだまだ上手くなる伸び代があるだけに、一刻も早く高いレベル、“プロ”の世界で揉まれることをオススメしたい。“シュート”以外の部分が十分通用するだけに、足りない部分をしっかりと伸ばしてもらいたい。
◆動じないメンタルと正確な判断

Getty Images
そして、南米3カ国と本気で戦ったことで浮き彫りとなったのは、ブレないメンタルと早く正確な判断力の不足だ。
初戦のチリ戦でボランチに入ったMF中山雄太(ズヴォレ)、ウルグアイ戦とベネズエラ戦でボランチに入ったDF板倉滉(フローニンヘン)の2人がMF柴崎岳(ヘタフェ)の相棒を務めた。
中山は初戦のチリ戦で久々にボランチでプレー。試合勘のなさを露呈すると、相手の狙い所となってしまい、本人も立ち位置を見失ってしまった。柴崎がプレスをかけているタイミングで、同じようにプレスに出てポジションを空けてカウンターの餌食になったり、攻撃面でもパスミスが散見され、完全に相手に飲まれてしまった印象だ。競り合いでも狙い所となるなど、世界のレベルを突き付けられてしまった。
板倉もウルグアイ戦では立ち上がりにルーズな対応をしたことで、ルイス・スアレス(バルセロナ)にあわやのロングシュートを放たれてしまった。それに物怖じしたのか、積極的なプレーに出ることがなかなかできず、後半途中まで低調なパフォーマンスに終始した。後半は徐々に持ち味を出したが、積極性という点では苦しい試合となっただろう。
この2人はクラブチームでの出場機会が少なく、試合勘がなかったことも要因ではある。しかし、一度相手によって崩され、ペースを作られたことで、積極的なプレーを選択できなくなり、特徴を出すまでに至らなかったのだ。失点することもミスすることもピッチ上では誰しもが起こす可能性がある。しかし、相手にその隙を与えているようでは、特に南米勢はしたたかにそこを突き、とどめを刺しにくる。中山、板倉が狙い所をなっていたことは、本人たちも気付いているはずだ。
そして、判断力といえば、光るプレーも見せていたMF中島翔哉(アル・ドゥハイル)にも言えることだ。プレースピードに判断が追いついていない印象を持った。中島の特徴はドリブルであることは日本人はおろか、スカウティングした相手チームも知っていること。持ち味であり、相手をかわして強烈なシュートを放つというのが1つの形ではあるが、今大会では独善的なプレーも散見された。
アジアでの戦いであれば、中島が1人で試合を決定づけることも可能だろう。また、キリンチャレンジカップのようなホームでのフレンドリーマッチであっても、その力は発揮できるはずだ。しかし、本気の南米相手には、要所では効果的であったものの、簡単にボールをロストし、逆襲を喰らうシーンが何度も見られた。
もちろん、周りの選手のポジショニングや動き出しのタイミングなど、要因は多岐にわたるものの、その判断の誤りが散見されたからこそ、同サイドで3試合連続フル出場を果たしたDF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)は高い位置を取る回数を減らし、後ろ重心で戦うこととなっていた。日本の左サイドはチリ戦から狙われ続け、杉岡としては攻撃参加したいタイミングでも、積極的に前にポジションを取ることはできなかったのかもしれない。
ピッチ上でボールを持ちながら正確な判断に基づいてプレーできるかどうか。今大会の印象で言えば、中島からは若干の危うさを感じ、久保からは将来への期待感を抱くこととなった。個人技という特長は最大限に活かし続けること、またストロングポイントを伸ばすことは当然大事ではあるが、勝利という目的を達成するためには、味方を使うプレー、相手が嫌がるプレーを選択できるかどうかが、今後に向けては重要になるだろう。
◆勝利なしという現実

Getty Images
忘れてはいけないのが、今大会では「勝利」を挙げられていないということだ。善戦したことがフォーカスされるが、この点から目を逸らしてはいけない。
東京オリンピック世代が中心ということは少なからず影響はあるものの、A代表としてコパ・アメリカに参加していることも事実。初戦のチリ戦こそ0-4で大敗したが、続くウルグアイ戦は終始リードしながら2-2のドロー。エクアドル戦も先制しながら追いつかれて1-1のドローに終わった。経験の少ない若い選手たちが中心のチームと考えれば、2分け1敗という結果は「よくやった」と言ってもいいのかもしれない。しかし、2度リードを追いつかれたこと、先制して追いつかれ、決定機を生かせずに引き分けたことを考えると、勝ちゲームを2つ落としているとも捉えられる。つまり、勝利を手放してしまったという事実がそこにはある。
