GK転向から1年半でバルセロナと対戦 令和のチェフ・太田泰誠が備える守護神の素養|U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2025
2025.08.26 17:00 Tue
最後まで堂々とした佇まいだった。
malva fcの守護神として『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2025』に出場したGK太田泰誠くんは、FCバルセロナとの決勝戦にフル出場。前半だけで4失点を喫して優勝を逃すというGKにとって悔しい結果に終わったが、芯の強さを備えていることを感じた。
6分に右サイドを抜け出したFWペップ・ファレス・ガルシアにシュートを流し込まれて先制点を許したが、8分にも迎えたペップとの1対1は、間合いを詰めてから懸命に伸ばした左足でシュートをストップした。同じ手は食わない。そんなたくましさを見せると同時に、力強いガッツポーズでチームを勇気づけた。
フットサルの全国大会『バーモントカップ』での日本一という看板を引っ提げて臨んだチームは、バルセロナの華麗なパスワークに翻弄され、ボールの取り所を見出せず。スルーパスに抜け出されてGKと1対1という局面を多く作られると、10分には再びペップにネットを揺らされてしまった。
「勝てる気はあまりしなかった」と力の差を感じたが、「絶対に止めてやろう」という気迫でシュートに向き合い続ける。16分には完全フリーで抜け出してきたDFイサ・ニアカテ・セマカが余裕をたっぷりと使ってペナルティーエリア内からシュートを放ってきたが、素早くゴールマウスを飛び出してコースを狭め、ダイビングセーブで防いだ。
大半の選手を入れ替えたバルセロナは前半と同様の勢いで攻め込んできたが、malva fcは奮闘し続けた。後半だけで言えば、1ー0という結果をもぎ取ったのである。
絶体絶命のピンチはあった。33分に左サイドを突破したFWアブドゥ・ラティフ・ヂッテ・ダフェがDFとGKの間に絶妙なパスを流し込み、FWデニス・ソコロフスキが合わせてくる。マークは完全に振り切られていた。だが、背番号1が判断の速さで上回る。ゼロ距離まで詰めて足でセーブ。そして、こぼれ球を拾ったMFジュレン・ガヤルド・カメロのシュートにも素早く起き上がって反応。シュートは枠を越えるものだったが、セカンドアクションで圧力を与えて枠外に飛ばさせた。
すると、その2分後だった。ブロックをされても足を振り続け、思い切りよく放ったミドルシュートが決まり、malva fc が1点を奪取した。
1ー4での敗戦を告げるタイムアップの笛が鳴ると、malva fcの選手たちはピッチに崩れ落ちる。悔しさのあまり涙を流し、立ち上がれない選手もいた。だが、太田くんは息を吐いてから、チームメイトのもとに駆け寄り、奮闘を讃え、立ち上がらせていた。GKは最後の砦ではあるが、失点を許せば最初に無力感を感じるポジションである。だが、冷静な立ち振る舞いで、自分よりも仲間のことを一目散に気に掛けていた。
試合直後に行われた表彰式では、悔し涙を流し続ける主将の背中をさする仕草を見せ、凛とした表情で空を見つめていた。その姿は、今大会の経験を自分の未来に還元するイメージを鮮明に描いていたように映った。
トレードマークになりつつあるヘッドギアを着用する理由は、「ウェブ記事を見て(ペトル)チェフのことを知って、プレーを見たらすごくかっこよかったので、真似しようということで形から入りました」と茶目っけたっぷりに明かしてくれたが、バルセロナの攻撃は「サイドバックが中央に縦パスを入れて、その落としから前に当ててくる、そのボールをカットするのが難しかった」と分析し、「センターバックと僕の間を縮めて裏へのスルーパスを協力して取ろう」という計画を立ててプレーするなど賢さも垣間見せた。
相手の攻撃を冷静に受け止めながら仲間と一緒にゴールを熱く守る。生粋のGKなんだろうなと感じていると、フィールドプレーヤーから本格的にGKに転向して約1年半しか経ってないことを聞かされて驚きを隠せなかった。ゴールマウスに立ち始めて間もないが、「シュートを止めたらチームの英雄になれるし、止められなくて負けたら自分のせいになる。それがすごく面白い」とすでにGK特有の二面性をやりがいに昇華している。
「ボコボコにされた悔しさはあるけど、世界レベルとの違いを実感できたことは良かった。日本一にはなったけど、世界トップにはまだまだ達していないので、もう一度ギアを入れ直して、大人になった時にバルセロナを倒したいと思います」
そう語気を強めた令和のチェフこと太田くんの今後が楽しみで仕方ない。
取材・文=難波拓未
