重傷じゃなくて良かった…/原ゆみこのマドリッド
2024.02.13 22:00 Tue
「2人共、2、3週間のケガなのね」そんな風に私が偶然の一致に気がついたのは月曜日、マドリッドの両雄は揃って、週末のリーガ戦で主力選手に負傷者が発生。その診断結果を知った時のことでした。いやあ、レアル・マドリーはリーガピチチ(得点王)レーストップを走るベリンガムが左足首を捻挫、アトレティコはチーム最多の19得点を挙げているモラタが右ヒザを捻ってしまったんですけどね。ただ片や、2ゴール挙げた後の交代、もう一方は絶好のチャンスにシュートを決められず、ノーゴールで試合にも負けてしまうという対照的な結果に終わっているんですが、その不在がチームに与える影響が大きいのは果たしてどっち?
実際、月曜にドイツに移動したマドリーは火曜午後9時(日本時間翌午前5時)にはCL16強対決ライプツィ戦1stレグがあるため、すぐにわかるはずですが、何せ今季、ベリンガムが出場しなかった5試合、全てブライムがプレーして、勝っているアンチェロッティ監督のチームですからね。ゴールに関してはそのブライムを始め、ビニシウス、ホセル、ロドリゴと当てにできるFWが何人もいますし、この試合では週末のジローナ戦を筋肉痛でお休みしたナチョも復帰。大体がして、リュディガーがヘタフェとの兄弟分ダービーで受けた太ももの打撲が、実は全治2週間のケガだったと判明し、カルバハルとチュアメニのやっつけCBコンビでプレーしても余裕で勝ってしまうようなマドリーですからね。ナチョとチュアメニで挑めば、決してブンデスリーガ5位相手に遅れを取るようなことはないと思いますが、さて。
ちなみにその土曜の首位決戦、2位のジローナをサンティアゴ・ベルナベウに迎えた試合がどんなだったか、話しておくことにすると、うーん、やっぱりタイトルを争うのは新参者には荷が重すぎましたかねえ。両者の勝ち点差はたった2ポイントだけだったため、ミチェル監督がベンチ入りできずとも、ブラントやヤンヘル・エレーラが出場停止でも、ここで金星を挙げることができれば、天下のマドリーから首位を奪うことができたんですが、前半6分には早くも先制点を奪われてしまったんですよ。
そう、当人も「Normalmente no le pego desde fuera del área, pero hoy me sentía con confianza y salió bien/ノルマルメンテ・ノー・レ・ペゴ・デスデ・フエラ・デル・アレア、ペロ・オイ・メ・センティア・コン・コンフィアンサ・イ・サリオ・ビエン(普通、ボクはエリア外から撃たないんだけど、今日は自信があって、上手くいった)」と後で言っていたんですけどね。エリアの右前からのシュートがすっぽりゴールに収まったから、スタンドも驚いたの何のって。もちろん、ジローナはすぐに反撃しようとしたものの、逆にチームに本職CBがいなかったのが選手たちの注意力を上げたんでしょうか。
アンチェロッティ監督も「Hemos tenido un compromiso defensivo muy alto/エモス・テニードー・ウン・コンプロミソ・デフェンシーボ・ムイ・アルト(ウチは守備に対するとても高い意識があった)」と褒めていたんですが、この日のマドリーはクロース、バルベルデらの中盤がDF陣を入念にカバー。ビニシウスやロドリゴも滅多にお目にかからない程、サイドからの敵の攻撃をカットすることに献身的とあって、ほとんどGKルーニンに近づくこともできないのでは、リーガ最多得点数を誇る相手だってどうしようもありませんって。
