【コラム】宇佐美&パトリック依存からの脱却
2015.07.10 18:30 Fri
▽11年ぶりに2ステージ制が復活した2015年のJ1。慣れ親しんだ1シーズン制からの変更ということもあり、多くの注目を集めた1stステージは、開幕戦から17戦無敗を記録した浦和の優勝で幕を閉じた。その浦和と終盤まで優勝争いを演じていたG大阪は、1stステージを4位でフィニッシュ。さらに、2012年以来となるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)では準々決勝に駒を進めており、一時降格圏内にまで沈んでいた昨年に比べれば、今シーズンは上々の滑り出しを見せているといえる。
▽ここまで“内容が悪いながらも勝ち切る”勝負強さで勝ち点を積み重ねているG大阪だが、攻守両面においてはACLとJリーグを兼ねた過密日程の影響もあり、いくつかの課題が浮き彫りとなっていることも確か。ACLで全く良いところなしに終わったものの、1stステージで他を寄せつけない強さを見せた浦和と比較しても、 G大阪は昨シーズンの国内3冠(J1、ナビスコカップ、天皇杯)王者らしい戦いを披露できていない印象。その主因は攻守のバランスにあるように思える。
◆サイドハーフの攻撃面
▽かねてより攻撃力を持ち味とするG大阪には、日本代表でも着実に定位置を確保しつつある宇佐美貴史、圧倒的な推進力で存在感が際立つパトリック、日本屈指のオーガナイザーである遠藤保仁、素早いボール奪取で攻撃のスイッチ役を担う今野泰幸といった、Jでも有数の個の力が揃う。しかし、宇佐美とパトリックに依存するあまり、そのほかの選手たちが個の力を得点へと結びつけられていないのが現状だ。
▽その一つの原因が、サイドハーフの攻撃面における貢献度の低さといえるだろう。昨シーズンの3冠達成に攻守両面で貢献した阿部浩之、大森晃太郎、倉田秋のここまでのリーグ戦における得点数は、3人合わせてもわずか「1」。J1得点ランキングトップに立つ13ゴールの宇佐美と、4ゴールのパトリックの2人でチーム総得点(24得点)の半分以上を占めていることからも、G大阪の攻撃が強力2トップに大きく依存していることがわかる。
▽もちろん、阿部や倉田、大森の高い守備意識がJ1最少失点数(13失点)を誇るチームの堅守に一役買っていることは確かだが、3人合わせて1得点という彼らの決定力不足がチームとしての攻撃のクオリティ低下に大きく影響しているのも事実。対戦相手からの宇佐美とパトリックに対するマークも強まっているだけに、「サイドハーフがもう少しゴールに絡んでくれれば」と長谷川監督が嘆くのも無理はない。
▽そして、もう一つ気になるのが守備ラインの低さだ。今シーズンは昨年よりもチームとしてライン設定が低く、受けに回り“過ぎる”あまり、相手に押し込まれる時間が長い。そのため、宇佐美とパトリックの2トップと、守備意識の高いサイドハーフを含む中盤に距離が生まれ、長谷川監督仕込みの堅守速攻にうまく繋げられない展開が多々見受けられる。その問題が浮き彫りとなったのが、今シーズンの5月2日に行われたアウェイの浦和戦だ。
▽浦和とチームスタイルは相違するものの、G大阪も本来は遠藤を中心としたボールポゼッションに秀でたチーム。しかし、この試合ではあまりにも受けに回ったため、ボールを保持しながらペースを掴んだ浦和を勢いづかせてしまい、攻撃の形を作ることもままならず、ただただ守備に追われた(0-1で敗戦)。
▽昨シーズンの中盤戦以降、今野や丹羽が語るように「守備から攻撃のリズムをつくる」ことが可能となったG大阪にとって、守備ラインをある程度高く設定することは、2人だけで相手の守備ブロックを崩し切ることができる宇佐美とパトリックを中心とした鋭いカウンターを機能させる生命線。状況にもよるが、ある程度は守備ラインを高く押し上げて“自分たちの時間”をつくり、後方から強力2トップを援護したい。
◆まずは内容と結果の充実
