駒大のロングボール・サッカーの効果/六川亨の日本サッカー見聞録

2021.12.30 09:40 Thu
Getty Images
先週末は25日のインカレ決勝、駒澤大対阪南大(3-2)を取材し、週明けの28日は第100回を迎える全国高校選手権の開幕戦、関東第一高校対中津東(6-0)の試合を取材した。その間には27日に鹿島の“常勝軍団”の礎を築いた鈴木満FD(フットボールダイレクター)の、今シーズン限りの退任によるオンライン会見も取材した。

鈴木氏は鹿島の前身である住金サッカー部の選手や監督を務め、Jリーグ誕生後も強化スタッフとして30年もの長きに渡りチームの栄光を下支えしてきた。いわゆる「オリジナル10」で、93年のJリーグ開幕から今日まで同一チームの現場で活躍してきたのは鈴木氏しかいない。鈴木氏は来年3月まで現職にとどまるので、機会があったら彼の功績を紹介したい。

さて28日に開幕した高校選手権、関東第一対中津東の試合は洗練されたパスサッカーの関東第一が6-0の大差で圧勝した。決定機を確実に決めていれば、もう2~3点は入っていただろう。一方の中津東は、パスをつないで攻めようにも関東第一の素早いプレスに後手に回り、早い時間に失点したこともあり本領を発揮できなかった。
そこで改めて考えたのが、インカレで06年の第55回大会以来14大会ぶり7度目の優勝を果たした駒澤大のサッカーだ。昔も今も変わらず、ボールポゼッションではなく、マイボールになれば迷わず前線の2トップにロングパスを出して大型FWを走らせるサッカーだ。現チームの左SBの桧山悠也は、ボールを持つと迷うことなく左クロスを送っていた。

SBが攻撃参加しても、タテに突破を仕掛けるわけでもなく、ボールをキープしては相手を引きつけて、サポートに寄ったボランチやCBにバックパスを出すシーンをよく目にする。それはそれで、ボールキープの時間を増やし、相手DFをワイドに広げようという狙いがあるのだろう。
しかし見ている方としては、時として歯がゆく感じるものだ。せっかく攻め込んだのに、いつの間にかボールは味方GKまで戻っていることも1回や2回ではない。

その点、桧山のプレーはシンプルでわかりやすいため、見ていて気持ちよかった。前線で待ち構えるFWとしても、せっかくゴール前でマーカーと駆け引きをしているのに、クロスがなかなか入らず、ボールが自陣GKまで戻っていては、またイチから動き直さなければならずフラストレーションも溜まるのではないか。

駒澤大学の秋田浩一監督は「10回つないで1点くれるなら考えも変わりますが、サッカーは点を取るゲーム」と割り切っている。これはこれで的を射ている“真理”だろう。

試合は阪南大が2度のリードを奪いながら、そのたびに駒澤大がアーリークロスや右CKからのヘディングシュートで追いつき、最後は左サイドからのアーリークロスが風上で右に流れるところ、右サイドから詰めていた交代出場の島崎翔輝が押し込んで決勝点とした。

駒澤大の伝統でもあるキック・アンド・ラッシュとフィジカルを鍛えたサッカーは、それはそれで“あり”だと思う。チーム戦術に合った前線のFW起用など、他校にはないストロングポイントを持っているからだ。

ポゼッション・スタイルが全盛の現在、どこを切っても同じような“金太郎飴”のスタイルを否定する駒澤大のサッカーは、むしろ新鮮ですらある。

そして高校選手権に話を戻すと、中津東は攻め手がなかった。ならばパスをつなぐポゼッション・スタイルではなく、キック・アンド・ラッシュに活路を見いだすべきではなかったか。そこまで練習していないため無理だったかもしれないが、そうした柔軟性、戦術の多様性は高校年代から身につけておいた方がいいと思う。

日本代表は、アジアではポゼッション・スタイルで勝ち抜けても、W杯では難しい。かつて日本は、「フィジカルで欧州や南米の列強に劣っているのだから、技術で対抗すべきだ」という意見が大勢を占めた。それを否定したのがアルベルト・ザッケローニ監督でありヴァイッド・ハリルホジッチ監督だった。「インテンシィティ」や「デュエル」である。

長身選手をターゲットにするロングパスも戦術の1つである。高校年代ではかつて国見や市立船橋が得意としていた戦法だ。これをポゼッション・スタイルも含め、対戦相手やピッチ状況に応じて使い分ける。これは高校年代や大学年代では難しいことだろうか。

そんなことを、インカレ決勝後に取材した高校選手権の初戦を見て思った。インカレ決勝のカードは、正直期待していなかったが、予想外の好ゲームに興奮したことを記しておきたい。

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