【六川亨の日本サッカー見聞録】池田3兄弟の長男は日本人初のフィジコ

2018.04.26 20:00 Thu
Getty Images
▽昨日25日はJ1リーグのFC東京対広島戦を取材した。首位の広島のサッカーに興味があったし、広島の城福浩監督と池田誠剛フィジカルコーチは、かつてFC東京在籍時に取材でお世話になったため、お礼をしたかったからだ。

▽試合はディエゴオリヴェイラの2ゴール1アシストの活躍により、FC東京が3-1と快勝して広島に今シーズン初黒星をつけた。広島もパトリックを軸に後半は反撃に転じ、25分過ぎからはFC東京を圧倒したものの、1点を返すのが精一杯だった。試合前、池田フィジコが「核となる選手が少ない」と漏らしたように、選手の個の力の差が出た試合でもあった。

▽さて池田フィジコである。日本人フィジコの第1号でもある彼は、浦和ルーテル学院から早稲田大に進学。卒業後は古河でプレーしたが、膝を壊してJリーグが開幕する前の91年に現役を引退した。その後はジェフユナイテッド市原(現・千葉)のトレーナーに就任。そんな彼の転機になったのが、94年のアメリカW杯だった。
▽単身アメリカに渡り、ブラジル代表と直談判して帯同の許可をもらい、フィジカルコーチの仕事をつぶさに見た。この2ヶ月間のブラジル代表との研修で、彼の将来は大きく変わる。それまでJリーグのフィジコといえばブラジル人が占めていたが、日本人フィジコの誕生としてパイオニアになった。

▽その後は岡田武史監督率いる横浜FMでリーグ連覇に貢献し、洪明甫監督の下ではU-23韓国代表のフィジコとして12年のロンドン五輪では銅メダル獲得。13年は1年間の期間限定だが、洪明甫監督の了解を得て、岡田監督が就任した中国Cリーグの杭州緑城のフィジコに就任。そして14年は韓国代表のフィジコとして洪明甫監督をサポートした。
▽日本のライバルである韓国代表のフィジコを務める池田氏を敵視する意見もネットでは散見されたが、本人は意に介さない。そんなアジアの3カ国でフィジコを務めた池田氏は「日本は環境の良さが選手の自主性につながっている。韓国は強制的な指導のため自主性に欠けるが、辛い練習にも耐えられる。そして中国は個の発想が強く、チームのためにという価値観に乏しい」と分析する。3カ国で指導経験のある池田氏ならではの国民性の違いだ。

▽16年は早稲田大サッカー部の同期である城福監督に誘われFC東京のフィジコに就任したものの、城福監督が不振の責任を問われて解任されると池田氏もチームを去る。当時はACLと並行してのリーグ戦だったため、「過密日程ではフィジカルを上げるよりコンディションの維持に務めた。(ACL敗退で)これからフィジカルの強化に取り組める」と話した矢先の解任だった。

▽古巣に今シーズン初黒星を喫したものの、まだ首位は変わらない。池田フィジコの本領が発揮されるのは夏場と予想しているので、W杯後のリーグ再開が楽しみだ。

▽ちなみに池田フィジコの次男である直人氏は、武南高校で全国制覇を達成し、早稲田大を経て全日空(横浜Fの前身)でプレー。現在は同社の社員として働いている。そして三男の伸康氏は帝京高校で高校総体ベスト4、兄と同じく早稲田大を経て93年に浦和に入団。現在はトップチームのコーチを務めている。浦和で「池田三兄弟」と言えば、オールドファンならすぐに思い出すはずだ(その前には西野三兄弟も話題になったが、長男の朗氏“現・日本代表監督”ほど次男と三男は活躍できなかった)。

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