【原ゆみこのマドリッド】もうプレシーズンも終わる…
2016.08.16 12:30 Tue
▽「泣いちゃう程、嬉しかったんだ」。そんな風に私が驚いていたのは月曜日、サンティアゴ・ベルナベウでの入団プレゼンの壇上でモラタが涙している映像を見た時のことでした。いやあ、実際、その日は新聞を読んだのが遅くて、気づいた時にはすでにイベントが始まっていたため、私は現場に足を運べなかったんですけどね。この夏の新戦力はモナコへのレンタル移籍から戻ったものの、現在、ケガのリハビリ中で10月までは出て来られないコエントランを除けば、ユベントスから買い戻された彼とエスパニョールで1年修行してきたアセンシオの2人しかいないため、火曜のサンティアゴ・ベルナベウ杯前にチャチャッと紹介を済ませるものと思い込んでいた私も甘かった?
▽え、ライバルのバルサがデニス・スアレス(ビジャレアルから移籍)、アンゴレ・ゴメス(同バレンシア)、ウムティティ(同リヨン)、ディーニェ(PSG)とギャラクティコ級とは言えなくとも実力派の選手たちを着々と獲得して、プレゼンを繰り広げていた手前、それでは天下のレアル・マドリーの恰好がつかないからだろうって?うーん、クラブの意図はともかく、やはりカンテラーノ(ユース組織出身の選手)だけあって、パルコ(貴賓席)前特設ステージは作ってもらなかったものの、あまたのスター選手同様、ペレス会長直々にプレゼンしてもらえたのには気持ちを抑えられなかったのでしょうか。この度、5年契約を結んだモラタは「han sido dos años largos y una larga espera para volver/アン・シードー・ドス・アーニョス・ラルゴス・イ・ウナ・ラルガ・エスペラ・アラ・ボルベル(長い2年だったし、戻るために長いこと待った)」と感無量の様子。
▽幸い、マルカ(スポーツ紙)のウェブページでのライブビデオで見られたピッチでのお披露目映像では丁度、月曜はAsunción de la Virgen(アスンシオン・デ・ラ・ビルヘン/聖母被昇天)の祝日だったこともあって、スタジアムのスタンドには暑さをモノとせずに3000人余りのファンが駆けつけてくれましたしね。ここまで先発したプレシーズンの2試合、バイエルン戦とUEFAスーパーカップのセビージャ戦ではまだゴールを挙げられていない彼とはいえ、十分、戦力として期待されている?
▽ちなみに「La 'BBC' es de otro mundo/ラ・ベーベーセー・エス・デ・オトロ・ムンド(BBCは別の世界の選手たち)」と素直にクリスチアーノ・ロナウドやベイル、ベンゼマとの差を認めているモラタですが、「でもボクもチームの力になるし、ゴールを沢山入れたい。自分のことあけ考えるんだったら、テニスかチェスをやっていたよ」と意気込みは相当なよう。
▽となると、セビージャ戦直前にチームに合流したベイルはもうプレーできるようですが、月曜にはまたジムでのリハビリに戻ってしまったベンゼマが温存されそうな火曜のサンティアゴ・ベルナベウ杯はジダン監督にアピールするまたとないチャンス。まあ、相手は今季からリーガ2でプレーするスタッド・ランスですけどね。ここでユベントスでの2年間とユーロ大会のスペイン代表で見せた決定力は偶然ではなかったことを証明できれば、まだヒザのリハビリ中のロナウドの準備が整わない日曜のリーガ開幕戦、アノエタでのレアル・ソシエダ戦でもスタメンをゲットできる可能性が高まるかと。そんなサンティアゴ・ベルナベウ杯は火曜午後10時半(日本時間翌午前5時半)にキックオフ。すでに今季はUEFAスーパーカップのタイトルも獲得しましたし、2012年以来、ご無沙汰しているリーガ優勝を目指すのに弾みがつくような試合になってくれるといいですね。
