新たな清水エスパルスが動き出す…吉田孝行新監督が実施した“下ごしらえ”、立ち位置からはじまる改革
2026.02.07 16:01 Sat
吉田孝行新監督を迎え入れ、新たに始動した清水エスパルス。「自分が勝つ確率が高いと思うサッカーをやっていきたい」と語る指揮官の下で、チームは一歩ずつではあるが、着実に成長を続けている。
■新監督が蒔いた種。立ち位置という基準
このプレシーズン期間、吉田孝行監督が何よりも重視したのはポジショニングだった。当たり前だが、昨季までのチームも、それぞれのポジションにやるべきことは与えられていた。しかしながら、選手個々人の判断が尊重されていた背景もあり、“チーム”として歯車が完璧に噛み合わない試合があったことは否定できない。
だが、吉田監督にとって、立ち位置はチームでプレーする上で遵守しなければならないルール。だからこそ、戦術的な練習では事あるごとにプレーを止め、立ち位置を修正した。ただ単に修正するだけではなく、“なぜ修正しなければならないのか”をきっちり説明し、選手たちに落とし込んでいく。今季より新たに主将に就任したMF宇野禅斗は「(吉田監督は)確率論という言葉を用いて話をしてくれるのですが、すごく理に適っている。たとえば、『ここに選手がいるからこそ、セカンドボールを拾えるよね』といった説明は、スッと入ってきやすかった」と口にしていた。
立ち位置をきっちりと守ることは大前提。クロス対応時に埋めるべきスペースはどこなのか、ハイプレスでは誰がどこに制限をかけるのか、どこに立てばセカンドボールを拾えるのか、攻撃時に幅を取る選手は誰なのか、ロングボールはどのエリアに、どのような状態で入れるのか…。具体例を挙げれば枚挙にいとまがない。
「センターフォワード、ウイング、左インサイドハーフは構造上、得点を取れるような設計になっています。僕は得点を取れる位置取りを求められている。逆に、チャンスに絡めない時は、それ(正しい立ち位置)ができていないからゴール前に入るのが遅れているという理屈になります。その上で、個性を出していくことが求められる」と語ったのはFW北川航也。鹿児島キャンプ中に行われたギラヴァンツ北九州との練習試合では、右ウイングで起用され、それまでの練習で磨いてきた攻撃の型を用いてMFカピシャーバの先制点をアシストしたが、早速吉田監督からは「もうワンテンポ早く!」との声が飛んだ。北川自身も、吉田監督の発言の意図を理解している。だからこそ、充実の表情を浮かべつつ、さらなる高みを見据えている。
「前に出て、奪われたら戻って、そこからまた出ていく。それが1つのセットになると思うので、なかなかキツイですよ(笑)。頭で理解して、そこから体を動かすようじゃ、ワンテンポ遅れてしまいますし、頭で考える前に体がすぐに動くところまで持っていかないと、タイトルを獲ること、上位に入っていくことは難しい。その基準は、スタッフの皆さんや監督が知っていると思うので、できる限り早くそこまで持っていきたいですね」(北川)
守備面でも、明確な立ち位置が与えられたことで、DF住吉ジェラニレショーンは「(昨季と比べて)選手の立ち位置が変わってくる。失点のリスクは単純に見たら減るかなと思っています。自分の中ではわかりやすいですね」と、前向きな手応えを掴んでいる。もちろん、実戦を見ているとまだまだ理解を深めなければならない部分はあるが、“チームで守る”ための基準は明確に提示された。あとは、精度を高め、公式戦のピッチで現段階の成果を示すだけだ。
■同じ方向を見る集団。“チーム吉田”の強み
同時に指摘しておきたいのは、吉田監督のコンセプトを理解している選手・スタッフがいたこと。プレシーズン期間の“種を蒔く”段階において、彼らの存在は非常に大きかった。
吉田監督は単身で清水にやってきたわけではない。菅原智コーチ、宮原裕司コーチ、北本久仁衛コーチ、藤原寿徳GKコーチ、竹中達郎コーチ兼分析、嶋将平コーチ兼分析と、神戸で共に“黄金時代”を築き上げたスタッフ6名を引き連れ、清水へ加わった。
