本田圭佑が明かす4v4の狙いと進化──子どもたちに“答えを与えない”理由とは
2025.12.27 12:35 Sat
2023年にスタートした4人制サッカー大会「4v4」は3年目を迎え、いまやTOYOTA ARENA TOKYOで開催されるまでに成長した。U-10世代に全国大会が存在しなかった日本の育成年代に、新たな挑戦の場を作る──その構想は、子どもたちの自主性と意思決定を軸に、着実に広がりを見せている。
発起人である本田圭佑氏が4v4で最も大切にしているのは、「自分で考え、決断する力」。AIやYouTubeによって“答え”が溢れる時代において、なぜ今、子どもたちにその力が必要なのか。4v4の現在地、そしてジュニアサッカーの未来について、本田氏の言葉から紐解く。
■3年目を迎えた4v4、その手応えと想定外の進化
「多くの関係者のおかげで成長している自負はあります。子どもたちのレベルは本当に上がっている。参加してくれる子どもたちは毎年、いろいろなプレーを見せてくれます。3年目を迎えてルールも浸透してきて、面白い試合が増えたなという印象です。認知もされてきて、参加する人数やチームが増えてきました。そこは一定の手応えを感じています」
「一方で、目標を高く掲げてきてやってきているので、その成長スピードに満足しているかというと、そういうわけではないです。もっとやらないといけないなと思っていますね」
──大会の成長は想定内のものですか?
「想定内のもの、想定外のもの、両方ありますね。これだけの子どもたちが4v4に関わってくれるようになったことは想定内です。ここに関してはもっと伸ばしたい。期待はもっと高いですね」
「一方で想定外の側面は、今日もTOYOTA ARENA TOKYOで開催してます。こういう場所で大会を行うことは、思い描いていなかったですね。子どもたちにフィーチャーを当てることや大会のフォーマットは構想内でしたが、年々派手になっている。もはやこれは子どもの大会ではないレベルになっている。ここはいい意味で想定外ですね」
──まさに、小学生規模の大会としては最大級ですね。
「元々はU-10の世代に全国大会がなかったので始めた大会です。日本一を決める場、全国大会の場所を作ってあげたかった。それがここまで派手になるとは思ってなかったので、いい意味でみなさんにサプライズを与えられてるのであれば嬉しいですね」
──大会の規模が大きく成長して迎えた3年目ですが、これから先、4v4をどのように進化させていきたいですか?
「今年は、4v4のアジアカップを初めて開催しました。小さい大会でしたが、日本を含めて10カ国が参加してくれました。ここの拡張性はまだ始まったばかりです」
「4v4を進化させる上での課題は、日本よりも海外にあるなと。海外で4v4をやる難しさは国によって難易度が違う。例えばタイのようにすぐに受けられて開催できる国もあれば、サッカーが浸透していない国、経済がまだまだ発展途上の国などはかなり難易度が高いですね」
「国によって難易度はかなり違いますが、将来的には世界大会にしたい。4v4ワールドカップのようなものを夢見ている中で、その壁は引き続き立ちはだかっている印象で、ここをどう取り払って乗り越えていくか。それが直近の僕らの挑戦です。
「日本においては満足することなく、将来的に日本代表の選手たちの多くが4v4から巣立っていったと言えるようなものにしていきたいので、草の根活動じゃないですけど、引き続きやっていきたいと思っていますね」
■「監督はスパイス」──ジュニアサッカーに対する危機感
──本田さんが考える、ジュニアサッカーの課題は何でしょうか?
「サッカーはピッチ上の事象に対して監督が全て指示を出すわけではありません。監督はあくまでスパイスのようなもの。メインである子どもたちや選手たちは、自分で考えて、そのシチュエーションにあったベストのプレーの意思決定を、コンマ数秒の単位でし続けなければいけません。その連続が素晴らしいプレーにつながります」
「ただ、現代の子どもたちは、自分たちで考えてプレーする機会、場所が少なくなっています。僕が子どもの頃は大人がいない場所でサッカーをしていました。公園や放課後の校庭で友達同士でボールを蹴っていましたが、そこにコーチはいません。しかし今は、そういう環境がない。ここは課題だと思っています」
「これは4v4において一番大事にしているものでもあります。4v4には、僕が考えるサッカーをプレーする現代の子どもたちの課題を解決できるようなルールを作りました。なので、ベンチにコーチは入りません。その結果、指導者がいない中でもうまくワークできていると思います」
──監督がベンチ入りしないルールは、とても革新的だと思います。それは選手たちの自主性を育むために取り入れたルールなのでしょうか?
