勝因は頭の強さにあった…/原ゆみこのマドリッド
2023.09.27 20:00 Wed
「2度も続くとこの先、信じられなくなるわよね」そんな風に私が首を振っていたのは火曜日、午前中にバルデベバス(バラハス空港の近く)で練習した後、ミッドウィーク開催リーガの前日会見に出たレアル・マドリーのアンチェロッティ監督が世間一般の予想を裏切って、「もうギュレルはプレーする用意ができている」と、プレシースンのロサンジェルスキャンプ中にヒザの半月板を負傷。それから手術も含め、ずっとリバビリしていた18才のトルコ人MFの招集リスト入りを宣言したところ、それが午後3時のお昼のニュースでは一転、ギュレルは左太ももをケガして、全治3週間と報じられているのを聞いた時のことでした。
いやあ、実は似たようなケースは週末のマドリーダービーの前にもあって、リーガ3節のセルタ戦で右の太ももに肉離れを起こし、全治6週間と言われたビニシウスながら、たった4週間で回復。お隣さんとの試合に招集されたものの、当日、急性胃腸炎を患って、ベンチ外になったという出来事があったんですけどね。折しも首位をバルサに奪われてしまったマドリーですし、サンティアゴ・ベルナベウでプレーする水曜のラス・パルマス戦では、そろそろ新鮮な顔を見られたらと思っていた私ですが、ギュレルがデビューできなくなったのは残念。どうやら、体調の戻ったビニシウスと筋肉の負傷でここ2試合お休みしたカルバハルの復帰でお茶を濁すことになりそうですが…。
まあ、息もつかさず、火曜から始まったミッドウィークリーガのことはおいおい、お話していくことにして、先に先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。この6節は4チーム共、日曜開催となったんですが、最初にキックオフとなったのは弟分のヘタフェ。サン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)でレアル・ソシエダと対戦したところ、凄い乱戦になってしまってねえ。それも相手が前節、サンティアゴ・ベルナベウで開始6分にベルネチェアが先制点を挙げたように、序盤の速攻を得意としていることを、「incluso antes de saltar al campo lo hemos hablado/インクルソ・アンテス・デ・サルタル・アル・カンポ・ロ・エモス・アブラードー(ピッチに出る前にも話した)」(ボルダラス監督)にも関わらず、2分には久保建英選手にゴールを決められているのですから、困ったもんじゃないですか。
それでも39分にはアレニャがヘッドで同点ゴールを決め、前半ロスタイムにはデ・ノルマンドにエリア内で倒されてPKをゲットしたボルハ・マジョラル当人が2点目を挙げて、逆転して折り返したヘタフェだったんですが、後半、ソシエダにやられちゃったんですよ。そう、16分には今度はミトロビッチがブライス・メンデスにペナルティを犯し、オジャルサバルのPKで早くも追いつかれると、21分には敵のスローインをパンチングしようとゴールを離れたGKダビド・ソリアがすかしてしまい、バウンドしたボールをメンデスに頭で押し込まれて3点目を献上。更には44分にもオジャルサバルに4点目を追加されたため、ラタサがロスタイムにヘッドで決めた3点目も焼け石に水でしたっけ(最終結果4-3)。
