【東本貢司のFCUK!】来季の命運を左右する“超新星”
2015.07.15 13:00 Wed
▽この数日、懸案の(あるいは噂の)問題がいくつか、バタバタと収束した。ロビン・ファン・ペルシーがフェネルバフチェへ、モルガン・シュネダルランとバスチャン・シュヴァインシュタイガーがマン・ユナイテッドへ、そして(とうとう)ラヒーム・スターリングがマン・シティーへ。シブいところではアズミール・ベゴヴィッチ(ストーク)のチェルシー入りというのもある。明らかにアーセナルに移ったペトル・ツェフの“穴埋め”だが、わざわざセカンドキーパーに志願したというのはいかがなものか。ボスニア正キーパーたる沽券、立場は大丈夫なのか。優勝チーム、連覇濃厚といわれるチームの一員となる名誉に、あわゆくばクルトワを引きずりおろせる“誘惑”と引き換えにしては、リスクが大きすぎないか。それでも、チャンピオンズ(のせめて序盤)でプレーできるかもしれない魅力に負けたのか? 単純に俸給が上がるだけでめでたし、なのか。あぁ、もったいない。
▽ファン・ペルシーの“都落ち”もやはり寂しい。トルコではトップクラブを中心にこの数年間、ややトウの立ちかけたビッグクラブ経験者の駆り集めが盛んで、チャンピオンズで“一花咲かせん”とする野心旺盛だが、いかんせん個の能力で一気にブレイクとはそうは問屋が卸さない。中東に行くシャヴィ(チャヴィ)、ポルトに転身するイケル・カシージャス・・・・時代は今明らかに世代交代期を迎えつつある。シュヴァインシュタイガーにも疑問符が付く。なぜ? 2014W杯優勝後、バスチャンは体調を崩し、先シーズンは11月になるまでプレーが適わなかった。その間、バイエルンは国内外で無敗を堅持した。心情的にはバイエルン一筋で来た生え抜きの英雄の離脱を惜しむ声があっても、実質的にそれほど手痛い戦力ダウンとは受け止められていない節もある。そんなバスチャンが名にしおうプレミアの荒波にどう対処できるか。ファルカオの前例もある。ズバリ、ギャンブルだ。
▽マン・シティーがこれほどスターリングに執着した理由の一つには、いわゆる“国産比率(を上げる)”の問題があるのだと思う。結果的にスワップとなった恰好だが、つまりはジェイムズ・ミルナーを放出した、いわば(これも)穴埋め。無論、若さの魅力がそこで大きくモノを言っているのだが・・・・。ここで注目すべきは各人の移籍金の差だ。シュヴァインシュタイガーのそれは同じユナイテッド入りしたシュネダルランの約半額、さらに、そのシュネラルダンの“査定額”はスターリングの約半額だ。年齢、つまりこの先のキャリアを考えれば頷ける、もとい、当たり前だとはいえ、ある意味で“期待度”の差だとも言えまいか。あぁそれにしても、前線にデパイ(オランダ人)、右SBにマッテオ・ダルミアン(イタリア人)を取り込み、今またフランス人(シュネダルラン)とドイツ人(シュヴァインシュタイガー)を加えたユナイテッドには、やはり違和感を禁じ得ないのだが。
▽とはいえ「シュネ」も「シュヴァイン」もMFだ(デパイも厳密にはウィンガー)。肝心の(ファン・ペルシー、ファルカオが去り、ルーニーとマーク・ジェイムズのみになった)FWのオプション補強はまだ課題として残っている。いや、アーセナルも、シティーも、ひょっとしたら(ファルカオにあまり依存できそうにない)チェルシーだって、そこんところは同じ“欠けたピース”なのではないか。強いて挙げれば、イブラヒモヴィッチ、カヴァーニ、ベンゼマ、イグアイン辺りの名前も浮かぶが、正直言って聞き飽きた。どこかにいないか、とびきりフレッシュで未知の可能性に光り輝いている「超新星」が・・・・。そそくさにリサーチしてみた。おっ、こいつはどうだ? リヨンのアレクサンドル・ラカゼット! 面白い。“戦場”が違う以上、一概に比較できるものではないが、昨シーズンのデータでゴール数こそぐんと劣るものの、決定率ではあのクリスティアーノやメッシをも上回っている。だいいち、このラカゼットはウィンガーだ・・・・うん? ウィンガーだと?
