【日本サッカー見聞録】なでしこ当然の勝利。頼もしい岩渕の復調
2015.06.25 21:30 Thu
▽なでしこジャパン(女子日本代表)がカナダで開催されているワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦で、オランダを2-1で下してベスト8進出を決めた。グループリーグでは選手を入れ替えた影響もあり接戦の多かった日本だが、この日はベストの布陣で臨み、危なげなくオランダを振り切った。
▽その原因は2つある。まずオランダのレベルが低かったこと。グループAで地元カナダと1-1で引き分ける健闘を見せたものの、中国には0-1と敗退。3位ながら成績上位で決勝トーナメントに進出してきたため、チームとしての完成度も低かった。パスワークはスローで、ミスも多い。GKやセンターバック(CB)がプレスを受けると慌てて日本にボールをプレゼントしそうなシーンも何回かあった。
▽29分には大儀見と大野の連係から高い位置でボールを奪い追加点の好機を得たものの、大儀見のミドルシュートはバーの上。大儀見はそのままドリブルしてもGKと1対1のチャンスを迎えられたはずだが、思い切ってミドルを狙ったのは1-0とリードしていたからかもしれない。0-0ならもっと慎重なプレーを選択していたことだろう。
▽とはいえ、日本が圧倒的に攻めていたわけではなく、オランダが試合を支配する時間帯もあった。それだけ各国ともレベルアップしている証拠だろう。ただ、オランダはせっかく前線にメリスやミエデマといった俊足ストライカーを擁しながら、それを活かせなかったのが2つ目の敗因だ。
▽7分にメリスがスルーパスで抜け出したように、日本のDF陣は高さとスピードに弱点を抱えている。カメルーン戦でもタテパス1本でヌクートに1点を奪われたし、スイス戦でも危ないシーンがあった。
▽さて次は、佐々木監督が就任した2008年以降、6勝1分け1敗と戦い慣れたオーストラリアが相手だ。ブラジル戦で決勝点を決めたシモンや、30歳のベテランながらスピードのあるデ・バンナなど警戒すべき選手は多い。とはいえ、ブラジルのマルタのような傑出した個人技を持っている選手はいないだけに、オーストラリアが勝ち上がってきたことは日本にとってラッキーと言っていい。
▽くれぐれも油断は禁物だが、これまでの試合内容を見る限り、油断している暇などないはず。そんな日本にとってプラス材料が、岩渕の復調だ。オランダ戦では確実なドリブルとボールキープで日本に流れを呼び込み、阪口の決勝点をお膳立てした。今後対戦の予想される相手も大柄な選手が多いだけに、彼女のアジリティは大きな武器になると期待している。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽その原因は2つある。まずオランダのレベルが低かったこと。グループAで地元カナダと1-1で引き分ける健闘を見せたものの、中国には0-1と敗退。3位ながら成績上位で決勝トーナメントに進出してきたため、チームとしての完成度も低かった。パスワークはスローで、ミスも多い。GKやセンターバック(CB)がプレスを受けると慌てて日本にボールをプレゼントしそうなシーンも何回かあった。
▽29分には大儀見と大野の連係から高い位置でボールを奪い追加点の好機を得たものの、大儀見のミドルシュートはバーの上。大儀見はそのままドリブルしてもGKと1対1のチャンスを迎えられたはずだが、思い切ってミドルを狙ったのは1-0とリードしていたからかもしれない。0-0ならもっと慎重なプレーを選択していたことだろう。
▽7分にメリスがスルーパスで抜け出したように、日本のDF陣は高さとスピードに弱点を抱えている。カメルーン戦でもタテパス1本でヌクートに1点を奪われたし、スイス戦でも危ないシーンがあった。
▽オランダはせっかく高さがあるのだから、ロングボールからの空中戦で起点を作り、日本のDFを自陣方向に走らせるようなサッカーをしたら日本も苦しんだに違いない。しかしオランダは両サイドに開いたFWにボールを集め、そこからのドリブルで局面を打開しようと攻撃に時間をかけてくれたため、日本も常に数的有利な状況を作って突破を許さなかった。
▽さて次は、佐々木監督が就任した2008年以降、6勝1分け1敗と戦い慣れたオーストラリアが相手だ。ブラジル戦で決勝点を決めたシモンや、30歳のベテランながらスピードのあるデ・バンナなど警戒すべき選手は多い。とはいえ、ブラジルのマルタのような傑出した個人技を持っている選手はいないだけに、オーストラリアが勝ち上がってきたことは日本にとってラッキーと言っていい。
▽くれぐれも油断は禁物だが、これまでの試合内容を見る限り、油断している暇などないはず。そんな日本にとってプラス材料が、岩渕の復調だ。オランダ戦では確実なドリブルとボールキープで日本に流れを呼び込み、阪口の決勝点をお膳立てした。今後対戦の予想される相手も大柄な選手が多いだけに、彼女のアジリティは大きな武器になると期待している。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
|