でも彼、根性あるんですよ。というのも、痛みを我慢してピッチに戻った途端、9分にはビニシウスのシュートがガッサニガに弾かれてこぼれたボールを撃ち込み、自身2点目、チームの3点目を決めていたから。その後、ようやく交代を要請とは、やっぱりただ者ではありませんが、代わってブライムがピッチに入った後の16分にもマドリーは4点目をゲット。ええ、今度は監督に「Me ha dicho que estaba defendiendo muy mal y que me iba a quitar/メ・ア・ディッチョー・ケ・エスタバ・デフェンディエンドー・ムイ・マル・イ・ケ・メ・イバ・ア・キタール(ひどい守り方をしているから、下げると言われた)」と脅かされたロドリゴが奮起。
センター付近でボールを奪うとドリブルで上がり、最後は敵選手の森をかきわけてシュート。これが見事にネットに突き刺さり、ええ、もうこの時点でゲームは終了したも同然です。その後のマドリーは中2日のライプツィヒ戦に備え、ロドリゴ、クロース、ビニシウス、メンディを順次引っ込め、ホセル、モドリッチ、ギュレル、フラン・ガルシアをピッチへ。ジローナもドブビク、ツィガンコフ、イバン・マルティンをストゥアーニ、バレリ、ソリスにして、まあ、こちらは名誉の1点を狙ったのかもしれませんが、それでも44分、ヤン・コウトがギュレルをエリア内で倒して与えたPKをホセルがゴールポストに当ててくれなかったら、5点差になっていましたからね。最後は4-0と、シーズン前半のモンテビリでの0-3に続き、マドリーの2連勝で決着がつきましたっけ。
まあ、試合後はミチェル監督も「Hay que reconocer que nuestra Liga no es esta/アイ・ケ・レコノセル・ケ・ヌエストラ・リーガ・ノー・エス・エスタ(ウチのリーガはこれじゃないことを認めないと)。アスレティック、レアル・ソシエダ、ベティスなんかがいるのがウチのリーガで、マドリー、バルサ、アトレティコらと一緒のリーガにはいられない」と言っていましたしね。それでも勝ち点差が5に広がったとはいえ、一番、マドリーに近いところにいるのはジローナで、その下のバルサ、アトレティコとかなり差をつけているのは立派。実際、これからマドリーの独走態勢が始まりそうなのは、別にジローナのせいだけではない訳であって…。
その情けないマドリッド勢兄貴分の片割れのことはまた、後で話しますが、とりあえず、日曜試合組だった弟分たちの試合も伝えておくと、それがもう、見事に吉凶が分かれてしまったんですよ。そう、午後2時、せっかくのお昼試合ながら、お日様が出ていなかったのが残念なコリセウムにセルタを迎えたヘタフェは前半41分、ジョルディ・マルティンのシュートがボールバーに当たって弾かれたところをボルハ・マジョラルがヘッドして決めた、ベリンガムと1差とする今季15本目のゴールで先制。更にロスタイムにもグリーンウッドのクロスが以前、4年間ヘタフェでプレーしたGKグァイタの手に当たって落ち、そこからマタが撃ち込んで2点目も入ることに。
おかげで前回のホームゲームで兄貴分のマドリーにあっさり負けた憂さをこの日は晴らせそうと、私もハーフタイムには喜んでいたんですが、後半10分にイアゴ・アスパスが途中出場してから、形勢がガラリと変わってねえ。26分にはアスパスのスルーパスをマンキージョがエリア内から上げ、ラルセンが頭で1点を返したかと思いきや、とうとう40分にはまたしてもアスパスのアシストで、1月に入団したてのアジェンデ(アルゼンチンのゴドイ・クルスから移籍)が初ゴールを挙げ、2-2の同点になってしまったから、さあ大変!