前節オサスナ戦では同じ3得点で3-2と競り勝っていたヘタフェだけに、これにはボルダラス監督も「Te vas con una derrota habiendo hecho tres goles/テ・バス・コン・ウナ・デロータ・アビエンドー・エッチョー・トレス・ゴーレス(3ゴールも挙げながら、負けて帰ることになった)」と悔しがっていましたが、ここはいつものシーズンなら、ゴール不足に悩むチームが2試合連続で3点も取れたことで良しとするしかないかと。ただ、気になるのはヘタフェが今季、まだアウェイで3戦3敗と勝ち点を1つも獲れていないことで、ええ、この水曜のアスレティック戦もサン・マメスでの試合ですからね。しかも相手は2連勝中で、順位も4位と好調なスタートを切っているだけに、13位のヘタフェが勝ち点を上積みできるのは土曜のコリセウム・アルフォンソ・ペレス、ビジャレアル戦まで待たないといけないかもしれません。
でも大丈夫。即座に反応したラージョは16分、ウナイ・ロペスが自陣から送ったロングボールをRdT(ラウール・デ・トマス)はコントロールできなかったものの、キケ・ペレスがGKヨルゲンセンの頭を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)を放ち、あっという間に同点に。でもまさか、それで両チーム共、打ち止めになってしまうとはねえ。とりわけ後半31分にはアルベルト・モレノが2枚目のイエローカードをもらい、ビジャレアルが1人少なくなっただけに、交代で入ったカメージョ、デ・フルート、トレホ、ベベらが勝ち越し点を奪えなかったのは、もったいなかったかと。
いえ、フランシスコ監督のチームは負傷でファルカオとエヌテカを欠いていたという事情もあったんですけどね。1-1の引分けで終わってしまったのでは、前節のアラベス戦のように、試合後は「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って、選手たちと勝利を祝おうとスタジアムに駆けつけたファンには残念でしたが、この水曜にカディスとのアウェイ戦が終われば、またチームは土曜にマジョルカ戦をバジェカスでプレー。その時には現在、5位のアトレティコ、6位のバレンシアと同じ勝ち点で7位につけているラージョも更なる高みを見据えた戦いに挑めるかもしれませんし、今週はあまり練習する時間はなくともRdTやカメージョら、FW陣がもう少し、ゴール力を磨いてくれることを期待しましょうか。
そしてその日はラッキーにもマドリーダービーと梯子するという顔見知りの記者がいたため、メトロポリターノへの移動はそのタクシーに便乗。代替バスの必要がない時でも、メトロ乗り継ぎだと1時間以上かかるところが、30分弱で到着できることに。バジェカスではキックオフから試合終了まで強い西日を背中にがっつり浴び、暑さに相当まいっていたせいもあって、有難かったんですが、収容人数を7万人に拡張したスタンドをほぼ埋め尽くしたファンが、キックオフ前から熱心にアトレティコを応援しているのを見ても、決して私の心臓は静まらず。だってえ、ここ12回のダービー中、勝ったのは2022年にマドリーがリーガ優勝を決めた後の消化試合1回だけで、あとは先制しようが何しようが、最後はマドリー十八番のremontada(レモンターダ/逆転劇)を喰らったり、追いつかれているのをイヤという程、見せられてきたんですよ。
それも相手は開幕から6連勝と無敵の首位であるのに対し、アトレティコは前節バレンシア戦で3-0と完敗。ミッドウィークのCLラツィオ戦なんて、後半ロスタイムに敵GKのゴールで1-1に追いつかれるという、稀に見る悲劇に襲われたとなれば、クラブも用心して、ダービーでは恒例のモザイクなどの演出を自粛して、応援団がfondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側スタンド)に「Nos sobran los motivos/ノス・ソブラン・ロス・モティーボス(我々には理由が沢山ある)」と書かれた横断幕を掲げるだけに留まったのも仕方ない?
