春はまだ来ない…/原ゆみこのマドリッド
2024.03.05 21:00 Tue
「次の試合は凍えなくて済みそうね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、強風とみぞれの中、ホッカイロを唯一の頼りにスタンドで震える週末を乗り越えた後のことでした。いやあ、相変わらず、今季はリーガの割り当てが不均衡で、27節もマドリッド勢4チーム中3チームがホーム開催。おかげでエスタディオ・バジェカス、コリセウム、そしてメトロポリターノでの3試合をスタジアム観戦したんですが、よもや3月になって、この冬、一番の寒い思いをさせられるとは!もちろん、ズブ濡れになって、プレーしていた選手たちの比ではないでしょうが、夕方からの試合で気温も5、6℃はあったというものの、寒風がモロに吹きつけてきて、辛かったの何のって。
そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか見ていくことにすると、土曜は午後4時15分のラージョvsカディス戦からスタート。降格圏18位、しかも昨年の9月から白星がない絶不調の相手だけに、今にも雨が降りそうな天候にも関わらず、今季の2度目のホーム勝利を見られるかと、ラージョファンはエスタディオ・バジェカスに駆けつけたんですけどね。残念ながら、私が観戦していた前半は、イニゴ・ペレス新監督のデビュー戦だったマドリーとの兄弟分ダービーで負傷したイシが復帰したにも関わらず、大したことも起こらず終了。
それが午後6時30分前にコリセウムに着くべく、ハーフタイムにスタジアムを出た私がメトロ、セルカニアス(国鉄近郊路線)を乗り継いでいる間に大変なことになっていたようで、いえ、電車の窓から、天気がかなり荒れ模様だったのはわかったんですけどね。どうやらバジェカスでは後半10分過ぎから、激しくみぞれが降り注ぎ、ピッチが真っ白に。「Los jugadores no sentían los pies/ロス・フガドーレス・ノー・センティアン・ロス・ピエス(選手たちには足の感覚が無かった)」(ペジェフリーノ監督)程の有り様にゲームが12分間中断していたんですが、やはりガンガン雨が吹きつける中、私がようやくコリセウムに辿り着く寸前だった後半32分、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況がラージョのゴールを絶叫することに。
おかげで降格圏との差は勝ち点7で変わらないながら、順位が16位に落ちてしまったラージョですが、まだ残り11試合ありますからね。まずはこの日曜のアラベス戦から、心機一転、頑張ってもらいたいものですが、とにかくRdT(ラウール・デ・トマス)を筆頭にファルカオ、カメージョ、エヌテカら、FW陣がゴールを挙げてくれないことには、残留達成の道も厳しいものになるかもしれません。
一方、濡れた机やシートを拭くのに何枚ものテッシュが必要だったコリセウムではキックオフから少しして、雨がみぞれに変わり、視界が白くなってしまったんですが、幸いピッチに積もるまでには至らず。ヘタフェの選手たちもそれ程、気にならなかったのか、早くも前半11分にはディエゴ・リコのロングパスをマタがエリア内で胸トラップ、volea(ボレア/ボレーシュート)を決めて先制すると、その3分後にもグリーンウッドが2点目を挙げていたんですが、もしやこれって、温暖なカナリア諸島から来たラス・パルマスがこういう悪天候に不慣れだったせい?
