【日本サッカー見聞録】ハリルホジッチ監督の深謀遠慮
2016.08.25 22:30 Thu
▽2018ロシアW杯のアジア最終予選、9月1日のUAE戦と5日のタイ戦に臨む日本代表24名が8月25日に発表された。今回の発表でのサプライズは次の3点と言える。まず、これまで所属チームで出番がなかったり、所属チームそのものがなかったりしたGK川島を、「手元においてコンディションを見てみたい」とケガをのぞいて招集してきたが、今回は「先発に入れなければ」正GK争いの競争には加われないと突き放したこと。
▽そして、その理由を「W杯予選はたくさんのことを考慮しないといけない。ケガ人も予想しないといけない。この選手も予想の一環で、W杯予選はリスクを冒せない。ロシアに行くには予測もカギになる。(ケガ人に)驚いているようではロシアに行けない」と、しれっとした顔で語っていた。
▽この言葉を聞いて、「このおっさんはヤルな」と感じずにはいられなかった。たぶん、「前は年齢を理由に大久保の招集を見送ったのに、なんで中村憲は呼ぶんだ。選手の選考基準に一貫性がない」と突っ込んでも、平然とした顔で「あの時とは状況が違う」とはねのけるだろう。日本人にありがちな、自分の発した言葉に縛られないしたたかさと、最終予選にはかなりの危機感を抱いていることが伺われた。
▽そして最後は金崎夢生への厳しい態度だ。こちらは100パーセント金崎に非がある。自業自得とも言えるが、もしもこれが日本人監督だったら、金崎の「か」の字も言わずにスルーしていたのではないだろうか。それを、敢えて問題提起したところにハリルホジッチ監督の日本サッカーに対する愛情と、理解度の深さを感じた。
▽就任当初はことさら規律に厳しかった。それは、これまで歴任してきたアフリカでの経験が招いたものだろうと推測した。日本人のメンタリティーなら言わなくてもいいことだと違和感も覚えた。そうして1年が過ぎ、ようやく彼も日本人の「言われたことは従順に守る」メンタリティーを理解したのではないだろうか。
▽それでも金崎の湘南戦での態度に言及したことは、新たな問題提起につながって欲しい。なぜなら審判に対して同様の抗議をすればペナルティが科されると思うが、監督に対してはどういう裁定になるのか前例がないからだ。クラブが独自にペナルティを科すのか。いずれにせよ、マスコミ不信と言われる金崎だが、いくら激高しても監督に詰め寄る態度は許されるものではない。せっかくの才能を持ちながらセルフコントロールできないのは残念でならない。あとは、いかにして誰が、どういう形で金崎に救済の手を差し伸べるのか。ハリルホジッチ監督が問題を提起した鹿島とJリーグの判断を待ちたい。
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▽過去2度のW杯に出場した守護神も33歳を迎えた。体力的な衰えは練習でカバーできたとしても、試合勘の鈍りは否定できないだろう。移籍先のFCメスは公式ホームページで川島を「第3GK」と公表しているだけに、代表への返り咲きは国内復帰も視野に入れて、まずはスタメン確保が最低条件となりそうだ。▽次に驚かされたのが、名前こそ出さなかったが香川と清武が負傷した場合は川崎Fの中村憲剛の招集を計画していることだ。中村憲剛をボランチではなくトップ下で使うのかという疑問は抜きにして、これまでJリーグ得点王の大久保嘉人を代表に呼ばないのかという質問に、「2年後に彼は何歳になっていますか?」と頑なまでに拒否していたのに、「私が見てきた中でも使いたい選手」と、あっさりとこれまでの発言を撤回した。▽この言葉を聞いて、「このおっさんはヤルな」と感じずにはいられなかった。たぶん、「前は年齢を理由に大久保の招集を見送ったのに、なんで中村憲は呼ぶんだ。選手の選考基準に一貫性がない」と突っ込んでも、平然とした顔で「あの時とは状況が違う」とはねのけるだろう。日本人にありがちな、自分の発した言葉に縛られないしたたかさと、最終予選にはかなりの危機感を抱いていることが伺われた。
▽そんなハリルホジッチ監督のことだから、例え最終予選で中村憲が活躍してW杯出場を決めたとしても、本大会に臨む23名からは年齢を理由に外しかねない。彼には“功労者”をリスペクトするという発想より、W杯では「いかにグループリーグを突破して決勝トーナメントに進むか」と目標を切り替えていることだろう。この切り替えの速さ、ドライさは川島へのコメントでも想像できる。
▽そして最後は金崎夢生への厳しい態度だ。こちらは100パーセント金崎に非がある。自業自得とも言えるが、もしもこれが日本人監督だったら、金崎の「か」の字も言わずにスルーしていたのではないだろうか。それを、敢えて問題提起したところにハリルホジッチ監督の日本サッカーに対する愛情と、理解度の深さを感じた。
▽就任当初はことさら規律に厳しかった。それは、これまで歴任してきたアフリカでの経験が招いたものだろうと推測した。日本人のメンタリティーなら言わなくてもいいことだと違和感も覚えた。そうして1年が過ぎ、ようやく彼も日本人の「言われたことは従順に守る」メンタリティーを理解したのではないだろうか。
▽それでも金崎の湘南戦での態度に言及したことは、新たな問題提起につながって欲しい。なぜなら審判に対して同様の抗議をすればペナルティが科されると思うが、監督に対してはどういう裁定になるのか前例がないからだ。クラブが独自にペナルティを科すのか。いずれにせよ、マスコミ不信と言われる金崎だが、いくら激高しても監督に詰め寄る態度は許されるものではない。せっかくの才能を持ちながらセルフコントロールできないのは残念でならない。あとは、いかにして誰が、どういう形で金崎に救済の手を差し伸べるのか。ハリルホジッチ監督が問題を提起した鹿島とJリーグの判断を待ちたい。
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