でもこの日のアトレティコは何かが違っていたんです。キックオフから、「Sabíamos que podíamos hacer daño por los costados/サビアモス・ケ・ポディアモス・アセール・ダーニョ・ポル・ロス・コスタードス(ウチはサイドから打撃を与えられることを知っていた)。ファーポストへのクロスに相手が苦労していることをね。だから、それを練習した」(シメオネ監督)というプレーを忠実に遂行し、早くも前半4分にはサムエル・リノのクロスをモラタがゴール前からヘッドして、先制点を取っているんですから、ビックリしたの何のって。ただ、それだけだったら、アルメリア戦の前半3分にやはり頭で決めたアリバス(RMカスティージャから移籍)やヘタフェ戦の前半11分に得点したマジョラルのように後々、逆転されて、古巣への恩返しゴールの甘酸っぱい思い出に終わっていたかもしれないんですが、ようやくアトレティコの選手たちも1点ぽっきりでは遅かれ早かれ、追いつかれることを学んだよう。
その日は早い時間の得点に気を緩めず、18分には再び、リノからパスをもらったサウールが左サイドからクロス。今度はグリーズマンが誰にも邪魔をされずにヘッドでゴールに叩き込み、あっさり2点目を奪ってしまったとなれば、少しは勝ち筋が見えてきた?いえいえ、そんなに簡単な話なら、こうもお隣さんに対して不成績が続く訳はなく、案の条、2点差になった後、アトレティコはお馴染みの「リードしたら一歩後退」を実行。おかげでマドリーに反撃スイッチが入り、35分にはバルベルデの右サイドからのクロスをサビッチが頭でクリアしたボールをクロースに拾われて、エリア前から弾丸シュートでgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められてしまったから、さあ大変!
それどころか、43分にはクロースがゴール前に送ったボールを撃ったアラバはポストに弾かれたものの、ゴール前の反対サイドにいたカマビンガに押し込まれ、もう追いつかれたのかと冷や汗をかいたんですが、ツイていました。ええ、この時はボールには触っていないものの、ゴール正面でエルモーソとがっぷり四つで争っていたリュディガーがオフサイドだったと判断され、ノーゴールになるって、ついぞダービーでは見たことのないジャッジ運じゃない?
45分にロドリゴに激しいタックルを見舞ったヒメネスも幸い、イエローカードで済みましたしね。昨季はコパ・デル・レイを入れて3度あったダービーでことごとく、退場者を出しているアトレティコにとって、これ以上ない朗報ですが、2-1のまま、ハーフタイムに入れたおかげで、選手たちもこの試合のミッションを思い出すことに。そう、シメオネ監督も「Con el 2-0 retrocedimos demasiado/コン・エル・ドス・セロ・レトロセディモス・デマシアドー(2-0になって、ウチは下がり過ぎた)から、ロッカールームではこのままだと負ける可能性が大いにある。プレーして、ファーポストにボールを送らないといけないと話した」と言っていたんですが、いやあ、監督の指示を直ちに実践できるとは彼らも成長したもの。
アンチェロッティ監督がCFなしの5人MF制を訂正し、モドリッチに代わり、ホセルが入ったマドリーに対し、開幕戦開始6分に負傷して、ようやくこの日、スタメンに戻って来たコケがガソリン切れ。ビッツェルがボランチを引き継いだアトレティコは後半が始まって1分も経たないうち、再びサウールが左サイドからクロスを上げ、アラバ、フラン・ガルシア、カマビンガが悠然と見守る中、モラタが再びヘッドで3点をゲットしたとなれば、ベンチから控え選手たちまで飛び出して、まるで優勝でも決まったかのようなお祝いをスタンドと一緒にしていたのもムリはなかった?