「タラレバ」が存在しないことは百も承知だが、「あのシュートが決まっていれば」というシーンがあることも明白。そこまで相手を追い込んでいながら、決め切れないという“実力不足”が原因であるということを忘れてはいけない。よくやった、惜しかったというレベルを超えていく必要がある。
この問題から目を逸らしていれば、ロシア・ワールドカップのラウンド16・ベルギー代表戦で味わった悔しさを、今後晴らすことはできないかもしれない。本気の南米勢とはワールドカップで当たる可能性は高く、この大会で経験したことをどこまで繋げるのか。現実から目を逸らさず、課題をしっかりと、いかに克服していくかで、今大会の評価は決まるだろう。勝利に向けた南米勢のメンタルの強さ、チームとしてのベクトルを感じられたことがプラスに働いて欲しいものだ。
◆“チャレンジ”と“成長”

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ネガティブな側面ばかりを書き連ねてきたが、この大会の目的を思い起こせば、ポジティブな面も大いにある。結果という意味では、「実力が足りていない」という現実を見せられたが、局面では相手を脅かすシーンがいくつもあった。A代表を送り込まないことで少なからず批判もあった日本代表だが、ウルグアイ、エクアドルとの戦いを見れば、批判が見当違いであったこともわかるはずだ。「よく戦えた」レベルまではいっている。あとは、永遠の課題でもある「どう勝つか」だ。
経験、成長という点では、前述の通り上田を始め、多くの選手には大きな糧にしてもらいたい。どこでどのように技術を磨くかはわからないが、必ず日の丸を再び背負うことになるはずだ。そして久保も自身では良いプレーを見せることができたが、結果に繋がらなかったことを考えると悔しさが残っているはずだ。レアル・マドリーという世界最高峰のクラブでどのようなプレーを見せるのか。トップチームデビューを果たせない逸材がたくさんいるものの、久保がピッチに立つ日が来ることを待ちたい。
その他にも、通用した部分、しなかった部分、反省すべき部分、ポジティブに捉える部分と今回のコパ・アメリカ参戦によって多くの気付きがあったはずだ。選手はもちろんのこと、森保一監督以下スタッフたちが、この経験を次のステージでしっかりと発揮できれば、今大会の狙いは成功だったと言えるだろう。
9月からはカタール・ワールドカップのアジア予選が始まる。今回の“チャレンジ”と“成長”がこの先の個人の成功に繋がるならば、このメンバーから何人かが再び日本代表に呼ばれるはずだ。激しい競争はまだ始まったばかりだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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まだ正式決定ではないが、森保一監督の『2年間の』続投が決まったようだ。正式には来年のJFA(日本サッカー協会)理事会での承認待ちになる。その頃にはコーチ陣などのスタッフの詳細も決定しているだろう。 93年のJリーグ誕生以降、日本代表の監督は基本的にW杯の4年サイクルで交代してきた。例外は94年のアジア大会で韓国に敗れたロベルト・ファルカン氏、97年のアウェー中央アジア2連戦で更迭された加茂周氏、07年に病に倒れたイヴィチャ・オシム氏、15年に契約解除されたハビエル・アギーレ氏、そして18年に解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ氏の5人しかいない。 そうした過去30年の歴史のなかで、初めて『続投』が決定的となったのが森保監督である。目標としていた「ベスト8」には届かなかったものの、大国ドイツとスペインに逆転勝ちを収めたことが高く評価されたことは言うまでもない。 そこで過去の歴代監督の任期を振り返ると、上には上がいるもので、長沼健氏(元JFA会長)は1962年から69年までの7年間と、さらに72年から76年までの4年間、トータル11年間も日本代表の監督を務めた。「時代が違う」と言ってしまえばそれまでだが、おそらく2度と破られることのない記録と言っていいだろう。 長沼氏が“長期政権"を担うことになったのには理由がある。64年に東京五輪があったからだ。このため62年に33歳の若さで監督に抜擢された。そして東京五輪ではグループリーグでアルゼンチンを倒して決勝トーナメントに進出。