でも大丈夫。44分にはヘタフェもベテランが意地を見せ、グリーンウッドのクロスをマタが、うーん、正確に言うと、ヘッドではなかったんですけどね。首だが、肩だかで勝ち越しゴールを挙げてくれたから、どんなに有難かったか(最終結果3-2)。何せ、冬の市場ではエネス・ウナル(ボーンマスに移籍)、ダミアン(契約解消)、ミトロビッチ(ヘントにレンタル)、チョコ・ロサーノ(同アルメリア)と放出の方が多く、新たに加わったのはジェジュ(バレンシアからレンタル)、イリアス・モリバ(同ライプツィヒ)の若手だけだったボルダラス監督のチームですからね。
戦力減退をちょっと心配していたんですが、もう中2日の試合は、あってもミッドウィークリーガ開催週ぐらいですし、この調子で2週間に1回巡ってくるホームゲームでしっかり白星を挙げるだけなら、今いる人材で十分、事足りる?次戦のビジャレアル戦は金曜試合となって、中4日しかないものの、マジョラルもモラタの負傷で空きが出るかもしれない、3月のスペイン代表招集を目指して頑張っていますからね。ヘタフェにもそれこそ、2019年3月には絶好調だったマタがルイス・エンリケ監督に呼ばれ、代表デビューしたという前例もありますし、とにかくFWがゴールを挙げてくれるチームは期待が持てますって。
逆に最悪の目が出たのは弟分仲間のラージョで、次の時間帯でマジョルカとのアウェイ戦をプレーしたんですが、後半3分にオスカル・バレンティンのクリアミスからアントニオ・サンチェスに取られた1点は31分、アルバロ・ガルシアがこちらもジオ・ゴンサレスがゴール前で弾いたボールをゴールに入れて、同点に。それがロスタイムになって、CKからムリキにヘッドで決勝点を挙げられてしまうんですから、悲劇とはまさにこのこと?土壇場で2-1の敗戦となってしまったんですが、何せ、相手がミッドウィークのコパ・デル・レイ準決勝レアル・ソシエダ戦1stレグで疲れていようが、ラージョはアルバロ・ガルシアか、イシしかゴールを決められる選手がいないみたいですからねえ。
その2人だって、毎試合得点する程の量産タイプではないため、RdT(ラウール・デ・トマス)やカメージョ、ファルカオらがゴールを入れ始めてくれないと、今はまだ14位でも、1部残留ラインの勝ち点40まであと16ポイントを貯めるのに時間がかかりそうな。まずは次戦から、今年になって、たった1勝だけ、更にホームでまだ今季1勝しかしていない黒歴史を変えていきたいところですが、日曜にエスタディオ・バジェカスに迎えるのは兄貴分のマドリー。あまり流れを変えるのにはいい相手ではないのが辛いところです。
そしてその次の時間帯でアトレティコはサンチェス・ピスファンでのセビージャ戦となったんですが、この試合は中2日ではなく、中3日だったとはいえ、蓄積した選手たちの疲労度はまったく変化なかったよう。序盤、モラタがオフサイドを繰り返しているうち、うーん、あまりにも疲れていると、頭も働かなくなりますからね。15分には、せっかく前節のラージョが身をもって警告してくれたにも関わらず、CKからオカンポスに頭で繋がれたボールをまんまとイサークにヘッドで決められている始末。その、1月にようやく登録枠が空いて、トップチームの背番号をもらった新進気鋭のFWのマークをしていたのが、身長でかなり劣るコケだった辺りからして、何か歯車が狂っていた気がしますが、27分にもイサークのシュートがゴールバーを直撃と、ヒヤリとさせられることに。
その脇でモラタはヘッドがポストに当たって、ゴールに入ってもオフサイドだったり、GKナイランドと1対1のシュートも弾かれてしまう始末で、44分にはスマレを乗り越えようとして転倒。その結果、ヒザを捻って、泣きながら、ピッチを出ることになったんですが、そのリアクションにはもしや、お隣さんではすでに今季3人も犠牲者が出ている靭帯断裂かと、最悪を予想したファンも少なくなかったかと。そうでなかったのは不幸中の幸いでしたが、後半頭からメンフィス・デパイが入ってもアトレティコはやっぱりゴールが入らないんです。