実際、雨が止んだ35分にはヘタフェOBでもあるサンドロにエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められてしまったんですが、45分にはマタのクロスをマクシモビッチがヘッドして3点目を奪い、試合は3-1のスコアでハーフタイムに入ることに。2点差もあれば、後半ムリして攻める必要もないとボルダラス監督も思ったか、右SBをカルモナから本職のファン・イグレシアスに代えて再開したところ、5分には大勢の選手をすり抜けるマルモルのラストパスをカルドナに流し込まれ、あっという間に1点差になってしまったから、さあ大変。更に14分には、同じくヘタフェOBのムニルがGKダビド・ソリアを1対1で破り、うーん、最初はオフサイドと判定されていたんですけどね。
VAR(ビデオ審判)により、それが取り消され、とうとう3-3になってしまったとなれば、やっぱりジェネとアルデレテのダブル出場停止は痛かった?試合は結局、そのまま引分けで終わったんですが、何より大きな犠牲だったのは後半33分に負傷交代したマジョラルで、ええ、翌日の検査で左ヒザの半月板損傷が発覚し、全治2、3カ月となってしまいましたからね。ここまでリーガ15得点で、サラ(スペイン人の得点王)賞獲得や3月のスペイン代表に招集される当人の夢も潰えてしまいましたし、大体がして、ヘタフェは彼のゴールを当てにして、1月にヒザの靭帯断裂からようやく復活した、昨季までのエース、エネス・ウナルをボーンマスに売却。一応、残留目安の勝ち点40まではあと5ポイントと順調ではありますが、FWがマタ、グリーンウッド、ラタサだけとなっては、勝ち点7差ある6位以上のEL出場圏を目指すのはちょっと、難しくなってきたかと。
そんなヘタフェは次節、土曜にバレンシア戦をメスタジャでプレーするんですが、折しもその日は兄貴分が次の時間帯でまさにその相手と激突。私も急いでマドリード市内に戻り、自宅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に滑り込んで、後半から見ることができたんですが、前半はかなりの波乱があったよう。いやあ、先週もミッドウィークフリーだった上、足首のネンザからとうとうベリンガムも復帰したため、誰もがより強力になったマドリーを期待していたんですけどね。27分にはビニシウスが自陣エリア内でフルキエにボールを奪われ、そのクロスをカノスは撃ち損じてしまったものの、ウーゴ・ドゥーロに決められてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。
その3分後にもマドリーはカルバハルが不注意なバックパスを送り、そのボールを奪ったヤレムチュクがウクライナ代表仲間のGKルーニンをかわして、バレンシアの2点目を挙げたんですが、ロスタイムにはミスをした2人が奮起。カルバハルのシュートはGKママルダシビリに弾かれてしまったものの、こぼれ球をビニシウスが押し込んで2-1になったところで、前半は終了します。すると後半はアンチェロッティ監督がクロース、ロドリゴをモドリッチ、ブライムに、更にカマビンガ、メンディをホセル、フラン・ガルシアに代えてから、マドリーに勢いがつき、とうとう31分にはブライムのクロスをビニシウスがゴール前からヘッドして同点に追いついたため、これは十八番のremontada(レモンターダ/逆転劇)コースかと思ったところ…。
それが無茶苦茶アクシデントの多い終盤だったんですよ。まずは41分、マドリーのFK攻撃の際にチュアメニがディアカビの上に倒れ、相手がヒザを脱臼。全治1年にもなる大ケガに両チームの選手が騒然となる中、当人は担架退場したんですが、45分にはエリア内でシュートに行ったウーゴ・ドゥーロがフラン・ガルシアとナチョの間で倒れて、主審がペナルティを宣告したから、ビックリしたの何のって。これは幸いVAR注進のおかげでなくなったんですが、まさかロスタイム7分が1分延長された最後のプレーで、「Es algo que no me había pasado nunca en mi carrera/エス・アルゴ・ケ・ノー・メ・アビア・パサードー・ヌンカ・エン・ミ・カレラ(私のキャリアの中で1度も起きなかった何か)」(アンチェロッティ監督)が発生するとは!
そう、「El árbitro dice que es la última/エル・アルビトロ・ディセ・ケ・エス・ラ・ウルティマ(審判はこれが最後だと言った)」(ウーゴ・ドゥーロ)CKで、モドリッチが蹴ったボールをママルダシビリがパンチングで弾き、本来なら、そこで終了の笛が鳴ってもおかしくなかったんですけどね。ヒル・マンサーノ主審がそれをしなかったため、転がったボールを拾ったブライムが渾身のクロスを挙げたところ、何とベリンガムのヘッドがゴールに入ったんですよ。なのにその途中に笛が吹かれていたため、ゴールはスコアに上がらず、マドリーの逆転勝利も雲散霧消となれば、大騒動にならない訳はありませんって(最終結果2-2)。