malva fcの守護神として『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2025』に出場したGK太田泰誠くんは、FCバルセロナとの決勝戦にフル出場。前半だけで4失点を喫して優勝を逃すというGKにとって悔しい結果に終わったが、芯の強さを備えていることを感じた。
6分に右サイドを抜け出したFWペップ・ファレス・ガルシアにシュートを流し込まれて先制点を許したが、8分にも迎えたペップとの1対1は、間合いを詰めてから懸命に伸ばした左足でシュートをストップした。同じ手は食わない。そんなたくましさを見せると同時に、力強いガッツポーズでチームを勇気づけた。
「勝てる気はあまりしなかった」と力の差を感じたが、「絶対に止めてやろう」という気迫でシュートに向き合い続ける。16分には完全フリーで抜け出してきたDFイサ・ニアカテ・セマカが余裕をたっぷりと使ってペナルティーエリア内からシュートを放ってきたが、素早くゴールマウスを飛び出してコースを狭め、ダイビングセーブで防いだ。
それでも、バルセロナの壁は高くて分厚かった。その後は左サイドからのクロスを合わせられる形で連続失点を許し、前半だけで0ー4になった。勝敗は前半終了時点で決していたのかもしれない。だが、後半キックオフを迎えたmalva fcは誰一人としてあきらめていなかった。イレブンは精悍な顔つきでピッチに立ち、ベンチからは盛り上げる声が飛ぶ。スタンドからはチャント応援団のチャントがこだまし、「タイセイ、楽しめよ!」という声も聞こえてくる。そんな声援に太田くんは片手を挙げて応じ、手を叩きながら「行くぞ!」という声掛けでチームを引き締め直した。
大半の選手を入れ替えたバルセロナは前半と同様の勢いで攻め込んできたが、malva fcは奮闘し続けた。後半だけで言えば、1ー0という結果をもぎ取ったのである。
絶体絶命のピンチはあった。33分に左サイドを突破したFWアブドゥ・ラティフ・ヂッテ・ダフェがDFとGKの間に絶妙なパスを流し込み、FWデニス・ソコロフスキが合わせてくる。マークは完全に振り切られていた。だが、背番号1が判断の速さで上回る。ゼロ距離まで詰めて足でセーブ。そして、こぼれ球を拾ったMFジュレン・ガヤルド・カメロのシュートにも素早く起き上がって反応。シュートは枠を越えるものだったが、セカンドアクションで圧力を与えて枠外に飛ばさせた。
すると、その2分後だった。ブロックをされても足を振り続け、思い切りよく放ったミドルシュートが決まり、malva fc が1点を奪取した。
1ー4での敗戦を告げるタイムアップの笛が鳴ると、malva fcの選手たちはピッチに崩れ落ちる。悔しさのあまり涙を流し、立ち上がれない選手もいた。だが、太田くんは息を吐いてから、チームメイトのもとに駆け寄り、奮闘を讃え、立ち上がらせていた。GKは最後の砦ではあるが、失点を許せば最初に無力感を感じるポジションである。だが、冷静な立ち振る舞いで、自分よりも仲間のことを一目散に気に掛けていた。
試合直後に行われた表彰式では、悔し涙を流し続ける主将の背中をさする仕草を見せ、凛とした表情で空を見つめていた。その姿は、今大会の経験を自分の未来に還元するイメージを鮮明に描いていたように映った。
トレードマークになりつつあるヘッドギアを着用する理由は、「ウェブ記事を見て(ペトル)チェフのことを知って、プレーを見たらすごくかっこよかったので、真似しようということで形から入りました」と茶目っけたっぷりに明かしてくれたが、バルセロナの攻撃は「サイドバックが中央に縦パスを入れて、その落としから前に当ててくる、そのボールをカットするのが難しかった」と分析し、「センターバックと僕の間を縮めて裏へのスルーパスを協力して取ろう」という計画を立ててプレーするなど賢さも垣間見せた。
相手の攻撃を冷静に受け止めながら仲間と一緒にゴールを熱く守る。生粋のGKなんだろうなと感じていると、フィールドプレーヤーから本格的にGKに転向して約1年半しか経ってないことを聞かされて驚きを隠せなかった。ゴールマウスに立ち始めて間もないが、「シュートを止めたらチームの英雄になれるし、止められなくて負けたら自分のせいになる。それがすごく面白い」とすでにGK特有の二面性をやりがいに昇華している。
「ボコボコにされた悔しさはあるけど、世界レベルとの違いを実感できたことは良かった。日本一にはなったけど、世界トップにはまだまだ達していないので、もう一度ギアを入れ直して、大人になった時にバルセロナを倒したいと思います」
そう語気を強めた令和のチェフこと太田くんの今後が楽しみで仕方ない。
取材・文=難波拓未
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