U-17W杯やビーチW杯に見るFIFAの怠慢/六川亨の日本サッカー見聞録
2023.06.30 22:45 Fri
6月29日のこと、タイで開催されていたU-17アジアカップ準決勝で、日本は難敵イランを3-0で下して2大会連続の決勝戦進出を果たした。日本はすでに準々決勝でオーストラリアを3-1で倒してU-17W杯の出場権を獲得していた。とはいえ、勝ち進むことで修羅場の経験を重ねられれば、本大会に向けて絶好のシミュレーションとなる。
その代替地として開催国になったのがインドネシアだった。しかし、4月の返上からインドネシア開催が決まったのは2ヶ月以上も経った今月23日のことだった。すでに予選を兼ねたタイでのアジアカップはスタートしており、日本にとってはグループリーグ最終戦のタイミングでのW杯開催国の決定だった。
どんな事情がペルーにあったかわからないものの、21年大会の開催を準備しながら、2年後の23年になってもインフラ整備が遅れているとは、さすが「ラテンの国」と呆れるしかない。ただ、ペルーにもそれなりの事情があっての開催国返上であり、苦渋の決断だったのではないか。
FIFAは競技場などの担当役員が定期的にペルーを訪問し、工事の進捗状況をチェックして理事会などに報告していたのか。欧州出身のインファンティーノ会長になっても、利権絡みの中南米の“ラテン・コネクション”が健在なようでは、FIFAの健全化はまだまだ先と言わざるを得ない。
一方、代替開催となったインドネシアには吉報だろう。U-20W杯の開催地だったが、ヨーロッパ代表としてイスラエルが出場権を獲得したために、国内の90%近いイスラム教徒が同国の入国に反対。開催を返上せざるを得なくなり、同大会はアルゼンチンで開催された。
インドネシアでの開催は日本にとっても朗報である。地球の反対側へ行くのに比べ、移動距離ははるかに少ない。熱帯の湿度の高い蒸し暑さも、ヨーロッパや南米勢に比べれば経験済みとメリットがあるからだ。アジア王者(の予定)の実力を存分に発揮してほしい。
そしてFIFAの怠慢をもう一つ。前回ロシア大会では準優勝だったビーチサッカー日本代表が参加するW杯UAE大会。当初は11月16日から26日までドバイで開催される予定だった。ところがFIFAは6月23日、「準備期間が増えた」ことを理由に来年2月15日から25日に延期すると発表した。
「準備期間」が何を指すのか不明だが、ビーチサッカーW杯の会場は1つで済む。観客席も仮設でオーケーだ。このためW杯では最も大会日数が少ない。にもかかわらず延期した詳細な理由は明らかにされていない。しかし当初開催予定だった11月のドバイのスケジュールを見ると、なんとなく理由が見えてくる。
11月のドバイは、世界各国が出展するさまざまな見本市と展示会が目白押しだ。11月7日からチョコレートやスナック菓子の「スイーツ」の展示会。8日から家具・インテリアの展示会、その後もアクセサリーや皮革完成品といったお土産グッズの見本市、テレビや映画、アニメーションのエンターテインメントコンテンツの展示会と切れ目なく開催され、それは来年2月まで続く。
この見本市と展示会は9月にスタートして、半年間に及ぶ一大イベントだ。規模からすれば、ビーチサッカーW杯の比ではないだろう。なぜFIFAはこうしたイベントが開催されることを把握していなかったのか。もしも把握していて、それでも開催できると安易に考えたとしたら、3ヶ月もの延期で選手に負担を強いる結果を招いた責任は重大だ。さらにUAEのサッカー協会は、イベントが重なることを知っていて11月開催を決定したのか。
「準備期間が増えた」のが何を意味するのか、FIFAとUAEサッカー協会には説明責任があるはずである。
こうしたFIFAの、あるいはインファンティーノ会長の「誰も我々に文句は言えない」という“唯我独尊”の姿勢は、女子W杯の放映権料にも表われているような気がしてならない。理想は理想として尊重するものの、女子W杯の市場価値を冷静に判断して欲しい。まだまだ女子のW杯は多くのサッカーファン、そしてこれからファンになるであろう層に試合を見てもらう――その機会を安価に、手軽に提供するのがFIFAの大事な使命でもあるだろう。