監督以下、コーチングスタッフが“チーム”で移動するのは、欧州ではスタンダードではあるものの、Jリーグで定着しているとは言い難い。このような人事を実行した狙いについて、反町康治GMは新体制発表記者会見にて、「開幕までの時間がない中で、まずは監督の意向を大事にさせていただいた」と明かしている。吉田監督自身が「プロフェッショナルな仕事をしてくれるメンバー」と全幅の信頼を寄せるスタッフが揃ったからこそ、従来よりも準備期間が短い明治安田J1百年構想リーグ前のプレシーズンであっても、コンセプトの落とし込みを順調に進めることができた。
“チーム吉田”の存在感は、実際に指導を受ける選手たちにも確かに届いている。鹿児島キャンプ中、MF弓場将輝は「何より感じたのは、神戸から加わったスタッフのみなさんが、タカさんへのリスペクトをすごく持っていること」と率直な思いを明かした。「常に同じ方向を向いている。改めて優勝するチームのスタッフだなと感じました」という言葉には、現場で接したからこそ得られた実感がにじんでいる。
吉田監督自身、開幕を前にした段階で、旧知のスタッフとともにチームづくりを進められたことを「大きかった」と振り返っている。同時に、今季のチームには、神戸時代に共闘したDF本多勇喜も加わったが、「自分のやりたいサッカーのイメージを知っている選手がいるのは大きい」とは吉田監督の弁。“理想像”を具体的にイメージできる選手・スタッフの存在が、新監督のコンセプト浸透において一役買っていた。
もちろん、現段階で“やりたいこと”の100%を見せられるわけではないだろう。公式戦のピッチだからこそ得られる発見は、ポジティブなものだけでなくネガティブなものもあるに違いない。だが、明確な信念と共に、基盤を落とし込んできたこの期間があれば、戦い方が大幅にブレることはないと断言できる。着実に歩を進めた先にあるチームがどのような姿に変貌を遂げるのか。ワクワクするなと言うほうが難しい。
取材・文=榊原拓海
■新監督が蒔いた種。立ち位置という基準
このプレシーズン期間、吉田孝行監督が何よりも重視したのはポジショニングだった。当たり前だが、昨季までのチームも、それぞれのポジションにやるべきことは与えられていた。しかしながら、選手個々人の判断が尊重されていた背景もあり、“チーム”として歯車が完璧に噛み合わない試合があったことは否定できない。
立ち位置をきっちりと守ることは大前提。クロス対応時に埋めるべきスペースはどこなのか、ハイプレスでは誰がどこに制限をかけるのか、どこに立てばセカンドボールを拾えるのか、攻撃時に幅を取る選手は誰なのか、ロングボールはどのエリアに、どのような状態で入れるのか…。具体例を挙げれば枚挙にいとまがない。
もちろん、対戦相手によって変化する部分も数多くあるため、あくまでベースとしての意識付けの話にはなってしまうが、実際にトレーニングの中で強化してきた項目はすべて、吉田監督にとっての“正しいポジショニング”を守らなければ実行するのは難しい。吉田監督が目指すサッカーを、ヴィッセル神戸を率いていた際の代名詞でもある『高強度』とのキーワードで片づけることは簡単だが、実際には高強度を効果的に発揮するための“下ごしらえ”を徹底したのがこのプレシーズン期間だった。
「センターフォワード、ウイング、左インサイドハーフは構造上、得点を取れるような設計になっています。僕は得点を取れる位置取りを求められている。逆に、チャンスに絡めない時は、それ(正しい立ち位置)ができていないからゴール前に入るのが遅れているという理屈になります。その上で、個性を出していくことが求められる」と語ったのはFW北川航也。鹿児島キャンプ中に行われたギラヴァンツ北九州との練習試合では、右ウイングで起用され、それまでの練習で磨いてきた攻撃の型を用いてMFカピシャーバの先制点をアシストしたが、早速吉田監督からは「もうワンテンポ早く!」との声が飛んだ。北川自身も、吉田監督の発言の意図を理解している。だからこそ、充実の表情を浮かべつつ、さらなる高みを見据えている。