いえ、再開早々にはグリーズマンのtaconazo(タコナソ/ヒールキック)がゴールライン前でヘスス・ナバスにクリアされるという、惜しいシーンがあったんですけどね。そのボールがデパイの足に当たり、魔訶不可思議にも枠を逸れてしまったのはまさに、先日のコパ準決勝アスレティック戦1stレグで発症した「撃っても撃っても入らない病」の象徴のようなもので、結局、その日も16本(枠内5本)もシュートしながら、最後まで同点には届かず。うーん、よく考えてみると、途中出場で入ったコレアやリケルメは元々、そんなにプレーしている訳ではないため、疲れているはずもないんですけどね。
主力選手の疲労が伝染するのか、結局、そのまま1-0で負けてしまったとなれば、いよいよアウェイ弱者の本領発揮と言っていいかと。ええ、GKオブラクも「Hay que ser sinceros, estamos muy lejos del Madrid/アイ・ケ・セル・シンセーロス、エスタモス・ムイ・レホス・デル・マドリッド(正直にならないといけない。ウチはマドリーからとても遠いところにいる)。これを言うのは辛いけど、CL出場圏入りを目指さないと」とギブアップしていましたしね。せっかくマドリーダービーで髪の毛1本程残っていたリーガ優勝の夢もこれでとうとう、完全に潰えてしまったよう。
こんな有り様を見ると、それこそCLインテル戦1stレグも月末のコパ準決勝2ndレグもアウェイとあって、とても希望なんて持てないんですが、一応、シメオネ監督は「Aprovechar esta semana que hay más tiempo/アプロベチャール・エスタ・セマーナ・ケ・アイ・マス・ティンポー(より時間がある今週を利用する)」と、土曜のラス・パルマス戦までに態勢を立て直すことを示唆。それでも「インテルは金曜にプレーして、ウチは土曜。ラ・リーガとサッカー協会のおかげでね」と皮肉を言うのは忘れず、そう、ホント、コパ準決勝の相手、アスレティックなんて、24節のアルメリア戦が月曜試合だったんですよ。それなのに1stレグを水曜から木曜にズラすことすらしてくれず、中2日で戦ったアトレティコは0-1で先勝されてしまった挙句…大丈夫、神様は見ています。最下位のアルメリアが粘って、0-0で終わってくれたため、4位のアトレティコと5位のアスレティックの差は勝ち点2になっただけなのはホント、ラッキーでしたね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
実際、月曜にドイツに移動したマドリーは火曜午後9時(日本時間翌午前5時)にはCL16強対決ライプツィ戦1stレグがあるため、すぐにわかるはずですが、何せ今季、ベリンガムが出場しなかった5試合、全てブライムがプレーして、勝っているアンチェロッティ監督のチームですからね。ゴールに関してはそのブライムを始め、ビニシウス、ホセル、ロドリゴと当てにできるFWが何人もいますし、この試合では週末のジローナ戦を筋肉痛でお休みしたナチョも復帰。大体がして、リュディガーがヘタフェとの兄弟分ダービーで受けた太ももの打撲が、実は全治2週間のケガだったと判明し、カルバハルとチュアメニのやっつけCBコンビでプレーしても余裕で勝ってしまうようなマドリーですからね。ナチョとチュアメニで挑めば、決してブンデスリーガ5位相手に遅れを取るようなことはないと思いますが、さて。
ちなみにその土曜の首位決戦、2位のジローナをサンティアゴ・ベルナベウに迎えた試合がどんなだったか、話しておくことにすると、うーん、やっぱりタイトルを争うのは新参者には荷が重すぎましたかねえ。両者の勝ち点差はたった2ポイントだけだったため、ミチェル監督がベンチ入りできずとも、ブラントやヤンヘル・エレーラが出場停止でも、ここで金星を挙げることができれば、天下のマドリーから首位を奪うことができたんですが、前半6分には早くも先制点を奪われてしまったんですよ。
アンチェロッティ監督も「Hemos tenido un compromiso defensivo muy alto/エモス・テニードー・ウン・コンプロミソ・デフェンシーボ・ムイ・アルト(ウチは守備に対するとても高い意識があった)」と褒めていたんですが、この日のマドリーはクロース、バルベルデらの中盤がDF陣を入念にカバー。ビニシウスやロドリゴも滅多にお目にかからない程、サイドからの敵の攻撃をカットすることに献身的とあって、ほとんどGKルーニンに近づくこともできないのでは、リーガ最多得点数を誇る相手だってどうしようもありませんって。