準々決勝で銀メダルに輝いたチェコスロバキアに0-4で敗れたが、ベスト8進出で日本に“第1次サッカーブーム"を巻き起こした。 さらに4年後のメキシコ五輪では、アジア勢初となる銅メダル獲得の快挙を達成。その再現を半世紀後の21年東京五輪で森保監督は期待されたが、残念ながらメダルにはあと一歩届かなかった。 長沼氏は69年のメキシコW杯アジア1次予選で、韓国とオーストラリアの後塵を拝したことで監督の座をコーチだった岡野俊一郎氏(元JFA会長)に譲る。しかし岡野氏が71年のミュンヘン五輪予選で韓国とマレーシアに負けたことで、日本サッカーの復権は再び長沼氏に託されることになった。 ところが73年の西ドイツW杯アジア予選はイスラエル(当時はアジアに所属し、中東勢が対戦を拒否したため予選は東アジアに組み込まれた)とマレーシアに敗れ、76年のモントリオール五輪アジア予選も韓国とイスラエルに敗れて監督から退くことになった。 当時の日本サッカーは、「W杯予選は負けても当たり前」であり、五輪予選で敗退するたびに監督は交代していた。Jリーグ開幕以前では、92年のバルセロナ五輪アジア最終予選で敗れた横山謙三総監督、88年ソウル五輪アジア最終予選で中国に逆転負けを喫した石井義信氏(故人)、80年モスクワ五輪アジア予選で韓国とマレーシアに及ばなかった下村幸男氏らである。 しかし96年のアトランタ五輪に28年ぶりに出場して以来、五輪出場は7大会連続して出場。その間には12年ロンドン五輪と21年東京五輪ではメダルまであと一歩に迫った。もう五輪は出場するのは当たり前で、次の24年パリ五輪は「メダル獲得」がノルマになるだろう。 同じようにW杯も98年以降7大会連続して出場中で、さらに2026年のアメリカ・カナダ・メキシコ大会は出場国が48に増えるため、出場権を失うことはまず考えられない。森保監督にとっては「ベスト8」への再チャレンジになるが、その前に横内昭展ヘッドコーチは磐田の監督に、上野優作コーチはFC岐阜の監督に転身するなどスタッフの陣容は一新せざるを得ない。 果たして新たなスタッフの顔ぶれはどうなるのか。そこに外国人コーチが入るのかどうかなどは楽しみなところ。 そして森保監督は、23年こそ秋まで親善試合しかない“静かな"一年になるものの、21年東京五輪は「金メダル」を目標に掲げながらも4位に終わり、カタールW杯も「ベスト8」が目標だったがラウンド16で敗退した。このため、まだ先の話ではあるが、24年のアジアカップでは『優勝』がW杯まで続投するためのノルマにすべきではないだろうか。 2022.12.26 22:00 Mon3
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日本サッカー協会(JFA)は2日、スペイン遠征を行う U-19日本代表のメンバーを発表した。 13日から23日までスペイン遠征を行うU-19日本代表。現地では、U-19スロバキア代表(11/17) 、U-18スペイン代表(11/19)、U-19フランス代表(11/21)と対戦する。 今回のメンバーには、レアル・マドリーのMF中井卓大が招集。また、MF松木玖生(FC東京)やDF中野伸哉(サガン鳥栖)らJ1で多くの出場機会を得た選手の他、1月にバイエルンへと移籍が決まっているMF福井太智(サガン鳥栖U-18)も招集を受けている。 また、大学生はGK木村凌也(日本大学)、DF諏訪間幸成(筑波大学)、MF熊取谷一星(明治大学)の3名が招集されている。 なお、松木、中野、福井の他にも、DF松田隼風(水戸ホーリーホック)、DF田中隼人(柏レイソル)、DF高井幸大(川崎フロンターレU-18)、MF佐野航大(ファジアーノ岡山)、MF甲田英將(名古屋グランパス)、MF北野颯太(セレッソ大阪)、FW熊田直紀(FC東京U-18)は、カタール・ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表のトレーニングパートナーとして合流する。 今回発表されたU-19日本代表メンバーは以下の通り。 ◆U-19日本代表メンバー GK 1.木村凌也(日本大学) 12.若林学歩(大宮アルディージャ) DF 13.諏訪間幸成(筑波大学) 19.西久保駿介(ジェフユナイテッド千葉) 4.菊地脩太(V・ファーレン長崎) 2.中野伸哉(サガン鳥栖)☆ 5.松田隼風(水戸ホーリーホック)☆ 15.屋敷優成(大分トリニータ) 3.田中隼人(柏レイソル)☆ 22.