【東本貢司のFCUK!】ユーロU-21は明日のスター満載

2015.06.18 12:25 Thu
▽U-21ヨーロッパ選手権、いわゆるユーロU-21が今日(日本時間18日)開幕した。言うまでもなく「明日のスター候補」を“検分・物色”する大会であり、あえて言えば優勝云々は二の次。とはいえ、1984年を最後に栄冠から遠ざかっている我がヤング・スリーライオンズにとって、大本命でディフェンディングチャンピオンのスペインがプレーオフでセルビアに敗れて本大会出場権を逸したからには、そろそろ何とかしたいところだ。監督ギャレス・サウスゲイトも「大いなる希望を抱いて我々はチェコに乗り込んできた。我がプレーヤーたちには歴史にその名を刻む力が十分にある」と自信満々。その背景には、予選10戦9勝1分、総失点わずか2の圧倒的な数字がある。しかも、5大会連続本大会出場は他の追随を許さず、すなわち抜きん出て安定した近年の実績を誇るという強みも。チャンスなのだ。

▽その「チャンス」を生かすためにも最強のチームを、といきたいところなのだが、その点では残念な事情もある。何よりも、出場資格のあるラヒーム・スターリング、ロス・バークリー、ジャック・ウィルシャー、アレックス・オクス=チェンバレンのプレミア・レギュラートリオが、“諸々の事情”で帯同していない。また、マンチェスター・ユナイテッドに移籍してからまだろくに仕事が出来ていないルーク・ショーもフィットネステストに失敗して不参加。もっとも、ウィルシャーは過去4年間、チームから外れていたし、バークリーはサウスゲイト就任以来一度も招集されていない。今や引く手数多のスターリングは2013年を最後に専らフル代表・・・・となれば、彼らの不在は「チームのまとまり」から考えても当然かもしれない。それだけ、現イングランドには若いダイナミズムが満ち満ちているとも言える。ハリー・ケイン、ダニー・イングズ、サイード・ベラヒーノ、ネイサン・レドモンド・・・・ただ、DFの要ジョン・ストーンズが怪我で出遅れ気味なのは不安の種か。

▽さて、スペインをはじき出す結果となったこのユーロU-21の「特殊な予選システム」について触れておこう。予選は10グループに別れて行われるが、それぞれの首位10チームに各グループ2位の成績トップ4チームが加わり、ホーム&アウェイのプレーオフが都合14試合行われた結果、各勝者が本大会出場権を得る。これに開催国(今回はチェコ)を入れた8チームが2グループのリーグ戦を戦い、各首位および2位が即準決勝に臨むという次第。つまり、本大会がコンパクトな分、予選リーグでこそ各チームの実力が問われると言っても過言ではないのだ。その予選で「無敗」のイングランドが有力本命視されている所以もお分かりだと思う。ちなみに、イングランドのプレーオフの相手はクロアチアで、ホーム/アウェイともに2-1で決着した。なお、強豪の一角フランスもプレーオフで敗退している。その結果、本大会の組み合わせは次の通り。グループA:ドイツ、セルビア、チェコ、デンマーク、グループB:イタリア、ポルトガル、スウェーデン、イングランド。
▽さて、今大会で注目のスター予備軍をかいつまんでピックアップしてみると――すでにプレミアでお馴染みのイングランド勢はさておくとして、まず、チャンピオンズ覇者バルセロナのGK、マルク=アンドレ・テア・シュテゲン(ドイツ)。その同僚でドルトムント所属のCBマティアス・ギンターは、デイヴィッド・モイーズがエヴァートン時代から密に目をつけていたという俊才。次に、ポルトガルの目玉は屈強な長身の黒人アンカー、ウィリアム・カルヴァーリョ。現在23歳、スポルティング・リスボンが放出条件としての移籍最低額を3700万ポンドに設定しているといわれる超大物だ。アヤックスの左ウィンガー、ヴィクター・フィッシャー(デンマーク)は14か月ぶりの故障明けながら、すでにプレミアの複数のクラブから“問い合わせ”が殺到しているとか。MFの“宝庫”デンマークからもう一人、こちらは純粋な司令塔タイプのピエール=エミール・ヘーイジェリ。17歳の時点でバイエルン・ミュンヘンが次世代のスターとして獲得した折り紙付きである。

▽なお、例によって、今大会でセミファイナリストになった4チームは、自動的に2016年ブラジル・オリンピックの出場権を勝ち取ることになる。ただし、イングランドがラスト4に勝ち残った場合はその限りではない。リオのオリンピックでは「チームGB」結成が見送られることになったからだ。そこで、グループリーグの3位2チームが一発勝負のプレーオフで、その最後の席を争う手はずになっている。折しも女子ワールドカップ本大会が開幕し、男子のアジア予選も始まった今、日本ではどうしても関心が薄くなってしまいがちな「ユーロU-21」。この年代ではまだまだ多くのプレーヤーが自国リーグでプレーしていることからも、ある意味で純粋なナショナルチームが激突しつつ、粒よりの明日のスター候補発見の楽しみが詰まっている大会として、もっともっと注目を集めて欲しいものだ。

【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

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