いやあ、それでもマドリーは2点ぐらい、あのADNに刻まれたレモンターダ根性で引っくり返してしまうかもしれないと、長い45分間が過ぎ、後半ロスタイム6分が残り1分になるまで、恐れていた私だったんですけどね。どうやら普通のリーガ戦は、あの伝説となった2022年のDecimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)に至る決勝トーナメントとは違い、「今日は逆転近くまで行ったが、3-1となって全てが終わった。A partir de ese gol, ya es demasiado/ア・パルティル・デ・エセ・ゴル、ジャー・エス・デマシアドー(あのゴールが入って、もう逆転するには差が大き過ぎた)」(アンチェロッテイ監督)という状況にマドリーは陥ったよう。
実際、ホセルが入った後は逆転を目指しての交代といっても、サイドに隙を作りすぎたルーカス・バスケス、フラン・ガルシア、そしてカマビンガをナチョ、メンディ、チュアメニにした以外、ビニシウスのいないマドリーはせいぜい、ブライムを入れるぐらいしかできませんでしたからね。まったく危なげなく、そのまま3-1で勝利したアトレティコはロスタイム5分にベリンガムに蹴られ、相手はレッドでなく、イエローカード止まり。その時にヒザを捻って、全治2週間となったコレアも一緒に選手全員がピッチに出て、彼らの大好きな場内一周でファンと祝っていたんですが、いやあ。自分のカンティコを聞いて、「Estaba a punto de que alguna lágrima cayera/エスタバ・ア・プント・デ・ケ・アルグーナ・ラグリマ・カジェラ(嬉し涙がこぼれる寸前だった)」と言っていたのはグリーズマンですが、結構、私もそれに近かったかも。
おかげでマドリーとの勝ち点差が1試合少ない状態で5に縮まり、その日、お隣さんを追い抜いて首位に立ったバルサとも6差のまま(火曜にマジョルカと引分け7差になった)、アトレティコは木曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からのオサスナ戦に挑めることになったんですが、一旦は止まったかと思われたモラタのゴール運が続くかは祈るばかり。まあ、メンフィス・デパイもダービー後半の途中出場で復帰していますし、とりあえず、コレアが戻って来るまでぐらいは、次のケガをしないでくれるといいのですが。
一方、マドリーあるあるで、今季初黒星を喫しただけで、一気にクライシス入り。それまでの6連勝中にも散見された序盤の失点癖や守備の大穴、そして本来、FWではないベリンガムが当たりまくっていたため、問題にされていなかった前線のシュート精度の悪さとゴール不足だけでなく、アンチェロッティ監督が今季選んだ中盤をひし形にしたシステムの弱点まで一気に批判されることになったお隣さんは水曜午後7時(日本時間翌午前2時)にラス・パルマス戦を迎えるんですが、一応、相手は久々に1部に昇格したチームですからね。たとえ、前節のグラナダ戦で今季初白星を掴み、気勢が上がっているとはいえ、ビニシウスとカルバハルも戻るマドリーなら、全然、恐れるに足らないんじゃないかと思いますが…これで勝てないようなら、本当にマズいことになるかもしれませんよ。
いやあ、実は似たようなケースは週末のマドリーダービーの前にもあって、リーガ3節のセルタ戦で右の太ももに肉離れを起こし、全治6週間と言われたビニシウスながら、たった4週間で回復。お隣さんとの試合に招集されたものの、当日、急性胃腸炎を患って、ベンチ外になったという出来事があったんですけどね。折しも首位をバルサに奪われてしまったマドリーですし、サンティアゴ・ベルナベウでプレーする水曜のラス・パルマス戦では、そろそろ新鮮な顔を見られたらと思っていた私ですが、ギュレルがデビューできなくなったのは残念。どうやら、体調の戻ったビニシウスと筋肉の負傷でここ2試合お休みしたカルバハルの復帰でお茶を濁すことになりそうですが…。
まあ、息もつかさず、火曜から始まったミッドウィークリーガのことはおいおい、お話していくことにして、先に先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。この6節は4チーム共、日曜開催となったんですが、最初にキックオフとなったのは弟分のヘタフェ。サン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)でレアル・ソシエダと対戦したところ、凄い乱戦になってしまってねえ。それも相手が前節、サンティアゴ・ベルナベウで開始6分にベルネチェアが先制点を挙げたように、序盤の速攻を得意としていることを、「incluso antes de saltar al campo lo hemos hablado/インクルソ・アンテス・デ・サルタル・アル・カンポ・ロ・エモス・アブラードー(ピッチに出る前にも話した)」(ボルダラス監督)にも関わらず、2分には久保建英選手にゴールを決められているのですから、困ったもんじゃないですか。
