あとは本番を待つだけになった…/原ゆみこのマドリッド

2023.08.08 20:00 Tue
©Atlético de Madrid
「準決勝はまともな時間に戻るんだ」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、今週末には23-24シーズンのリーガがいよいよ始まるとあって、試合の日時をチェックしていたところ、金曜未明に女子W杯準々決勝スペインvsオランダ戦があることに気がついた時のことでした。いやあ、グループリーグ中は午前9時とか9時半とか、それでもちょっと早すぎないかと思っていたんですけどね。それが先週土曜に行われた16強対決スイス戦では午前7時に繰り上がり、準々決勝ではとうとう午前3時(日本時間午前10時)になっていたため、もしや日本と再戦の可能性もある準決勝は午前1時とか?この大会はRTVE(スペイン国営放送)で自宅のTVで見られるし、それならそっちの方がいいかもなんて考えていたところ…。

FIFAのサイトを見てみると、有難いことに準決勝は来週火曜午前10時(日本時間午後5時)。もちろん、その前にスペインはオランダを倒さなければいけませんが、いやそれが、グループリーグ最終節で日本に4-0とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らっていた彼女たちは、スイス戦で見事に汚名返上に成功したんですよ。そう、2年連続のバロンドール女子であるアレクシア・プテジャ(バルサ)やGKミサ(レアル・マドリー)を含む、レギュラー4人を控えに回した荒療治が効いたか、開始早々の5分にアイタナ・ボンマティ(バルサ)のゴールで先制したかと思えば、いえ、11分にはCBライア・コディーナ(バルサ)のオウンゴールですぐ同点になっちゃったんですけどね。

それでも17分にはアルバ・レドンド(レバンテ)、36分には再びアイタナ、45分にはライラが今度は正しいゴールにボールを入れて、前半だけで1-4にしてしまったとなれば、もしやあの日本戦は何かの悪い冗談だった?後半にもジェニ・エルモーソ(パチューカ)がゴールを挙げて、最後は1-5とグループリーグ2節までの大量得点勝利ペースを取り戻したスペインですが、準々決勝の相手オランダはアメリカを抑えてグループ首位突破。16強対決でも南アフリカを破り、今大会未だに黒星がありませんからね。決して簡単な試合にはならないでしょうが、同日、アメリカにPK戦で勝って上がってきたスウェーデンに挑む日本共々、頑張ってほしいものです。
まあ女子のことはこのくらいにして、先週末はマドリッドでも嬉しいことにプレシーズンマッチが見られたんですよ。そう、南部の弟分、2部のレガネスと1部のヘタフェが、どちらも土曜にホームスタジアムで今季の新生チームお披露目試合となったんですが、今週末のリーガ1節でも同じ日曜に30分差で開幕ホーム戦をぶつけてくるって、ラ・リーガは私に意地悪してる?まあ、先週末はレガネスがたまたま金曜にも練習場でオサスナ・プロメサ(RFEF2部/実質4部)と親善試合をするのをいいことに、そちらを見に行くことにして、ブタルケでのビジャ・デ・レガネス杯はパスしたんですが、奇しくも結果はどちらも2-0でレガネスが勝利。

ええ、インスタラシオン・デポルティボ・ブタルケ(スタジアムから1km程離れた市営総合運動施設)にある練習場では西日が真正面からスタンドの観客に照りつける中、前半にナイム、後半にはファンマがゴールを挙げ、カンテラーノ(Bチームの選手)中心のメンバーでありながら、あっさり格下の相手を退けることに。レギュラー総揃いした翌日のレバンテ戦でもディエゴ・ガルシアが2点決め、今季こそ1部復帰を果たそうと勢い込んでいる2部のライバルを下しているんですから、もう柴崎岳選手はいないものの、もしや今季は4年越しの1部再昇格を夢見ていい?
そして土曜はお隣さんのヘタフェがコリセウム・アルフォンソ・ペレスにオランダのフィテッセを迎える試合に行ったんですが、やっぱり8月はバケーションシーズン真っ盛りなんですねえ。こちらは午後9時キックオフだったんですが、1時間早く始まったブタルケも観客は2500人弱。コリセウムも3000人だけとちょっと淋しい雰囲気だったものの、試合の方は大いに今季に期待を抱かせる出来だったんですよ。いえ、先手を取ったのはフィテッセの方で、前半17分にはゴール前へのクロスをハムリッチに決められてしまったんですが、そこからヘタフェは発奮。23分にはパルコ(貴賓席)で昨季終盤にヒザを靭帯断裂したため、今年いっぱいプレーできないエースのエネス・ウナルが見守る中、アレニャの蹴ったFKをラタサがヘッドで同点ゴールにしてくれたから、ビックリしたの何のって。

