【日本サッカー見聞録】韓国戦の収穫

2015.08.06 13:55 Thu
▽東アジアカップの第2戦で韓国と対戦した日本は、PKから失点したものの山口蛍の代表初ゴールで1-1と引き分けたが、最終戦を待たずに大会連覇の可能性は消えた。第2戦では中国が北朝鮮に2-0で勝ったため、日本をのぞく3チームの優勝争いとなった。

▽北朝鮮戦からスタメン5人を入れ替えた日本は、ダブルボランチに山口と藤田直之、その前に柴崎岳を配した4-3-3でスタート。対する韓国は4-2-3-1から、ダブルボランチのチョン・ウヨン(神戸)とチャン・ヒョンス(元FC東京)がビルドアップするスタイルで試合は始まった。

▽立ち上がりから主導権を握ったのは韓国だった。ていねいにパスをつないで日本の両サイドを崩しにかかる。日本はボールを奪ってもロングボールを蹴るだけ。これまでの日韓戦とは正反対のゲーム展開だった。
▽韓国の圧力に対し、日本はマンマークを捨て、10分過ぎより藤田を中盤のアンカーに置いた4-1-4-1にシステム変更し、ハーフラインまでリトリートして守備を固める。一方の韓国も33度の気温を考慮してか、スローペースなボールポゼッションのため、攻撃に怖さはない。最初の決定機は韓国で、森重真人のハンドで得たPKをチャン・ヒョンスが確実に決めて先制した。

▽それまで1本もシュートを放てなかった日本だったが、39分に倉田のヨコパスを山口がダイレクトでヒット。これがゴール左上に突き刺さり、初シュートで同点に追いつく。結局ゴールシーンはこの2回だけ。韓国は69分に交代出場のイ・ジェソンが決定機を迎えたものの、ヘッドはバーを直撃して追加点を奪えなかった。
▽全体的な印象としては、背水の陣の日本が守り通した試合だった。ハリルホジッチ監督の標榜するタテに速いカウンター主体のサッカーは、アジアの猛暑ではスタミナ切れすることが北朝鮮戦で判明。それを指揮官が学んだことと、試合中は槙野智章ら選手が話し合ってリトリートするスタイルに変更したり、ピッチをワイドに使って攻撃に時間をかけたりするなど、選手自身も考えてゲームプランを変更したことが韓国戦の収穫と言える。

▽そして選手個人についていえば、北朝鮮戦の発見が武藤雄樹と遠藤航なら、韓国戦は槙野と興梠慎三の2人があげられる(藤田と倉田秋も及第点)。槙野はキム・シンウクに肉弾戦を挑んで完封しただけでなく、声による指示でリーダーシップを発揮し、チームを鼓舞した。キャラクターとして森重よりもキャプテンにふさわしいのではないか。

▽興梠は、「サイドの選手が引いていたので攻撃が遅くなり、近くに人がいなかった。ロングボールばかりなのでなかなか収められなかった」と言うものの、足元のボールは確実にキープして、川又堅碁との違いを証明した。孤立無援のため「ボールが来たら1人はかわそうと思った」という姿勢もストライカーとして評価できる。

▽これらを踏まえて中国戦のスタメンには、永井謙佑(浅野拓磨)、興梠、武藤の3トップを採用して欲しい。中盤は柴崎、山口に、中国の高さを考えると谷口か。そしてDF陣は北朝鮮戦と同じになると予想している。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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