【六川亨の日本サッカーの歩み】やはり3決はテンションが上がらず再考が必要か

2018.07.17 14:00 Tue
Getty Images
▽長かったロシアW杯も、7月15日の決勝戦でフランスがクロアチアを4-2で下し、20年ぶり2回目の優勝で幕を閉じた。正直な感想は、「やはり、そう簡単に新たなW杯優勝国は出現しないな」というものだった。

▽それでもクロアチアはよく頑張ったと思う。3試合連続して延長戦を戦った後での決勝戦。にもかかわらず、守備を固めてカウンターを狙うのではなく、試合開始から積極的に攻撃を仕掛けた。彼らのそうした姿勢が、ともすれば“ガチンコ勝負”で退屈な試合になりがちな決勝戦を盛り上げたのだと思う。

▽これでW杯は4大会連続してヨーロッパ勢が制覇した。ブラジルをはじめアルゼンチンやウルグアイといった南米ビッグ3がこれほど早い段階で姿を消したのは、組み合わせのせいだけではないだろう。
▽そうした大会全体の総括や決勝戦のレビューについては今週木曜のコラムに譲るとして、今回は3位決定戦について考察してみた。

▽大会前のイングランドは、けして下馬評の高いチームではなかった。ダイア-、スターリング、ケインら若返りに成功したとはいえ、得点力不足に課題を抱えていた。グループステージではパナマに6-1と大勝するなど2位でラウンド16に進出し、コロンビア(PK戦)とスウェーデンを連破したことで52年ぶりのベスト4に進出した。
▽しかし準決勝でクロアチアの前に延長戦で力尽きて3位決定戦に回った。それでもイングランドにとっては66年イングランド大会の優勝に次ぐ最高成績を残すチャンスだった。それは対戦相手のベルギーも同様で、86年メキシコ大会の4位(3決でフランスに敗退)を上回る絶好の機会だ。このため好ゲームを期待したのだが……。

▽イングランドにとって、クロアチアとの延長戦に加え中2日(ベルギーは中3日)の日程は体力的に厳しかったのかもしれない。さらに、ベルギーはイングランドの長所を見事に消してきた。

▽今大会のイングランドの基本システムは3-5-2で、3バックの前に攻守のつなぎ役としてヘンダーソンを置き、インサイドハーフは右リンガード、左アリで、左右のウイングバックにトリッピアーとヤングを配し、ケインとスターリングの2トップというフォーメーション。

▽左右のウイングバックは守備時にDFラインまで下がり5バックとなるが、特徴的だったのはマイボールになると左右に大きく開いていたことだ。ボールを持ってカットインすることも、ダイアゴナルランでゴール前に飛び込むこともほとんどない。コンパクト&スモールフィールドが常識の現代サッカーにおいて、異質とも言えるスタイルだった。

▽左右に大きく開くことで、サイドチェンジは有効になる。しかしDFトリッピアーとヤングに与えられた役割は、2トップと彼らとの間にオープンスペースを作ることだった。意図的に味方の選手と距離を取ることで、相手DF陣をワイドに広げる。そしてできたスペースにインサイドハーフのリンガードやアリが侵入して3トップや4トップを形成する。準々決勝で対戦したスウェーデンは彼らを捕まえきれずに苦戦した。

▽ところが3位決定戦のベルギーは、いつもの3バックに加え、サイドハーフのムニエとシャドリが戻り5バック気味にしてスペースを消したことと、イングランドはリンガードとアリ、ヤングをベンチスタートにしたため前半の攻撃は手詰まり状態が続いた。

▽なんとか後半は選手交代から攻撃は活性化したものの、決定機は後半25分にワンツーからダイア-が抜け出しGKと1対1になったシーンのみ。体力、技術、戦術ともベルギーが1枚上手だった。スコアこそ0-2だったものの、ベルギーの完勝と言える。

▽正直、試合内容は期待を裏切られた。イングランドの実力からすれば、それも仕方ないかもしれないが、両チームとも勝つか負けるかで「天国と地獄」というヒリヒリするような緊張感は、残念ながら今回の3位決定戦にもなかった。

▽そして表彰式では、敗れたイングランドの選手は表彰されるベルギーの選手をピッチで見守るだけで、セレモニーが終わると静かにピッチを後にした。敗者が残る必要があるのか疑問の残るセレモニーである。

▽敗者はもちろんのこと、勝者にも笑顔のない3位決定戦。6万を越える大観衆を集め、興業的には大成功かもしれないが、改めて存在意義を見直す必要があるのではないだろうか。

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