▽とはいえ、まだ前半戦が終わっただけであり、後半戦で巻き返すチャンスは十分にある。また、1stステージチャンピオンの座を浦和に奪われたとはいえ、J1年間チャンピオンの座は後半戦の結果次第だ。そして、ACL(優勝すればFIFAクラブ・ワールドカップに出場)、ナビスコカップ、天皇杯、スルガ銀行チャンピオンシップと、これだけのタイトル獲得の可能性があるのはG大阪だけ。多くのタイトルレースが控えるシーズン後半戦では、前半戦の課題を克服し、内容を充実させつつ結果も出す戦いぶりを、G大阪には期待したい。
《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》
▽ここまで“内容が悪いながらも勝ち切る”勝負強さで勝ち点を積み重ねているG大阪だが、攻守両面においてはACLとJリーグを兼ねた過密日程の影響もあり、いくつかの課題が浮き彫りとなっていることも確か。ACLで全く良いところなしに終わったものの、1stステージで他を寄せつけない強さを見せた浦和と比較しても、 G大阪は昨シーズンの国内3冠(J1、ナビスコカップ、天皇杯)王者らしい戦いを披露できていない印象。その主因は攻守のバランスにあるように思える。
◆サイドハーフの攻撃面
▽かねてより攻撃力を持ち味とするG大阪には、日本代表でも着実に定位置を確保しつつある宇佐美貴史、圧倒的な推進力で存在感が際立つパトリック、日本屈指のオーガナイザーである遠藤保仁、素早いボール奪取で攻撃のスイッチ役を担う今野泰幸といった、Jでも有数の個の力が揃う。しかし、宇佐美とパトリックに依存するあまり、そのほかの選手たちが個の力を得点へと結びつけられていないのが現状だ。
▽もちろん、阿部や倉田、大森の高い守備意識がJ1最少失点数(13失点)を誇るチームの堅守に一役買っていることは確かだが、3人合わせて1得点という彼らの決定力不足がチームとしての攻撃のクオリティ低下に大きく影響しているのも事実。対戦相手からの宇佐美とパトリックに対するマークも強まっているだけに、「サイドハーフがもう少しゴールに絡んでくれれば」と長谷川監督が嘆くのも無理はない。
◆ライン設定
▽そして、もう一つ気になるのが守備ラインの低さだ。今シーズンは昨年よりもチームとしてライン設定が低く、受けに回り“過ぎる”あまり、相手に押し込まれる時間が長い。そのため、宇佐美とパトリックの2トップと、守備意識の高いサイドハーフを含む中盤に距離が生まれ、長谷川監督仕込みの堅守速攻にうまく繋げられない展開が多々見受けられる。その問題が浮き彫りとなったのが、今シーズンの5月2日に行われたアウェイの浦和戦だ。
▽浦和とチームスタイルは相違するものの、G大阪も本来は遠藤を中心としたボールポゼッションに秀でたチーム。しかし、この試合ではあまりにも受けに回ったため、ボールを保持しながらペースを掴んだ浦和を勢いづかせてしまい、攻撃の形を作ることもままならず、ただただ守備に追われた(0-1で敗戦)。
▽昨シーズンの中盤戦以降、今野や丹羽が語るように「守備から攻撃のリズムをつくる」ことが可能となったG大阪にとって、守備ラインをある程度高く設定することは、2人だけで相手の守備ブロックを崩し切ることができる宇佐美とパトリックを中心とした鋭いカウンターを機能させる生命線。状況にもよるが、ある程度は守備ラインを高く押し上げて“自分たちの時間”をつくり、後方から強力2トップを援護したい。
◆まずは内容と結果の充実
▽とはいえ、まだ前半戦が終わっただけであり、後半戦で巻き返すチャンスは十分にある。また、1stステージチャンピオンの座を浦和に奪われたとはいえ、J1年間チャンピオンの座は後半戦の結果次第だ。そして、ACL(優勝すればFIFAクラブ・ワールドカップに出場)、ナビスコカップ、天皇杯、スルガ銀行チャンピオンシップと、これだけのタイトル獲得の可能性があるのはG大阪だけ。多くのタイトルレースが控えるシーズン後半戦では、前半戦の課題を克服し、内容を充実させつつ結果も出す戦いぶりを、G大阪には期待したい。
《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》
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