いきなり爆発するから得体が知れない…/原ゆみこのマドリッド
2023.08.30 21:30 Wed
「だよねえ、時間もないし」そんな風に私が頷いていたのは火曜日、前日に行われたスペイン・サッカー協会役員会議では女子代表のビルダ監督解任の方法を模索している反面、男子代表のデ・ラ・フエンテ監督は続投する予定という記事を読んだ時のことでした。いやあ、先週木曜夕方にW杯の表彰台でジェニ・エルモーソ(パチューカ)にキスして、セクハラと非難されたルビアレス会長が翌日には辞任を発表すると全てのメデイアで報道された後、事態が急変。ラス・ロサス(マドリッド近郊)の協会本部で開かれた金曜の総会で当人は、「No voy a dimitir/ノー・ボイ・ア・ディミテル(私は辞めない)」と5回も繰り返した上、ジェニへのキスは相手の同意があってのものだったと主張したんですよ。
世間が呆気に取られる中、最後はデ・ラ・フエンテ監督やビルダ監督も一緒になって、出席者が会長に拍手を贈るシャンシャン総会として終わってしまったため、2人の代表監督たちも会長支持派なのかと批判されていたんですが、うーん、男子A代表に関しては、2018年W杯ロシア大会開幕の3日前にレアル・マドリーと契約を結んだロペテギ監督を怒りに任せて電撃解任。スペインはスポーツディレクターだったイエロ暫定監督の下で戦って、16強で敗退したという苦い思い出がありますからね。6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーで優勝し、11年ぶりのタイトルをもたらしたとはいえ、3月のユーロ2024予選は1勝1敗でスタート。9月初旬にはジョージア、キプロス戦を迎えるデ・ラ・フエンテ監督など、この金曜にはその試合の招集リスト発表も迫っていることもあり、一応、ルビアレス会長の機嫌を損ねないよう、周りに合わせただけなんじゃないかと思いましたが、ビルダ監督の方はいうと。
金曜の午後にはデ・ラ・フエンテ監督を倣って、会長の表彰式での振る舞いを不適切なものと非難する声明を発表したのはともかく、昨年も指導方針に不満を覚えたスペイン女子代表選手15名から、代表チーム不参加宣言を喰らった彼にはシドニーからの帰国便の中、ジェニやその家族にルビアレス会長の釈明ビデオに一緒に出るように圧力をかけたという話もありましたからね。そのせいもあったか、金曜午後にジェニから、「同意のあるキスではなかった」という声明が発せられるのと共に、W杯優勝チーム23人を含む、81人の女子選手から、「協会が自浄措置を取らない限り、代表には参加しない」という通告をもらうことに。
その上、総会の後、ビルダ監督のW杯コーチングスタッフ11人、そして女子ユース代表スタッフ4人が辞任を申し入れていたことが発覚し、もうそれだけでも9月22日と26日にある、来年のパリ五輪出場権が懸かっている女子ネーションズリーグの2試合、スウェーデン戦とスイス戦に挑むのが難しくなっていますからね。とてもW杯優勝直後のチームに起きることとは思えませんが、立て直しを図るのは土曜にFIFAの規律委員会から直々、ルビアレス会長の職務即時停止及びジェニとその関係者に圧力をかけてはいけない命令が協会に出された今しかない?
