Jの外国人枠拡大/六川亨の日本サッカーの歩み

2019.02.07 19:30 Thu
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アジアカップの取材から帰国したのが2月4日、そして6日からはJリーグの取材のため沖縄に滞在している。昨日はG大阪対FC東京の練習試合を取材した。試合は45分×3本で、両チームとも選手を積極的に代えながら、2月23日に向けた開幕へチーム作りの試行錯誤を繰り返していた。

試合は最初の45分×2本が両チームとも主力組をベースにしたチーム編成で、結果は4-2でFC東京が勝利を収め、3本目はサブ組主体で1-1の引き分けに終わった。
今シーズンからJ1リーグは外国籍選手の登録枠と出場枠を『3』から『5』に拡大した。このためG大阪はスタメンにDFキム・ヨングォンとオ・ジェソク、FWにファン・ウィジョとアデミウソン(ブラジル)の4選手を起用した。このうち韓国人選手の1人はアジア枠として外国籍選手として扱わないため、最大で登録枠と出場枠はさらにもう2枠増やすことができる。

一方、FC東京がスタメンで起用した外国籍選手はディエゴオリヴェイラ(ブラジル)1人だけだったが、途中からチャン・ヒョンスと新加入選手のイ・サンホを起用。さらに3本目では新加入のナッタウット・スタム、アルトゥール・シルヴァ(ブラジル)、ユ・インスの3人を起用した。トータルで6人の外国籍選手となるが、ナッタウット(タイ)はJリーグ提携国枠の選手として、韓国人選手の1人(例えばチャン・ヒョンス)はアジア枠のため、こちらも2枠の追加が可能だ。

こうした例はG大阪やFC東京に限った話ではなく、外国籍選手の出場枠拡大をどのチームも積極的に活用することだろう。彼ら外国籍選手の起用方法も今シーズンは監督の『腕の見せどころ』となってくるかもしれない。
そんな外国籍選手の活用にアジア枠と提携国枠を積極的に活用せず、純粋に戦力を補強したのが神戸だ。アジア枠はGKのキム・スンギュだけ。残りの4選手、ダビド・ビジャとアンドレス・イニエスタはスペイン、ウエスクレイとウェリントンはブラジル、そしてルーカス・ポドルスキはドイツといった具合に実力と実績を兼ね備えた補強を敢行した。

できれば神戸には、“先行投資”に見合う“結果”を残して欲しいと思っている。神戸が成功を収めれば、投資に“二の足”を踏んでいるチームも考え方を改めるかもしれないからだ。くれぐれもC大阪の二の舞にはならないことを祈るばかりでもある。

さてJリーグがこれまで外国人枠を3人に制限してきたのは、自国選手の育成が目的だった。しかし、J1リーグで活躍した韓国人選手やブラジル人選手は潤沢なオイルマネーやチャイナマネーから中東と中国へ移籍し、日本人選手の若手有望株もここ1~2年でその多くがヨーロッパへ移籍した。必然的にJリーグ全体のレベルは下がる。

実際、FC東京に加入したイ・サンホは、「自分はイングランドのクラブに行きたいので、そのステップアップのために日本に来た」と公言してはばからない。それはいま現在も活躍中の、多くの韓国人選手の気持ちを代弁しているのだろう。

ヨーロッパの主要リーグもEU枠の選手は外国人扱いしないことでグローバル化し、互いに刺激し合ってレベルアップにつながった。Jリーグも同じ道をたどることができるのか。短期間で成果が出るとは思えないので、ここは中長期的に日本のレベルアップに期待するとしよう。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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