ええ、ベリンガムなど、主審に「It's a fucking goal!(あれはクソッたれなゴールだ)」とイギリス人にありがちな形容詞をつけて抗議したため、レッドカードを出されてしまいましたしね。彼には日曜のセルタ戦以降、2、3試合の出場停止処分が課されるかもしれないとなると、マドリーにとってはじくじたる思いでしょうが、ただ日曜の結果を見ると、大した痛手ではなかったかと。というのも2位のジローナはコパ・デル・レイ準決勝レアル・ソシエダ戦2ndレグと決勝進出祝いで疲弊しているはずのマジョルカに敗れ、勝ち点差が7に拡大。3位のバルサもアトレティコを破って、コパ決勝の切符を掴んだアスレティックとスコアレスドローとなり、勝ち点8差のままで、唯一、4位のアトレティコだけが勝利して、首位チームの躓きに乗じることができたんですが…。
いやあ、自業自得とはいえ、勝ち点13差が11差になったとて、誰も話題にはしてくれませんよねえ。ちなみにCL16強対決インテル戦1stレグ、リーガのアルメリア戦、コパ準決勝2ndレグのアウェイ3連戦で1勝もできず、ようやくメトロポリターノに戻って来た彼らは、ベティス戦でやはりホームに勝る場所はないことを再確認。ええ、前半8分にはもう、メンフィス・デパイのシュートがゴール前でベジェリン、ペッツェッラが弾き合って、最後はGKルイ・シウバのオウンゴールで先制とは、ラッキー以外の何物でもないじゃないですか。
ただ、サン・マメスでも17本(うち枠内6本)も撃ちながら、無得点で終わったシュート効率の悪さは持続していて、デパイが2度続けて弾かれていたり、27分などもう最悪。モラタがルイ・シウバに倒され、VARでオフサイドでなかったことが保証されたため、PKをもらったんですが、モラタはそのPKを止められたけでなく、その跳ね返りを3度シュートして、ことごとく弾かれているんですから、恐ろしい。でもねえ、努力が実るのもメトロポリターノのいいところで、またしてもみぞれが降り出していた44分、デ・パウルがエリア外から撃ったシュートをルイ・シウバが弾いたボールに誰より早く反応。ヘッドで2点目を挙げてくれたとなれば、ここ8試合続いたモラタのゴール日照りもとうとう終わったと見なしていい?
おかげで2-0とリードして後半に入ったアトレティコは、うーん、シメオネ監督によると、「ウチはハードな試合をこなした後で、決勝に行けなかった失望が、podía pasar factura en algún momento/ポディア・パサール・ファクトゥーラ・エン・アルグン・モメントー(いつかはツケとなって現れかねなかった)」そうなんですけどね。ペジェグリーニ監督の梃入れが効いて、17分にはジョレンテのボールロストから、途中出場のカルバーリョにエリア外から見事なゴールを決められて、1点差に迫られた後はもっぱら専守防衛に回ることに。ええ、それこそ33分にギド・ロドリゲスのシュートをGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防ぐやいなや、シメオネ監督は大慌てでデパイに代え、レイニウドを入れていたぐらいですからね。
最後はモラタもサビッチに代わり、ジョレンテとリケルメが前線という純正FWなしの陣形にして、ベティスの反撃に耐えていたんですが、大丈夫。これがアウェイなら、昨今のサル守備も相まって、簡単に追いつかれてしまうところでしたが、不思議にもメトロポリターノでは耐えられてしまうとなれば、もう一生、ホームゲームだけしていればいいと思ってしまうのはきっと、私だけではなかったかと(最終結果2-1)。
おかげで5位のアスレティックとの勝ち点差が5に増え、コパ決勝のみならず、来季のCL出場権の懸かった4位まで奪われるという心配からはとりま、解放されたアトレティコでしたが、いよいよ今週は待ちに待ったミッドウィークフリーが到来。何せ、最下位のアルメリアと引分けるぐらいのアウェイ弱者の彼らですからね。土曜のカディス戦には不安が大ありとはいえ、このメトロポリターノでの地の利を生かせば、来週水曜のCLインテル戦2ndレグでの逆転突破や、その次のバルサ戦も何とかなるんじゃないかと私も楽観的になりたいものですが…とにかく大事なのは、「リーガで4位になればいいと思うだけでなく、もっと上を目指さないと。