▽いえ、まさかここ2年、通算10回もあの巨大なカランサ杯トロフィーを続けて持ち帰っているせいで、もうクラブの博物館に展示場所がないから、ウンデシマ(11回目の優勝のこと)は獲ってくるなとの指令が出ていたとは思いませんけどね。金曜日、初戦の準決勝でホームチームのカディスと対戦したアトレティコはスタメンをいわゆる、suplente(スプレンテ/控え選手)組で構成。とはいえ、トップはフェルナンド・トーレス、キャプテンのガビやカラスコやアウグスト、ヒメネスといったメンバーも入っていたため、前半12分、ガビのFKをアウグストがヘッド、ゴールポストに当たって跳ね返ったボールをカラスコが蹴り込んで先制した時には今年も優勝は堅いだろうと、風のビュービュー吹くスタンドで見ていた私も安心していたものだったんですが…。
▽それからが最悪だったんですよ。というのも1点を取って安心したか、彼らはいつになっても追加点が奪えず。昨シーズン中も度々、見られた光景ですが、そんな中、終盤、マンキージョがケガをしたため、予定外のサウルがCBとして入ったところ、今季は2部に昇格して意気の上がっているカディスではエースのグイサがもう代わっていたというのに後半39分、敵のパスをエリア内でその彼が手に当ててPKを献上。ダビド・サンチェスに同点にされているんですから、まったくツイていないとしか言いようがありません。そして更に最悪だったのが、1-1で90分が終わった後、延長戦をすっ飛ばして突入したPK戦でした。
▽いやあ、5月のCL決勝の思い出がまだ生々しいだけに、始まる前から何だかイヤな予感はしたんですけどね。ミラノのサン・シーロでは4人目のファンフランが枠に当てて、5人全員が成功したマドリーに負けたんですが、どうやら親善試合モードのアトレティコはPK戦で昔のダメダメ状態に戻ってしまったよう。ええ、先陣を切ったトーレスからGKシフエンテスに止められてしまい、ガビ、サウルは成功させたものの、4人目のカラスコはシュートをバーに当ててしまう始末。対するカディスの4人目も同様の運命をたどったものの、その日、アトレティコのGKを務めたベルナベは先日、第2GKモヤがヒザの関節鏡手術を受け、2カ月間プレーできないながら、トップチームにはまだ昇格させてもらえないカンテラーノですからね。5人目のヒメネスがまたシフエンテに止められなくても、おそらく奇跡は起きなかったんじゃないでしょうか。
▽結局、PK戦3-2で負けたアトレティコは、あまりの強風に寒くなりすぎて、私がハーフタイムまでしか耐えられなかった、もう1つの準決勝でマラガに4-1と大敗したナイジェリア・オールスターズと翌日の3位決定戦を行うことに。ただねえ、前日とはメンバーを一新、仮想titular(ティトゥラル/レギュラー)組が先発したこの試合も彼らは前半33分にガイタンが敵GKミスを誘って1点を挙げたものの、とりとめのなさでは大差なし。
▽ええ、マルカのレポートなどでは「El Atlético fue al partido con la motivación del que va a su entierro. Hasta vestía de negro, dicho sea de paso/エル・アトレティコ・フエ・アル・パルティードー・コン・ラ・モティバシオン・デル・ケ・バ・ア・ス・エンティエロ。アスタ・ベスティア・デ・ネグロ、ディッチョー・セア・デ・パソ(アトレティコは埋葬に向かうようなモチベーションで試合に挑んだ。ついでに言うと、喪服まで着て)」なんて書かれてしまっていたんですけどね。とりわけ1点リードした後など、期待のアトレティコデビューを果たしたガメイロもセビージャ時代とは別人のようで、その日も突風に吹かれながら、人影もまばらなスタンドに辛抱強く座り、黒の第2ユニフォームでプレーする彼らを眺めていた私にもまあ、そう言いたくなる気持ちはわかりますって。
▽そしてまた悲劇は終盤に起こりました。ナイジェリアの有望選手を連れて、ここ1週間、スペインで親善試合ツアーをしている相手だけに、特に知られた選手がいる訳ではないんですが、後半41分には自陣からロングパスを通され、バシルがGKオブラクとの1対1を制してゴールを挙げてしまったから、さあ大変!2日連続でPK戦なんてたまらないと頭を抱えたものでしたが、それは選手たちも同じだったんでしょうね。その2分後、コケのCKからゴディンが頭で決める定番パターンで勝ち越してくれたから、助かったの何のって。うーん、その日は選手を1人も交代させなかったシメオネ監督もどうかとは思いますけどね。ナイジェリアに2-1で勝っても、こんな調子じゃ、開幕に向けて前向きにはなれるファンは少ないんじゃないでしょうか。
