【カルチョのたしなみ】本当にバルバラなのか
2015.04.02 12:08 Thu
▽ミラニスタは、アドリアーノ・ガッリアーニに責任を押しつけることにした。バルバラ・ベルルスコーニとともに、新しい時代に向かう。それが最良の道だと信じている。
▽21日に行われた本拠地サンシーロでのカリアリ戦。ミラニスタが陣取るクルヴァ・スッドには「ゲームオーバー」の横断幕だけだった。チームの不振に怒りを爆発させたファンが、応援をボイコットしたためである。こういった呼びかけは、イタリアにおいて珍しいことではない。チームに対する不満を態度で示すために、たまに見られる手法だ。だが、たいていの場合は脅し程度。前半途中になだれ込んできて、一気に応援を始めるというのがよくあるパターンだ。
▽しかし、この日のミラニスタの決意は固かった。普段クルヴァ・スッドにいるはずのファンは両脇の見にくい席にポジションを移し、最後まで無人のゴール裏を演出した。日常生活でこういったまとまりを見せてほしい、という個人的な愚痴はさておき、それだけうっ憤がたまっていることは十分に感じることができた。
▽ファンの苛立ちは、不振からすべてが生まれていると言っても過言ではない。クルヴァ・スッドが事前に発表したシルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長に対するメッセージは、「クラブの売却話は事実なのか」「本当にミランをかつての姿に戻す意志があるのか」といったもの。苛立ちのほどがうかがえる。その中で、「ベルルスコーニファミリーでいくなら、ほかの人間に邪魔をさせず、娘にクラブを委ねろ」という具体的な話題があった。「ほかの人間」の頂点が、名誉会長の右腕ガッリアーニだ。
▽インテルを買収したエリック・トヒルは、以前からイタリアの経営が古いことを指摘している。それは世界のトップから大きく遅れを取った今、誰もが認識していることだ。
▽「バルバラは実際によくやっている」。ミラニスタに限らず、多くの人がこう口にする。「若いけど頑張っている」と評判だ。だからこそ、ファンの支持を得ることができた。
▽だが、それでガッリアーニを追い出すのが正しいかと問われたら、個人的には首をかしげたくなる。
▽そもそも、今の不振は現場の責任だ。本来、ミラニスタが口笛を吹く相手は、現場で指揮をとる者である。だが、その監督が自分たちのヒーロー、ピッポ・インザーギであるがために、感情の行き場がない。だからフロントに不満をぶつけ、ガッリアーニを戦犯に仕立て上げた。そう見えなくもない。
▽バルバラは、確かに感じが良い。以前は「ベルルスコーニの娘」というイメージだけだったが、実際に行動ができる優秀な人物だという印象を持つようになった。育ちが育ちなだけに一般常識では計れないが、堂々としていて、巨大組織の重圧におしつぶされるようには見えない。
▽それでも、結局はベルルスコーニの苗字が前面に出る。前述のクルヴァ・スッドの声明は、「初めての日と同じように、あなたは今でもこのクラブを愛しているのか? 」と締めくくられた。ここでいう愛は、ベルルスコーニファミリーがどこまでミランに資金を投じるつもりなのか、という意味に等しい。「30歳の優秀な女性」と「莫大な資産を持つ超天才実業家で元首相の娘(30)」——。最近の評判は自らの努力で得たものだとしても、ファンにとってどちらの肩書きが重要かは明白だ。
▽ガッリアーニは古いという声はある。確かにもう彼らの時代は過去だろう。だが、その敏腕ぶりを証明する関係者の発言を探したら、枚挙に暇がない。それが過去の栄光であり、現在の負につながるものだったとしたら、ガッリアーニは当然去るべきだ。しかし、ベルルスコーニの右腕がそんなに安っぽいはずがない。
▽若い経営者がトップになることで、最新の組織に生まれ変わるとは限らない。だが、それでも急激な変化を求めたくなる現状である。だとすれば、ガッリアーニではないのだろう。
▽ファンが救いを求める一発逆転の女神は、バルバラなのだろうか。
【ペッピーノ伊藤】
