【六川亨の日本サッカー見聞録】ハリルジャパンの船出は43人の大所帯
2015.03.19 22:05 Thu
▽ハリルジャパンの船出は総勢43人の大所帯となった。3月19日、27日のキリンチャレンジカップと31日のJALチャレンジカップに臨む日本代表が、新指揮官の口から発表された。注目は、試合に登録できる選手は23人に限られているものの、31人の代表メンバーと、12人のバックアップメンバーを招集したことだ。
▽その大きな理由は、ハリルホジッチ監督のチームコンセプトを短期間で多くの選手に共有させることにある。23人しか呼ばず、ケガ人が出たら入れ替えるでは、チーム作りが後手に回るのは明らかだ。そのため今回は初対面ということもあり、ケガを抱える内田(シャルケ)、長友(インテル)、今野(G大阪)も招集。「どんな状態かを知るため話をしたいし、どんなサッカーをするのか伝えたい」(ハリルホジッチ監督)というのがその理由だ。
▽バックアップメンバーという考え方も、「ケガ人が出たら入って来られるメンバーでもある」と説明。DF陣なら塩谷(広島)は右サイドバック、千葉(広島)はセンターバック、車屋(川崎F)は左サイドバックと具体的なポジションを挙げて彼らの招集理由を語った。
▽これまでサイドバックは内田と長友が不動のレギュラーだった。控えとして酒井高徳(シュツットガルト)や太田(FC東京)らがいたものの、彼らのバックアッパーはいないに等しい。1月のアジアカップでは酒井高が全試合に出場し、塩谷に出番はなかったが、右サイドからの攻撃力は明らかに低下していた。今回のメンバーでは、鈴木(柏)が右サイドでプレーできるし、槙野(浦和)は左サイドを得意としているため、選手層はかなり厚くなった。
▽そして多くの選手を呼ぶことで、「期待したいのは各ポジションで競争があること。私の中にベストメンバーはいない。その時のベストなパフォーマンスを選びたい」としながら、バックアップメンバーは、「グループが大きいというメッセージです。国内、海外を問わず色んな選手に可能性はあるということ。多くの選手に可能性を与えたい」(ハリルホジッチ監督)という狙いもある。
▽「遠藤についてだが、日本のレベルを高く上げたがリストには入っていない。私はロシアのために来ている。前にいた選手に代えてリストを作っているが、長年、日本に貢献した彼のことを忘れてはいけない。彼に敬意を払うことを付け加えたい」
▽その後、「必要なら呼ぶこともある」と話していたものの、その可能性はかなり低いだろう。というのも、現代表は若返り、とりわけ主力選手の若返りが急務だからだ。遠藤はオシムジャパンから日本のキーマンだったが、彼のパフォーマンスが落ちてチーム力も半減したのがブラジルW杯だった。J2での戦いで疲弊し、J1に復帰した2014年前半の遠藤と今野のパフォーマンスは明らかにダウンしていた。ようやく昨年の夏過ぎから本来のパフォーマンスを取り戻し、アギーレジャパンで再招集されたものの、いつまでも遠藤や長谷部(フランクフルト)に頼ってはいられない。
▽遠藤の代わりとしては柴崎(鹿島)や高萩(ウェスタン・シドニー)、青山(広島)あたりが候補だろうし、長谷部に関しては山口(C大阪)、米本(FC東京)、谷口(川崎F)らが候補として有力だ。
▽チュニジア戦とウズベキスタン戦については「攻撃的にやるのか守備的にやるのか、この2試合で見せたい」と抱負を述べていた。順当ならFIFAランク25位のチュニジアとは守備的に、同72位のウズベキスタンとは攻撃的に戦うだろう。果たしてこれまでボールポゼッションのスタイルを踏襲してきた日本のサッカーが短期間で変わるのか。サッカーに限らずスポーツは相手があっての競技であり、対戦相手に応じて戦い方も変わるものだ。それだけに、まずはハリルホジッチ監督のお手並みを拝見したい。
▽最後に、今回の会見では日本サッカー協会(JFAハウス)内に、代表スタッフのミーティングルームはあっても監督のオフィスがないため、大仁会長と霜田技術委員長に自室を作るよう要求し、霜田技術委員長が了承していた。これまで歴代の代表監督は、自宅が仕事場を兼ねていて、ミーティングの時だけサッカー協会のあるビルに来ていた。JFAハウスに常駐する初の代表監督になるなら、その本気度は高く評価したい。