高井幸大(川崎フロンターレU-18)☆ MF 11.熊取谷一星(明治大学) 14.永長鷹虎(川崎フロンターレ) 8.松木玖生(FC東京)☆ 6.山根陸(横浜F・マリノス) 7.佐野航大(ファジアーノ岡山)☆ 21.甲田英將(名古屋グランパス)☆ 17.中井卓大(レアル・マドリー/スペイン)◇ 20.福井太智(サガン鳥栖U-18)☆ 10.北野颯太(セレッソ大阪)☆ 16.保田堅心.(大分トリニータU-18) FW 9.坂本一彩(ガンバ大阪) 18.熊田直紀(FC東京U-18)☆ ☆は11月22日にカタールへと移動し、日本代表のトレーニングパートナーとして活動する。12月4日に帰国 ◇は14日に現地合流、22日に現地解散 2022.11.02 16:47 Wed4
「まさに死闘ってカンジ」歴史に残るバーレーンとの4-3の激闘!2004年大会プレイバックに反響「このゴールで中澤佑二に惚れた」
31日、日本代表はアジアカップ2023のラウンド16でバーレーン代表と対戦する。 過去の対戦成績は日本の8勝2敗となっているが、アジアカップの舞台で最後に対戦したのは2004年の中国大会での準決勝。記憶に残る激闘だった。 MF小野伸二、FW高原直泰ら当時の主力選手が欠場していた当時の日本は、開催国の中国サポーターにブーイングを浴びせられながらも決勝トーナメントに進出すると、準々決勝ではPK戦途中でのサイド変更とGK川口能活の神がかり的なセーブが印象深いヨルダン代表戦に勝利し、準決勝でバーレーンと対戦した。 しかし、バーレーン戦では開始6分に先制ゴールを許すと、40分にはMF遠藤保仁が不可解な判定で一発退場。日本はビハインドの状況で数的不利を負ってしまった。 数的不利の状況でもMF中田浩二とFW玉田圭司のゴールで逆転した日本だったが、その後2失点。2-3と1点ビハインドで試合終盤を迎えた。 それでも日本は最後まで諦めず。DFも攻めあがって同点ゴールを狙うと、90分にDF中澤佑二が値千金の同点ゴール。不屈の精神で同点に追いつくと、延長前半には玉田の独走ゴールが決まり、4-3で激闘を制していた。 なんとか決勝に進出した日本は、決勝で中国代表を撃破。見事に大会連覇を成し遂げていた。 久しぶりの対戦を前に『DAZN』は当時の試合映像をプレイバック。SNS上のファンも「このゴールで中澤佑二に惚れた」、「バーレーン戦といえばこの試合よな」、「痺れたね、玉田」、「まさに「死闘」ってカンジだった!」、「2004の大会は激熱だった」と当時を思い返している。 ベスト8を懸けた一戦は、31日の20時30分にキックオフ。『DAZN』で視聴が可能だ。 <span class="paragraph-title">【動画】当時の記憶が蘇る!2004年大会でのバーレーンとの激闘ハイライト</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet" data-media-max-width="560"><p lang="ja" dir="ltr">/<br>「バーレーンvs日本」<br>過去対戦をプレイバック<br>\<br><br>アジアカップ2004年大会で起きた<br>奇跡の大逆転劇<br><br><a href="https://twitter.com/hashtag/AFC%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#AFCアジアカップ</a> ラウンド16<br>バーレーン×日本<br>1/31(水)20:30(19:45配信開始)<br><a href="https://twitter.com/hashtag/DAZN?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#DAZN</a> 独占配信<br>出演:水沼貴史/小野伸二/佐藤寿人/下田恒幸/桑原学 <a href="https://t.co/x7Sals8iKu">pic.twitter.com/x7Sals8iKu</a></p>— DAZN Japan (@DAZN_JPN) <a href="https://twitter.com/DAZN_JPN/status/1752609401201189348?ref_src=twsrc%5Etfw">January 31, 2024</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2024.01.31 18:45 Wed5