Siempre hay que ser ambiciosos para lograr cosas más grandes/シエンプレ・アイ・ケ・セル・マス・アンビシオーソス・パラ・ログラル・コーサス・マス・グランデス(常にもっと大きなことを達成するために野心的でないといけない)」(オブラク)という姿勢ですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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え、だったら、午後9時(日本時間翌午前5時)と遅い時間に始まる今週水曜のCL16強対決ライプツィヒ戦2ndレグなんて、完全にアウトじゃないかって?いやそれが、やはり世界最高を自負するクラブは観戦環境も最高で、ええ、3年間、こつこつ続けてきた全面改修もいよいよ終わりが近づき、今季から、サンティアゴ・ベルナベウは悪天候時にスタジアムの屋根を閉じることができるように。プレス席が8階の高みにあるように、四方もスタンドでがっちり囲まれているため、風が入って来ず、しかも天井の梁には暖房設備もあるため、夜の試合でもファンは心置きなく、コートを脱いで、ユニフォーム姿でレアル・マドリーの応援に精を出せるんですよ。まあ、別に私がそうする訳ではありませんが、遥か昔に感じられる2月13日にあったライプツィヒでの1stレグはブライムがゴールを挙げて、マドリーが0-1で先勝。折しも土曜にはボーフムに1-4と勝利し、ブンデスリーガ5位で来季のCL出場権争いの真っ最中にある相手には少々、もの足りないアドバンテージではありますが、その試合を負傷で欠場したリーガピチチ(得点王)のベリンガムが戻って来ましたからね。同様にリュディガーも復帰していますし、出られないのは4月まで待たないといけないGKクルトワ、ミリトン、そしてヒザの靭帯断裂の時期が遅く、今季絶望となっているアラバだけとなれば、リーガで躓いたばかりとはいえ、最多の優勝14回を誇る得意の大会だけに、まだこの段階で敗退を心配する必要はない?それが午後6時30分前にコリセウムに着くべく、ハーフタイムにスタジアムを出た私がメトロ、セルカニアス(国鉄近郊路線)を乗り継いでいる間に大変なことになっていたようで、いえ、電車の窓から、天気がかなり荒れ模様だったのはわかったんですけどね。どうやらバジェカスでは後半10分過ぎから、激しくみぞれが降り注ぎ、ピッチが真っ白に。「Los jugadores no sentían los pies/ロス・フガドーレス・ノー・センティアン・ロス・ピエス(選手たちには足の感覚が無かった)」(ペジェフリーノ監督)程の有り様にゲームが12分間中断していたんですが、やはりガンガン雨が吹きつける中、私がようやくコリセウムに辿り着く寸前だった後半32分、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況がラージョのゴールを絶叫することに。
そう、イシの蹴ったCKにGKレデスマの手が届かず、ファーサイドに落ちたボールをルジューヌが蹴り込んで先制点となったんですが、うーん、その時もまだ雨は止んでいなかったみたいですからねえ。そのまま勝ったら、選手たちもファンもズブ濡れのまま、「La vida de pirate(ラ・ビダ・デ・ピラータ/海賊人生)」を歌う、恒例のお祝いをするのかと、試合前からビショビショになってアップしているヘタフェとラス・パルマスの選手たちを眺めながら、心配になったものの、これはいいんだか悪いんだか。後半ロスタイム2分にはチュストのスルーパスをハビ・エルナンデスに決められて、最後はカディスと1-1で引分けちゃいましたっけ。
おかげで降格圏との差は勝ち点7で変わらないながら、順位が16位に落ちてしまったラージョですが、まだ残り11試合ありますからね。まずはこの日曜のアラベス戦から、心機一転、頑張ってもらいたいものですが、とにかくRdT(ラウール・デ・トマス)を筆頭にファルカオ、カメージョ、エヌテカら、FW陣がゴールを挙げてくれないことには、残留達成の道も厳しいものになるかもしれません。
一方、濡れた机やシートを拭くのに何枚ものテッシュが必要だったコリセウムではキックオフから少しして、雨がみぞれに変わり、視界が白くなってしまったんですが、幸いピッチに積もるまでには至らず。ヘタフェの選手たちもそれ程、気にならなかったのか、早くも前半11分にはディエゴ・リコのロングパスをマタがエリア内で胸トラップ、volea(ボレア/ボレーシュート)を決めて先制すると、その3分後にもグリーンウッドが2点目を挙げていたんですが、もしやこれって、温暖なカナリア諸島から来たラス・パルマスがこういう悪天候に不慣れだったせい?
