【日本サッカー見聞録】ACLでG大阪につきつけられたJリーグ勢の課題

2015.10.22 14:00 Thu
▽アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝の2ndレグで広州恒大と対戦したG大阪は、ボール支配率で上回りながらもゴールを奪えず0-0のドロー。敵地での1stレグは1-2で敗れていたため、2戦合計1-2で、2008年以来の決勝進出は果たせなかった。

▽1-0の勝利ならアウェイゴール2倍ルールで決勝に進めたG大阪は、試合開始から得意のポゼッションで広州恒大を攻め立てた。遠藤、二川らのパス交換から米倉やパトリックに展開して相手ゴールに迫り、ボールを失ったら素早い攻守の切り替えでカウンターを阻止する。とはいえ、ボール支配率で上回りながらもサイド攻撃はなかなかフィニッシュに結びつかないという、もどかしさもあった。

▽対する広州恒大はエウケソンやリカルド・グラルらブラジル人助っ人が、ドリブル突破からミドルシュートでGK東口を脅かす。このためゴールの“匂い”は、押し込んでいるG大阪よりも、散発攻撃ながら“強力助っ人”のいる広州恒大に漂っていた。
▽G大阪の攻撃に変化が現れたのは60分に宇佐美が投入されてから。左サイドからのカットインで積極的にシュートを狙うものの、ゴール枠を捕えきれない。「試合開始からパトリックと宇佐美の2トップで臨んでいれば」と思わずにいられなかったが、それは結果論でしかないため今さら意味はないだろう。

▽さて、この試合を見ていて“既視感”を抱いてしまった。遠藤を中心にしたG大阪のポゼッション・サッカーはボール支配率で広州恒大を上回った。にもかかわらず、決定機はほとんどなかった。それは、まるでザッケローニ・ジャパンの対アジア諸国との戦いを見ているかのようだった。
▽年間予算460億円とも言われる広州恒大だが、グループステージでは鹿島と4-3、1-2、準々決勝では柏と3-1、1-1と決して日本勢に圧勝してきたわけではない。ただ、G大阪とも0-0で引き分けたように、次のステージへ勝ち上がるために最低限の結果を残す、したたかさがある。

▽その差を“質の高い外国人助っ人”と言ってしまえば身も蓋もないが、代表選手の多い中国人も学習していることをW杯最終予選で対戦する際は覚えていた方がいいだろう。そして、Jリーグ勢は広州恒大のようなチームと対戦する時はどう戦うべきか、各チームが答えを見つける必要がある。

▽この試合を視察したハリルホジッチ監督は、「チャンスがあればタテに速く」という自身のサッカー哲学に自信を持ったかもしれない。しかしJリーグ勢が同じ方向を向く必要はないだろう。年間予算38億円のG大阪でも広州恒大と接戦を演じることはできた。しかし、最後の一線を打ち破ることはできなかった。その答えを来年見つけることが、Jリーグ勢のACLにおける課題でもある。日本には、デカくて速いストライカーはいないのだから、どうやってゴールをこじ開けるのか。それはそのまま、ハリルホジッチ監督の課題にもつながるだろう。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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