すると35分には再び、前節の元祖マドリーダービーを欠場する原因となった首の痛みの治ったビニシウスが慧眼を光らせ、この時は左サイドからベリンガムにスルーパス。今年になってからはまだ、PKでしかゴールを挙げていない彼だったものの、GKガッサニガをかわし、今季リーガ15得点目となるゴールを決めているんですから、大したものじゃないですか。ただ、これで2-0として、折り返したものの、ベリンガムには後半早々、ポルトゥに代わって入っていたパブロ・トーレスに足を踏まれ、足首を捻挫するという不幸が襲い掛かることに。
でも彼、根性あるんですよ。というのも、痛みを我慢してピッチに戻った途端、9分にはビニシウスのシュートがガッサニガに弾かれてこぼれたボールを撃ち込み、自身2点目、チームの3点目を決めていたから。その後、ようやく交代を要請とは、やっぱりただ者ではありませんが、代わってブライムがピッチに入った後の16分にもマドリーは4点目をゲット。ええ、今度は監督に「Me ha dicho que estaba defendiendo muy mal y que me iba a quitar/メ・ア・ディッチョー・ケ・エスタバ・デフェンディエンドー・ムイ・マル・イ・ケ・メ・イバ・ア・キタール(ひどい守り方をしているから、下げると言われた)」と脅かされたロドリゴが奮起。
センター付近でボールを奪うとドリブルで上がり、最後は敵選手の森をかきわけてシュート。これが見事にネットに突き刺さり、ええ、もうこの時点でゲームは終了したも同然です。その後のマドリーは中2日のライプツィヒ戦に備え、ロドリゴ、クロース、ビニシウス、メンディを順次引っ込め、ホセル、モドリッチ、ギュレル、フラン・ガルシアをピッチへ。ジローナもドブビク、ツィガンコフ、イバン・マルティンをストゥアーニ、バレリ、ソリスにして、まあ、こちらは名誉の1点を狙ったのかもしれませんが、それでも44分、ヤン・コウトがギュレルをエリア内で倒して与えたPKをホセルがゴールポストに当ててくれなかったら、5点差になっていましたからね。最後は4-0と、シーズン前半のモンテビリでの0-3に続き、マドリーの2連勝で決着がつきましたっけ。
まあ、試合後はミチェル監督も「Hay que reconocer que nuestra Liga no es esta/アイ・ケ・レコノセル・ケ・ヌエストラ・リーガ・ノー・エス・エスタ(ウチのリーガはこれじゃないことを認めないと)。アスレティック、レアル・ソシエダ、ベティスなんかがいるのがウチのリーガで、マドリー、バルサ、アトレティコらと一緒のリーガにはいられない」と言っていましたしね。それでも勝ち点差が5に広がったとはいえ、一番、マドリーに近いところにいるのはジローナで、その下のバルサ、アトレティコとかなり差をつけているのは立派。実際、これからマドリーの独走態勢が始まりそうなのは、別にジローナのせいだけではない訳であって…。
その情けないマドリッド勢兄貴分の片割れのことはまた、後で話しますが、とりあえず、日曜試合組だった弟分たちの試合も伝えておくと、それがもう、見事に吉凶が分かれてしまったんですよ。そう、午後2時、せっかくのお昼試合ながら、お日様が出ていなかったのが残念なコリセウムにセルタを迎えたヘタフェは前半41分、ジョルディ・マルティンのシュートがボールバーに当たって弾かれたところをボルハ・マジョラルがヘッドして決めた、ベリンガムと1差とする今季15本目のゴールで先制。更にロスタイムにもグリーンウッドのクロスが以前、4年間ヘタフェでプレーしたGKグァイタの手に当たって落ち、そこからマタが撃ち込んで2点目も入ることに。
おかげで前回のホームゲームで兄貴分のマドリーにあっさり負けた憂さをこの日は晴らせそうと、私もハーフタイムには喜んでいたんですが、後半10分にイアゴ・アスパスが途中出場してから、形勢がガラリと変わってねえ。26分にはアスパスのスルーパスをマンキージョがエリア内から上げ、ラルセンが頭で1点を返したかと思いきや、とうとう40分にはまたしてもアスパスのアシストで、1月に入団したてのアジェンデ(アルゼンチンのゴドイ・クルスから移籍)が初ゴールを挙げ、2-2の同点になってしまったから、さあ大変!