▽え、それよりカディス戦ではCBで使われたサウルを、「Casi no, he jugado de delantero/カシー・ノー、エ・フガードー・デ・デランテーロ(ほとんどじゃなくて、ボクはFWでプレーしたんだよ)」と当人があっけらかんと言っていたように、その日は前線に配置換えするなど苦肉の策を弄しても、一向にアトレティコの得点力が改善されてないように見える方が問題じゃないかって?うーん、まだフランス代表でユーロ決勝を戦ったグリースマンが出ていませんしね。彼は昨季からの累積警告が持ち越しで、リーガ第1節のアラベス戦にも出場停止な上、リオ五輪でアルゼンチンが敗退したアンヘル・コレアもまだ戻っていませんが、カディス戦に出たサントス・ボレはビジャレアルへのレンタル移籍が土曜に決定。
▽コロンビアから来たばかりの20歳のFWにはマルセリーノ監督の電撃解任の後、昨季はヘタフェを1部残留に導けずにスナイデル監督と代わったエスクリバ監督が就任したチームで、今週水曜にはモナコとのCLプレーオフといったビッグゲームの経験を積んでもらった方がいいとシメオネ監督は判断したか、少なくとも攻撃陣は人手不足ではないような。まだ今は、選手たちには半端じゃないフィジカルトレーニングの疲労が溜まっているという説もあるので、ここはあの重いカランサ杯トロフィーを持ち上げる体力を節約できて良かったと思っておく方がいいかと。
▽ちなみにその代わりに3人懸かりでそれを持ち上げていたのはマラガで、彼らは4度目の挑戦で初優勝なのだとか。うーん、主催のカディスも久々のチャンスに健闘したんですけどね。やはり1部チームとはレベルの差があるのか、決勝戦ではチャルレスのPKとネシリーのゴールで2点を先行され、後半28分にはアイトールのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で1点差には迫ったものの、あと1歩が及びませんでした。それにしてもカディスには2日連続で90分プレーしたDFが2人もいて、マラガもホアンピが2試合とも70分近く出てMVPを獲得するなど、この大会中、加重労働に見えた選手たちもチラホラ。公式戦ではとても考えられない光景ですが、親善試合なら大丈夫なんですかね。
▽そしてトロフィーという大荷物もなく、日月はオフをもらったせいか、試合後のアトレティコの選手たちはミニバンで思い思いの方向に散って行き、ガメイロなど、翌日は近いのを利用して、サンチェス・ピスファンでのスペイン・スーパーカップ1stレグにセビージャの応援に駆けつけていたそうですが、残念ながら、試合の方はルイス・スアレスとムニルのゴールでバルサが0-2で先勝。清武弘嗣選手もUEFAスーパーカップに続いて先発していましたが、やはりそのガメイロやバネガ(ユベントスに移籍)、クリホビアク(同PSG)らが抜けた穴を埋めることはまだできていないようです。
▽実際、この点差でCLプレーオフ1stレグが終わった後の水曜午後11時(日本時間翌午前6時)からの2ndレグ、カンプ・ノウでremontada(レモンターダ/逆転劇)を成し遂げるのはかなり難易度が高いんですが、相手は途中交代したイニエスタとマチューがケガで出場できず。GKテル・シュテーゲンがケガで3週間の離脱となっている中、ブラボにはマンチェスター・シティ移籍がチラついているなんて状況もあるため、やはり負傷者続出のセビージャにも諦めずに頑張ってもらいたいものですが、さて。いよいよこの試合が終わったら、スペインもリーガモードに突入しますね。そうそう、土曜にはマドリッドの新弟分チーム、レガネスが3-2でプレシーズン最後の親善試合でビジャレアルに競り勝ったなんて朗報もあったため、来週月曜のリーガ1部初試合のセルタ戦ではちょっと希望を持っていいかもしれませんよ。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