「前に出て、奪われたら戻って、そこからまた出ていく。それが1つのセットになると思うので、なかなかキツイですよ(笑)。頭で理解して、そこから体を動かすようじゃ、ワンテンポ遅れてしまいますし、頭で考える前に体がすぐに動くところまで持っていかないと、タイトルを獲ること、上位に入っていくことは難しい。その基準は、スタッフの皆さんや監督が知っていると思うので、できる限り早くそこまで持っていきたいですね」(北川)
守備面でも、明確な立ち位置が与えられたことで、DF住吉ジェラニレショーンは「(昨季と比べて)選手の立ち位置が変わってくる。失点のリスクは単純に見たら減るかなと思っています。自分の中ではわかりやすいですね」と、前向きな手応えを掴んでいる。もちろん、実戦を見ているとまだまだ理解を深めなければならない部分はあるが、“チームで守る”ための基準は明確に提示された。あとは、精度を高め、公式戦のピッチで現段階の成果を示すだけだ。
■同じ方向を見る集団。“チーム吉田”の強み
同時に指摘しておきたいのは、吉田監督のコンセプトを理解している選手・スタッフがいたこと。プレシーズン期間の“種を蒔く”段階において、彼らの存在は非常に大きかった。
吉田監督は単身で清水にやってきたわけではない。菅原智コーチ、宮原裕司コーチ、北本久仁衛コーチ、藤原寿徳GKコーチ、竹中達郎コーチ兼分析、嶋将平コーチ兼分析と、神戸で共に“黄金時代”を築き上げたスタッフ6名を引き連れ、清水へ加わった。
監督以下、コーチングスタッフが“チーム”で移動するのは、欧州ではスタンダードではあるものの、Jリーグで定着しているとは言い難い。このような人事を実行した狙いについて、反町康治GMは新体制発表記者会見にて、「開幕までの時間がない中で、まずは監督の意向を大事にさせていただいた」と明かしている。吉田監督自身が「プロフェッショナルな仕事をしてくれるメンバー」と全幅の信頼を寄せるスタッフが揃ったからこそ、従来よりも準備期間が短い明治安田J1百年構想リーグ前のプレシーズンであっても、コンセプトの落とし込みを順調に進めることができた。
“チーム吉田”の存在感は、実際に指導を受ける選手たちにも確かに届いている。鹿児島キャンプ中、MF弓場将輝は「何より感じたのは、神戸から加わったスタッフのみなさんが、タカさんへのリスペクトをすごく持っていること」と率直な思いを明かした。「常に同じ方向を向いている。改めて優勝するチームのスタッフだなと感じました」という言葉には、現場で接したからこそ得られた実感がにじんでいる。
吉田監督自身、開幕を前にした段階で、旧知のスタッフとともにチームづくりを進められたことを「大きかった」と振り返っている。同時に、今季のチームには、神戸時代に共闘したDF本多勇喜も加わったが、「自分のやりたいサッカーのイメージを知っている選手がいるのは大きい」とは吉田監督の弁。“理想像”を具体的にイメージできる選手・スタッフの存在が、新監督のコンセプト浸透において一役買っていた。
もちろん、現段階で“やりたいこと”の100%を見せられるわけではないだろう。公式戦のピッチだからこそ得られる発見は、ポジティブなものだけでなくネガティブなものもあるに違いない。だが、明確な信念と共に、基盤を落とし込んできたこの期間があれば、戦い方が大幅にブレることはないと断言できる。着実に歩を進めた先にあるチームがどのような姿に変貌を遂げるのか。ワクワクするなと言うほうが難しい。
取材・文=榊原拓海
出典:https://www.soccer-king.jp/news/japan/jl/20260207/2122657.html
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