前節オサスナ戦では同じ3得点で3-2と競り勝っていたヘタフェだけに、これにはボルダラス監督も「Te vas con una derrota habiendo hecho tres goles/テ・バス・コン・ウナ・デロータ・アビエンドー・エッチョー・トレス・ゴーレス(3ゴールも挙げながら、負けて帰ることになった)」と悔しがっていましたが、ここはいつものシーズンなら、ゴール不足に悩むチームが2試合連続で3点も取れたことで良しとするしかないかと。ただ、気になるのはヘタフェが今季、まだアウェイで3戦3敗と勝ち点を1つも獲れていないことで、ええ、この水曜のアスレティック戦もサン・マメスでの試合ですからね。しかも相手は2連勝中で、順位も4位と好調なスタートを切っているだけに、13位のヘタフェが勝ち点を上積みできるのは土曜のコリセウム・アルフォンソ・ペレス、ビジャレアル戦まで待たないといけないかもしれません。
そして日曜試合の第2弾ではラージョがエスタディオ・バジェカスにビジャレアルを迎えたんですが、さすがにファン待望の週末開催とあって、私がパシフィコ駅から乗る、メトロ1号線補修工事による代替バスもかなりの混雑ぶり。まあ、1台乗り過ごしても5分ぐらい待てば、次のバスが来るため、そんなに慌てることもないんですが、これが10月末まで続くとなると、却って平日試合の方が空いていていい?そんなことはともかく、試合の方は奇妙な展開で、ゴールが生まれたのは前半の1分間だけだったんですよ。そう、キックオフから積極的に攻めていたのはホームチームの方だったんですが、敵ゴール前でうだうだしていた15分、カウンターで上がったバエナがエリア内に入れたクロスをセルロートがワンタッチで決め、いきなりビジャレアルが先制しているって、一体、どうなっているのでしょう。
でも大丈夫。即座に反応したラージョは16分、ウナイ・ロペスが自陣から送ったロングボールをRdT(ラウール・デ・トマス)はコントロールできなかったものの、キケ・ペレスがGKヨルゲンセンの頭を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)を放ち、あっという間に同点に。でもまさか、それで両チーム共、打ち止めになってしまうとはねえ。とりわけ後半31分にはアルベルト・モレノが2枚目のイエローカードをもらい、ビジャレアルが1人少なくなっただけに、交代で入ったカメージョ、デ・フルート、トレホ、ベベらが勝ち越し点を奪えなかったのは、もったいなかったかと。
いえ、フランシスコ監督のチームは負傷でファルカオとエヌテカを欠いていたという事情もあったんですけどね。1-1の引分けで終わってしまったのでは、前節のアラベス戦のように、試合後は「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って、選手たちと勝利を祝おうとスタジアムに駆けつけたファンには残念でしたが、この水曜にカディスとのアウェイ戦が終われば、またチームは土曜にマジョルカ戦をバジェカスでプレー。その時には現在、5位のアトレティコ、6位のバレンシアと同じ勝ち点で7位につけているラージョも更なる高みを見据えた戦いに挑めるかもしれませんし、今週はあまり練習する時間はなくともRdTやカメージョら、FW陣がもう少し、ゴール力を磨いてくれることを期待しましょうか。
そしてその日はラッキーにもマドリーダービーと梯子するという顔見知りの記者がいたため、メトロポリターノへの移動はそのタクシーに便乗。代替バスの必要がない時でも、メトロ乗り継ぎだと1時間以上かかるところが、30分弱で到着できることに。バジェカスではキックオフから試合終了まで強い西日を背中にがっつり浴び、暑さに相当まいっていたせいもあって、有難かったんですが、収容人数を7万人に拡張したスタンドをほぼ埋め尽くしたファンが、キックオフ前から熱心にアトレティコを応援しているのを見ても、決して私の心臓は静まらず。だってえ、ここ12回のダービー中、勝ったのは2022年にマドリーがリーガ優勝を決めた後の消化試合1回だけで、あとは先制しようが何しようが、最後はマドリー十八番のremontada(レモンターダ/逆転劇)を喰らったり、追いつかれているのをイヤという程、見せられてきたんですよ。
それも相手は開幕から6連勝と無敵の首位であるのに対し、アトレティコは前節バレンシア戦で3-0と完敗。ミッドウィークのCLラツィオ戦なんて、後半ロスタイムに敵GKのゴールで1-1に追いつかれるという、稀に見る悲劇に襲われたとなれば、クラブも用心して、ダービーでは恒例のモザイクなどの演出を自粛して、応援団がfondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側スタンド)に「Nos sobran los motivos/ノス・ソブラン・ロス・モティーボス(我々には理由が沢山ある)」と書かれた横断幕を掲げるだけに留まったのも仕方ない?