【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽その大きな理由は、ハリルホジッチ監督のチームコンセプトを短期間で多くの選手に共有させることにある。23人しか呼ばず、ケガ人が出たら入れ替えるでは、チーム作りが後手に回るのは明らかだ。そのため今回は初対面ということもあり、ケガを抱える内田(シャルケ)、長友(インテル)、今野(G大阪)も招集。「どんな状態かを知るため話をしたいし、どんなサッカーをするのか伝えたい」(ハリルホジッチ監督)というのがその理由だ。
▽バックアップメンバーという考え方も、「ケガ人が出たら入って来られるメンバーでもある」と説明。DF陣なら塩谷(広島)は右サイドバック、千葉(広島)はセンターバック、車屋(川崎F)は左サイドバックと具体的なポジションを挙げて彼らの招集理由を語った。
▽そして多くの選手を呼ぶことで、「期待したいのは各ポジションで競争があること。私の中にベストメンバーはいない。その時のベストなパフォーマンスを選びたい」としながら、バックアップメンバーは、「グループが大きいというメッセージです。国内、海外を問わず色んな選手に可能性はあるということ。多くの選手に可能性を与えたい」(ハリルホジッチ監督)という狙いもある。
▽実際、12人のバックアップメンバーのうち、柿谷(バーゼル)以外は国内組だ。彼らが代表に選ばれることでブランドとなり、過去の柿谷や山口のようにJリーグでも注目が集まる相乗効果を期待できる。そしてハリルホジッチ監督は、自ら遠藤(G大阪)についても次のように語った。
▽「遠藤についてだが、日本のレベルを高く上げたがリストには入っていない。私はロシアのために来ている。前にいた選手に代えてリストを作っているが、長年、日本に貢献した彼のことを忘れてはいけない。彼に敬意を払うことを付け加えたい」
▽その後、「必要なら呼ぶこともある」と話していたものの、その可能性はかなり低いだろう。というのも、現代表は若返り、とりわけ主力選手の若返りが急務だからだ。遠藤はオシムジャパンから日本のキーマンだったが、彼のパフォーマンスが落ちてチーム力も半減したのがブラジルW杯だった。J2での戦いで疲弊し、J1に復帰した2014年前半の遠藤と今野のパフォーマンスは明らかにダウンしていた。ようやく昨年の夏過ぎから本来のパフォーマンスを取り戻し、アギーレジャパンで再招集されたものの、いつまでも遠藤や長谷部(フランクフルト)に頼ってはいられない。
▽遠藤の代わりとしては柴崎(鹿島)や高萩(ウェスタン・シドニー)、青山(広島)あたりが候補だろうし、長谷部に関しては山口(C大阪)、米本(FC東京)、谷口(川崎F)らが候補として有力だ。
▽チュニジア戦とウズベキスタン戦については「攻撃的にやるのか守備的にやるのか、この2試合で見せたい」と抱負を述べていた。順当ならFIFAランク25位のチュニジアとは守備的に、同72位のウズベキスタンとは攻撃的に戦うだろう。果たしてこれまでボールポゼッションのスタイルを踏襲してきた日本のサッカーが短期間で変わるのか。サッカーに限らずスポーツは相手があっての競技であり、対戦相手に応じて戦い方も変わるものだ。それだけに、まずはハリルホジッチ監督のお手並みを拝見したい。
▽最後に、今回の会見では日本サッカー協会(JFAハウス)内に、代表スタッフのミーティングルームはあっても監督のオフィスがないため、大仁会長と霜田技術委員長に自室を作るよう要求し、霜田技術委員長が了承していた。これまで歴代の代表監督は、自宅が仕事場を兼ねていて、ミーティングの時だけサッカー協会のあるビルに来ていた。JFAハウスに常駐する初の代表監督になるなら、その本気度は高く評価したい。
【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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