でも大丈夫。44分にはヘタフェもベテランが意地を見せ、グリーンウッドのクロスをマタが、うーん、正確に言うと、ヘッドではなかったんですけどね。首だが、肩だかで勝ち越しゴールを挙げてくれたから、どんなに有難かったか(最終結果3-2)。何せ、冬の市場ではエネス・ウナル(ボーンマスに移籍)、ダミアン(契約解消)、ミトロビッチ(ヘントにレンタル)、チョコ・ロサーノ(同アルメリア)と放出の方が多く、新たに加わったのはジェジュ(バレンシアからレンタル)、イリアス・モリバ(同ライプツィヒ)の若手だけだったボルダラス監督のチームですからね。
戦力減退をちょっと心配していたんですが、もう中2日の試合は、あってもミッドウィークリーガ開催週ぐらいですし、この調子で2週間に1回巡ってくるホームゲームでしっかり白星を挙げるだけなら、今いる人材で十分、事足りる?次戦のビジャレアル戦は金曜試合となって、中4日しかないものの、マジョラルもモラタの負傷で空きが出るかもしれない、3月のスペイン代表招集を目指して頑張っていますからね。ヘタフェにもそれこそ、2019年3月には絶好調だったマタがルイス・エンリケ監督に呼ばれ、代表デビューしたという前例もありますし、とにかくFWがゴールを挙げてくれるチームは期待が持てますって。
逆に最悪の目が出たのは弟分仲間のラージョで、次の時間帯でマジョルカとのアウェイ戦をプレーしたんですが、後半3分にオスカル・バレンティンのクリアミスからアントニオ・サンチェスに取られた1点は31分、アルバロ・ガルシアがこちらもジオ・ゴンサレスがゴール前で弾いたボールをゴールに入れて、同点に。それがロスタイムになって、CKからムリキにヘッドで決勝点を挙げられてしまうんですから、悲劇とはまさにこのこと?土壇場で2-1の敗戦となってしまったんですが、何せ、相手がミッドウィークのコパ・デル・レイ準決勝レアル・ソシエダ戦1stレグで疲れていようが、ラージョはアルバロ・ガルシアか、イシしかゴールを決められる選手がいないみたいですからねえ。
その2人だって、毎試合得点する程の量産タイプではないため、RdT(ラウール・デ・トマス)やカメージョ、ファルカオらがゴールを入れ始めてくれないと、今はまだ14位でも、1部残留ラインの勝ち点40まであと16ポイントを貯めるのに時間がかかりそうな。まずは次戦から、今年になって、たった1勝だけ、更にホームでまだ今季1勝しかしていない黒歴史を変えていきたいところですが、日曜にエスタディオ・バジェカスに迎えるのは兄貴分のマドリー。あまり流れを変えるのにはいい相手ではないのが辛いところです。
そしてその次の時間帯でアトレティコはサンチェス・ピスファンでのセビージャ戦となったんですが、この試合は中2日ではなく、中3日だったとはいえ、蓄積した選手たちの疲労度はまったく変化なかったよう。序盤、モラタがオフサイドを繰り返しているうち、うーん、あまりにも疲れていると、頭も働かなくなりますからね。15分には、せっかく前節のラージョが身をもって警告してくれたにも関わらず、CKからオカンポスに頭で繋がれたボールをまんまとイサークにヘッドで決められている始末。その、1月にようやく登録枠が空いて、トップチームの背番号をもらった新進気鋭のFWのマークをしていたのが、身長でかなり劣るコケだった辺りからして、何か歯車が狂っていた気がしますが、27分にもイサークのシュートがゴールバーを直撃と、ヒヤリとさせられることに。