でもこの日のアトレティコは何かが違っていたんです。キックオフから、「Sabíamos que podíamos hacer daño por los costados/サビアモス・ケ・ポディアモス・アセール・ダーニョ・ポル・ロス・コスタードス(ウチはサイドから打撃を与えられることを知っていた)。ファーポストへのクロスに相手が苦労していることをね。だから、それを練習した」(シメオネ監督)というプレーを忠実に遂行し、早くも前半4分にはサムエル・リノのクロスをモラタがゴール前からヘッドして、先制点を取っているんですから、ビックリしたの何のって。ただ、それだけだったら、アルメリア戦の前半3分にやはり頭で決めたアリバス(RMカスティージャから移籍)やヘタフェ戦の前半11分に得点したマジョラルのように後々、逆転されて、古巣への恩返しゴールの甘酸っぱい思い出に終わっていたかもしれないんですが、ようやくアトレティコの選手たちも1点ぽっきりでは遅かれ早かれ、追いつかれることを学んだよう。
その日は早い時間の得点に気を緩めず、18分には再び、リノからパスをもらったサウールが左サイドからクロス。今度はグリーズマンが誰にも邪魔をされずにヘッドでゴールに叩き込み、あっさり2点目を奪ってしまったとなれば、少しは勝ち筋が見えてきた?いえいえ、そんなに簡単な話なら、こうもお隣さんに対して不成績が続く訳はなく、案の条、2点差になった後、アトレティコはお馴染みの「リードしたら一歩後退」を実行。おかげでマドリーに反撃スイッチが入り、35分にはバルベルデの右サイドからのクロスをサビッチが頭でクリアしたボールをクロースに拾われて、エリア前から弾丸シュートでgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められてしまったから、さあ大変!
それどころか、43分にはクロースがゴール前に送ったボールを撃ったアラバはポストに弾かれたものの、ゴール前の反対サイドにいたカマビンガに押し込まれ、もう追いつかれたのかと冷や汗をかいたんですが、ツイていました。ええ、この時はボールには触っていないものの、ゴール正面でエルモーソとがっぷり四つで争っていたリュディガーがオフサイドだったと判断され、ノーゴールになるって、ついぞダービーでは見たことのないジャッジ運じゃない?
