日本からアジアへ。 「TOBIGERI」が仕掛ける“育成年代フェス革命”
2025.10.29 20:00 Wed
全国の強豪クラブが集う、育成年代最大級のサッカーフェス「TOBIGERI」。だが、このイベントの本質は“大会”ではなく“文化づくり”にある。子どもも保護者も指導者も、みんなが主役になれる空間――。勝敗だけでなく、熱狂と感動と興奮が生まれる「体験」を設計することで、TOBIGERIは新しい育成の形を提示している。
■“大会”ではなく“フェス”をつくるという発想
「TOBIGERI(とびげり)」は、サッカー大会ではない。正確に言えば、“サッカーを中心としたフェスティバル”だ。
静岡県裾野市・時之栖を舞台に行われるこのイベントには、全国から強豪クラブやJクラブのジュニアチームが集う。けれど、富澤翔太CEOと堀田弘志営業部長(通称“アディオス堀田”)の言葉を借りるなら、「勝敗を競う場所である以前に、熱狂と感動と興奮を共有する場」である。
「もともと僕たちは“大会をやる”というより、“コミュニティをつくる”という発想から始めたんです」(堀田)
二人はヨーロッパの大会や文化に触れ、“非日常”を提供するサッカーイベントのあり方を学んだ。スペインでは週末になると、子どもたちが出場する大会がまるでフェスのように行われ、家族や仲間が音楽と歓声の中で時間を過ごす。「あの空気を日本でも再現したい」と思ったことが、“TOBIGERI”誕生の原点だという。
第1回大会の参加チームはわずか11。参加者は100人にも満たなかった。しかしその小さな火種は、着実に大きな炎となっていった。
「最初から大きくやろうというビジョンはありました。“熱狂、感動、興奮”を共有していくうちに、自然と人が集まり、全国大会を目指す流れになったんです」(富澤)
現在ではU-10からU-13までの4カテゴリーを展開し、数千チーム・数万人が参加する日本最大級の育成年代フェスに成長。2021年には全国大会が静岡・時之栖で開催され、富士山を望む開放的なロケーションが「日本一を決める夏」の象徴になった。
■“観戦”も含めた新文化づくり
“TOBIGERI”の革新性は、サッカーを「観る」「応援する」体験そのものを再設計している点にある。ビデオ撮影に頼らず、肉眼で、声と拍手で子どもを応援する。それが大会全体の空気を変え、プレーヤーのパフォーマンスを引き上げていく。
「Jリーグのスタジアムで、誰もビデオを撮っていないのはなぜか。それは“応援”が主体だから。僕たちは、その文化を育成年代から根づかせたいんです」(堀田)
親たちはフェスを楽しみ、子どもたちはスタジアムのような熱気を感じる。スタッフもまた「自分がこのフェスをつくっている」という当事者意識を持ち、笑顔と声かけで参加者を巻き込む。その空気が、クラブの枠を超えたポジティブなコミュニティを形成している。
■“アディオス堀田”と“トビー”
フェスに欠かせないのが、記憶に残るアイコンだ。
堀田がマイクを握り「アディオス!」と叫べば、会場は一瞬でひとつになる。その掛け声はいつしか大会の象徴になった。
「意味なんて最初は分からなくても、“また会おう”というポジティブな言葉だと知るうちに、子どもたちは自然に笑顔になります」(堀田)
さらにもう一つの象徴が、大会マスコット“トビー”。幸せを呼ぶ動物とされるカバをモチーフにしたキャラクターで、AI調のメタリックな“クール・トビー”と、柔らかいタッチの“ゆるトビー”の二面性を持つ。グッズは大人気で、販売ブースは常に長蛇の列。子どもから大人までが記憶と記録を持ち帰る。
■共創する企業、そしてアジアへ
大会の第2回からは、スポーツブランド「SFIDA(スフィーダ)」が協賛。審判ウェアやボールなどの提供に加え、理念面でも強く共鳴している。
「SFIDAさんも育成年代の挑戦を大切にしていて、“TOBIGERI”のカルチャーと方向性が重なっている。だから単なる物品協賛ではなく、文化を一緒に作っていくパートナーだと思っています」(富澤)
そして二人が次に見据えるのは“アジア版TOBIGERI”。中国など海外チームの参加もすでに始まり、国・言語・プレースタイルの壁を越えた交流が新しい刺激を生んでいる。
「島国の中で完結しない、国際的な育成カルチャーを。“TOBIGERI”を通じて、アジア中の子どもたちが同じピッチで笑えるようにしたい」(堀田)
■“育成”をエンターテインメントに変える挑戦
富澤と堀田が目指すのは、単なる大会運営ではない。それは、“育成年代のサッカー文化”そのものをアップデートする挑戦だ。
熱狂と興奮が渦巻くフェスの中で、子どもたちは「決勝の舞台に立ちたい」と夢を描き、保護者は「応援する喜び」を知る。その積み重ねが、未来の日本サッカーの土壌を豊かにしていく。
「あくまでも僕らがやりたいのは、コミュニティ作り、サッカーそのものの“上手さ”を競うことだけではなく、そこに生まれる熱狂や感動を、どうデザインするかなんです」(富澤)
