【日本サッカー見聞録】ハリルとオシムの共通点
2015.04.02 10:30 Thu
▽さてハリルホジッチ監督である。ウズベキスタン戦では公約通りスタメン全選手を入れ替えながら5-1と完勝した。時差ボケで、日本戦へのモチベーションも低いチュニジアに比べ、ウズベクは韓国で1試合を消化し(1-1)、W杯予選でも対戦する可能性が高いだけに、“本気モード”だったことだろう。そんな相手に90分間、試合を支配して圧倒したのだから、改めて新指揮官の手腕に驚かされた。
▽システムこそ4-3-3とチュニジア戦と同じだったものの、初戦は中盤の3人が逆三角形だったのに対し、ウズベク戦は香川がトップ下に入る三角形に微修正。しかし、ボールを奪ったらタテに速い攻撃を仕掛ける姿勢は変わらなかった。岡崎と香川がパスの受け手になってリターンパスから相手の背後を狙ったり、左サイドの乾のドリブル突破からウズベク・ゴールに迫った。ミドルシュートの意識も旺盛で、FW陣は「まずゴールを狙う」という姿勢を貫いた。
▽日本の前線からのプレスに、ウズベクは無理してパスをつながずロングボールを入れ、そのこぼれ球からラシドフらがシュートを狙っていた。吉田に比べ森重と昌子のセンターバックでは、やはり高さでハンデがある。すると指揮官は、ハーフタイムに今野に代え水本を中盤のアンカー、センターバックの前に空中戦要員として配置した。水本自身「普段やっていないポジション」と驚く起用で、戦術的な変更と選手交代が早いのもハリルホジッチ流と言えるのかもしれない。
▽そして、すでに多くのメディアが報道しているように、前線からのプレスが効かないと見るや、後半は守備ブロックを作ってリトリートし、相手を誘ってのカウンターからゴールを重ねた。練習時間が短くても短期間で新監督の指示を実践できるのは、それだけ選手のクオリティが高いからだろう。
▽さらに後半のカウンターが有効だったのは、前半からハイスピードでプレスを掛け、同じくハイスピードでタテへの攻撃を繰り返し、相手の消耗を誘っていたことだ。チュニジア戦同様、プレー強度は激しく、1対1の攻守でも簡単に当たり負けしない。ブラジルW杯で長友が痛感した“個の強さ”でもある。相手がバテてきたところで連続ゴールを奪うのはチュニジア戦と同じパターンだった。
▽「相手よりもたくさん走り、プレースピードとシンキングスピードを上げる」ことは、かつてオシム監督もジェフ市原や日本代表に植え付けようとした。旧ユーゴの指揮官にとって、日本人に不足しているもの、世界で戦うために必要な課題は同じように映ったのかもしれない。
▽「今日はスペクタクルでコレクティブな試合だった。多くの人が満足しているだろう。満足していない人もいるかもしれない」
▽こんなコメントもオシム監督との類似点を感じてしまった。
【六川亨】 1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽システムこそ4-3-3とチュニジア戦と同じだったものの、初戦は中盤の3人が逆三角形だったのに対し、ウズベク戦は香川がトップ下に入る三角形に微修正。しかし、ボールを奪ったらタテに速い攻撃を仕掛ける姿勢は変わらなかった。岡崎と香川がパスの受け手になってリターンパスから相手の背後を狙ったり、左サイドの乾のドリブル突破からウズベク・ゴールに迫った。ミドルシュートの意識も旺盛で、FW陣は「まずゴールを狙う」という姿勢を貫いた。
▽日本の前線からのプレスに、ウズベクは無理してパスをつながずロングボールを入れ、そのこぼれ球からラシドフらがシュートを狙っていた。吉田に比べ森重と昌子のセンターバックでは、やはり高さでハンデがある。すると指揮官は、ハーフタイムに今野に代え水本を中盤のアンカー、センターバックの前に空中戦要員として配置した。水本自身「普段やっていないポジション」と驚く起用で、戦術的な変更と選手交代が早いのもハリルホジッチ流と言えるのかもしれない。
▽さらに後半のカウンターが有効だったのは、前半からハイスピードでプレスを掛け、同じくハイスピードでタテへの攻撃を繰り返し、相手の消耗を誘っていたことだ。チュニジア戦同様、プレー強度は激しく、1対1の攻守でも簡単に当たり負けしない。ブラジルW杯で長友が痛感した“個の強さ”でもある。相手がバテてきたところで連続ゴールを奪うのはチュニジア戦と同じパターンだった。
▽ただ、この2試合は全選手を使いながら交代枠が6だったことも日本には有利に働いた。6月から始まるアジア2次予選では、登録選手は23人に限られ、交代枠も3しかない。そこでも同じサッカーをできるのかというと、そのヒントはブラジルW杯のアルジェリアにあるのではないだろうか。ハリルホジッチ監督は試合のたびにスタメンを大きく変えてきた。対戦相手に応じた戦術的な理由もあるのだろうが、連戦での消耗度を避ける意味もあったと推測できる。ただし、そのためにはフィールドプレーヤー全員がハリルホジッチ監督のコンセプトを共有する必要がある。
▽「相手よりもたくさん走り、プレースピードとシンキングスピードを上げる」ことは、かつてオシム監督もジェフ市原や日本代表に植え付けようとした。旧ユーゴの指揮官にとって、日本人に不足しているもの、世界で戦うために必要な課題は同じように映ったのかもしれない。
▽「今日はスペクタクルでコレクティブな試合だった。多くの人が満足しているだろう。満足していない人もいるかもしれない」
▽こんなコメントもオシム監督との類似点を感じてしまった。
【六川亨】 1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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