その一方でスペイン政府も月曜になって、CSD(スポーツ上級諮問委員会)がTAD(スポーツ仲裁裁判所)にルビアレス会長がサッカー関連の職に就くことを禁じる訴えを行ったんですが、こちらは必要な書類が足りないとやっぱり、亀の歩みになりそうな。まあ、FIFAの処分は当面、90日間は続きますしね。デ・ラ・フエンテ監督にはバルサの16才の新鋭、ラミネ・ジャマルの初招集など、独立独歩を貫いて、ようやく上向きかけている男子スペイン代表に、かつてユーロ2008、2010年W杯、ユーロ2012と連続優勝した黄金時代の輝きを取り戻す努力を続けてもらいたいものです。
続いてのドッキリは10分にはビニシウスが太ももの手当てを受け、一旦はピッチに戻ったものの、またしてもラルセンがCK時にケパにぶつかってファールを取られた後の18分、ホセル(エスパニョールからレンタル移籍)と交代せざるを得なくなっちゃったんですよ。実はこのケガ、月曜には肉離れと判明し、全治6週間のリハビリが必要となるんですが、それってちょっとヤバくない?実際、その日も「Sin él nos ha costado más porque el Celta ha jugado bien atrás/シン・エル・ノス・ア・コスタードー・マス・ポルケ・エル・セルタ・ア・フガードー・ビエン・アトラス(彼がいなくてウチはより苦労した。セルタの後方はいいプレーをしていたから)」(アンチェロッティ監督)と、前半はベニテス監督のチームの堅守を突破できず、いえ、42分にはホセルがベリンガムのスルーパスを受けて、ゴールを入れたんですけどね。
オフサイドで得点にはならず、0-0でハーフタイムに入ったため、アンチェロッティ監督は後半17分にはカマビンガ、チュアメニに代え、ベテランゴールデンコンビのクロースとモドリッチを投入。とはいえ、その2分後にマドリー、この試合最大のチャンスを作ったのはベリンガム(ドルトムントから移籍)とロドリゴのスタメン組だったんですけどね。前者のスルーパスを追った後者がGKイバン・ビジャルに倒されて、PKを獲得してくれた時には、先制点は頂きと小躍りしたファンも多かったはずですが…いやあ、何とロドリゴがPKをビジャルに弾かれてしまうとは!
これには後でアンチェロッティ監督も「Libertad no hay/リベルタッド・ノー・アイ(自由はない)。PKキッカーはビニシウスだったが、ピッチにいなくて、私はバルベルデにモドリッチが蹴るようにと伝えた。そしたら選手たちはロドリゴを選んで、それを正す時間もなかった」と少々、おかんむりだったんですけどね。どうやらこれは昨年のW杯カタール大会準々決勝でクロアチアとPK戦となり、ブラジルの第1キッカーを務めて失敗したロドリゴへのモドリッチの気遣いだったようで、自信を取り戻せるようにとキッカーを譲ったらしいんですが、それが裏目に出てしまうとはまったく、サッカーの世界は先が見えない。
でも大丈夫。このチームはMFだと思って獲ったら、その実態はCFだったスーパー新人がいて、その名はベリンガム。何と36分、クロースの蹴ったCKをホセルが頭で繋いだ後、アイドゥーにしがみつかれながらもヘッドを決め、マドリーに虎の子の1点をもたらしてくれるとは、1億ユーロ(約160億円)越えの移籍金は決して高くはなかった?ちなみにこのゴールはホセルのお手柄もあって、ストークシティやニューキャッスルにも在籍して、英語の心得がある当人曰く、「Antes del gol le dije a Jude que estuviese cerca de mí para un posible rechace/アンテス・デル・ゴル・レ・ディヘ・ア・ジューデ・ケ・エストゥビエセ・セルカ・デ・ミー・パラ・ウン・ポシブレ・レチャセ(ゴールの前、ベリンガムにクリアに備えてボクの近くにいるようにと言った)」そうなんですけどね。
そのまま0-1でセルタを破り、開幕3連勝としたマドリーですが、それにしたって、その3試合でベリンガムが4得点も挙げるとは一体、誰に予測できた?こうなると彼だけで昨季、ベンゼマが挙げた31得点を補ってくれるんじゃないかと期待する向きも出てきそうですが、何せ、ここしばらくはビニシウスの分も補わないといけませんからね。さすがにそれは荷が重すぎる気がするんですが、マドリーの次節、ようやく大改装工事に区切りをつけて、ピッチに芝も張られたサンティアゴ・ベルナベウでのホーム開幕戦の相手はヘタフェ。後述の弟分に容赦のなかったお隣さん同様、あまりひどい目に遭わせたら可哀そうですし、土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からの兄弟分ダービーはマイルドな展開になってほしいものです。