▽え、ライバルのバルサがデニス・スアレス(ビジャレアルから移籍)、アンゴレ・ゴメス(同バレンシア)、ウムティティ(同リヨン)、ディーニェ(PSG)とギャラクティコ級とは言えなくとも実力派の選手たちを着々と獲得して、プレゼンを繰り広げていた手前、それでは天下のレアル・マドリーの恰好がつかないからだろうって?うーん、クラブの意図はともかく、やはりカンテラーノ(ユース組織出身の選手)だけあって、パルコ(貴賓席)前特設ステージは作ってもらなかったものの、あまたのスター選手同様、ペレス会長直々にプレゼンしてもらえたのには気持ちを抑えられなかったのでしょうか。この度、5年契約を結んだモラタは「han sido dos años largos y una larga espera para volver/アン・シードー・ドス・アーニョス・ラルゴス・イ・ウナ・ラルガ・エスペラ・アラ・ボルベル(長い2年だったし、戻るために長いこと待った)」と感無量の様子。
▽幸い、マルカ(スポーツ紙)のウェブページでのライブビデオで見られたピッチでのお披露目映像では丁度、月曜はAsunción de la Virgen(アスンシオン・デ・ラ・ビルヘン/聖母被昇天)の祝日だったこともあって、スタジアムのスタンドには暑さをモノとせずに3000人余りのファンが駆けつけてくれましたしね。ここまで先発したプレシーズンの2試合、バイエルン戦とUEFAスーパーカップのセビージャ戦ではまだゴールを挙げられていない彼とはいえ、十分、戦力として期待されている?
▽となると、セビージャ戦直前にチームに合流したベイルはもうプレーできるようですが、月曜にはまたジムでのリハビリに戻ってしまったベンゼマが温存されそうな火曜のサンティアゴ・ベルナベウ杯はジダン監督にアピールするまたとないチャンス。まあ、相手は今季からリーガ2でプレーするスタッド・ランスですけどね。ここでユベントスでの2年間とユーロ大会のスペイン代表で見せた決定力は偶然ではなかったことを証明できれば、まだヒザのリハビリ中のロナウドの準備が整わない日曜のリーガ開幕戦、アノエタでのレアル・ソシエダ戦でもスタメンをゲットできる可能性が高まるかと。そんなサンティアゴ・ベルナベウ杯は火曜午後10時半(日本時間翌午前5時半)にキックオフ。すでに今季はUEFAスーパーカップのタイトルも獲得しましたし、2012年以来、ご無沙汰しているリーガ優勝を目指すのに弾みがつくような試合になってくれるといいですね。
▽一方、この週末、お隣さんは何をしていたのかというと。はい、今年もこの時期、恒例のカランサ杯(カディス主催の夏の伝統ある親善トーナメント)に参加していましたよ。おかげで私も3年連続、昼間は海水浴三昧、夜は試合観戦という贅沢を楽しみにカディス(スペイン南西部のビーチリゾート都市)に出かけていたんですが、いえ、相変わらず、サラサラの白い砂浜があって、家族連れでもカップルでもお一人様でもリラックスできる旧市街の外れにあるビーチが最高だったのは言うまでもないんですけどね。mercado(メルカードー/市場)では格安値段でパエジャ(スペインの米料理)やペスカイート(アンダルシア地方の郷土料理、魚のカラ揚げ)なども食べられて、そういう点では大満足だったんですが、肝心のチームの方がねえ。
▽いえ、まさかここ2年、通算10回もあの巨大なカランサ杯トロフィーを続けて持ち帰っているせいで、もうクラブの博物館に展示場所がないから、ウンデシマ(11回目の優勝のこと)は獲ってくるなとの指令が出ていたとは思いませんけどね。金曜日、初戦の準決勝でホームチームのカディスと対戦したアトレティコはスタメンをいわゆる、suplente(スプレンテ/控え選手)組で構成。とはいえ、トップはフェルナンド・トーレス、キャプテンのガビやカラスコやアウグスト、ヒメネスといったメンバーも入っていたため、前半12分、ガビのFKをアウグストがヘッド、ゴールポストに当たって跳ね返ったボールをカラスコが蹴り込んで先制した時には今年も優勝は堅いだろうと、風のビュービュー吹くスタンドで見ていた私も安心していたものだったんですが…。