その脇でモラタはヘッドがポストに当たって、ゴールに入ってもオフサイドだったり、GKナイランドと1対1のシュートも弾かれてしまう始末で、44分にはスマレを乗り越えようとして転倒。その結果、ヒザを捻って、泣きながら、ピッチを出ることになったんですが、そのリアクションにはもしや、お隣さんではすでに今季3人も犠牲者が出ている靭帯断裂かと、最悪を予想したファンも少なくなかったかと。そうでなかったのは不幸中の幸いでしたが、後半頭からメンフィス・デパイが入ってもアトレティコはやっぱりゴールが入らないんです。
いえ、再開早々にはグリーズマンのtaconazo(タコナソ/ヒールキック)がゴールライン前でヘスス・ナバスにクリアされるという、惜しいシーンがあったんですけどね。そのボールがデパイの足に当たり、魔訶不可思議にも枠を逸れてしまったのはまさに、先日のコパ準決勝アスレティック戦1stレグで発症した「撃っても撃っても入らない病」の象徴のようなもので、結局、その日も16本(枠内5本)もシュートしながら、最後まで同点には届かず。うーん、よく考えてみると、途中出場で入ったコレアやリケルメは元々、そんなにプレーしている訳ではないため、疲れているはずもないんですけどね。
主力選手の疲労が伝染するのか、結局、そのまま1-0で負けてしまったとなれば、いよいよアウェイ弱者の本領発揮と言っていいかと。ええ、GKオブラクも「Hay que ser sinceros, estamos muy lejos del Madrid/アイ・ケ・セル・シンセーロス、エスタモス・ムイ・レホス・デル・マドリッド(正直にならないといけない。ウチはマドリーからとても遠いところにいる)。これを言うのは辛いけど、CL出場圏入りを目指さないと」とギブアップしていましたしね。せっかくマドリーダービーで髪の毛1本程残っていたリーガ優勝の夢もこれでとうとう、完全に潰えてしまったよう。
こんな有り様を見ると、それこそCLインテル戦1stレグも月末のコパ準決勝2ndレグもアウェイとあって、とても希望なんて持てないんですが、一応、シメオネ監督は「Aprovechar esta semana que hay más tiempo/アプロベチャール・エスタ・セマーナ・ケ・アイ・マス・ティンポー(より時間がある今週を利用する)」と、土曜のラス・パルマス戦までに態勢を立て直すことを示唆。それでも「インテルは金曜にプレーして、ウチは土曜。ラ・リーガとサッカー協会のおかげでね」と皮肉を言うのは忘れず、そう、ホント、コパ準決勝の相手、アスレティックなんて、24節のアルメリア戦が月曜試合だったんですよ。それなのに1stレグを水曜から木曜にズラすことすらしてくれず、中2日で戦ったアトレティコは0-1で先勝されてしまった挙句…大丈夫、神様は見ています。最下位のアルメリアが粘って、0-0で終わってくれたため、4位のアトレティコと5位のアスレティックの差は勝ち点2になっただけなのはホント、ラッキーでしたね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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