そして土日はマドリッド勢1部の試合がなかったため、ビジャレアルがバルサに3-4で負け、バレンシアがオサスナに後半ロスタイム4分のゴールで1-2と劇的敗戦。そしてアスレティックが0-2から、4-2に逆転してベティスに勝利と、地方では目の回るような展開になっていた日曜にはレガネスの遅い時間の試合を見にブタルケに行った私だったんですが、柴崎岳選手がいなくなっても、今季こその1部復帰を目指して、2部の弟分は頑張っているところを目撃。いえ、試合は相手のアルバセテが前後半に1度ずつ、ペナルティを犯し、ラバとディエゴ・ガルシアのPKによる2-0勝利だったんですけどね。
まだ前線の補強が終わっていないチームのため、カンテラーノ(下部組織出身の選手)のナイムやディエゴ・ガルシアが健闘していたのが印象的で、最後はアルバセテの猛攻にあったものの、全員が協力する守備で凌ぎきったのは偉かったかと。唯一、残念なのは午後9時30分キックオフとなると、11時30分にはスタジアムを出ないとセルカニアス(国鉄近郊路線)の零時の終電に間に合わないため、昨今、常態化している後半ロスタイム10分が終わるまでスタンドにいられなかったことと、ボルハ・ヒメネス新監督の会見を見られなかったことですが、開幕戦こそアンドラに0-1と遅れを取ったものの、この2連勝でレガネスは昇格プレーオフ圏の5位まで上昇。
バケーションから戻って来たファンの熱気も相変わらずですし、マドリッド観光の折りにスケッジュールが合えば、観戦に行くのも悪くないかと。ただ、要注意はこちらもメトロ1号線のソル折り返し運転の影響で、通常はサラケマダからアトーチャ(地方移動する時のハブ駅)までセルカニアスで行って、メトロに乗り換えるんですが、10月までアトーチャにはメトロ接続がないこと。電車に乗る前に私もそれに気づいて、1駅前のメンデス・アルバロで6号線を捕まえることができたんですが、ホント、ポルタスゴ(1号線)にあるエスタディオ・バジェカスもパシフィコ(6号線と接続)から代替バスを使わないと行けなかったりと、夏場は面倒臭いことが増えますよね。
え、それでも月曜のラージョvsアトレティコ戦ではクラブ創設から120年、誰もお目にかかったことのない新記録に立ち会えたんだろうって?その通りで、キックオフを待っていた午後9時12分、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継で、それまでアラベスとずっと0-0だったヘタフェがPKをゲット。ハイボールを争ったラタサの顔をアブカルが叩いてのことですが、この日はボルハ・マジョラルも失敗せず、しっかりゴールを決めてくれたため、ロスタイム9分の後、丁度、1-0でボルダラス監督のチームが今季初勝利をコリセウム・アルフォンソ・ペレスで達成したところで、バジェカスも選手入場となりました。
折しも前節は38℃の猛暑のセビージャで行われたベティス戦でほとんど走りもせず、スコアレスドローだったアトレティコと、やはり相当暑かったはずのグラナダでの試合で鬼のように走り回り、2連勝を遂げたラージョを見ていただけに、私もあまり期待はしていなかったんですが…何なんでしょう、この変身ぶりは!
日曜からいきなり気温が一気に下がり、23℃になったのがよっぽど効いたか、開始2分、デ・パウルのクロスをグリーズマンがvolea(ボレア/ボレーシュート)で決めて先制とは、驚かせてくれるじゃないですか。でもこれはただの前座で、早くも16分、今度はサウールがエリア内奥から折り返したパスをメンフィス・デパイがゴール前から押し込んで2点目をゲット。いえ、実は彼は35分にはまた、負傷癖が顔を出して、モラタに交代しないといけなかったんですけどね。その1分後にはデ・パウルが自陣から放ったロングパスにモリーナが反応。プレシーズンにケガをして、世界一周ツアーにも不参加だった、この日が今季リーガデビューの右SBがGKディミトリエフスキとの1対1を制して3点目を挙げているとなれば、何を心配することがありましょうか。
いえ、実際にはかつて前半だけで3点挙げながら、エスパニョールに追いつかれた黒歴史もある彼らですから、後半、気を取り直したラージョが攻めて来た時にはちょっと不安になったんですけどね。カラスコ、デ・パウルがサムエル・リノ(昨季はバレンシアにレンタル)、マルコス・ジョレンテに代わった後の29分には再びギアを上げ、サウールのエリア外からのスルーパスをモラタが珍しくオフサイドに引っかからずに決めて、4点目が入ることに。34分など、もうかなりヤケクソな気分になっていたか、ディミトリエフスキがゴールキックを交代で入ったコレアに向けて蹴り、そのvaselina(バセリーナ/ループシュート)で5点目、39分にはモラタがその試合自身2点目、41分にはジョレンテもゴール祭りに加わり、0-7という、クラブ史上、アウェイで最大得点差の勝利を献上しているのですから、今季初のホームゲームに期待して駆けつけたラージョファンもこれは事故と諦めるしかない?