45分にロドリゴに激しいタックルを見舞ったヒメネスも幸い、イエローカードで済みましたしね。昨季はコパ・デル・レイを入れて3度あったダービーでことごとく、退場者を出しているアトレティコにとって、これ以上ない朗報ですが、2-1のまま、ハーフタイムに入れたおかげで、選手たちもこの試合のミッションを思い出すことに。そう、シメオネ監督も「Con el 2-0 retrocedimos demasiado/コン・エル・ドス・セロ・レトロセディモス・デマシアドー(2-0になって、ウチは下がり過ぎた)から、ロッカールームではこのままだと負ける可能性が大いにある。プレーして、ファーポストにボールを送らないといけないと話した」と言っていたんですが、いやあ、監督の指示を直ちに実践できるとは彼らも成長したもの。
アンチェロッティ監督がCFなしの5人MF制を訂正し、モドリッチに代わり、ホセルが入ったマドリーに対し、開幕戦開始6分に負傷して、ようやくこの日、スタメンに戻って来たコケがガソリン切れ。ビッツェルがボランチを引き継いだアトレティコは後半が始まって1分も経たないうち、再びサウールが左サイドからクロスを上げ、アラバ、フラン・ガルシア、カマビンガが悠然と見守る中、モラタが再びヘッドで3点をゲットしたとなれば、ベンチから控え選手たちまで飛び出して、まるで優勝でも決まったかのようなお祝いをスタンドと一緒にしていたのもムリはなかった?
いやあ、それでもマドリーは2点ぐらい、あのADNに刻まれたレモンターダ根性で引っくり返してしまうかもしれないと、長い45分間が過ぎ、後半ロスタイム6分が残り1分になるまで、恐れていた私だったんですけどね。どうやら普通のリーガ戦は、あの伝説となった2022年のDecimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)に至る決勝トーナメントとは違い、「今日は逆転近くまで行ったが、3-1となって全てが終わった。A partir de ese gol, ya es demasiado/ア・パルティル・デ・エセ・ゴル、ジャー・エス・デマシアドー(あのゴールが入って、もう逆転するには差が大き過ぎた)」(アンチェロッテイ監督)という状況にマドリーは陥ったよう。
実際、ホセルが入った後は逆転を目指しての交代といっても、サイドに隙を作りすぎたルーカス・バスケス、フラン・ガルシア、そしてカマビンガをナチョ、メンディ、チュアメニにした以外、ビニシウスのいないマドリーはせいぜい、ブライムを入れるぐらいしかできませんでしたからね。まったく危なげなく、そのまま3-1で勝利したアトレティコはロスタイム5分にベリンガムに蹴られ、相手はレッドでなく、イエローカード止まり。その時にヒザを捻って、全治2週間となったコレアも一緒に選手全員がピッチに出て、彼らの大好きな場内一周でファンと祝っていたんですが、いやあ。自分のカンティコを聞いて、「Estaba a punto de que alguna lágrima cayera/エスタバ・ア・プント・デ・ケ・アルグーナ・ラグリマ・カジェラ(嬉し涙がこぼれる寸前だった)」と言っていたのはグリーズマンですが、結構、私もそれに近かったかも。
おかげでマドリーとの勝ち点差が1試合少ない状態で5に縮まり、その日、お隣さんを追い抜いて首位に立ったバルサとも6差のまま(火曜にマジョルカと引分け7差になった)、アトレティコは木曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からのオサスナ戦に挑めることになったんですが、一旦は止まったかと思われたモラタのゴール運が続くかは祈るばかり。まあ、メンフィス・デパイもダービー後半の途中出場で復帰していますし、とりあえず、コレアが戻って来るまでぐらいは、次のケガをしないでくれるといいのですが。
一方、マドリーあるあるで、今季初黒星を喫しただけで、一気にクライシス入り。それまでの6連勝中にも散見された序盤の失点癖や守備の大穴、そして本来、FWではないベリンガムが当たりまくっていたため、問題にされていなかった前線のシュート精度の悪さとゴール不足だけでなく、アンチェロッティ監督が今季選んだ中盤をひし形にしたシステムの弱点まで一気に批判されることになったお隣さんは水曜午後7時(日本時間翌午前2時)にラス・パルマス戦を迎えるんですが、一応、相手は久々に1部に昇格したチームですからね。たとえ、前節のグラナダ戦で今季初白星を掴み、気勢が上がっているとはいえ、ビニシウスとカルバハルも戻るマドリーなら、全然、恐れるに足らないんじゃないかと思いますが…これで勝てないようなら、本当にマズいことになるかもしれませんよ。
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