「自主性もですし、自分で考えて自分で意思決定をする。なんでもかんでも答えを求めない。これはサッカー選手に限った話ではなく、社会人として生きていく上で大事なこと。非認知力と言いますが、現代の子どもたちは低下する傾向にあると思います」
■AI時代に必要な力とは? 本田圭佑が語る“自主性”の正体
──今の時代はAIの発達やYouTubeによって、自分たちですぐに答えにたどり着けるようになりました。一方で、そうした環境が続くと、自分で考える力や自主性が育ちにくくなるのでは、という見方もあると思います。本田さんは、この時代における“自主性”をどう捉えていますか?
「サッカーにおける次世代に必要なスキルは明確で、自分で考えて意思決定する能力です。同じ指導者とずっと一緒に取り組んでいくわけではないですし、プレーする環境も変わる。戦術も変わる。そこに自分のスキルをどうアジャストさせて活躍していくかを常に考えないといけません。それは誰かが手助けしてくれるものでもないですし、自分でこの世界を生き残っていかないといけません。厳しいサッカー界を生き抜くための能力を、できるだけ子どもの時から身につける必要がある。自主性っていうのは、中心となる能力だと思います」
──そういった自主性、意思決定をする機会を与えるための4v4だと思います。3年目を迎えた今大会で、子どもたちの自主性や意思決定で成長を感じる部分はありましたか?
「もう1つのルールとして、GKをゴールプレイヤーとしています。攻撃時にはフィールドの選手としてプレーしているので、GKが攻め上がりやすい。なので、リスクを背負ってGKが上がるのかどうか。その意思決定が、4v4の醍醐味の1つですね」
「リスクを負えば負うほどいいプレーができるし、点が取れる可能性は高まります。しかし、当然ながらボールの取られ方が悪いと失点につながる。でも、そのプレーを選択するのは監督じゃなくて自分たちです」
「見ていると一向にリスクを負わずにゴールにへばりついているGKもまだまだ見られますし、一方で周囲のことを気にせず上がっていくGKも見受けられます。どっちにも良いところと悪いところがあるのですが、このルールを作った身としては、できるだけ後ろのこと気にせずに上がってほしいなと思っています。そこで挑戦しすぎて失点に繋がってしまった時に、また次の学びがある。前に出ないことには、それがどれだけのリスクなのかはわからない。出る前からそれがリスクだと思って出ないのもビビってるだけ。そういうふうには育ってほしくないと思っています。これは僕の個人的な希望ですね」
──この大会を目指す子どもたち、ジュニアサッカーでプレーしている子どもたちへ、本田さんが考える技術以外に必要なものがあればアドバイスをお願いします。
「サッカーに限らず、スポーツは心・技・体が必要です。その中で強度の部分で言うと、4v4はプレー時間が短いので、ものすごく強度が高いです。強度が高くなってしまうようなルール設計になっています。10分間の中でゲームがほぼ止まることがないので、普段のクラブ活動やスクールではなかなか体験しないほどの強度が詰まっています。さらに技術や判断も、この中に凝縮させています。普段のサッカーでは得られないものを得る場として、すごく最適だと僕らは自負しています」
「一方でサッカーは90分あり、1試合を通して強度高くプレーすることはできません。だからこそ、意思決定を含めて自分で判断して、どこで抜くのか、コントロールするのかを決める。そして90分を通して試合に勝つ。そこで活躍するためのプレーを身につけられるようになってほしい。4v4の立ち位置はそのスパイスみたいなものです。その違いに気づいてくれていたらいいですね。だから積極的に4v4にか関わってほしいなと思っていますし、プレーしてほしいなと思っています」
──そういった子どもたちを支える親御さんや指導者の方々へのメッセージを。
「夢を追いかけるのは大人でなくて子ども自身。子どもが夢を本気で叶えたいと思わない限りは実現しない。ただ、子どもたちはいろいろなきっかけでサッカーを好きになっていくと思います。こういう指導者、大人がいない環境の中で、子どもたちがサッカーを好きになる可能性って、僕は非常に高いんじゃないかなと」
「なので好きになってもらえるきっかけとして4v4に参加してもらえれば、もしかすると子どもが自分で考えてサッカーを自分でやる方が楽しいと思うかもしれない。いちいち指示されるより遊んでいる感覚に近いですし、それが大会になって、勝ち進めばこういう舞台でプレーができます。なので、ぜひ4v4を試してもらいたいなと思いますね」
取材・文=川嶋正隆
撮影=難波拓未
4v4 JAPAN CUP 2025 RESPECT YOU, au(ABEMA 無料見逃し配信)
発起人である本田圭佑氏が4v4で最も大切にしているのは、「自分で考え、決断する力」。AIやYouTubeによって“答え”が溢れる時代において、なぜ今、子どもたちにその力が必要なのか。4v4の現在地、そしてジュニアサッカーの未来について、本田氏の言葉から紐解く。
[速報]本田圭佑 容赦ない追加点!