それでもしみったれ根性の私など、「この7点をベティス戦と次のセビージャ戦に配分できれば、開幕4連勝になるとこだったのに」なんて思ってしまうんですけどね。グリーズマンも試合後、「nos ha costado los dos primeros partidos por el calor y el cansancio de los viajes/ノス・ア・コスタードー・ロス・ドス・プリメーロス・パルティードス・ポル・エル・カロール・イ・エル・カンサンシオ・デ・ロス・ビアヘス(最初の2試合は暑さと移動の疲れで苦労した)」と告白していたように、マドリッドの気温がお水休憩も必要ない程、下がってくれたのはまさに朗報。
いえ、シメオネ監督は「ウチに決定力がありすぎた1試合で意見は変えない。マドリーとバルサが上なのは明らかで、彼らが躓いた時、ウチはそこにいる」とリーガ優勝本命候補になることは否定していましたけどね。このまま涼しい気温の続く日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)、メトロポリターノにここまで、UEFAスーパーカップでマンチェスター・シティに負けたのを含め、今季は開幕から4連敗中。絶不調のセビージャを迎える試合ではまた、強いアトレティコを見せてくれる?
その一方で守備大崩壊が起きたラージョは土曜のベティス戦で2節までの調子を取り戻さないといけないんですが、選手たちにショックが残らないといいのだけれど。ええ、昨季のレンタルに続き、今季は完全移籍でラージョに復帰。この試合ではどうして自分がアトレティコのトップチームで必要とされないのか、思い知らされてしまったFWカメージョなど、少々心配ですが、相手もサン・マメスで逆転負けを喰らうなど、まだ本調子には至っていませんからね。イラオラ監督時代同様、フランシスコ監督もシーズン前半は上位を維持するラージョを目指してもらいたいものです。
世間が呆気に取られる中、最後はデ・ラ・フエンテ監督やビルダ監督も一緒になって、出席者が会長に拍手を贈るシャンシャン総会として終わってしまったため、2人の代表監督たちも会長支持派なのかと批判されていたんですが、うーん、男子A代表に関しては、2018年W杯ロシア大会開幕の3日前にレアル・マドリーと契約を結んだロペテギ監督を怒りに任せて電撃解任。スペインはスポーツディレクターだったイエロ暫定監督の下で戦って、16強で敗退したという苦い思い出がありますからね。6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーで優勝し、11年ぶりのタイトルをもたらしたとはいえ、3月のユーロ2024予選は1勝1敗でスタート。9月初旬にはジョージア、キプロス戦を迎えるデ・ラ・フエンテ監督など、この金曜にはその試合の招集リスト発表も迫っていることもあり、一応、ルビアレス会長の機嫌を損ねないよう、周りに合わせただけなんじゃないかと思いましたが、ビルダ監督の方はいうと。
金曜の午後にはデ・ラ・フエンテ監督を倣って、会長の表彰式での振る舞いを不適切なものと非難する声明を発表したのはともかく、昨年も指導方針に不満を覚えたスペイン女子代表選手15名から、代表チーム不参加宣言を喰らった彼にはシドニーからの帰国便の中、ジェニやその家族にルビアレス会長の釈明ビデオに一緒に出るように圧力をかけたという話もありましたからね。そのせいもあったか、金曜午後にジェニから、「同意のあるキスではなかった」という声明が発せられるのと共に、W杯優勝チーム23人を含む、81人の女子選手から、「協会が自浄措置を取らない限り、代表には参加しない」という通告をもらうことに。
