準決勝でハットトリックの大清水皇輝 快足FWの超覚醒を支えた3つの意外性|U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ
2025.08.27 12:00 Wed
レギュレーションが、才能をすくい上げた
malva fcの一員として大会に参加した、FW大清水皇輝くんだ。4ー3で勝利した準決勝のエコノメソッド選抜戦では、50mを6秒5で走る快足を生かしたハイプレスと裏抜けで相手に脅威を与えると、ハットトリックの活躍で決勝進出の原動力となった。
日本代表のFW前田大然を彷彿とさせる俊足ストライカーに話を聞くと、意外な答えが返ってきた。
「自分は早生まれで中1なんです」
『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』(以下、ワーチャレ)は、その名前の通り、12歳以下の選手が参加できる大会だ。自分自身のサッカー少年時代の記憶をたどりながら、小学生のサッカーを取材しに行くという意識で会場に足を運んでいたため、肝心の参加資格を失念していた。大会公式ホームページにも「参加選手は出生が2013年1月1日生まれ以降であること」と記されている。自分の確認不足は恥ずべきもので、学年基準の大会しか出場したことない己の経験は言い訳でしかないが、それと同時に年齢基準の今大会とmalva fcの親和性の高さに気づかされた。
小学生のみのチームだと、小学6年生までしかメンバーに登録できない。しかし、malvaは中学生も在籍しているため、早生まれの選手もスカッドに入れて大会に参加することができる。この構造とレギュレーションがマッチした結果、大清水くんはワーチャレ出場というチャンスを得ることができた。
「(目標にしているのは)ロベルト・バッジョ」
中学1年生の口から、ロベルト・バッジョの言葉が出た時は耳を疑った。ポジション的にもクリスティアーノ・ロナウドやキリアン・エムバペなどの名前が出ると思ったが、まさか大清水くんが生まれる約10年前に現役を退いたイタリアのクラッキとは…。しかも、ロベルト・バッジョは圧倒的なボールスキルを武器にトップ下で活躍したMFである。この目で見たプレースタイルとは明らかに違った。その理由を聞くと、またもや度肝を抜く答えが返ってきた。
「FWになったのは、今年のワーチャレが初めてで。今まではボランチとかトップ下とかをやっていました」
相手ゴールに最も近い位置でチームを勝利に導く得点を決めるという役割を与えられたのは、決勝の3日前だったという。コンバートされてホヤホヤの状況にもかかわらず、全国トップレベルのクラブが集結する大会で、しかも準決勝で3ゴールを決められるのだからストライカーとしての才能を秘めていたのだろう。
「裏抜けが得意なので、そのまま相手の前に入るプレーはけっこうできた」という言葉通り、エコノメソッド選抜戦の3ゴールのうち2ゴールはその形であり、3点目はハーフウェイラインから抜け出し独走後にGKもかわして決勝点を奪っていた。
では、足の速さを武器に中盤でタイミングよくゴール前に顔を出してネットを揺らす選手だったのか。そうイメージしたが、これも違った。
「足が速くなったのは最近で。ボランチでは相手をかわすことが得意だったけど、足の速さで行けちゃうようになって。そこからスピードで相手を突破したり置き去りにしたりするプレーが武器になりました」
子どもの成長はわからない。こちらの仮説を平気で裏切ってくるし、想像を超えるスピードで能力を高めていくのだろう。だから、面白いとも言えるのかもしれない。普段は地元のファジアーノ岡山を中心に取材している自分に、大清水くんが育成年代の醍醐味を教えてくれたような気がした。
FCバルセロナと対戦した決勝では、malva fcは1ー4で敗れた。大清水くんは後半終了間際に左サイドを抜け出して惜しいシュートを放ったが、得点を奪うことはできなかった。
「準決勝みたいにチームを勝たせるゴールとか、自分でチャンスを作るプレーはもっとしないといけなかったし、チームが負けている状況でも、残り時間が少なくても、自分で1点を取りに行く気持ちはもっと必要だと思います」
世界トップレベルの相手との対戦で力の差を感じても、チームを勝利に導くというストライカーの使命と向き合い、自分を見つめ直していた。
3日間でFWとしての成功体験を積み重ね、思考を巡らせた大清水くんは、どんなストライカーに成長していくのだろうか。いや、新たな力を身につけて、違うポジションでプレーするようになるのかもしれない。これから歩んでいく道は分からないが、楽しみながらボールを蹴り続けてほしいものである。