1984年生まれ。埼玉出身。イタリアはミラノを拠点とし、インテル&ミランを中心に現地で取材や執筆を行っている。もはやジュゼッペ・メアッツァの住人と言っても過言ではない。その献身性には定評があり、ミラノでは彼が寝ている姿を見たものはいないとまで言われている。その鉄人ぶりはハビエル・サネッティと双璧を成す。
▽21日に行われた本拠地サンシーロでのカリアリ戦。ミラニスタが陣取るクルヴァ・スッドには「ゲームオーバー」の横断幕だけだった。チームの不振に怒りを爆発させたファンが、応援をボイコットしたためである。こういった呼びかけは、イタリアにおいて珍しいことではない。チームに対する不満を態度で示すために、たまに見られる手法だ。だが、たいていの場合は脅し程度。前半途中になだれ込んできて、一気に応援を始めるというのがよくあるパターンだ。
▽しかし、この日のミラニスタの決意は固かった。普段クルヴァ・スッドにいるはずのファンは両脇の見にくい席にポジションを移し、最後まで無人のゴール裏を演出した。日常生活でこういったまとまりを見せてほしい、という個人的な愚痴はさておき、それだけうっ憤がたまっていることは十分に感じることができた。
▽インテルを買収したエリック・トヒルは、以前からイタリアの経営が古いことを指摘している。それは世界のトップから大きく遅れを取った今、誰もが認識していることだ。
▽そこで、若いバルバラが改革者となり、ミランの新時代をつくってほしいという「願い」につながってくる。
▽「バルバラは実際によくやっている」。ミラニスタに限らず、多くの人がこう口にする。「若いけど頑張っている」と評判だ。だからこそ、ファンの支持を得ることができた。
▽だが、それでガッリアーニを追い出すのが正しいかと問われたら、個人的には首をかしげたくなる。
▽そもそも、今の不振は現場の責任だ。本来、ミラニスタが口笛を吹く相手は、現場で指揮をとる者である。だが、その監督が自分たちのヒーロー、ピッポ・インザーギであるがために、感情の行き場がない。だからフロントに不満をぶつけ、ガッリアーニを戦犯に仕立て上げた。そう見えなくもない。
▽バルバラは、確かに感じが良い。以前は「ベルルスコーニの娘」というイメージだけだったが、実際に行動ができる優秀な人物だという印象を持つようになった。育ちが育ちなだけに一般常識では計れないが、堂々としていて、巨大組織の重圧におしつぶされるようには見えない。
▽それでも、結局はベルルスコーニの苗字が前面に出る。前述のクルヴァ・スッドの声明は、「初めての日と同じように、あなたは今でもこのクラブを愛しているのか? 」と締めくくられた。ここでいう愛は、ベルルスコーニファミリーがどこまでミランに資金を投じるつもりなのか、という意味に等しい。「30歳の優秀な女性」と「莫大な資産を持つ超天才実業家で元首相の娘(30)」——。最近の評判は自らの努力で得たものだとしても、ファンにとってどちらの肩書きが重要かは明白だ。
▽ガッリアーニは古いという声はある。確かにもう彼らの時代は過去だろう。だが、その敏腕ぶりを証明する関係者の発言を探したら、枚挙に暇がない。それが過去の栄光であり、現在の負につながるものだったとしたら、ガッリアーニは当然去るべきだ。しかし、ベルルスコーニの右腕がそんなに安っぽいはずがない。
▽若い経営者がトップになることで、最新の組織に生まれ変わるとは限らない。だが、それでも急激な変化を求めたくなる現状である。だとすれば、ガッリアーニではないのだろう。
▽ファンが救いを求める一発逆転の女神は、バルバラなのだろうか。
【ペッピーノ伊藤】
1984年生まれ。埼玉出身。イタリアはミラノを拠点とし、インテル&ミランを中心に現地で取材や執筆を行っている。もはやジュゼッペ・メアッツァの住人と言っても過言ではない。その献身性には定評があり、ミラノでは彼が寝ている姿を見たものはいないとまで言われている。その鉄人ぶりはハビエル・サネッティと双璧を成す。
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