その一方でスペイン政府も月曜になって、CSD(スポーツ上級諮問委員会)がTAD(スポーツ仲裁裁判所)にルビアレス会長がサッカー関連の職に就くことを禁じる訴えを行ったんですが、こちらは必要な書類が足りないとやっぱり、亀の歩みになりそうな。まあ、FIFAの処分は当面、90日間は続きますしね。デ・ラ・フエンテ監督にはバルサの16才の新鋭、ラミネ・ジャマルの初招集など、独立独歩を貫いて、ようやく上向きかけている男子スペイン代表に、かつてユーロ2008、2010年W杯、ユーロ2012と連続優勝した黄金時代の輝きを取り戻す努力を続けてもらいたいものです。
え、そんなことより、先週末のマドリッド勢のリーガ戦はどうだったのかって?いやあ、この3節は何とも変則的で、まずはマドリーが金曜にセルタ戦。バライドスでは開始3分にアスパスの蹴ったCKを、これがマドリーデビュー戦となったGKケパ(チェルシーからレンタル移籍)がパンチングで弾いたところ、エリアの外で待っていたベルトランのシュートがゴールに入り、まさか彼も古巣への恩返し弾なのかと思わず、経歴を調べてしまったぐらいだったんですけどね。前節アルメリア戦のアリバス(RMカスティージャから移籍)とは違い、弟分のラージョのカンテラーノだったというのはともかく、幸いこのゴールはラルセンがケパにファールして無効とVAR(ビデオ審判)モニターで主審が確認してくれたため、スコアに挙がらず済むことに。
続いてのドッキリは10分にはビニシウスが太ももの手当てを受け、一旦はピッチに戻ったものの、またしてもラルセンがCK時にケパにぶつかってファールを取られた後の18分、ホセル(エスパニョールからレンタル移籍)と交代せざるを得なくなっちゃったんですよ。実はこのケガ、月曜には肉離れと判明し、全治6週間のリハビリが必要となるんですが、それってちょっとヤバくない?実際、その日も「Sin él nos ha costado más porque el Celta ha jugado bien atrás/シン・エル・ノス・ア・コスタードー・マス・ポルケ・エル・セルタ・ア・フガードー・ビエン・アトラス(彼がいなくてウチはより苦労した。セルタの後方はいいプレーをしていたから)」(アンチェロッティ監督)と、前半はベニテス監督のチームの堅守を突破できず、いえ、42分にはホセルがベリンガムのスルーパスを受けて、ゴールを入れたんですけどね。
オフサイドで得点にはならず、0-0でハーフタイムに入ったため、アンチェロッティ監督は後半17分にはカマビンガ、チュアメニに代え、ベテランゴールデンコンビのクロースとモドリッチを投入。とはいえ、その2分後にマドリー、この試合最大のチャンスを作ったのはベリンガム(ドルトムントから移籍)とロドリゴのスタメン組だったんですけどね。前者のスルーパスを追った後者がGKイバン・ビジャルに倒されて、PKを獲得してくれた時には、先制点は頂きと小躍りしたファンも多かったはずですが…いやあ、何とロドリゴがPKをビジャルに弾かれてしまうとは!