▽それからが最悪だったんですよ。というのも1点を取って安心したか、彼らはいつになっても追加点が奪えず。昨シーズン中も度々、見られた光景ですが、そんな中、終盤、マンキージョがケガをしたため、予定外のサウルがCBとして入ったところ、今季は2部に昇格して意気の上がっているカディスではエースのグイサがもう代わっていたというのに後半39分、敵のパスをエリア内でその彼が手に当ててPKを献上。ダビド・サンチェスに同点にされているんですから、まったくツイていないとしか言いようがありません。そして更に最悪だったのが、1-1で90分が終わった後、延長戦をすっ飛ばして突入したPK戦でした。
▽いやあ、5月のCL決勝の思い出がまだ生々しいだけに、始まる前から何だかイヤな予感はしたんですけどね。ミラノのサン・シーロでは4人目のファンフランが枠に当てて、5人全員が成功したマドリーに負けたんですが、どうやら親善試合モードのアトレティコはPK戦で昔のダメダメ状態に戻ってしまったよう。ええ、先陣を切ったトーレスからGKシフエンテスに止められてしまい、ガビ、サウルは成功させたものの、4人目のカラスコはシュートをバーに当ててしまう始末。対するカディスの4人目も同様の運命をたどったものの、その日、アトレティコのGKを務めたベルナベは先日、第2GKモヤがヒザの関節鏡手術を受け、2カ月間プレーできないながら、トップチームにはまだ昇格させてもらえないカンテラーノですからね。5人目のヒメネスがまたシフエンテに止められなくても、おそらく奇跡は起きなかったんじゃないでしょうか。
▽結局、PK戦3-2で負けたアトレティコは、あまりの強風に寒くなりすぎて、私がハーフタイムまでしか耐えられなかった、もう1つの準決勝でマラガに4-1と大敗したナイジェリア・オールスターズと翌日の3位決定戦を行うことに。ただねえ、前日とはメンバーを一新、仮想titular(ティトゥラル/レギュラー)組が先発したこの試合も彼らは前半33分にガイタンが敵GKミスを誘って1点を挙げたものの、とりとめのなさでは大差なし。
▽ええ、マルカのレポートなどでは「El Atlético fue al partido con la motivación del que va a su entierro. Hasta vestía de negro, dicho sea de paso/エル・アトレティコ・フエ・アル・パルティードー・コン・ラ・モティバシオン・デル・ケ・バ・ア・ス・エンティエロ。アスタ・ベスティア・デ・ネグロ、ディッチョー・セア・デ・パソ(アトレティコは埋葬に向かうようなモチベーションで試合に挑んだ。ついでに言うと、喪服まで着て)」なんて書かれてしまっていたんですけどね。とりわけ1点リードした後など、期待のアトレティコデビューを果たしたガメイロもセビージャ時代とは別人のようで、その日も突風に吹かれながら、人影もまばらなスタンドに辛抱強く座り、黒の第2ユニフォームでプレーする彼らを眺めていた私にもまあ、そう言いたくなる気持ちはわかりますって。
▽そしてまた悲劇は終盤に起こりました。ナイジェリアの有望選手を連れて、ここ1週間、スペインで親善試合ツアーをしている相手だけに、特に知られた選手がいる訳ではないんですが、後半41分には自陣からロングパスを通され、バシルがGKオブラクとの1対1を制してゴールを挙げてしまったから、さあ大変!2日連続でPK戦なんてたまらないと頭を抱えたものでしたが、それは選手たちも同じだったんでしょうね。その2分後、コケのCKからゴディンが頭で決める定番パターンで勝ち越してくれたから、助かったの何のって。うーん、その日は選手を1人も交代させなかったシメオネ監督もどうかとは思いますけどね。ナイジェリアに2-1で勝っても、こんな調子じゃ、開幕に向けて前向きにはなれるファンは少ないんじゃないでしょうか。