実際、雨が止んだ35分にはヘタフェOBでもあるサンドロにエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められてしまったんですが、45分にはマタのクロスをマクシモビッチがヘッドして3点目を奪い、試合は3-1のスコアでハーフタイムに入ることに。2点差もあれば、後半ムリして攻める必要もないとボルダラス監督も思ったか、右SBをカルモナから本職のファン・イグレシアスに代えて再開したところ、5分には大勢の選手をすり抜けるマルモルのラストパスをカルドナに流し込まれ、あっという間に1点差になってしまったから、さあ大変。更に14分には、同じくヘタフェOBのムニルがGKダビド・ソリアを1対1で破り、うーん、最初はオフサイドと判定されていたんですけどね。
VAR(ビデオ審判)により、それが取り消され、とうとう3-3になってしまったとなれば、やっぱりジェネとアルデレテのダブル出場停止は痛かった?試合は結局、そのまま引分けで終わったんですが、何より大きな犠牲だったのは後半33分に負傷交代したマジョラルで、ええ、翌日の検査で左ヒザの半月板損傷が発覚し、全治2、3カ月となってしまいましたからね。ここまでリーガ15得点で、サラ(スペイン人の得点王)賞獲得や3月のスペイン代表に招集される当人の夢も潰えてしまいましたし、大体がして、ヘタフェは彼のゴールを当てにして、1月にヒザの靭帯断裂からようやく復活した、昨季までのエース、エネス・ウナルをボーンマスに売却。一応、残留目安の勝ち点40まではあと5ポイントと順調ではありますが、FWがマタ、グリーンウッド、ラタサだけとなっては、勝ち点7差ある6位以上のEL出場圏を目指すのはちょっと、難しくなってきたかと。
そんなヘタフェは次節、土曜にバレンシア戦をメスタジャでプレーするんですが、折しもその日は兄貴分が次の時間帯でまさにその相手と激突。私も急いでマドリード市内に戻り、自宅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に滑り込んで、後半から見ることができたんですが、前半はかなりの波乱があったよう。いやあ、先週もミッドウィークフリーだった上、足首のネンザからとうとうベリンガムも復帰したため、誰もがより強力になったマドリーを期待していたんですけどね。27分にはビニシウスが自陣エリア内でフルキエにボールを奪われ、そのクロスをカノスは撃ち損じてしまったものの、ウーゴ・ドゥーロに決められてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。
その3分後にもマドリーはカルバハルが不注意なバックパスを送り、そのボールを奪ったヤレムチュクがウクライナ代表仲間のGKルーニンをかわして、バレンシアの2点目を挙げたんですが、ロスタイムにはミスをした2人が奮起。カルバハルのシュートはGKママルダシビリに弾かれてしまったものの、こぼれ球をビニシウスが押し込んで2-1になったところで、前半は終了します。すると後半はアンチェロッティ監督がクロース、ロドリゴをモドリッチ、ブライムに、更にカマビンガ、メンディをホセル、フラン・ガルシアに代えてから、マドリーに勢いがつき、とうとう31分にはブライムのクロスをビニシウスがゴール前からヘッドして同点に追いついたため、これは十八番のremontada(レモンターダ/逆転劇)コースかと思ったところ…。
それが無茶苦茶アクシデントの多い終盤だったんですよ。まずは41分、マドリーのFK攻撃の際にチュアメニがディアカビの上に倒れ、相手がヒザを脱臼。全治1年にもなる大ケガに両チームの選手が騒然となる中、当人は担架退場したんですが、45分にはエリア内でシュートに行ったウーゴ・ドゥーロがフラン・ガルシアとナチョの間で倒れて、主審がペナルティを宣告したから、ビックリしたの何のって。これは幸いVAR注進のおかげでなくなったんですが、まさかロスタイム7分が1分延長された最後のプレーで、「Es algo que no me había pasado nunca en mi carrera/エス・アルゴ・ケ・ノー・メ・アビア・パサードー・ヌンカ・エン・ミ・カレラ(私のキャリアの中で1度も起きなかった何か)」(アンチェロッティ監督)が発生するとは!
