リベリーノのFKを田口が再現/六川亨の日本サッカーの歩み

2018.12.11 12:30 Tue
©︎J.LEAGUE
▽12月9日に行われた第98回の天皇杯決勝は、浦和レッズがベガルタ仙台を1-0で下して第86回大会以来、12大会ぶり7度目(前身の三菱時代を含む)の優勝を果たした。決勝点は前半13分、右ショートコーナーからのクリアを宇賀神が右足ボレーで決めて奪取。アウトサイドにかけたシュートは曲がりながら落ちる見事な一撃で、日本代表GKシュミット・ダニエルもノーチャンスの鮮やかな一撃だった。

▽その前日にはヤマハスタジアムでのJ1参入プレーオフ決定戦、ジュビロ磐田対東京ヴェルディを取材。試合は磐田がPKとFKから2点を奪い、J1残留を果たした。順当な結果とも言えるし、毎年のように主力選手をシーズンオフに引き抜かれる東京Vにしては、よく決定戦まで勝ち上がったと言ってもいいのではないだろうか。

▽残念ながら11年ぶりのJ1復帰は果たせなかったが、11年前とは事情が違うので致し方ないのかもしれない。東京Vは2005年にJ1で17位となりJ2へ降格した。06年シーズンはラモス瑠偉氏を監督に迎えたものの7位に沈む。
▽そこでチーム関係者は、クラブの“顔”とも言えるラモス監督に泥を塗ることはできないと判断し、出した結論は「監督が何もしなくてもJ1に昇格できるチーム作り」として大型補強に乗り出した。

▽その後ブラジル代表として活躍することになるフッキとディエゴの外国人助っ人に加え、名波、服部、土屋らJリーグで実績十分の選手を獲得。その効果もあり07年は開幕から4勝1分けで順調な滑り出しを見せた。
▽しかし第7節からワーストタイの7連敗を喫し、ラモス監督の解任説も流れたが、その後は立て直し、リーグ終盤は16試合負けなしで2位を確保。フッキが37ゴールで得点王に輝くなどしてJ1昇格を果たした(翌年ラモス氏はエグゼクティブダイレクターに就任し、柱谷哲二氏が監督に就任も、チームはJ2に降格)。

▽新たなスポンサーを獲得したとはいえ、東京Vは往時のような大型補強は望むべくもないだろう。それでも“身の丈”に合ったクラブ経営と、選手育成でかつての黄金時代を取り戻して欲しいと願うファンは多いに違いない。

▽話を参入プレーオフ決定戦に戻すと、2点目となった田口のFKを紹介したい。ゴール前やや右24メートルだっただろうか。壁を作った東京VのDF陣の間に2人の磐田選手が割って入った。そして田口のシュートは、壁の間に入った2人の選手が屈んだ空間を通過し、GKの手前でワンバンドして左スミに決まった。

▽壁の間の味方のスペースを通過してゴールを初めて決めたのは、1974年の西ドイツW杯でブラジル代表のMFリベリーノが初めてだったと記憶している。前回大会で引退したペレの背番号10を受け継いだリベリーノは、2次リーグの東ドイツ戦で6人の壁に割って入ったFWジャイルジーニョが屈んだ隙間を通して決勝点を決めた。神業とも言えるゴールだった。

▽あれから4半世紀、同じスーパーゴールを見ることができて、興奮もした。ところが試合後の田口は「いつも味方を立たせてGKからに見にくくさせるのをやっていましたし、壁の間を狙って練習していました。狙い通りです」とスーパーゴールにも冷静だった。

▽このゴールを初めて決めたリベリーノについても「知りません」と素っ気ない返事。それよりも「チーム全員で必ず残留を決める。チームで一丸となって、強い気持ちで1週間練習してきた結果だと思います」と、自身のゴールよりJ1残留に力を込めていた。

▽それでもスーパーゴールに変わりはないし、J1に残留したことで、また同じゴールを見られるかもしれない。そして対戦相手は壁の作り方を工夫した方がいいだろう。

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