“大会”から“文化”へ――。「TOBIGERI」は、育成年代サッカーに新しい光を投げかけるフェスであり続ける。
取材・文=北健一郎
■“大会”ではなく“フェス”をつくるという発想
「TOBIGERI(とびげり)」は、サッカー大会ではない。正確に言えば、“サッカーを中心としたフェスティバル”だ。
静岡県裾野市・時之栖を舞台に行われるこのイベントには、全国から強豪クラブやJクラブのジュニアチームが集う。けれど、富澤翔太CEOと堀田弘志営業部長(通称“アディオス堀田”)の言葉を借りるなら、「勝敗を競う場所である以前に、熱狂と感動と興奮を共有する場」である。
二人はヨーロッパの大会や文化に触れ、“非日常”を提供するサッカーイベントのあり方を学んだ。スペインでは週末になると、子どもたちが出場する大会がまるでフェスのように行われ、家族や仲間が音楽と歓声の中で時間を過ごす。「あの空気を日本でも再現したい」と思ったことが、“TOBIGERI”誕生の原点だという。
■11チームから始まった“祭り”の成長物語
第1回大会の参加チームはわずか11。参加者は100人にも満たなかった。しかしその小さな火種は、着実に大きな炎となっていった。
「最初から大きくやろうというビジョンはありました。“熱狂、感動、興奮”を共有していくうちに、自然と人が集まり、全国大会を目指す流れになったんです」(富澤)
現在ではU-10からU-13までの4カテゴリーを展開し、数千チーム・数万人が参加する日本最大級の育成年代フェスに成長。2021年には全国大会が静岡・時之栖で開催され、富士山を望む開放的なロケーションが「日本一を決める夏」の象徴になった。
■“観戦”も含めた新文化づくり
“TOBIGERI”の革新性は、サッカーを「観る」「応援する」体験そのものを再設計している点にある。ビデオ撮影に頼らず、肉眼で、声と拍手で子どもを応援する。それが大会全体の空気を変え、プレーヤーのパフォーマンスを引き上げていく。
「Jリーグのスタジアムで、誰もビデオを撮っていないのはなぜか。それは“応援”が主体だから。僕たちは、その文化を育成年代から根づかせたいんです」(堀田)
親たちはフェスを楽しみ、子どもたちはスタジアムのような熱気を感じる。スタッフもまた「自分がこのフェスをつくっている」という当事者意識を持ち、笑顔と声かけで参加者を巻き込む。その空気が、クラブの枠を超えたポジティブなコミュニティを形成している。
■“アディオス堀田”と“トビー”
フェスに欠かせないのが、記憶に残るアイコンだ。
堀田がマイクを握り「アディオス!」と叫べば、会場は一瞬でひとつになる。その掛け声はいつしか大会の象徴になった。
「意味なんて最初は分からなくても、“また会おう”というポジティブな言葉だと知るうちに、子どもたちは自然に笑顔になります」(堀田)
さらにもう一つの象徴が、大会マスコット“トビー”。幸せを呼ぶ動物とされるカバをモチーフにしたキャラクターで、AI調のメタリックな“クール・トビー”と、柔らかいタッチの“ゆるトビー”の二面性を持つ。グッズは大人気で、販売ブースは常に長蛇の列。子どもから大人までが記憶と記録を持ち帰る。
■共創する企業、そしてアジアへ
大会の第2回からは、スポーツブランド「SFIDA(スフィーダ)」が協賛。審判ウェアやボールなどの提供に加え、理念面でも強く共鳴している。
「SFIDAさんも育成年代の挑戦を大切にしていて、“TOBIGERI”のカルチャーと方向性が重なっている。だから単なる物品協賛ではなく、文化を一緒に作っていくパートナーだと思っています」(富澤)
そして二人が次に見据えるのは“アジア版TOBIGERI”。中国など海外チームの参加もすでに始まり、国・言語・プレースタイルの壁を越えた交流が新しい刺激を生んでいる。
「島国の中で完結しない、国際的な育成カルチャーを。“TOBIGERI”を通じて、アジア中の子どもたちが同じピッチで笑えるようにしたい」(堀田)
■“育成”をエンターテインメントに変える挑戦
富澤と堀田が目指すのは、単なる大会運営ではない。それは、“育成年代のサッカー文化”そのものをアップデートする挑戦だ。
熱狂と興奮が渦巻くフェスの中で、子どもたちは「決勝の舞台に立ちたい」と夢を描き、保護者は「応援する喜び」を知る。その積み重ねが、未来の日本サッカーの土壌を豊かにしていく。
「あくまでも僕らがやりたいのは、コミュニティ作り、サッカーそのものの“上手さ”を競うことだけではなく、そこに生まれる熱狂や感動を、どうデザインするかなんです」(富澤)
“大会”から“文化”へ――。「TOBIGERI」は、育成年代サッカーに新しい光を投げかけるフェスであり続ける。
取材・文=北健一郎
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