— アベマサッカー (@ABEMA_soccer) December 25, 2025
4v4 JAPAN CUP 2025
レジェンド vs morochan,sU10
ABEMAで無料生中継
/
逆サイドからのきれいなパスを
本田が押し込む!
\@4v4official@kskgroup2017
──2023年にスタートした4v4が3年目を迎えました。ここまでを振り返った率直な手応えを教えてください。
「多くの関係者のおかげで成長している自負はあります。子どもたちのレベルは本当に上がっている。参加してくれる子どもたちは毎年、いろいろなプレーを見せてくれます。3年目を迎えてルールも浸透してきて、面白い試合が増えたなという印象です。認知もされてきて、参加する人数やチームが増えてきました。そこは一定の手応えを感じています」
「一方で、目標を高く掲げてきてやってきているので、その成長スピードに満足しているかというと、そういうわけではないです。もっとやらないといけないなと思っていますね」
──大会の成長は想定内のものですか?
「想定内のもの、想定外のもの、両方ありますね。これだけの子どもたちが4v4に関わってくれるようになったことは想定内です。ここに関してはもっと伸ばしたい。期待はもっと高いですね」
「一方で想定外の側面は、今日もTOYOTA ARENA TOKYOで開催してます。こういう場所で大会を行うことは、思い描いていなかったですね。子どもたちにフィーチャーを当てることや大会のフォーマットは構想内でしたが、年々派手になっている。もはやこれは子どもの大会ではないレベルになっている。ここはいい意味で想定外ですね」
──まさに、小学生規模の大会としては最大級ですね。
「元々はU-10の世代に全国大会がなかったので始めた大会です。日本一を決める場、全国大会の場所を作ってあげたかった。それがここまで派手になるとは思ってなかったので、いい意味でみなさんにサプライズを与えられてるのであれば嬉しいですね」
──大会の規模が大きく成長して迎えた3年目ですが、これから先、4v4をどのように進化させていきたいですか?
「今年は、4v4のアジアカップを初めて開催しました。小さい大会でしたが、日本を含めて10カ国が参加してくれました。ここの拡張性はまだ始まったばかりです」
「4v4を進化させる上での課題は、日本よりも海外にあるなと。海外で4v4をやる難しさは国によって難易度が違う。例えばタイのようにすぐに受けられて開催できる国もあれば、サッカーが浸透していない国、経済がまだまだ発展途上の国などはかなり難易度が高いですね」
「国によって難易度はかなり違いますが、将来的には世界大会にしたい。4v4ワールドカップのようなものを夢見ている中で、その壁は引き続き立ちはだかっている印象で、ここをどう取り払って乗り越えていくか。それが直近の僕らの挑戦です。
「日本においては満足することなく、将来的に日本代表の選手たちの多くが4v4から巣立っていったと言えるようなものにしていきたいので、草の根活動じゃないですけど、引き続きやっていきたいと思っていますね」
■「監督はスパイス」──ジュニアサッカーに対する危機感
──本田さんが考える、ジュニアサッカーの課題は何でしょうか?
「サッカーはピッチ上の事象に対して監督が全て指示を出すわけではありません。監督はあくまでスパイスのようなもの。メインである子どもたちや選手たちは、自分で考えて、そのシチュエーションにあったベストのプレーの意思決定を、コンマ数秒の単位でし続けなければいけません。その連続が素晴らしいプレーにつながります」
「ただ、現代の子どもたちは、自分たちで考えてプレーする機会、場所が少なくなっています。僕が子どもの頃は大人がいない場所でサッカーをしていました。公園や放課後の校庭で友達同士でボールを蹴っていましたが、そこにコーチはいません。しかし今は、そういう環境がない。ここは課題だと思っています」
「これは4v4において一番大事にしているものでもあります。4v4には、僕が考えるサッカーをプレーする現代の子どもたちの課題を解決できるようなルールを作りました。なので、ベンチにコーチは入りません。その結果、指導者がいない中でもうまくワークできていると思います」
──監督がベンチ入りしないルールは、とても革新的だと思います。それは選手たちの自主性を育むために取り入れたルールなのでしょうか?
