悪い週末ではなかった…/原ゆみこのマドリッド

2023.11.28 20:00 Tue
©Atlético de Madrid
「ずっとホームゲームが続けばいいのに」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、まだリーガ14節の余韻も冷めやらぬうち、すでにアトレティコがロッテルダムに到着している映像を見た時のことでした。いやあ、メトロポリターノでは今年の2月以来、破竹の白星街道を続けている彼らなんですが、アウェイでは話が別。今季リーガで勝ち点を落としたのもベニト・ビジャマリン(ベティス)、メスタジャ(バレンシア)、エスタディオ・デ・グラン・カナリア(ラス・パルマス)の3回の遠征で、これがCLとなると3シーズン越しとなり、今季グループリーグのラツィオ戦、セルティック戦の引分けを含め、6試合白星なしを継続中なんですよ。

この火曜午後9時(日本時間翌午前5時)からの5節フェイノールト戦で勝ち点1を取れば、決勝トーナメント進出が決まると言っても、万が一、先週末のエクシリオール戦でもハットトリックで2-4の勝利に貢献。2節で対戦した時は出場停止でいなかったサンティ・ヒメネスが爆発して、うっかり負けるようなことがあると、最終節、メトロポリターノにラツィオを迎える試合に何が何でも勝たないといけなくなっちゃいますからね。いくらホームでは無敵とはいえ、さすがにそれは怖いため、すでに前節のスポルティング・ブラガ戦でグループ4勝目を挙げて突破が確定。水曜午後9時にサンティアゴ・ベルナベウで開催されるナポリ戦で勝ち点1を取れば、首位通過も決まるレアル・マドリーが羨ましくなったりもするんですが…。

まあ、それはともかく、先に代表戦明けのリーガでマドリッド勢がどうだったか、お話ししていくことにすると。トップバッターとなったのは弟分のラージョで土曜の午後2時という、日差しに溢れたチャビ監督の嫌いな時間にエスタディオ・バジェカスでキックオフとなったんですが、何せ、イラオラ監督(現ボーンマス)時代から、彼らはここ4試合で3勝1分けとバルサをお得意様にしていますからね。生憎、チーム内ピチチ(得点王)のアルバロ・ガルシアが累積警告で出場停止という不都合はあったものの、相手も正GKのテア・シュテーゲンを背筋痛で欠いていたため、スタンドを埋めたファンもかなり楽観的に成り行きを眺めていたところ、いやあ、驚かされました。
というのもまだ、0-0だった前半38分、イシが受けたファールから、ウナイ・ロペスがFKを蹴ったところ、クリアされたボールをまずはトレホがエリア前から撃ち、それがイニゴ・マルティネスに弾かれて、再びウナイ・ロペスの下へ。かなり離れたところから、今度はゴールを狙った彼のシュートが見事、GKイニャキ・ペーニャを破り、ラージョが先制点をゲットしたから。これには昨季、後半ロスタイムにやはりエリア外からの彼のゴールで2-1とラージョに土壇場の敗戦。おかげで当時、率いていたエルチェをクビになってしまったフランシスコ監督も「Ya era hora de que marcara/ジャー・エラ・ホラ・デ・ケ・マルカラ(そろそろゴールを挙げる頃だった)。最後に決めたのが私と対戦した時だったから、それが軽口のネタになっていた」と後で打ち明けていましたが、いやホント、ラージョを前にした時のバルサは人が変わりますよね。

もちろん、スペイン代表戦でガビがヒザの靭帯を断裂し、今季絶望になってしまったというショックなことがあったばかりという事情はわかりますが、GKディミトリエフスキもこんなにヒマな試合は珍しかったかも。1-0のまま、後半に入ると、チャビ監督もフェラン・トーレスをジョアン・フェリックスに、ロメウをギュンドガンにと代表戦での消耗と火曜のCL、突破の懸かったポルトとの決戦を考えて、温存していた選手を投入してきたんですけどね。頼みのレバンドフスキも火を吹かず、ラフィーニャのシュートがゴールポストを叩いた時にはヒヤリとさせられたものの、これは昨今の流れで、最少得点差で勝てるんじゃないかと、スタジアムの誰もが思い始めていた頃のことでした。
まさか38分、バルデのクロスをレバンドフスキの後ろからクリアしようとしたルジューヌがオウンゴールにしてしまうとは!いやあ、その後はバルサがremontada(レモンターダ/逆転劇)を目指して、かなり攻め込んできたため、ムミンとウナイ・ロペスのケガで交代枠を計画通りに使えなかったラージョとしてみれば、先日の兄弟分ダービー、マドリー戦同様、引分けで終わったのは大金星と言っていいんですけどね。相変わらず、チャビ監督などは終盤、ラフィーニャがエスピーノにエリア内で倒されたプレーがスルーされたことに、「Es penalti claro. No es una excusa/エス・ペナルティ・クラーロ。ノー・エス・ウナ・エクスクーサ(あれは明らかにペナルティだ。これは言い訳じゃない)」と、1-1のドローを終わったことに不服を唱えていたとはいえ、1-1は妥当な結果だったかと。

