ゼロックス杯とちばぎんカップのレフェリングについて/六川亨の日本サッカー見聞録
2019.02.19 11:00 Tue
先週の週末は、16日のゼロックススーパーカップの川崎F対浦和戦、翌17日はちばぎんカップの柏対千葉戦を取材した。ゼロックス杯はチームの完成度の違いと新戦力のレアンドロ・ダミアンの決勝点で1-0の僅差ながら川崎Fが完勝。浦和は負傷中の武藤雄樹と青木拓矢の不在をオリベイラ監督は敗因の1つとしてあげていた。それはそれで頷けたものだ。
この試合では、前半27分、浦和のマウリシオが自陣ペナルティーエリア外で、ヘッドでクリアしようとしたところ、川崎Fのレアンドロ・ダミアンが遅れて競りに行き、頭同士が激突すると、家本レフェリーはすぐに笛を吹いて試合を止めた。
このジャッジを見て思い出したのが、2月12日に行われたレフェリングカンファレンスでのトピックだった。今シーズンのレフェリングのスタンダードを説明するカンファレンスで、主な趣旨はハンドとオフサイドについてだった。
1月にUAEで開催されたアジアカップでは、VAR判定によりペナルティーエリア内で手に当たったケースはほぼPKというジャッジが下された。しかし2019年のJリーグでは、至近距離からの避けようのないシュートが手に当たった場合のハンドはPKではないと判断すること。しかし手を上げて空中戦を競りに行ったり、シュートブロックに行ったりした場合はハンドと認定する基準を示した。
その判断基準として「ハンドは選手にハンドする意図があるかどうか」が示された。手を上げること自体、ハンドする意図があるとの判断だ。そしてオフサイドは、「選手の意図ではなく、オフサイドポジションにいる選手が結果的に相手GKやDFなどにゴールと直結する影響を及ぼしたかどうか」で判断するという。
家本氏いわく、「ルーズボールの競り合い、負けているチーム、途中出場の選手はテンションが高く、特に外国人はその傾向が強いため、ラフプレーが予測されます」と解説した。
その後、飯田レフェリーは4月21日の第9節・G大阪対C大阪の試合を紹介した。この試合は、G大阪のGK東口順昭とDF三浦弦太が前半16分に浮き球をクリアしようとして味方同士で激突。その際に三浦の頭部が東口の右頬付近に入り、三浦は倒れ込んだまま。しかし試合はC大阪がこぼれ球を拾って攻め続けたため、東口は起き上がってゴール前に戻り、柿谷曜一朗のヘッドを防いでから再びピッチに倒れ込んだ。
東口は交代を余儀なくされ、診断の結果、頬骨の骨折が判明。幸いにもロシアW杯には間に合ったが、一歩間違えば選手生命を絶たれかねない大事故につながった可能性もある。
そのジャッジに関して飯田レフェリーは、「東口と三浦の激突はわかっていましたが、ボール保持者がドリブルしたので、プレーを止めるにも止められなかった」と正直に話した。
こうした背景があったからこそ、ゼロックス杯の家本レフェリーはマウリシオとレアンドロ・ダミアンが激突した際に、アドバンテージは取らず、すぐに笛を吹いて試合を止めたのではないだろうか。これは賢明な判断として今シーズンのスタンダードにして欲しい。
その点、残念だったのがちばぎんカップでの上村主審だ。2-2で迎えた後半44分、後方からのハイクロスに柏の長身FWオルンガがDFと競りつつボールを見ながら落下点に入ろうとしたところ、ペナルティーエリアから飛び出してきた千葉GK佐藤優也がトップスピードのまま激突。オルンガは倒れたままで、駆け寄ったチームメイトはすぐさまベンチに向かい両手で×印を示した。
千葉はファン・エスナイデル監督のもと、高い守備ラインを採用しているため、GK佐藤も果敢にペナルティーエリアから飛び出してピンチを未然に防いでいた。しかし。このシーンでは明らかに遅れてタックルに行っているし、そもそもPSMでこれほど危険なプレーをする必要があるのかどうかも疑問に思った。
本来なら一発レッドで退場もののプレーなのに、GK佐藤への処分は警告。その後、PK戦で6人目のシュートをストップしたため試合のMVPにも選ばれている。こうしたプレーを許していては、いつまたGK佐藤が危険なプレーをするとも限らない。これは佐藤にとっても、対戦相手にとっても“不幸な出来事”につながるだろう。
試合をコントロールするのはレフェリーだし、彼らの存在なしで試合は成立しない。その意味でも、上村レフェリーは1級審判だが、選手生命を守るためのジャッジの情報共有が急務だと感じたちばぎんカップだった。