「自主性もですし、自分で考えて自分で意思決定をする。なんでもかんでも答えを求めない。これはサッカー選手に限った話ではなく、社会人として生きていく上で大事なこと。非認知力と言いますが、現代の子どもたちは低下する傾向にあると思います」
■AI時代に必要な力とは? 本田圭佑が語る“自主性”の正体
──今の時代はAIの発達やYouTubeによって、自分たちですぐに答えにたどり着けるようになりました。一方で、そうした環境が続くと、自分で考える力や自主性が育ちにくくなるのでは、という見方もあると思います。本田さんは、この時代における“自主性”をどう捉えていますか?
「サッカーにおける次世代に必要なスキルは明確で、自分で考えて意思決定する能力です。同じ指導者とずっと一緒に取り組んでいくわけではないですし、プレーする環境も変わる。戦術も変わる。そこに自分のスキルをどうアジャストさせて活躍していくかを常に考えないといけません。それは誰かが手助けしてくれるものでもないですし、自分でこの世界を生き残っていかないといけません。厳しいサッカー界を生き抜くための能力を、できるだけ子どもの時から身につける必要がある。自主性っていうのは、中心となる能力だと思います」
──そういった自主性、意思決定をする機会を与えるための4v4だと思います。3年目を迎えた今大会で、子どもたちの自主性や意思決定で成長を感じる部分はありましたか?
「もう1つのルールとして、GKをゴールプレイヤーとしています。攻撃時にはフィールドの選手としてプレーしているので、GKが攻め上がりやすい。なので、リスクを背負ってGKが上がるのかどうか。その意思決定が、4v4の醍醐味の1つですね」
「リスクを負えば負うほどいいプレーができるし、点が取れる可能性は高まります。しかし、当然ながらボールの取られ方が悪いと失点につながる。でも、そのプレーを選択するのは監督じゃなくて自分たちです」
「見ていると一向にリスクを負わずにゴールにへばりついているGKもまだまだ見られますし、一方で周囲のことを気にせず上がっていくGKも見受けられます。どっちにも良いところと悪いところがあるのですが、このルールを作った身としては、できるだけ後ろのこと気にせずに上がってほしいなと思っています。そこで挑戦しすぎて失点に繋がってしまった時に、また次の学びがある。前に出ないことには、それがどれだけのリスクなのかはわからない。出る前からそれがリスクだと思って出ないのもビビってるだけ。そういうふうには育ってほしくないと思っています。これは僕の個人的な希望ですね」
──この大会を目指す子どもたち、ジュニアサッカーでプレーしている子どもたちへ、本田さんが考える技術以外に必要なものがあればアドバイスをお願いします。
「サッカーに限らず、スポーツは心・技・体が必要です。その中で強度の部分で言うと、4v4はプレー時間が短いので、ものすごく強度が高いです。強度が高くなってしまうようなルール設計になっています。10分間の中でゲームがほぼ止まることがないので、普段のクラブ活動やスクールではなかなか体験しないほどの強度が詰まっています。さらに技術や判断も、この中に凝縮させています。普段のサッカーでは得られないものを得る場として、すごく最適だと僕らは自負しています」
「一方でサッカーは90分あり、1試合を通して強度高くプレーすることはできません。だからこそ、意思決定を含めて自分で判断して、どこで抜くのか、コントロールするのかを決める。そして90分を通して試合に勝つ。そこで活躍するためのプレーを身につけられるようになってほしい。4v4の立ち位置はそのスパイスみたいなものです。その違いに気づいてくれていたらいいですね。だから積極的に4v4にか関わってほしいなと思っていますし、プレーしてほしいなと思っています」
──そういった子どもたちを支える親御さんや指導者の方々へのメッセージを。
「夢を追いかけるのは大人でなくて子ども自身。子どもが夢を本気で叶えたいと思わない限りは実現しない。ただ、子どもたちはいろいろなきっかけでサッカーを好きになっていくと思います。こういう指導者、大人がいない環境の中で、子どもたちがサッカーを好きになる可能性って、僕は非常に高いんじゃないかなと」
「なので好きになってもらえるきっかけとして4v4に参加してもらえれば、もしかすると子どもが自分で考えてサッカーを自分でやる方が楽しいと思うかもしれない。いちいち指示されるより遊んでいる感覚に近いですし、それが大会になって、勝ち進めばこういう舞台でプレーができます。なので、ぜひ4v4を試してもらいたいなと思いますね」
取材・文=川嶋正隆
撮影=難波拓未
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