▽え、それよりカディス戦ではCBで使われたサウルを、「Casi no, he jugado de delantero/カシー・ノー、エ・フガードー・デ・デランテーロ(ほとんどじゃなくて、ボクはFWでプレーしたんだよ)」と当人があっけらかんと言っていたように、その日は前線に配置換えするなど苦肉の策を弄しても、一向にアトレティコの得点力が改善されてないように見える方が問題じゃないかって?うーん、まだフランス代表でユーロ決勝を戦ったグリースマンが出ていませんしね。彼は昨季からの累積警告が持ち越しで、リーガ第1節のアラベス戦にも出場停止な上、リオ五輪でアルゼンチンが敗退したアンヘル・コレアもまだ戻っていませんが、カディス戦に出たサントス・ボレはビジャレアルへのレンタル移籍が土曜に決定。
▽コロンビアから来たばかりの20歳のFWにはマルセリーノ監督の電撃解任の後、昨季はヘタフェを1部残留に導けずにスナイデル監督と代わったエスクリバ監督が就任したチームで、今週水曜にはモナコとのCLプレーオフといったビッグゲームの経験を積んでもらった方がいいとシメオネ監督は判断したか、少なくとも攻撃陣は人手不足ではないような。まだ今は、選手たちには半端じゃないフィジカルトレーニングの疲労が溜まっているという説もあるので、ここはあの重いカランサ杯トロフィーを持ち上げる体力を節約できて良かったと思っておく方がいいかと。
▽ちなみにその代わりに3人懸かりでそれを持ち上げていたのはマラガで、彼らは4度目の挑戦で初優勝なのだとか。うーん、主催のカディスも久々のチャンスに健闘したんですけどね。やはり1部チームとはレベルの差があるのか、決勝戦ではチャルレスのPKとネシリーのゴールで2点を先行され、後半28分にはアイトールのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で1点差には迫ったものの、あと1歩が及びませんでした。それにしてもカディスには2日連続で90分プレーしたDFが2人もいて、マラガもホアンピが2試合とも70分近く出てMVPを獲得するなど、この大会中、加重労働に見えた選手たちもチラホラ。公式戦ではとても考えられない光景ですが、親善試合なら大丈夫なんですかね。
▽そしてトロフィーという大荷物もなく、日月はオフをもらったせいか、試合後のアトレティコの選手たちはミニバンで思い思いの方向に散って行き、ガメイロなど、翌日は近いのを利用して、サンチェス・ピスファンでのスペイン・スーパーカップ1stレグにセビージャの応援に駆けつけていたそうですが、残念ながら、試合の方はルイス・スアレスとムニルのゴールでバルサが0-2で先勝。清武弘嗣選手もUEFAスーパーカップに続いて先発していましたが、やはりそのガメイロやバネガ(ユベントスに移籍)、クリホビアク(同PSG)らが抜けた穴を埋めることはまだできていないようです。
▽実際、この点差でCLプレーオフ1stレグが終わった後の水曜午後11時(日本時間翌午前6時)からの2ndレグ、カンプ・ノウでremontada(レモンターダ/逆転劇)を成し遂げるのはかなり難易度が高いんですが、相手は途中交代したイニエスタとマチューがケガで出場できず。GKテル・シュテーゲンがケガで3週間の離脱となっている中、ブラボにはマンチェスター・シティ移籍がチラついているなんて状況もあるため、やはり負傷者続出のセビージャにも諦めずに頑張ってもらいたいものですが、さて。いよいよこの試合が終わったら、スペインもリーガモードに突入しますね。そうそう、土曜にはマドリッドの新弟分チーム、レガネスが3-2でプレシーズン最後の親善試合でビジャレアルに競り勝ったなんて朗報もあったため、来週月曜のリーガ1部初試合のセルタ戦ではちょっと希望を持っていいかもしれませんよ。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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