連戦地獄は止まったけど…/原ゆみこのマドリッド

2023.10.12 01:00 Thu
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「これならゴール不足にはならなさそうね」そんな風に私が頷いていたのは月曜日、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でスペイン代表の合宿初日公開セッションを見学していた時のことでした。いやあ、実は先週金曜にデ・ラ・フエンテ監督が10月のユーロ予選用の招集リストを発表した後、日曜のラス・パルマス戦でジェレミー・ピノ(ビジャレアル)がハムストリングスを負傷。同日、夜の試合でもリーガ最年少得点記録を更新しながら、腸腰筋を痛めて、ラミネ・ジャマル(バルサ)が交代していたため、協会は深夜にアンス・ファティ(ブライトン)とブライアン・サラゴサ(グラナダ)の2人を追加招集することに。

これについては、バルサ時代から何度も代表に呼ばれている前者はともかく、いくら何でもバルサ相手に2点を挙げ、殊勲の引分けをグラナダにもたらす活躍をしたばかりだからって、昨季は2部でプレーしていた22才を初招集するなら、マドリッドの弟分ラージョから、同じく週末の試合でゴールを挙げたアルバロ・ガルシアを呼んであげても良かったんじゃないかと思ったんですけどね。実は9節までのリーガ得点ランキングでは、もちろん不動の1位は8ゴールのMFベリンガム(レアル・マドリー)ですが、その下、5ゴールで2位に並ぶのは5人。スペイン人ではないレバンドフスキ(バルサ)と久保建英選手を除くと、残るはモラタ(アトレティコ)、ホセル(マドリー)、そしてブライアン・サラゴサだったんですよ。

要は今回、得点ランキング2位の選手3人がスペイン代表に招集されたということで、モラタなんて、CLと代表戦を合わせれば、10得点も挙げていますからね。そこにヒザの靭帯断裂から復帰した後、10カ月余りを経て、ようやく再招集となったオジャルサバル(レアル・ソシエダ)も4得点となると、すでに代表で実績のあるフェラン・トーレス(バルサ)と同じ3得点とはいえ、アルバロ・ガルシアが滑り込む余地はなかった?何はともあれ、月曜午後にはラス・ロサスに来て検査を受け、翌朝にはバルセロナに帰還したジャマルはいないものの、木曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)から、セビージャのカルトゥーハで行われるスコットランド戦では3月にグラスゴーで負けたリベンジも兼ねて、消化試合の1つ多い首位の相手に勝ち点3に迫る勝利を挙げられるといいのですが…。
え、代表戦も楽しみだけど、paron(パロン/リーガの停止期間)直前、ヨーロッパの大会参加チームにとっては、地獄の7連戦の最後となった週末のマドリッド勢のリーガの試合はどうだったのかって?そうですね、まず、真夏日が戻ってきた首都で土曜にトップバッターを務めたのはマドリーで、オサスナをサンティアゴ・ベルナベウに迎えたんですが、この日はアラバの回復が間に合わず、ナチョはジローナ戦での退場で課された出場停止処分3試合の1試合目となったため、アンチェロッティ監督はボランチのチュアメニをCBに回すという苦肉の策を取らざる得ないことに。

でも全然、問題は起きなくて、ええ、前半9分には中盤に空きが1人できたせいで、ようやく先発のチャンスが回ってきたモドリッチがエリア内のカルバハルに送ったパスから、折り返しをベリンガムが決めて、早々に先制点を挙げることができたせいもあるんですけどね。数節前には鬼のようにアトレティコを自陣エリアに囲い込んでいたオサスナだったというのに、枠内シュートが前半のルーベン・ペーニャのエリア外からの1本だけと、チミ・アビラも後半までベンチに置いたまま、ほとんど攻撃してこなかったんですよ。
おかげで後半9分には再び、今度はバルベルデとのワンツーを経て、ベリンガム砲が火を吹き、ええ、アンチェロッティ監督も「El madridismo tiene suerte de haber fichado a un jugador espectacular/エル・マドリディスモ・ティエネ・スエルテ・デ・アベール・フィチャードー・ア・ウン・フガドール・エスペクタクラル(スペクタルな選手を獲得できて、マドリーファンはラッキーだ)」と言っていたんですけどね。更には20分、バルベルデのスルーパスを追ったビニシウスがGKセルヒオ・エレーラをかわして3点目を挙げ、25分にもビニシウスのラストパスから、ホセルが4点目をゲットとなれば、これから各国代表でのお勤めも控えているベリンガム(イングランド)やビニシウス(ブラジル)、モドリッチ(クロアチア)、カマビンガ(フランス)らを次々、引っ込めていたのも納得できるかと。