※公開時に「本来なら一発レッドで退場もののプレーなのに、GK佐藤は警告すら受けておらず」と記載しておりましたが、内容に誤りがございました。心より深くお詫び申し上げます。
この試合では、前半27分、浦和のマウリシオが自陣ペナルティーエリア外で、ヘッドでクリアしようとしたところ、川崎Fのレアンドロ・ダミアンが遅れて競りに行き、頭同士が激突すると、家本レフェリーはすぐに笛を吹いて試合を止めた。
このジャッジを見て思い出したのが、2月12日に行われたレフェリングカンファレンスでのトピックだった。今シーズンのレフェリングのスタンダードを説明するカンファレンスで、主な趣旨はハンドとオフサイドについてだった。
その判断基準として「ハンドは選手にハンドする意図があるかどうか」が示された。手を上げること自体、ハンドする意図があるとの判断だ。そしてオフサイドは、「選手の意図ではなく、オフサイドポジションにいる選手が結果的に相手GKやDFなどにゴールと直結する影響を及ぼしたかどうか」で判断するという。
そしてカンファレンスにオブザーバーとして参加したレフェリーは、昨シーズンのジャッジした試合から印象に残る試合を解説した。先に名前を出した家本レフェリーは昨シーズンの第29節、神戸対長崎戦(1-1)で、神戸のティーラトンに「著しく不正なプレー」でレッドカードを出した。
家本氏いわく、「ルーズボールの競り合い、負けているチーム、途中出場の選手はテンションが高く、特に外国人はその傾向が強いため、ラフプレーが予測されます」と解説した。
その後、飯田レフェリーは4月21日の第9節・G大阪対C大阪の試合を紹介した。この試合は、G大阪のGK東口順昭とDF三浦弦太が前半16分に浮き球をクリアしようとして味方同士で激突。その際に三浦の頭部が東口の右頬付近に入り、三浦は倒れ込んだまま。しかし試合はC大阪がこぼれ球を拾って攻め続けたため、東口は起き上がってゴール前に戻り、柿谷曜一朗のヘッドを防いでから再びピッチに倒れ込んだ。
東口は交代を余儀なくされ、診断の結果、頬骨の骨折が判明。幸いにもロシアW杯には間に合ったが、一歩間違えば選手生命を絶たれかねない大事故につながった可能性もある。
そのジャッジに関して飯田レフェリーは、「東口と三浦の激突はわかっていましたが、ボール保持者がドリブルしたので、プレーを止めるにも止められなかった」と正直に話した。
こうした背景があったからこそ、ゼロックス杯の家本レフェリーはマウリシオとレアンドロ・ダミアンが激突した際に、アドバンテージは取らず、すぐに笛を吹いて試合を止めたのではないだろうか。これは賢明な判断として今シーズンのスタンダードにして欲しい。
その点、残念だったのがちばぎんカップでの上村主審だ。2-2で迎えた後半44分、後方からのハイクロスに柏の長身FWオルンガがDFと競りつつボールを見ながら落下点に入ろうとしたところ、ペナルティーエリアから飛び出してきた千葉GK佐藤優也がトップスピードのまま激突。オルンガは倒れたままで、駆け寄ったチームメイトはすぐさまベンチに向かい両手で×印を示した。
千葉はファン・エスナイデル監督のもと、高い守備ラインを採用しているため、GK佐藤も果敢にペナルティーエリアから飛び出してピンチを未然に防いでいた。しかし。このシーンでは明らかに遅れてタックルに行っているし、そもそもPSMでこれほど危険なプレーをする必要があるのかどうかも疑問に思った。
本来なら一発レッドで退場もののプレーなのに、GK佐藤への処分は警告。その後、PK戦で6人目のシュートをストップしたため試合のMVPにも選ばれている。こうしたプレーを許していては、いつまたGK佐藤が危険なプレーをするとも限らない。これは佐藤にとっても、対戦相手にとっても“不幸な出来事”につながるだろう。
試合をコントロールするのはレフェリーだし、彼らの存在なしで試合は成立しない。その意味でも、上村レフェリーは1級審判だが、選手生命を守るためのジャッジの情報共有が急務だと感じたちばぎんカップだった。
※公開時に「本来なら一発レッドで退場もののプレーなのに、GK佐藤は警告すら受けておらず」と記載しておりましたが、内容に誤りがございました。心より深くお詫び申し上げます。
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