これには後でアンチェロッティ監督も「Libertad no hay/リベルタッド・ノー・アイ(自由はない)。PKキッカーはビニシウスだったが、ピッチにいなくて、私はバルベルデにモドリッチが蹴るようにと伝えた。そしたら選手たちはロドリゴを選んで、それを正す時間もなかった」と少々、おかんむりだったんですけどね。どうやらこれは昨年のW杯カタール大会準々決勝でクロアチアとPK戦となり、ブラジルの第1キッカーを務めて失敗したロドリゴへのモドリッチの気遣いだったようで、自信を取り戻せるようにとキッカーを譲ったらしいんですが、それが裏目に出てしまうとはまったく、サッカーの世界は先が見えない。
でも大丈夫。このチームはMFだと思って獲ったら、その実態はCFだったスーパー新人がいて、その名はベリンガム。何と36分、クロースの蹴ったCKをホセルが頭で繋いだ後、アイドゥーにしがみつかれながらもヘッドを決め、マドリーに虎の子の1点をもたらしてくれるとは、1億ユーロ(約160億円)越えの移籍金は決して高くはなかった?ちなみにこのゴールはホセルのお手柄もあって、ストークシティやニューキャッスルにも在籍して、英語の心得がある当人曰く、「Antes del gol le dije a Jude que estuviese cerca de mí para un posible rechace/アンテス・デル・ゴル・レ・ディヘ・ア・ジューデ・ケ・エストゥビエセ・セルカ・デ・ミー・パラ・ウン・ポシブレ・レチャセ(ゴールの前、ベリンガムにクリアに備えてボクの近くにいるようにと言った)」そうなんですけどね。
そのまま0-1でセルタを破り、開幕3連勝としたマドリーですが、それにしたって、その3試合でベリンガムが4得点も挙げるとは一体、誰に予測できた?こうなると彼だけで昨季、ベンゼマが挙げた31得点を補ってくれるんじゃないかと期待する向きも出てきそうですが、何せ、ここしばらくはビニシウスの分も補わないといけませんからね。さすがにそれは荷が重すぎる気がするんですが、マドリーの次節、ようやく大改装工事に区切りをつけて、ピッチに芝も張られたサンティアゴ・ベルナベウでのホーム開幕戦の相手はヘタフェ。後述の弟分に容赦のなかったお隣さん同様、あまりひどい目に遭わせたら可哀そうですし、土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からの兄弟分ダービーはマイルドな展開になってほしいものです。
そして土日はマドリッド勢1部の試合がなかったため、ビジャレアルがバルサに3-4で負け、バレンシアがオサスナに後半ロスタイム4分のゴールで1-2と劇的敗戦。そしてアスレティックが0-2から、4-2に逆転してベティスに勝利と、地方では目の回るような展開になっていた日曜にはレガネスの遅い時間の試合を見にブタルケに行った私だったんですが、柴崎岳選手がいなくなっても、今季こその1部復帰を目指して、2部の弟分は頑張っているところを目撃。いえ、試合は相手のアルバセテが前後半に1度ずつ、ペナルティを犯し、ラバとディエゴ・ガルシアのPKによる2-0勝利だったんですけどね。
まだ前線の補強が終わっていないチームのため、カンテラーノ(下部組織出身の選手)のナイムやディエゴ・ガルシアが健闘していたのが印象的で、最後はアルバセテの猛攻にあったものの、全員が協力する守備で凌ぎきったのは偉かったかと。唯一、残念なのは午後9時30分キックオフとなると、11時30分にはスタジアムを出ないとセルカニアス(国鉄近郊路線)の零時の終電に間に合わないため、昨今、常態化している後半ロスタイム10分が終わるまでスタンドにいられなかったことと、ボルハ・ヒメネス新監督の会見を見られなかったことですが、開幕戦こそアンドラに0-1と遅れを取ったものの、この2連勝でレガネスは昇格プレーオフ圏の5位まで上昇。
バケーションから戻って来たファンの熱気も相変わらずですし、マドリッド観光の折りにスケッジュールが合えば、観戦に行くのも悪くないかと。ただ、要注意はこちらもメトロ1号線のソル折り返し運転の影響で、通常はサラケマダからアトーチャ(地方移動する時のハブ駅)までセルカニアスで行って、メトロに乗り換えるんですが、10月までアトーチャにはメトロ接続がないこと。電車に乗る前に私もそれに気づいて、1駅前のメンデス・アルバロで6号線を捕まえることができたんですが、ホント、ポルタスゴ(1号線)にあるエスタディオ・バジェカスもパシフィコ(6号線と接続)から代替バスを使わないと行けなかったりと、夏場は面倒臭いことが増えますよね。
え、それでも月曜のラージョvsアトレティコ戦ではクラブ創設から120年、誰もお目にかかったことのない新記録に立ち会えたんだろうって?その通りで、キックオフを待っていた午後9時12分、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継で、それまでアラベスとずっと0-0だったヘタフェがPKをゲット。ハイボールを争ったラタサの顔をアブカルが叩いてのことですが、この日はボルハ・マジョラルも失敗せず、しっかりゴールを決めてくれたため、ロスタイム9分の後、丁度、1-0でボルダラス監督のチームが今季初勝利をコリセウム・アルフォンソ・ペレスで達成したところで、バジェカスも選手入場となりました。
折しも前節は38℃の猛暑のセビージャで行われたベティス戦でほとんど走りもせず、スコアレスドローだったアトレティコと、やはり相当暑かったはずのグラナダでの試合で鬼のように走り回り、2連勝を遂げたラージョを見ていただけに、私もあまり期待はしていなかったんですが…何なんでしょう、この変身ぶりは!