そう、「El árbitro dice que es la última/エル・アルビトロ・ディセ・ケ・エス・ラ・ウルティマ(審判はこれが最後だと言った)」(ウーゴ・ドゥーロ)CKで、モドリッチが蹴ったボールをママルダシビリがパンチングで弾き、本来なら、そこで終了の笛が鳴ってもおかしくなかったんですけどね。ヒル・マンサーノ主審がそれをしなかったため、転がったボールを拾ったブライムが渾身のクロスを挙げたところ、何とベリンガムのヘッドがゴールに入ったんですよ。なのにその途中に笛が吹かれていたため、ゴールはスコアに上がらず、マドリーの逆転勝利も雲散霧消となれば、大騒動にならない訳はありませんって(最終結果2-2)。
ええ、ベリンガムなど、主審に「It's a fucking goal!(あれはクソッたれなゴールだ)」とイギリス人にありがちな形容詞をつけて抗議したため、レッドカードを出されてしまいましたしね。彼には日曜のセルタ戦以降、2、3試合の出場停止処分が課されるかもしれないとなると、マドリーにとってはじくじたる思いでしょうが、ただ日曜の結果を見ると、大した痛手ではなかったかと。というのも2位のジローナはコパ・デル・レイ準決勝レアル・ソシエダ戦2ndレグと決勝進出祝いで疲弊しているはずのマジョルカに敗れ、勝ち点差が7に拡大。3位のバルサもアトレティコを破って、コパ決勝の切符を掴んだアスレティックとスコアレスドローとなり、勝ち点8差のままで、唯一、4位のアトレティコだけが勝利して、首位チームの躓きに乗じることができたんですが…。
いやあ、自業自得とはいえ、勝ち点13差が11差になったとて、誰も話題にはしてくれませんよねえ。ちなみにCL16強対決インテル戦1stレグ、リーガのアルメリア戦、コパ準決勝2ndレグのアウェイ3連戦で1勝もできず、ようやくメトロポリターノに戻って来た彼らは、ベティス戦でやはりホームに勝る場所はないことを再確認。ええ、前半8分にはもう、メンフィス・デパイのシュートがゴール前でベジェリン、ペッツェッラが弾き合って、最後はGKルイ・シウバのオウンゴールで先制とは、ラッキー以外の何物でもないじゃないですか。
ただ、サン・マメスでも17本(うち枠内6本)も撃ちながら、無得点で終わったシュート効率の悪さは持続していて、デパイが2度続けて弾かれていたり、27分などもう最悪。モラタがルイ・シウバに倒され、VARでオフサイドでなかったことが保証されたため、PKをもらったんですが、モラタはそのPKを止められたけでなく、その跳ね返りを3度シュートして、ことごとく弾かれているんですから、恐ろしい。でもねえ、努力が実るのもメトロポリターノのいいところで、またしてもみぞれが降り出していた44分、デ・パウルがエリア外から撃ったシュートをルイ・シウバが弾いたボールに誰より早く反応。ヘッドで2点目を挙げてくれたとなれば、ここ8試合続いたモラタのゴール日照りもとうとう終わったと見なしていい?
おかげで2-0とリードして後半に入ったアトレティコは、うーん、シメオネ監督によると、「ウチはハードな試合をこなした後で、決勝に行けなかった失望が、podía pasar factura en algún momento/ポディア・パサール・ファクトゥーラ・エン・アルグン・モメントー(いつかはツケとなって現れかねなかった)」そうなんですけどね。ペジェグリーニ監督の梃入れが効いて、17分にはジョレンテのボールロストから、途中出場のカルバーリョにエリア外から見事なゴールを決められて、1点差に迫られた後はもっぱら専守防衛に回ることに。ええ、それこそ33分にギド・ロドリゲスのシュートをGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防ぐやいなや、シメオネ監督は大慌てでデパイに代え、レイニウドを入れていたぐらいですからね。
最後はモラタもサビッチに代わり、ジョレンテとリケルメが前線という純正FWなしの陣形にして、ベティスの反撃に耐えていたんですが、大丈夫。これがアウェイなら、昨今のサル守備も相まって、簡単に追いつかれてしまうところでしたが、不思議にもメトロポリターノでは耐えられてしまうとなれば、もう一生、ホームゲームだけしていればいいと思ってしまうのはきっと、私だけではなかったかと(最終結果2-1)。
おかげで5位のアスレティックとの勝ち点差が5に増え、コパ決勝のみならず、来季のCL出場権の懸かった4位まで奪われるという心配からはとりま、解放されたアトレティコでしたが、いよいよ今週は待ちに待ったミッドウィークフリーが到来。何せ、最下位のアルメリアと引分けるぐらいのアウェイ弱者の彼らですからね。土曜のカディス戦には不安が大ありとはいえ、このメトロポリターノでの地の利を生かせば、来週水曜のCLインテル戦2ndレグでの逆転突破や、その次のバルサ戦も何とかなるんじゃないかと私も楽観的になりたいものですが…とにかく大事なのは、「リーガで4位になればいいと思うだけでなく、もっと上を目指さないと。Siempre hay que ser ambiciosos para lograr cosas más grandes/シエンプレ・アイ・ケ・セル・マス・アンビシオーソス・パラ・ログラル・コーサス・マス・グランデス(常にもっと大きなことを達成するために野心的でないといけない)」(オブラク)という姿勢ですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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