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ましてや7月2日の決勝の相手がカザフスタンを1ー0で倒した韓国となれば、これ以上の相手はない。日本は2018年大会に続いての連覇による4回目のアジア制覇を目指す。対する韓国は2002年以来21年ぶり3回目の優勝に挑む。近年の両国の実力差からすれば、日本はライバルに圧勝して有終の美を飾りたいところ。当日は21時からDAZNが配信予定なので楽しみにしたい。この日本と韓国らベスト4が出場するU-17ワールドカップ2023、当初はペルーで11月10日から12月2日にかけて開催される予定だった。ペルーは2021年にも同大会を開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で大会そのものが中止された。そして23年にスライド開催となったわけだが、今年4月3日、インフラ整備の遅れなどから開催を返上した。どんな事情がペルーにあったかわからないものの、21年大会の開催を準備しながら、2年後の23年になってもインフラ整備が遅れているとは、さすが「ラテンの国」と呆れるしかない。ただ、ペルーにもそれなりの事情があっての開催国返上であり、苦渋の決断だったのではないか。
むしろ断罪すべきはFIFAの怠慢だろう。21年から今年の4月まで、ペルーの準備状況をどこまで把握していたのか大いに疑問だ。かつての86年メキシコW杯や、14年ブラジルW杯などラテンの国でのW杯は、大会が始まってもスタジアム近辺は工事中で、パーキングなども立ち入り禁止のエリアがあった。それでも大会は無事に開催された。だからといって、ラテンの国は工事が遅れても大会を開催できると限らない。
FIFAは競技場などの担当役員が定期的にペルーを訪問し、工事の進捗状況をチェックして理事会などに報告していたのか。欧州出身のインファンティーノ会長になっても、利権絡みの中南米の“ラテン・コネクション”が健在なようでは、FIFAの健全化はまだまだ先と言わざるを得ない。
一方、代替開催となったインドネシアには吉報だろう。U-20W杯の開催地だったが、ヨーロッパ代表としてイスラエルが出場権を獲得したために、国内の90%近いイスラム教徒が同国の入国に反対。開催を返上せざるを得なくなり、同大会はアルゼンチンで開催された。
インドネシアでの開催は日本にとっても朗報である。地球の反対側へ行くのに比べ、移動距離ははるかに少ない。熱帯の湿度の高い蒸し暑さも、ヨーロッパや南米勢に比べれば経験済みとメリットがあるからだ。アジア王者(の予定)の実力を存分に発揮してほしい。
そしてFIFAの怠慢をもう一つ。前回ロシア大会では準優勝だったビーチサッカー日本代表が参加するW杯UAE大会。当初は11月16日から26日までドバイで開催される予定だった。ところがFIFAは6月23日、「準備期間が増えた」ことを理由に来年2月15日から25日に延期すると発表した。
「準備期間」が何を指すのか不明だが、ビーチサッカーW杯の会場は1つで済む。観客席も仮設でオーケーだ。このためW杯では最も大会日数が少ない。にもかかわらず延期した詳細な理由は明らかにされていない。しかし当初開催予定だった11月のドバイのスケジュールを見ると、なんとなく理由が見えてくる。
11月のドバイは、世界各国が出展するさまざまな見本市と展示会が目白押しだ。11月7日からチョコレートやスナック菓子の「スイーツ」の展示会。8日から家具・インテリアの展示会、その後もアクセサリーや皮革完成品といったお土産グッズの見本市、テレビや映画、アニメーションのエンターテインメントコンテンツの展示会と切れ目なく開催され、それは来年2月まで続く。
この見本市と展示会は9月にスタートして、半年間に及ぶ一大イベントだ。規模からすれば、ビーチサッカーW杯の比ではないだろう。なぜFIFAはこうしたイベントが開催されることを把握していなかったのか。もしも把握していて、それでも開催できると安易に考えたとしたら、3ヶ月もの延期で選手に負担を強いる結果を招いた責任は重大だ。さらにUAEのサッカー協会は、イベントが重なることを知っていて11月開催を決定したのか。
「準備期間が増えた」のが何を意味するのか、FIFAとUAEサッカー協会には説明責任があるはずである。
こうしたFIFAの、あるいはインファンティーノ会長の「誰も我々に文句は言えない」という“唯我独尊”の姿勢は、女子W杯の放映権料にも表われているような気がしてならない。理想は理想として尊重するものの、女子W杯の市場価値を冷静に判断して欲しい。まだまだ女子のW杯は多くのサッカーファン、そしてこれからファンになるであろう層に試合を見てもらう――その機会を安価に、手軽に提供するのがFIFAの大事な使命でもあるだろう。
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