日曜からいきなり気温が一気に下がり、23℃になったのがよっぽど効いたか、開始2分、デ・パウルのクロスをグリーズマンがvolea(ボレア/ボレーシュート)で決めて先制とは、驚かせてくれるじゃないですか。でもこれはただの前座で、早くも16分、今度はサウールがエリア内奥から折り返したパスをメンフィス・デパイがゴール前から押し込んで2点目をゲット。いえ、実は彼は35分にはまた、負傷癖が顔を出して、モラタに交代しないといけなかったんですけどね。その1分後にはデ・パウルが自陣から放ったロングパスにモリーナが反応。プレシーズンにケガをして、世界一周ツアーにも不参加だった、この日が今季リーガデビューの右SBがGKディミトリエフスキとの1対1を制して3点目を挙げているとなれば、何を心配することがありましょうか。
いえ、実際にはかつて前半だけで3点挙げながら、エスパニョールに追いつかれた黒歴史もある彼らですから、後半、気を取り直したラージョが攻めて来た時にはちょっと不安になったんですけどね。カラスコ、デ・パウルがサムエル・リノ(昨季はバレンシアにレンタル)、マルコス・ジョレンテに代わった後の29分には再びギアを上げ、サウールのエリア外からのスルーパスをモラタが珍しくオフサイドに引っかからずに決めて、4点目が入ることに。34分など、もうかなりヤケクソな気分になっていたか、ディミトリエフスキがゴールキックを交代で入ったコレアに向けて蹴り、そのvaselina(バセリーナ/ループシュート)で5点目、39分にはモラタがその試合自身2点目、41分にはジョレンテもゴール祭りに加わり、0-7という、クラブ史上、アウェイで最大得点差の勝利を献上しているのですから、今季初のホームゲームに期待して駆けつけたラージョファンもこれは事故と諦めるしかない?
それでもしみったれ根性の私など、「この7点をベティス戦と次のセビージャ戦に配分できれば、開幕4連勝になるとこだったのに」なんて思ってしまうんですけどね。グリーズマンも試合後、「nos ha costado los dos primeros partidos por el calor y el cansancio de los viajes/ノス・ア・コスタードー・ロス・ドス・プリメーロス・パルティードス・ポル・エル・カロール・イ・エル・カンサンシオ・デ・ロス・ビアヘス(最初の2試合は暑さと移動の疲れで苦労した)」と告白していたように、マドリッドの気温がお水休憩も必要ない程、下がってくれたのはまさに朗報。
いえ、シメオネ監督は「ウチに決定力がありすぎた1試合で意見は変えない。マドリーとバルサが上なのは明らかで、彼らが躓いた時、ウチはそこにいる」とリーガ優勝本命候補になることは否定していましたけどね。このまま涼しい気温の続く日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)、メトロポリターノにここまで、UEFAスーパーカップでマンチェスター・シティに負けたのを含め、今季は開幕から4連敗中。絶不調のセビージャを迎える試合ではまた、強いアトレティコを見せてくれる?
その一方で守備大崩壊が起きたラージョは土曜のベティス戦で2節までの調子を取り戻さないといけないんですが、選手たちにショックが残らないといいのだけれど。ええ、昨季のレンタルに続き、今季は完全移籍でラージョに復帰。この試合ではどうして自分がアトレティコのトップチームで必要とされないのか、思い知らされてしまったFWカメージョなど、少々心配ですが、相手もサン・マメスで逆転負けを喰らうなど、まだ本調子には至っていませんからね。イラオラ監督時代同様、フランシスコ監督もシーズン前半は上位を維持するラージョを目指してもらいたいものです。
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