【超ジュニアサッカーガイド】Grant FC |「叶える力」を育てる。日野発・10年の積み重ねが生んだ“帰ってこられるクラブ”

2026.02.13 20:00 Fri
東京都日野市を拠点に活動するジュニアサッカークラブ、Grant FC。東京都大会ではベスト16の常連として名を連ね、2025年にはT2リーグ優勝、T1昇格を達成。2026年シーズンからは、いよいよT1リーグという新たな舞台に挑む。

だが、グラントFCの価値は、単なる「強豪クラブ」という言葉だけでは語りきれない。そこには10年という時間をかけて丁寧に積み重ねてきた、育成の思想と、地域に根ざしたクラブづくりの物語がある。

その歩みを率いてきたのが、クラブ代表・遠藤健吾だ。
■幼稚園から始まった、異色のクラブヒストリー

グラントFCの前身は、地元・多摩平幼稚園を母体としたサッカークラブだった。
遠藤は大学卒業後、幼稚園に勤務しながら幼児サッカーの指導に携わってきた人物。サッカー以前に「子ども」と向き合う時間を長く過ごしてきた指導者でもある。
約10年前、認定こども園制度の導入をきっかけに、小学生年代のクラブを幼稚園運営から切り離す必要が生じた。
そこで遠藤は、40歳を目前にして大きな決断を下す。クラブを独立させ、自ら代表として運営していく道を選んだのだ。

「正直、怖さはありました。家族もいますし、簡単な選択ではなかった。でも、このチームがなくなってしまうかもしれない、卒業生が帰ってこられる場所がなくなるかもしれない、という思いの方が強かったですね」

こうして誕生したのが「Grant FC」。クラブ名の“Grant”には、「叶える」という意味が込められている。

「子どもたちが持っている夢の大小に関わらず、それを叶えようとする原動力になれたらいいなと。サッカーに限らず、何かに挑戦し続ける力を育てたいと思っています」

■ “子どもありき”で考える、グラント流の育成哲学

グラントFCの指導方針を一言で表すなら、「子どもありきのサッカー」だ。

セレクションを基本的に行わず、地域の子どもたちを広く受け入れる。だからこそ、毎年チームカラーは変わる。ドリブルが得意な世代もあれば、パスワークに長けた世代もある。

「この年代はこういうサッカーをやらなきゃいけない、という固定観念は持たないようにしています。その年、その学年の子たちが持っている良さを、どう生かすかを考える」

システムも固定しない。3-3-1をベースにしながらも、選手の特性に応じて柔軟に可変させていく。個人技術と戦術、そのどちらにも偏らず、判断のあるプレーを積み重ねていくことを重視している。

また、練習頻度にも特徴がある。平日は週2回、週末は原則1回。大会前などを除き、詰め込みすぎない。

「子どもたちは学校で十分頑張っています。サッカーが“やらされるもの”になってしまったら、吸収力は落ちてしまう。余白があるからこそ、サッカーを楽しめるし、成長も早い」

■縦割り合宿が育てる、自主性とリーダーシップ

グラントFCを語るうえで欠かせないのが、長年続けている“縦割り合宿”だ。

4・5・6年生が混合チームを組み、2泊3日を共に過ごす。その間、指導者は一切コーチングをしない。試合も運営も、すべて子どもたちに任せる。

特徴的なのはルール設定。4年生がゴールを決めると「2点」になる。自然と上級生には、下級生の力を引き出す役割が求められる。

「威圧的に引っ張ってもダメなんです。どう声をかけるか、どう任せるか。そこで初めて、リーダーシップの意味を体感する」

最初はぎこちなかったチームが、日を追うごとに一つになっていく。勝敗に涙する6年生の姿は、毎年のように見られるという。

「大人になってからも、あの合宿の話をしてくれる卒業生は多いですね。グラントの原風景みたいなものだと思っています」

■強さの理由は、「積み上げを止めなかったこと」

グラントFCは、全日本U-12選手権でも毎年のように東京都ベスト16に名を連ねてきた。
2025年にはT2リーグ優勝を果たし、T1昇格。決して“一発屋”ではない。

「特別な才能が集まっているわけではない世代もあります。でも、チームとしてどう戦うかを考え続けてきました」

個で勝てないなら、グループで。
それも難しければ、チーム力で。
型に当てはめるのではなく、目の前の選手たちに合わせてアプローチを変える。その積み重ねが、結果として“強豪”と呼ばれる立ち位置につながっている。

■女子の居場所を守るために生まれた「ジョイアス」

グラントFCは男子チームだけではない。設立から2年後、女子ジュニアユースチーム「ジョイアス」を立ち上げた。

「小学生までは一緒にサッカーができても、中学生になると女子は続ける場所が一気に減ってしまう。そこでサッカーを辞めてしまう子が多い現実を、どうにかしたかった」

“ジョイアス”はポルトガル語で「宝石たち」という意味。原石のような選手たちが、お互いを磨き合って輝いてほしいという願いが込められている。

現在は約30人が在籍し、2部・3部リーグに2チームをエントリー。競技性だけでなく、「続けられること」を大切にした女子育成の場として、確かな存在感を放っている。

■帰ってくる場所があるということ

グラントFCのスタッフ陣の多くは、クラブの卒業生だ。
中には社会人、公務員になってからも、無償で指導に関わり続けるOBもいる。

「自分が育った場所に戻ってきたいと思ってもらえる。それが一番嬉しいですね」

プロ選手を輩出することも誇らしい。
だが遠藤が大切にしているのは、「サッカーが人生の一部であり続けること」だ。

■日野という街で、これからも

現在の練習拠点は、日本工学院八王子専門学校八王子キャンパス総合グラウンド。照明のない環境を補うため、移動式ライトを導入し、冬の寒さの中でも子どもたちは元気にボールを追う。

T1リーグ初挑戦となる2026年。結果への期待は高まるが、クラブのスタンスは変わらない。

「目の前の子どもたちにとって、今何が一番いいか。それを考え続けるだけです」

“叶える力”を育てるクラブ、Grant FC。
そのグラウンドには、挑戦する選手も、戻ってくる卒業生も、同じように居場所がある。

取材・文=北健一郎

【プロフィール】
遠藤健吾(えんどう・けんご)
東京都町田市出身。
大学卒業後、幼稚園勤務を経て幼児・少年サッカーの指導に携わる。多摩平幼稚園サッカークラブを母体に、約10年前にGrant FCを設立。幼児期から育成年代まで一貫して子どもと向き合ってきた経験を生かし、「子どもありきのサッカー」「叶える力を育てる」を軸に、地域に根ざしたクラブづくりを続けている。

【クラブプロフィール】
チーム名:Grant FC
活動拠点:東京都日野市
練習場所:日本工学院八王子専門学校八王子キャンパス総合グランド
代表:遠藤健吾
創立:2015年(前身:多摩平ジュニアサッカークラブ)
部員数:約170名
所属リーグ:三井のリハウスリーグ「T2」(2025年時点)
2025年:T2リーグ優勝、2026年よりT1リーグ)
大会実績:全日本U-12サッカー選手権大会 東京都大会ベスト8(2024年)
主な進路先:
東京ヴェルディ、FC東京むさし、川崎フロンターレ、FC町田ゼルビア、SC相模原、横河武蔵野FC、三菱養和調布ほか
クラブ出身プロ選手:
原大智(FCザンクトパウリ/ブンデスリーガ)、小林幹(春川シティゼン/Kリーグ)、村山彩(大和シルフィード/なでしこリーグ※2025年引退)
女子部門:女子ジュニアユースチーム「ジョイアス」

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