▽誰のことを思い出したかは、賢明なる読者諸氏ならすぐお分かりだろう。ティエリー・アンリ。98年W杯まではウィンガーとしてさして目立つ存在ではなかったアンリが、アーセナルに入ってしばらくしてから、恐るべきゴールゲッターに変身した事実は、もはや伝説と言ってもいい。体型こそ小柄で固太りでアンリのイメージにはそぐわないが、大化けする伸びしろはかなりありそうだ(そう言いながら、筆者はラカゼットのプレーをそれほど検分してきたわけではないのだが)。例えば、偉大なる先輩に見習ってアーセン・ヴェンゲルの下で開花する可能性はないか。そして、それを見抜いたファン・ハールやロジャーズ、ペジェグリーニが、密に触手を伸ばそうと水面下での交渉を検討してはいないだろうか。あえて“予言”しようか。まもなく、スターリングを凌駕する「ラカゼット争奪戦」の火ぶたが切られる。そして、ラカゼット奪取に成功したチームが来シーズンを何等かの形で席巻する?!(でも、本当は国産のそんなスター候補こそに出てきて欲しいのだが・・・・)
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
▽ファン・ペルシーの“都落ち”もやはり寂しい。トルコではトップクラブを中心にこの数年間、ややトウの立ちかけたビッグクラブ経験者の駆り集めが盛んで、チャンピオンズで“一花咲かせん”とする野心旺盛だが、いかんせん個の能力で一気にブレイクとはそうは問屋が卸さない。中東に行くシャヴィ(チャヴィ)、ポルトに転身するイケル・カシージャス・・・・時代は今明らかに世代交代期を迎えつつある。シュヴァインシュタイガーにも疑問符が付く。なぜ? 2014W杯優勝後、バスチャンは体調を崩し、先シーズンは11月になるまでプレーが適わなかった。その間、バイエルンは国内外で無敗を堅持した。心情的にはバイエルン一筋で来た生え抜きの英雄の離脱を惜しむ声があっても、実質的にそれほど手痛い戦力ダウンとは受け止められていない節もある。そんなバスチャンが名にしおうプレミアの荒波にどう対処できるか。ファルカオの前例もある。ズバリ、ギャンブルだ。
▽マン・シティーがこれほどスターリングに執着した理由の一つには、いわゆる“国産比率(を上げる)”の問題があるのだと思う。結果的にスワップとなった恰好だが、つまりはジェイムズ・ミルナーを放出した、いわば(これも)穴埋め。無論、若さの魅力がそこで大きくモノを言っているのだが・・・・。ここで注目すべきは各人の移籍金の差だ。シュヴァインシュタイガーのそれは同じユナイテッド入りしたシュネダルランの約半額、さらに、そのシュネラルダンの“査定額”はスターリングの約半額だ。年齢、つまりこの先のキャリアを考えれば頷ける、もとい、当たり前だとはいえ、ある意味で“期待度”の差だとも言えまいか。あぁそれにしても、前線にデパイ(オランダ人)、右SBにマッテオ・ダルミアン(イタリア人)を取り込み、今またフランス人(シュネダルラン)とドイツ人(シュヴァインシュタイガー)を加えたユナイテッドには、やはり違和感を禁じ得ないのだが。
▽誰のことを思い出したかは、賢明なる読者諸氏ならすぐお分かりだろう。ティエリー・アンリ。98年W杯まではウィンガーとしてさして目立つ存在ではなかったアンリが、アーセナルに入ってしばらくしてから、恐るべきゴールゲッターに変身した事実は、もはや伝説と言ってもいい。体型こそ小柄で固太りでアンリのイメージにはそぐわないが、大化けする伸びしろはかなりありそうだ(そう言いながら、筆者はラカゼットのプレーをそれほど検分してきたわけではないのだが)。例えば、偉大なる先輩に見習ってアーセン・ヴェンゲルの下で開花する可能性はないか。そして、それを見抜いたファン・ハールやロジャーズ、ペジェグリーニが、密に触手を伸ばそうと水面下での交渉を検討してはいないだろうか。あえて“予言”しようか。まもなく、スターリングを凌駕する「ラカゼット争奪戦」の火ぶたが切られる。そして、ラカゼット奪取に成功したチームが来シーズンを何等かの形で席巻する?!(でも、本当は国産のそんなスター候補こそに出てきて欲しいのだが・・・・)
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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