6月にU21ユーロのスペイン代表に最終選考で落ちたショックも遠い過去になったか、今季もRMカスティージャからレンタル移籍でヘタフェのレギュラーFWになってやるという意欲を見せてくれたんですが、何ですかねえ。前半30分のお水休憩の後はボルダラス監督の焚きつけが効いたか、第1期の彼の指揮官時代を彷彿させるかのように、ピッチで倒れている選手が散見されるように。そのせいで両チーム共、ヒートアップしてしまい、40分にはtangana(タンガナ/小競り合い)が発生。ダミアンとフィテッセのブトラーがレッドカードをもらって退場していましたが、大丈夫。11対11が10対10になっただけですから、気にすることありませんって。

そして1-1で始まった後半も攻撃の手を緩めなかったヘタフェは23分、ラタサがエリア内から折り返したボールをアレニャが撃ち込んでとうとう勝ち越し点をゲット。その後すぐ、前線はラタサとマタから、ボルハ・マジョラルとチョコ・ロサーノ(カディスと契約終了)に代わったんですが、27分にはカンテラーノのゴルカからのクロスをマジョラルがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で流し込み、開幕バルサ戦では決して昨季のコリセウムでの対戦の時のように、誰もがゴールと叫びかけた絶好機にシュートを外すような過ちは犯さないという決意を示してくれるんですから、嬉しいじゃないですか。

更にヘタフェは、すでにウナルと一緒に見学していた負傷中のルイス・ミジャがスタンドから姿を消していたロスタイム1分、アルティミラ(サダベルと契約終了)がやはりエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を挙げて、最後は4-1とコクー監督のチームを圧倒したんですが、これで彼らのプレシーズンマッチは4勝2敗で終了。アレニャも「Estamos contentos, era importante ganar y coger buenas sensaciones para el arranque/エスタモス・コンテントス、エラ・インポルタンテ・ガナール・イ・コヘール・ブエナス・センサシオネス・パラ・エル・アランケ(ボクらは満足している。大事なのは勝って、シーズンスタートのためにいい感触を掴むことだった)」と言っていたように、あとはこの1週間、じっくり最後の仕上げをして、土曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からのバルサ戦を迎えてくればいいかと。

いえまあ、人事異動の方は金曜にセアオネのオビエド移籍が決まり、プレシーズンマッチで3ゴール挙げ、チーム内ピチチ(得点王)となったマジョラルも動くかもしれないとあって、まだ注意していないといけないんですけどね。リーガのサラリーキャップのせいで、ギュンドガン(マンチェスター・シティと契約終了)、オリオル・ロメウ(ジローナから移籍)、イニゴ・マルティネス(アスレティックと契約終了)はおろか、現時点で13人しかトップチームの選手登録ができていないというバルサがどう辻褄を合わせてくるのかもちょっと、気になるところです。

え、それで日曜早朝4時にサン・フランシスコでプレシーズンマッチ最終戦をプレーしたアトレティコはどうだったのかって?いやあ、実は水曜にメキシコのモンテレイでのレアル・ソシエダ戦が0-0で終わってから、チーム移動の写真やビデオもツィッターに上がらず、練習風景もサン・フランシスコ大学のグラウンドでの試合前日1回分しか見ていなかったため、一体、何しているんだろうと私も不思議に思っていたんですけどね。どうやらこの中2日間には自由時間もあって、選手たちは街にショッピングに出たりしていたのだとか。さすがに2週間もツアーが続くとそういう気晴らしも必要ですが、実際、セビージャ戦の方も生中継は見られなかったため、お昼のニュースでハイライト映像をチェックするぐらいしかできなくてねえ。

それでも一応、内容をお伝えしておくと、序盤、リケルメ、グリーズマン、メンフィス・デパイ、マルコス・ジョレンテが敵ゴールを取り巻いて、次々撃ちながら、誰もゴールを決められないという嘆かわしいチャンスや、コケがゴール前からのイージーシュートに失敗したなんてことはあったようですが、前半は両チーム共、無得点で終了。後半頭からはデパイとソユンチュ(レスターシティと契約終了)がモラタとアスピリクエタ(チェルシーとの契約解除)に代わったものの、16分にはサビッチがラファ・ミールの前でボールを失い、GKオブラクと1対1のシュートを決められて、セビージャに先制されてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。