まあ、ここは健闘した弟分を称えることにして、ええ、おかげで同日夜、試合をする兄貴分のアトレィコにいい顔もできましたしね。ちなみに今週のラージョは土曜のアスレティック戦まで試合がなく、そこからミッドウィークのコパ・デル・レイ2回戦を挟んだ3連戦となるんですが、え?もう1つの弟分、ヘタフェも土曜のアルメリア戦でハードスケジュールに入る前の助走をしっかりしていなかったかって?その通りで、現在、工事中のアトーチャ駅にメトロが止まらず、セルカニアス(国鉄近郊路線)との接続が悪かったのと、メトロポリターノ周辺には幹線道路との接続工事で通行止めがあちこちに出現。タクシーを使っても、アトレティコの試合との綱渡り梯子観戦は難しそうだったため、午後6時30分のコリセウムに私は行かなかったんですけどね。

そういう時に限って、ボルダラス監督のチームはいい試合をして、いえ、開始7分にはエンバルバのCKから、チュミが頭で流し、ファーサイドでラマザニに決められて、早々に先制点を奪われてしまったんですけどね。おかげで目が覚めたか、それまでも何度か、シュートを試していたグリーンウッドが34分にエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて同点に。45分にもラタサのヘッドが敵に当たって落ちたボールをすかさずマジョラルが撃ち込んで、前半のうちに逆転に成功したんですよ。後半もオスカル・ロドリゲスのシュートがゴールバーに当たるなど、チャンスはあったものの、追加点はなく、2-1のまま、ダントツ最下位のチームに手堅く勝利していましたっけ。

おかげでヘタフェ(8位)もラージョ(10位)と同じ勝ち点19となり、5位以下でリーガ第2陣を構成する7位ベティスと勝ち点5差に。金曜のラス・パルマス戦に勝てば、ヨーロッパの大会出場圏がかなり近づきますが、残念なニュースはカルモナとラタサが負傷交代してしまったことでしょうか。まだ、どのくらいのケガなのかはわからず、軽傷であるのを祈るしかないんですが、今週の弟分チームには余裕があるのが救いですよね。

そして土曜はバジェカスから一旦、家に戻り、薄手セーターもヒートテックに、コートも丈の長いものに代えて、午後9時のマジョルカ戦を見にメトロポリターノに向かった私だったんですが、この試合、前半にも後半にもお祝いがあったんですよ。そう、2006年から09年までアトレティコを率いたアギーレ監督の古巣再訪にスタンドが拍手を贈った後、開始2分にはジョレンテの送ったゴール前へのラストパスにあと一歩、モラタが届かず。7分にもサムエル・リノの折り返しをコレアがvolea(ボレア/ボレーシュート)で天高く撃ち上げてしまったため、早期の先制点奪取は叶わなかったんですが、その直前にこの日、アトレティコで600試合出場を達成したコケがファンの喝采を浴びることに。

それ以外、モラタがヘッドをまたしても外すなど、大したことのなかった前半でしたが、0-0のまま始まった後半早々にも彼はフリーで撃った頭での一撃をGKライコビッチにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまってねえ。ビジャレアル戦、スペイン代表のジョージア戦から、ここ3試合、こんな感じなんで、そろそろゴール運気が停滞期に入ったんじゃないかと少々、心配になってしまったんですが、大丈夫。アトレティコにはフランス代表で2試合皆勤しながら、ローテーションさえ必要のない頼りになる選手がいるんです。

それはもちろんグリーズマンで、守りの堅いマジョルカの牙城を崩すのは一筋縄ではいかないと見たシメオネ監督は18分、コケとコレアを下げて、デ・パウルとリケルメを投入。それまで2列目でプレーしていた彼を前線に上げたところ、それから1分もしませんでした。エルモーソのクロスをエリア内でコペテとの空中戦に勝って、ヘッドを決めてくれたのは!こちらもクラブ単独2位となる通算170得点という記録だったため、場内は一斉に祝福モードに入ったんですが、ええ、1位の故ルイス・アラゴネス監督まで、これであと3本となりましたからね。今季のゴール数も13本と順調に伸びているため、彼がアトレティコの最多得点選手として、歴史に名を残す日はもう秒読みに入った?