ただ、唯一、この試合でケチがついたのは39分、クロースのパスがエリア内でダビド・ガルシアの手に当たり、PKをもらいながら、ホセルがエレーラに弾かれてしまったことですが、何せ、今季はプレシーズンにビニシウスが、リーガでもロドリゴがPKに失敗していますからね。それもセルタ戦では第1キッカーに指名されていたモドリッチがロドリゴに譲ったり、この日もベンチからアンチェロッティ監督がロドリゴをキッカーにするようリュディガーに伝言しながら、結局、試合前に第1キッカーを仰せつかっていたホセルが蹴ったりと、ベンゼマ(アル・イティハド)がサウジアラビアに行ってから、マドリーのキッカー役序列は少々、混乱しているよう。

まあ、オサスナには4-0の完勝でしたから、別に構わないんですが、後述するお隣さんのように、PKの成否が勝敗を分ける試合もありますからね。13人の選手が各国代表に出向し、試合も10月21日のセビージャ戦までない、この暇な2週間を活用して、アンチェロッティ監督がしっかりPK対策を練ってくることを今は期待するばかりです。

そして土曜は夜の試合でラージョがサンチェス・ピスファンでセビージャに挑んだんですが、いやあ、前半21分にはセットプレーでグデリが頭でクリアしたボールがゴールポストに当たり、その跳ね返りが目の前に落ちてきたオスカル・バレンティンが蹴り込んで先制。26分にもRdT(ラウール・デ・トマス)からパスをもらったアルバロ・ガルシアが見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)でGKナイランドを破り、2点リードで折り返したため、ようやくフランシスコ監督のチームも3連続ドローの停滞状態を抜け出せるかと思ったんですけどね。

それがまさか、CL出場組で疲れているはずの相手がメンディリバル監督の前半37分にフェルナンドをラキティッチに、後半頭からはアクニャとオリベル・トーレスをペドロサとオカンポスに代える荒療治に反応。ゲーム再開3分にソウのエリア外シュートで1点を返されると、粘りに粘って、ようやく後半ロスタイム最後のプレーを迎えたんですが、どこぞの間抜けなチームが敵GKのヘッドで同点に持ち込まれた例を皆が最近、CLで見たせいでしょうかね。やはり黄色のユニだったナイランドも加わったCKの全員攻撃でエン・ネスリの一発を浴びて、2-2の同点に追いつかれてしまうとは!

これで9月の代表戦以降の5試合を1勝4分けで終えることになったラージョとはいえ、それでも翌日にはメンディリバル監督が解任されてしまったセビージャとは違い、8位とまずまずの位置をキープしていますからね。各国代表戦にもディミトリエフスキ(北マケドニア)、バリウ(アルバニア)、アンドレイ(ルーナミア)、パトリス・シセ(セネガル)、ベベ(カーボベルデ)と5人招集されているものの、火曜から再開した練習ではフランシスコ監督も新たに気合を入れ直して、2週間後のラル・パルマス戦の準備を始めてくれるんじゃないでしょうか。

一方、日曜にお隣さん同様、気温の高い午後4時15分にメトロポリターノでレアル・ソシエダ戦が始まったアトレティコはどうだったかというと。いやあ、スタジアム周辺ではキックオフ前にEl Dia de las Penas/エル・ディア・デ・ラス・ペーニャス(ファンクラブの日)のイベントが開催され、大勢のファンたちがパエジャ(スペインのお米料理)やアクティビティを楽しんでいたようですが、試合では開始早々、冷や汗をかかされることに。だってえ、ソシエダボールでキックオフしたかと思えば、そのまま前線に繋がれて、エリア内左からバルネチェアがシュート。それがエルモーソの足に当たって、ゴールに入ったとなれば、最近はremontada(レモンターダ/逆転劇)もできるようになったとはいえ、それこそ赤っ恥もんでしたが、大丈夫。

オジャルサバルがオフサイトの位置でボールを受けていたため、このオウンゴールはスコアに挙がらなかったからですが、おかげで選手たちも目が覚めたんでしょうか。22分にはコケが自陣から放ったロングパスをサムエル・リノが追い、1対1でGKレミロを破ってくれたとなれば、ペーニャのメンバーたちもスペイン各地及び、遥々国外から駆けつけた甲斐があったかと。ただ、その後はFKからのセットプレーでデ・パウルが放ったシュートや、後半序盤もビッツェルがポストに弾かれてしまうなど、過密日程による疲労蓄積もあって、追加点がなかなか取れなかったアトレティコでしたが、20分にソシエダが久保選手、デ・ノルマン、ミケル・メリーノをカルロス・フェルナンデス、ザハリアン、パチェコへと3人一斉交代した後から、少々怪しい雲行きに。

そう、19分にはすでにオジャルサバルのシュートがゴールポストに当たり、危うく難を逃れていた彼らなんですが、21分にCKからブライス・メンデスのヘッドをGKオブラクがキャッチした後、たっぷり1分間以上経ってから、VAR(ビデオ審判)に注進された主審がモニターでリプレーをチェック。最初は誰も何が問題になっているのかわからなかったんですが、実はブライスの前にいたモラタの手がボールに当たっていたそうで、いや、実際、当たっていたんですけどね。大抵、主審がモニターを見る場合、最初の判定が覆ってPKになるんですが、この日のアトレティコは滅多にないツキ日だったんです!