リードされているにも関わらず、シメオネ監督は予定通り、26分にはグリーズマン、カラスコ、リケルメ、デ・パウルをコレア、サムエル・リノ、バリオス、ビッツェルに代えてしまったんですが、何と39分にはモラタのクロスが敵に当たり、自分のところに落ちて来たボールをコレアがvolea(ボレア/ループシュート)で同点ゴールをゲット。もしや彼、今季も控えからスタートして再び、美味しいところを持っていくFWになる?残念ながら、それ以上は得点が入らず、1-1で試合は終わり、アトレティコの世界一周ツアーアメリカ大陸編は2引分けという結果になりましたが、何はなくとも韓国編ではCL王者のマンチェスター・シティに勝っていますからね。

うっかり負けて、16日にはそのシティとUEFAスーパーカップで激突するメンディリバル監督のチームに「シティに勝ったアトレティコに勝った」なんて、怪しい自信を植え付けずに済んだのも良かったと思いますが、結局、ジョアン・フェリックスはこのツアーで1度もプレーせず。先日はヒル・マリン筆頭株主がオフィシャルウェブで、「ウチには中盤をカバーする選手を獲る考えがあるが、cerrar la salida de al menos dos jugadores que nos permitan contratar a ese centrocampista/セラール・ラ・サリーダ・デ・アル・メノス・ドス・フガドーレス・ケ・ノス・ペルミタン・コントラタル・ア・エセ・セントロカンピスタ(そのMFを獲るには少なくとも選手2人が出ないといけない)」と言っていたように、そのうちの1人は絶対、ジョアンなんですが、とにかくクラブ、当人双方が納得できるオファーが来ませんからねえ。

もう1人を巡ってはサウール、レマル、カラスコ、モラタ、サビッチと色々、憶測が飛び交っているんですが、とりあえず、チームは日曜にマドリッドに帰還。月火は練習をお休みにして、水曜夕方から、いよいよ気温40℃突入のマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でトレーニングを再開し、1節のトリとなる14日(月)の開幕グラナダ戦の準備をすることに。いやあ、月曜には今季は1部のアラベスでレンタル修行をしているシメオネ監督の三男、ジュリアーノが前日のブルゴス(2部)戦で腓骨骨折及び足首脱臼の重傷を負ったというショッキングなニュースもありましたからね。シメオネ監督も急遽、ビトリア(スペイン北部、アラベスのホームタウン)に駆けつけたそうですが、長期リハビリが必要なだけに、アトレティコに帰って来るんでしょうか。

そして日曜のまっとうな時間、午後4時からは弟分ラージョも金曜にようやく発表された新しいユニフォームを着て、三笘薫選手のいるブライトンとラストプレシーズンマッチをプレー。またしても1-1で終わったんですが、何とラージョの1点を挙げたのは、この日もアルバロ・ガルシアだったんです!後半12分、GKスティールがエリア外に出て来てクリアに失敗したボールを奪い、ガラ空きのゴールに決めたんですが、プレシーズンマッチ5試合全てで得点って、凄すぎじゃない?ただ問題は他のFWがゴールを挙げてくれないことで、20分にはバレンティンがエストピニャンをエリア内で倒して与えたPKをジョアン・ペドロに沈められ、引分けてしまいましたからねえ。まだRdT(ラウール・デ・トマス)のケガも治っていないようですし、1勝3分け1敗というプレシーズンの成績はともかく、金曜にリーガ開幕の先陣を切るアルメリア戦にはちょっと不安が残るかも。

一方、先週水曜にユベントスに1-3と負け、2勝2敗でアメリカツアーを終えて、すでに帰京していたマドリーは日曜からバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でセッションを開始。今のところ、まだケガのリハビリでお留守番だったセバージョス、ヒザの半月板を痛め、1人早期帰還となったギュレル(フェネルバフチェから移籍)、ダラスでのクラシコ(伝統の一戦)で負傷したメンディはまだ本隊に合流しておらず、土曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からの開幕アスレティック戦には間に合いそうにありませんが、各国代表戦を挟んだ後、9月半ばの5節まで、試合は週1回しかありませんからね。

それだけに当面は頭数不足を心配する必要はないかと思いますが、むしろアンチェロッティ監督が頭を悩ませているのはツアー後半で露呈した4-3-1-2の新システムのザルのごとき守備力の方?もちろん、シュートを撃っても撃ってもゴールが入らないという精度の問題もありますが、こちらは時の運もありますからね。ビニシウスだって、このお休みにはサルディーニャ島に行って、エムバペ(PSG)と一足先に親交を温めていたロドリゴだって、昨季程度のゴールは入れてくれるでしょうし、サラ(スペイン人の得点王)のホセル(エスパニョールからレンタル移籍)も来たんですから、何とかなるのでは?それでもダメなら、きっとペレス会長が8月末までに2億ユーロ(約300億円)を用意して、エムバペに来てもらうんじゃないでしょうか。

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