いえまあ、この日のアトレティコの得点はこのゴールだけで、終盤、なりふり構わず、反撃してきたマジョルカがラリンやアマトのシュートでGKオブラクを脅かすなんてこともあったんですけどね。何とか、そのまま1-0で逃げ切った彼らはこれでとうとう、クラブ記録を更新するホーム18連勝に。同時にバルサを抜いて、3位にも浮上したんですが、ちなみに試合後、グリーズマンを最後まで代えなかったことについて訊かれたシメオネ監督は、「前半はいい試合をしたと言えなかったが、常に違う何かを持っている。だから、代表でプレーしてきた後でもピッチに残した。火曜の試合でも大事な存在になるだろう。El sabe gestionarse/エル・サベ・ヘスティオナールセ(彼は管理することを知っている)」とコメント。

確かにケガしやすいという面では、この試合の後半37分にモラタと交代して、2カ月ぶりとなる復帰を遂げたメンフィス・デパイの一挙手一投足の方がまた、どこか痛めないかと気になったもんですけどね。幸い、その日の彼は残り10数分を無事に切り抜け、翌日のマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでも問題はなかったよう。恙なく、ロッテルダム遠征に同行できたため、プレーする時は大抵、ゴールを決めてくれるFWですし、フェイエノールト戦ではチームの力になってくれるといいですよね。

そして日曜はまた、午後2時にブタルケに向かい、ここしばらく2部の首位に君臨しているレガネスが序盤に2点を先行されながら、ラバがエリア内で倒されたプレーをペナルティにしてもらえただけでなく、相手にレッドカードが出されるという幸運が味方に。ネユのPKと直後にピッチに入ったダビド・ガルシアのヘッドで前半のうちに追いつき、そのままラシン・フェロルと2-2で引分けるのを見て来た私だったんですが、ここ2試合、ドロー続きでも2位バジャドリーとの勝ち点差は4、3位エスパニョールとの差は5もありますからね。2部は長丁場のため、4年ぶりの1部昇格が実現するかはまだ、何とも言えませんが、少なくともファンにマドリッド1部5チーム体制復活の夢を与えてくれているのは確かだったかと。

一方、午後6時30分からのカディスvsマドリー戦は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でTV観戦となったんですが、うーん、マルカ(スポーツ紙)のサイトで見たスタメンにはブライムがいたんですけどね。それがいざ、キックオフとなった時にはロドリゴに変わっていて、煙に巻かれた気分になったのは私だけではなかったかと。実はこれ、試合直前にブライムのお腹が痛くなったため、アンチェロッティ監督はブラジル代表から帰還してから1回しかチーム練習をしておらず、ベンチスタートさせるつもりだったロドリゴを使わざるを得なくなったのだとか。

ええ、当人も後で「アップに出る20分前には今日は休めると思っていた。No estaba muy bien, me dolía la rodilla y el diente/ノー・エスタバ・ムイ・ビエン、メ・ドリア・ラ・ロディージャ・イ・エル・ディエンテ(とてもいい感じという訳ではなかった。ヒザと歯が痛かったから)」と言っていたんですけどね。それが蓋を開けてみれば、ロドリゴを代表で全治2カ月半のケガを負ったビニシウスの代わりに左のFWとして先発させたのが大当たりしたんですよ。そう、前半14分にはエリア内にひしめく敵DFをかわして、先制ゴールを挙げると、後半序盤にはホセルに送ったラストパスをオフサイドにいると勘違いした相手にスルーされ、ゴールにできなかったのを反省したか、19分、今度はカウンターから、自身で2点目をゲット。

更に29分には肩の脱臼から復帰したベリンガムにスルーパスを送り、マドリーの3点目、当人にとっては昨季、ドルトムントでの1シーズン42試合で記録したのと並ぶ、今季15試合目で14得点となるゴールをアシストしているとなれば、今回のFIFAウィルス被害は恐れていた程、影響していない?いえまあ、その少し前にはクロアチア代表の2試合でほぼ皆勤。キャプテンとして、ユーロ出場権獲得に全力を尽くしてきたモドリッチがハムストリングに筋肉痛を覚え、ようやくリハビリが終わったセバージョスと交代しないといけないなんてこともあったんですけどね。チュアメニ、カマビンガも負傷離脱中の今、検査の結果次第では、ただでさえ、手薄の中盤がますます人材枯渇に陥る心配がありますが、そのせいもあったんでしょうか。

3点目を取ったすぐ後にはこれ以上の被害を恐れてか、アンチェロッティ監督もベリンガムとロドリゴをルーカス・バスケスとカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のゴンサロに代えて、水曜のナポリ戦に備えることに。まあ、相手のカディスも前半途中から、GKレデスマが太もものケガを再発させたりと、とても点を取りにいくどころではありませんでしたしね。もちろんGKルニンもロジェールのシュートを横っ飛びで弾くなど、何回かは見せ場があったんですが、そのまま試合は0-3で終了です。

そのおかげもあって、月曜にはジローナがアスレティックと1-1で引き分けたため、同じ勝ち点ながら、首位も取り戻したマドリーでしたが、追走するお隣さんとバルサもたったの勝ち点差4ですし、実際、1部もリーガはまだまだ先がありますからね。とりあえず、今はサンティアゴ・ベルナベウで今年最後となるCL戦で、負傷禍でも決して屈しないマドリーを披露できたら、ファンも喜んでくれるんじゃないでしょうか。

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