取材・文=難波拓未
malva fcの一員として大会に参加した、FW大清水皇輝くんだ。4ー3で勝利した準決勝のエコノメソッド選抜戦では、50mを6秒5で走る快足を生かしたハイプレスと裏抜けで相手に脅威を与えると、ハットトリックの活躍で決勝進出の原動力となった。
日本代表のFW前田大然を彷彿とさせる俊足ストライカーに話を聞くと、意外な答えが返ってきた。
『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』(以下、ワーチャレ)は、その名前の通り、12歳以下の選手が参加できる大会だ。自分自身のサッカー少年時代の記憶をたどりながら、小学生のサッカーを取材しに行くという意識で会場に足を運んでいたため、肝心の参加資格を失念していた。大会公式ホームページにも「参加選手は出生が2013年1月1日生まれ以降であること」と記されている。自分の確認不足は恥ずべきもので、学年基準の大会しか出場したことない己の経験は言い訳でしかないが、それと同時に年齢基準の今大会とmalva fcの親和性の高さに気づかされた。
malva fcの母体となるmalvaは、幼児コース、小学生コース、強化コースに加え、Jrユースとユースの2カテゴリーがあり、3歳から高校3年生が通うことのできるサッカースクールだ。千葉県を中心に北は山形、南は熊本と、全24校が存在する。
小学生のみのチームだと、小学6年生までしかメンバーに登録できない。しかし、malvaは中学生も在籍しているため、早生まれの選手もスカッドに入れて大会に参加することができる。この構造とレギュレーションがマッチした結果、大清水くんはワーチャレ出場というチャンスを得ることができた。
「(目標にしているのは)ロベルト・バッジョ」
中学1年生の口から、ロベルト・バッジョの言葉が出た時は耳を疑った。ポジション的にもクリスティアーノ・ロナウドやキリアン・エムバペなどの名前が出ると思ったが、まさか大清水くんが生まれる約10年前に現役を退いたイタリアのクラッキとは…。しかも、ロベルト・バッジョは圧倒的なボールスキルを武器にトップ下で活躍したMFである。この目で見たプレースタイルとは明らかに違った。その理由を聞くと、またもや度肝を抜く答えが返ってきた。
「FWになったのは、今年のワーチャレが初めてで。今まではボランチとかトップ下とかをやっていました」
相手ゴールに最も近い位置でチームを勝利に導く得点を決めるという役割を与えられたのは、決勝の3日前だったという。コンバートされてホヤホヤの状況にもかかわらず、全国トップレベルのクラブが集結する大会で、しかも準決勝で3ゴールを決められるのだからストライカーとしての才能を秘めていたのだろう。
「裏抜けが得意なので、そのまま相手の前に入るプレーはけっこうできた」という言葉通り、エコノメソッド選抜戦の3ゴールのうち2ゴールはその形であり、3点目はハーフウェイラインから抜け出し独走後にGKもかわして決勝点を奪っていた。
では、足の速さを武器に中盤でタイミングよくゴール前に顔を出してネットを揺らす選手だったのか。そうイメージしたが、これも違った。
「足が速くなったのは最近で。ボランチでは相手をかわすことが得意だったけど、足の速さで行けちゃうようになって。そこからスピードで相手を突破したり置き去りにしたりするプレーが武器になりました」
子どもの成長はわからない。こちらの仮説を平気で裏切ってくるし、想像を超えるスピードで能力を高めていくのだろう。だから、面白いとも言えるのかもしれない。普段は地元のファジアーノ岡山を中心に取材している自分に、大清水くんが育成年代の醍醐味を教えてくれたような気がした。
FCバルセロナと対戦した決勝では、malva fcは1ー4で敗れた。大清水くんは後半終了間際に左サイドを抜け出して惜しいシュートを放ったが、得点を奪うことはできなかった。
「準決勝みたいにチームを勝たせるゴールとか、自分でチャンスを作るプレーはもっとしないといけなかったし、チームが負けている状況でも、残り時間が少なくても、自分で1点を取りに行く気持ちはもっと必要だと思います」
世界トップレベルの相手との対戦で力の差を感じても、チームを勝利に導くというストライカーの使命と向き合い、自分を見つめ直していた。
3日間でFWとしての成功体験を積み重ね、思考を巡らせた大清水くんは、どんなストライカーに成長していくのだろうか。いや、新たな力を身につけて、違うポジションでプレーするようになるのかもしれない。これから歩んでいく道は分からないが、楽しみながらボールを蹴り続けてほしいものである。
取材・文=難波拓未
|