英代表初招集! 離島のアマクラブ出身、挫折からのシンデレラストーリーでプレミア主力に定着

2025.11.08 12:00 Sat
©サッカーキング
イングランド代表に初招集されたMFアレックス・スコット(ボーンマス)の経歴に、注目が集まっている。イギリスメディア『BBC』やイングランドサッカー協会(FA)の公式サイトが伝えた。

2003年8月生まれのスコットは、イギリス本土の南に位置し、フランスにほど近いチャンネル諸島の一角を成すガーンジー島の出身。人口およそ6万人(2022年)の離島で生まれたスコットは、4歳の時に地元のクラブでサッカーを始めたという。

8歳からサウサンプトンのアカデミーの一員となったスコット。毎週金曜日の早い時間に学校を出て、母親か父親と一緒に飛行機で南海岸まで飛び、トレーニングに参加する週末を繰り返していたという。そんな生活が4年半ほど続いたが、サウサンプトンはスコットをリリースすることを決断。そのショックで「サッカーから少し心が離れてしまった」スコットは、後にボーンマスに拾われて1年ほど過ごしたものの、故郷に戻る決断を下した。
「故郷でサッカーへの愛を取り戻した」とスコット。「グラスルーツのフットボールに戻ることは、僕がこれまでに下した最高の決断の1つだ。僕が今いる場所にたどり着くのを助けてくれた」と当時を振り返った。

「金曜日に飛行機で行き、多くの場合がランチタイムだった。つまり、僕はかなりの回数、学校の授業を欠席した。金曜日にホテルに泊まり、土曜日の朝にトレーニングを受け、日曜日の朝に試合をし、日曜日に次の飛行機に乗って、月曜日に学校に戻ることができた」
「サウサンプトンは費用の一部を負担してくれただろう。彼らはホテル代を支払ったくれていたと思う。しかし、両親は毎週のフライト代を負担しなければならず、僕が年を重ねた今、それが彼らにとってどれほど大変であったかを理解している。僕がボーンマスのアカデミーに加入したとき、両親は飛行機代とホテル代の両方を支払わなければならなかった」

「当時のボーンマスでは本当に楽しくなかった。思うようにプレーできておらず、望むほど多くのプレータイムを得ていなかった。週末全体が20分間のサッカーのために無駄になっているように感じた。ボーンマスを離れるという決断は本当に大変だったが、一度決定を下すと、肩から大きな重荷が取り除かれたように感じた」

「グラスルーツに戻らなかったら、今のようなキャリアを積んでいなかったと思う。家に帰って、サッカーを楽しみ、人生をより満喫する。ピッチ外で僕を幸せにし、その結果がピッチでのより良いパフォーマンスを意味した。プレッシャーなしでゴールを決め、自由にプレーし、土曜日に友達とプレーし、土曜日の夜に外出を楽しむことができた。どんな若い選手も、ピッチ上だけでなく、ピッチ外でも人生を楽しむ機会を持つべきだ」

ガーンジーFCに加入したスコットは16歳の時、イスミアン・フットボールリーグ(イングランド8部相当)の試合で途中出場からクラブ史上最年少デビューを飾った。これがシンデレラストーリーの始まりとなった。

デビュー以降スコットの動向を追っていたブリストル・シティから声がかかり、2019年12月にトライアルへ参加した。「初日はU-18で、2日目はファーストチームでトレーニングした。本当にびっくりした。水曜日にロンドンでガーンジーFCの試合をプレーし、戻って、金曜日にブリストルシティU-18でプレーし、ハットトリックを記録したんだ」とトントン拍子で話がまとまり、ブリストル・シティと契約を結んだ。

そこから1年半も経たない2021年4月に17歳でトップチームデビューを飾ると、2021-22シーズンから主力に定着。2021年からはアンダー世代のイングランド代表からも声がかかり、2022年にはU-19欧州選手権優勝の一員となった。2022-23シーズンはチャンピオンシップ(イングランド2部)の最優秀若手選手賞と年間ベストイレブンに選出されると、チームの最優秀選手と若手最優秀選手にも輝き、2023年夏にブリストル・シティの史上最高売却額となる移籍金2500万ポンド(約50億円)でボーンマスに加入した。

加入したプレシーズンでひざを負傷し、デビューは10月までお預けとなった。それでも、プレミアリーグの舞台でも堂々たるプレーぶりを披露。推進力のあるしなやかなドリブルと下ろしたソックスがトレードマークの“ガーンジーのジャック・グリーリッシュ”は、2025年夏にはU-21欧州選手権の優勝も経験し、次第にA代表招集への期待が高まった。

9月に『BBCラジオ・ガーンジー』に出演したスコットは、「昔はプレミアリーグでプレーしたり、イングランド代表でプレーしたり、プロフットボール選手になるチャンスがあるなんて夢にも思わなかった。人生のクレイジーな5、6年だった。そして、僕と僕の家族にとって、物事は劇的に変わった」と激動のキャリアを回想した。

そして“スリーライオンズ”の仲間入りを現実のものとしたスコットは、離島の後輩たちに次のようなエールを送った。

「ガーンジーで育つ子供たちにとって、僕たちが活躍する姿を見られるのは良いことだと思う。以前は機会が限られていたが、今は状況がずっと良くなった。僕がガーンジーとブリストル・シティをつなぐ架け橋となり、僕やマヤ・ルティシエ(※ガーンジー島出身のイングランド女子代表DF)らが活躍する姿を見ることで、ガーンジーの子供たちは同じように挑戦しようと思えるようになる」

「ガーンジー島に住んでいたらプロサッカー選手になるチャンスはないかもしれない。僕たちもかつて彼らと同じ立場だった。そう思っている子供たちにとって、僕たちは『チャンスを掴めば可能だ』という素晴らしい実例となる。運ももちろん関係するし、僕自身も幸運に恵まれたことはある。でも、ガーンジー島とプロサッカー界の架け橋は今やはるかに強固なものとなっている」

すでにFIFAワールドカップ26本大会出場を決めているイングランド代表は、11月の欧州予選でセルビア代表、アルバニア代表と対戦する。ガーンジー島の夢を背負ったスコットが、史上1289人目のイングランド代表選手としてピッチに立つ瞬間が迫っている。

出典:https://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20251108/2085091.html


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