だってえ、主審はモラタの手はプレーに影響してないとして、ペナルティを見逃してくれたんですよ。それでも28分には怒りに燃えたソシエダのカウンターを喰らい、カルロス・フェルナンデスのサイドチェンジから、オジャルサバルに同点ゴールを決められてしまったんですが、シメオネ監督がベンチにいたなけなしのトップチームの選手4人を交代で使い果たした後の41分、再び奇跡が起こります。今度はグリーズマンのシュートが、ゴール前で倒れていたカルロス・フェルナンデスが体を回して立ち上がろうとしたところに当たって逸れ、「Me dice que tiene la mano apoyada pero le da en la que no tiene apoyada/メ・ディセ・ケ・ティエネ・ラ・マノ・アポジャーダ・ペロ・レ・ダ・エン・ラ・ケ・ノー・ティエネ・アポジャーダ(片手は地面についていたが、ボールが当たったのはついてない方の手だったと言われた)」(オジャルサバル)という理由で主審はペナルティを宣告。

モニターすら見に行かなかったため、よっぽど確信があったんでしょうが、おかげでグリーズマンがそのPKを決め、アトレティコは2-1で再びリードすることに。ラミロの参加した最後のCK全員攻撃も含め、ロスタイム7分も必死で守り抜くと、4試合連続でメトロポリターノの場内を一周。ファンとクラブ史タイとなるホームゲーム13連勝を祝うことができたとなれば、まさに「Cuando toca a favor estás contento y en contra, estás jodido/クアンドー・トカ・ア・ファボール・エスタス・コンテントー・イ・エン・コントラ、エスタス・ホディードー(吉と出た時は満足で、反対ならむしゃくしゃしている)」(シメオネ監督)ですよねえ。

実際、後でグリーズマンも「ハンドの判定が審判の解釈頼りの間は同じことが続くだろう」と言っていた通り、運頼みの面があるのは確かで、大体がして、昨季は33節まで1度もPKをもらえず、シーズン通じて、リーガではその1回しかなかったアトレティコがこんな宝くじに当たったような勝ち方をするのも珍しいんですけどね。試合後は人数合わせで招集し、アップはしたものの、出場しなかったカンテラーノ4人、コスティス、ヒスメラ、エル・ジェバリ、ニーニョを速攻、車でマハダオンダ(マドリッド近郊)のミニスタジアムに移送。午後6時からキックオフだったアトレティコB(RFEF1部/実質3部)のサン・フェルナンド戦後半に間に合わせ、うち3人が途中出場して、5試合ぶりに4-2の勝利を掴むといった曲芸のような人材利用をしないといけないご時世だけに、CL出場圏の4位に戻れる有難い勝利ではありましたっけ。

そんなアトレティコも火曜から練習を再開し、今回はヒメネス(ウルグアイ)、コレア(アルゼンチン)、ソユンチュ(トルコ)、メンフィス・デパイ(オランダ)、バリオス(スペインU21)と負傷者が多いため、6人しか各国代表に呼ばれていないのも幸いしましたかね。この2週間は7連戦の疲労回復orリハビリ完了に充てられることになるんですが、最後にヘタフェの日曜試合もさらっとお伝えしておくと。こちらはバライドスでのセルタ戦だったんですが、弟分仲間のラージョと同じ2-2の引分けという結果に。いやあ、開始2分にはスローインから、ボルハ・マジョラルが先制点を挙げて、幸先は良かったんですけどね。

14分にマクシモビッチがウナイ・ニュネスを倒し、献上したPKもイアゴ・アスパスがポストに当ててくれたんですが、24分にはバンバに決められ同点に。おまけに早くも30分にドゥアルテが2枚目のイエローカードをもらい、長い時間、10人で戦わないといけなくなっていた彼らは、いえ、一応、32分にはグリーンウッドが移籍後初ゴールを挙げ、再びリードしたんですけどね。42分にラルセンに2-2とされた後、勝ち越し点を挙げることはできませんでしたが、まあどんまい。ボルダラス監督のチームからは各国代表にマクシモビッチ(セルビア)、チョコ・ロサーノ(ホンジュラス)、アルデレテ(パラグアイ)の3人しか呼ばれていませんし、現在は順位も11位とそれ程、悪くはないため、コリセウムで迎える10節のベティス戦目指して、調子を上げていけばいいんじゃないでしょうか。

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