【超ジュニアサッカーガイド】FC PORTA|異端のクラブが神奈川で起こす育成革命

2026.02.24 12:00 Tue
冬の夜。吐く息が白くなる寒さのなかで、ピッチだけが異様に熱を帯びている。半袖の選手も珍しくない。足は止まらず、声が飛び、プレーが途切れない。

「これじゃ、神奈川ベスト4で負ける強度だぞ。強度は落としちゃダメだ。1人がゆるくなると、みんながゆるくなる」

神奈川県を拠点に活動するジュニアサッカークラブ「FC PORTA」。代表・谷口凱哉の声が、ピッチに響き渡っている。
感情的に怒鳴っているわけではない。どのプレーが、なぜ足りないのか。どこを基準に、どこまで引き上げたいのか。すべてが具体的で、要求の矛先は常に「自分」に向けられている。

FC PORTAを語るうえで欠かせない言葉がある。
それが「強度」だ。
■日本一は目的じゃない。「入口」としてのクラブ

FC PORTAの公式サイトには、はっきりとこう記されている。

「日本一のチームを目指すのではなく、将来、日本トップクラスで活躍できる選手を育てる」

谷口代表は、その真意をこう語る。

「日本一を目指してないわけじゃないです。でも、それは副産物でいいと思ってます。小学生年代がゴールじゃない。ここは“入口”であって、そこから先で戦える選手を育てたいんです」

クラブ名の由来も、この思想と重なる。港を意味する“PORT”、入口を意味する“PORTAL”。神奈川という土地を、プロサッカー選手へと向かう入口にしたい。FC PORTAにとって小学生年代は、ゴールではなくスタート地点だ。

■勝てなかった時代から、すべては始まった

今でこそ“強豪ジュニアクラブ”として知られるFC PORTAだが、設立当初はまったく違った。

「最初は、ほんとにどこにも勝てなかったです。県大会もベスト128とかで終わってました」

サッカー未経験の子どもたちも多く、文化も基準もない状態。休憩時間にサイダーを開けてしまうほど、当たり前が共有されていなかったという。

それでも、指導のスタンスだけは一切変えなかった。

「1期生には、とにかくこの熱量をぶつけ続けました。最初から、このやり方です。むしろ昔のほうが、もっと熱かったかもしれない」

結果が出ない時期も、基準を下げない。辞めていく選手がいる一方で、同じ熱量を求めて集まってくる選手もいた。

転機となったのは、1期生の代。大会でJクラブの下部組織を次々と破り、優勝を果たす。決勝後、グラウンドの外にはスカウトが列をなしたという。

「勝ったから見られたわけじゃないと思ってます。最後まであの強度でやり切ったことを、見られたんだと思います」

■「強度」が低いと、“使えないうまさ”が育つ

FC PORTAの練習は、きつい。それは間違いない。だが、ただ追い込むだけのトレーニングではない。

「楽な環境でできることって、正直いくらでもある。でも、上に行けば時間もスペースもない。その中で何ができるかが大事なんです」

谷口代表は、そう言い切る。

プレッシャーがあるからこそ、判断が磨かれる。きつい状態だからこそ、技術の“本物”が残る。

「強度が低いと、使えないうまさばっかりうまくなる」
「誰かに任せるな。リーダーになれ」
「1人が100%を出せば8人で800%。でも、1人が1%でもサボれば負ける」

ピッチに飛ぶ言葉は、すべて未来を見据えたものだ。

■バルサへ渡った少年が証明したもの

FC PORTAの名を一気に全国へ広めた存在がいる。世界的名門クラブFCバルセロナの下部組織・カンテラでプレーする11歳・西山芯太だ。

多くのJクラブから声がかかるなか、彼と家族が選んだのはFC PORTAだった。

「息が上がるのも嫌だったと思います。でも、そこは相当要求しました。結果的に、誰よりも追い込めるようになった。それが一番大きかったと思います」

才能があるからこそ、逃げ道を作らない。
強度から目を逸らさせない。
その積み重ねが、世界への扉を開いた。

■進路実績は、“育成の結果”にすぎない

FC PORTAの卒業生は、FC LAVIDA、川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、横浜FC、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ、FC東京など、数多くの強豪クラブへ進んでいる。

だが、谷口代表は進路実績を誇るような言い方はしない。

「ギリギリでJクラブに入ることが、本当に正解なのか。それなら、15歳までしっかり育成してから選ばせたい」

12歳で完成する選手はいない。身体能力が先行し、ピークが早く来てしまう選手を、これまで何人も見てきた。

2027年度から始動予定のジュニアユース設立も、その思想の延長線上にある。

■異端であることを、恐れない

FC PORTAは、決して万人受けするクラブではない。強度を求め、妥協を許さない。辞めていく選手もいる。

それでも、谷口代表は迷わない。

「魂を削って、選手に渡す。それが仕事だと思ってます」

異端と呼ばれながらも、FC PORTAは神奈川の地で確かに根を張っている。ここはゴールではない。未来へと向かう“入口”だ。

このピッチから、また一人。世界へと続く扉を叩く選手が、生まれようとしている。



【プロフィール】
谷口凱哉(たにぐち・がいや)
愛知県出身。愛知県立松蔭高校卒。大学進学を機に神奈川県へ。
学生時代からスクール指導に携わり、監督の羽毛勇斗とともにFC PORTAを設立し、代表を務める。

【クラブプロフィール】
チーム名:FC PORTA
活動拠点:神奈川県
練習場所:
代表:谷口凱哉
監督:羽毛勇斗
創立:2018年
部員数:
所属リーグ:
大会実績:神奈川県主要大会 上位進出、各種全国・招待大会で優勝・上位入賞多数
主な進路先:
FCバルセロナ(スペイン)、CEサバデル(スペイン)、FC LAVIDA、川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、横浜FC、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ、FC東京、FC町田ゼルビア ほか

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly