店じまいにはまだ早い…/原ゆみこのマドリッド

2023.06.03 20:00 Sat
©Atlético de Madrid
「この日曜も試合があるのよね」そんな風に私が思い出していたのは金曜日、6月半ばのネーションズリーグ・ファイナルフォーに備えたスペイン代表招集リスト発表とデ・ラ・フエンテ監督の会見をネット中継で見たせいもあり、もう完全に今季が終わったような気分になっていた時のことでした。いやあ、代表についてはまた後日、お話しすることにしますが、今週はそれ以外にもシーズン終了感満載のイベントが多数開催。リーガ優勝が何試合も前に決定していたバルサなど、これから1年半の全面改装工事期間に入るカンプ・ノウとのお別れセレモニーに続き、水木と連続して、今季限りで退団するブスケツ、ジョルディ・アルバのお別れセレモニーがあったんですけどね。

一方、バルサの宿敵のレアル・マドリーでは最近、サウジアラビアのアル・ヒラルから年棒1億ユーロ(約150億円)の2年契約オファーを受け、移籍するかもしれないと噂されているベンゼマが木曜にマルカのレジェンド授賞式に出席。司会者のしつこい質問に「話しているのはネットの中だけ。La realidad no es Internet/ラ・レアリダッド・ノー・エス・インテルネット(現実はネットにはない)」と答えたことから、残留の線が強いのではという推測も聞かれるように。
それでも女児のファンから、直球で「Te vas a quedar en el Real Madrid?/テ・バス・ア・ケダール・エン・エル・レアル・マドリッド(レアル・マドリーに残るの?)」と尋ねられた際、「Por el momento estoy aquí/ポル・エル・モメントー・エストイ・アキー(今のところ、自分はここにいる)。毎日を楽しんで、いい練習をしてるし,まだ試合もある」と答えて揚げ足を取られ、「今のところ」と言っているのが怪しいという意見もなきにしろあらず。まあ、どっちにしろ、アンチェロティ監督続投の決まった後、スポーツ紙のマドリーページにはこの夏の選手の出入り以外、話題がないとなれば、何でも針小棒大に報じられるのは仕方なかったかと。

加えてお隣さんも先週末、3位以上を確定したと思いきや、最終節を待たずにヒメネスが水曜にヒザの半月板の内視鏡手術を受け、一足先にバケーション入り。木曜にもカラスコが鼻を手術と、うーん、丁度、サビッチ、レマル、マルコス・ジョレンテが負傷のリハビリを終えて、チームに戻って来たからというのもあるんでしょうね。その日にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でセッション後、コロナ禍以降、初めてとなるバーベキューで、シーズン慰労ランチ会を開いていたなんて聞くと、もう日曜の試合が終わった途端、選手全員がリゾート地に旅立つ光景が目に浮かんでこない?

え、それどころではなかったのが、セビージャのSeptima(セプティマ/7回目のEL優勝のこと)祝勝行事じゃなかったかって?その通りで、木曜にブダペストから帰還したその足で彼らはオープンデッキバスに乗ると、市内を延々4時間パレード。プエルタ・デ・ヘレス(セビージャファンがお祝いする定番スポット)、市役所、カテドラルと名所をもれなく回った後、午後11時過ぎに始まったサンチェス・ピスファンでの祝賀イベントが夜半過ぎまで続くって、前夜も午前零時まで、ローマとの決勝をプレーしていた選手たちの途方もない体力に感心するばかりですが、ええ、これで来季のCL出場権もゲットできましたしね。
日曜はレアル・ソシエダがホームのレアル・アレナで盛大に前節アトレティコ戦での4位確定、10年ぶりのCL復帰を勝利で祝うのにまったく異存はないということでしょうが、ちなみに水曜のセビージャのEL決勝がどんな試合だったのか、ちょっとお伝えしておくことにすると。実は私も今季、彼らのEL決勝トーナメントを近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で観戦するのは初めてだったんですが、やはり決勝ともなると皆、見ておこうと思うんでしょうかね。店内も普段のセビージャの試合では考えられないような賑わい方だったんですが、やっぱり彼ら、この大会の神様に後押しされていたよう。

だってえ、ローマのモウリーニョ監督が「20~30分ぐらいならプレーできる」と試合前日にブラフを張っていた負傷明けのディバラが先発し、前半35分にはセンターでラキティッチがボールを奪われたのをキッカケにマンチーニがスルーパス。これに応じた彼にエリア内からシュートを決められ、先制点を取られながら、オリベル・トーレス、ブライアン・ヒルから、スソ、ラメラに攻撃力増強した後半9分にはヘスス・ナバスのクロスをエン・ネシリの前でマンシーニがオウンゴールして、同点に追いついてしまったんですよ。

29分にはオカンポスがイバニェスにエリア内で倒され、PKをもらいかけたんですが、残念ながら、これはVAR(ビデオ審判)のモニターチェックでなしに。GKボノがベロッティのvolea(ボレア/ボレーシュート)をparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いだ後、ロスタイムのスソ、ラメラ、フェルナンドのトリプルチャンスも決まらすに延長戦に突入です。「La prórroga no se ha jugado casi nada/ラ・プロロガ・ノー・セ・ア・フガードー・カシー・ナーダ(延長戦はほとんどプレーしなかった)。ずっとボールが止まっていたし、ケガ人やら、選手交代やら…」(メンディリバル監督)という30分を、ていうか、大量ロスタイムのせいで40分以上もあったのを1-1のままやり過ごし、いよいよPK戦が始まったところ…。

圧倒的にセビージャが強かったんです!そう、第1キッカーはオカンポス、クリステンセンと両チームとも成功したものの、第2キッカーのラメラがGKルイ・パトリシオを破った後、マンチーニをボノが弾き、次のラキティッチは成功。すると、この試合、何度も接触戦で地面に倒れ、最後は唇を縫うケガを負っていたイバニェスのPKもボノが少しだけ触れてポストを直撃したから、ビックリしたの何のって。いやあ、その光景には昨年11月のW杯16強対決、PK戦でスペインのサラビア(当時はPSG)がポストに当て、カルロス・ソレル(PSG)、ブスケツと連続してボノに弾かれて敗退した悪夢がデジャブのように浮かんでくることに。

うーん、メンディリバル監督によると、「Montiel iba a ser el quinto pero luego se han cambiado el orden/モンティエル・イバ・ア・セル・エル・キント・ペロ・ルエゴ・セ・アン・カンビアードー・エル・オルデン(モンティエルは最初、5番目だったんだが、それから順番を変えた)」そうなんですけどね。この彼がまた、W杯決勝フランス戦で最後のPKを決めて、アルゼンチンに優勝をもたらした英雄だったんですが、第4キッカーの一撃はルイ・パトリシオに弾かれてしまったんですよ。それがGKの足がラインより前にあったとし、主審がやり直しを命じてくれたのが渡りに船となり、2度目のトライで成功。セビージャのEL戴冠もゲットしてしまうんですから、これぞまさにチャンピオンの幸運(PK戦スコア4-1)?

え、記者会見では6回目にして初めてヨーロッパの大会の決勝で負けたモウリーニョ監督も「セビージャは偉大なチーム、それが現実だ。ウチにはない選手層があって、経験もある」と言っていた通り、「ボクはこういう瞬間を何度も生きていて、entendí que hay que tener mucha calma para afrontar estos momentos/エンテンディ・ケ・アイ・ケ・テネール・ムーチャ・カルマ・パラ・アフロンタール・エストス・モメントス(こういう時には落ち着きを保たないといけないことを理解していた)」(ボノ)という、W杯準決勝進出モロッコのGK、更に王者アルゼンチンのラメラ、アクニャ、パプ・ゴメスの3人がいるセビージャの方が元々、勝ち馬だったんじゃないのかって?

いやまあ、それでもローマには優勝チームの同僚、ディバラがいましたし、大体、アクニャは準決勝ユベントス戦2ndレグでイエローカード2枚による無念の退場となり、この試合は出場停止でしたからね。パプもベンチ観戦だったんですが、何より、このチームにはラキティッチ、ヘスス・ナバスといったELのベテランに加え、2020年のコロナ禍無観客決勝でインテルを制したエン・ネシリ、オパンポス、フェルナンド、スソら、Sexta(セクスタ/6回目のEL優勝のこと)組もいたのは大きかったかと。おかげで試合後はまだ、来季の続投が決まっておらず、「Sería la leche no poder seguir/セリア・ラ・レッチェ・ノー・ポデール・セギール(これで続けられなかったら、最高だろう)」と皮肉を言っていたメンディリバル監督も翌日、祝賀イベントの席でカストロ会長から新契約のオファーをもらうことができましたっけ。

まあ、そんな幸せなセビージャの話はこれぐらいにして、一応、この最終節に挑むマドリッド勢のカードも紹介しておくと、前節同様、キックオフ時間にunificacion(ウニシカシオン/統一)がかかった日曜は午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)と午後9時(日本時間翌午前4時)の前後半に分かれていて、マドリー、アトレティコ、ラージョの3チームは早い方のスタートに。ホームゲームはサンティアゴ・ベルナベウにアスレティックを迎えるマドリーだけなんですが、アンチェロッティ監督のチームの目標はお隣さんとの勝ち点差1を守って、2位をキープすることだけなのに対して、ビルバオ勢はゴールアベレージ差で上回るオサスナを抜いて、コンフェレンスリーグ出場権獲得を熱望していますからね。

ただちょっと、この7位争いは複雑で、勝ち点1差下にはオサスナと直接対決となるジローナ、何も懸かっていないマジョルカと対戦するラージョ、そしてレアル・ソシエダ戦の後、何かの偶然で7位になってしまうと、スペインのコンフェレンスリーグ枠がなくなるというセビージャがいますからね。おまけに丁度、ネグレイラ事件(スペインの審判委員会副委員長に20年余り多額の報酬を払い、有利なジャッジを受けようとしたと疑われている)を調査中のUEFA倫理委員会が来季のバルサをCL出禁にするかもしれないという報道も。

これが現実となると、またヨーロッパの大会の出場順位がズレて、訳のわからないことになるため、6月12日にUEFAのCL出場チームリストが出るまで、確たることは私もわからないんですが、ベンゼマを始め、メスタジャでの人種差別的野次が大騒ぎになった後、ヒザの負傷で休んでいたビニシウス、マドリーと契約延長をせず、PSGに移籍する可能性が濃厚になったアセンシオが復帰。ベルナベウのファンの前で有終の美を飾りたいマドリーとあって、ケガで欠場者を多く抱えるアスレティックが勝ち点を稼ぐのは難しいかもしれません。

そしてラージョは今季限りで別れを告げるイラオラ監督最後の試合に臨み、アトレティコはすでに5位が確定したビジャレアルと対戦するんですが、シメオネ監督のチームは来季、チェルシーを率いるポチェッティーノ監督がジョアン・フェリクスを戦力外としたため、夏の補強計画がスタンドバイ状態に。というのもジョアンは絶対にシメオネ監督の下には戻りたくなく、かといって今、クラブが望む移籍金1億ユーロ以上どころか、オファーそのものがまったく来てないから。そのせいで選手獲得に幾ら使えるのかのメドが立たないとはいえ、まあその辺はリーガが終わってから、おいおい考えていけばいいですからね。

今は私もアトレティコの選手たちがエルチェ戦やエスパニョール戦のような、一足早い夏休み気分にならず、まっとうに最終戦をプレーしてもらいたいだけですが、やっぱり目を離せないのは日曜後半戦、前節エスパニョールの降格が決定した後、残り1つとなった2部行きの切符を引かないために争っている6チームの一つ、弟分のヘタフェでしょうか。いえ、彼らはここ2試合、ベティス、オサスナに連勝したおかげで降格圏外の14位に逃れ、ホセ・ソリージャで顔を合わす18位のバジャドリーとも勝ち点差2あるんですけどね。実は前回、降格した2016年も17位で最終節に挑み、最後のガラガラドボンで19位に落ちて、1部を去ることになったという黒歴史が。

それだけにその翌シーズン途中からチームを率い、昇格プレーオフで最短Uターンを達成したボルダラス監督も気を引き締めているはずですが、さて。ただ、水曜に売り出された300枚のアウェイチケットを求め、コリセウム・アルフォンソ・ペレスの前に徹夜組の行列もできる程、ファンも気合を入れているだけでなく、クラブも試合当日に無料バスを出してくれるんですが、何せバジャドリーもすでにチケットがソールドアウト。多勢に無勢となるのは避けられませんが、2年前、兄貴分のアトレティコがコロナ禍でファンの声援がまったくない中、彼の地で優勝を遂げたのを見習って、残留確定要件の引分け以上を勝ち取ってほしいかと。きっとエースのエネス・ウナルも水曜にヒザの靭帯の手術を受けたインスブルックから、ヘタフェを応援しているはずですよ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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勝因は頭の強さにあった…/原ゆみこのマドリッド

「2度も続くとこの先、信じられなくなるわよね」そんな風に私が首を振っていたのは火曜日、午前中にバルデベバス(バラハス空港の近く)で練習した後、ミッドウィーク開催リーガの前日会見に出たレアル・マドリーのアンチェロッティ監督が世間一般の予想を裏切って、「もうギュレルはプレーする用意ができている」と、プレシースンのロサンジェルスキャンプ中にヒザの半月板を負傷。それから手術も含め、ずっとリバビリしていた18才のトルコ人MFの招集リスト入りを宣言したところ、それが午後3時のお昼のニュースでは一転、ギュレルは左太ももをケガして、全治3週間と報じられているのを聞いた時のことでした。 いやあ、実は似たようなケースは週末のマドリーダービーの前にもあって、リーガ3節のセルタ戦で右の太ももに肉離れを起こし、全治6週間と言われたビニシウスながら、たった4週間で回復。お隣さんとの試合に招集されたものの、当日、急性胃腸炎を患って、ベンチ外になったという出来事があったんですけどね。折しも首位をバルサに奪われてしまったマドリーですし、サンティアゴ・ベルナベウでプレーする水曜のラス・パルマス戦では、そろそろ新鮮な顔を見られたらと思っていた私ですが、ギュレルがデビューできなくなったのは残念。どうやら、体調の戻ったビニシウスと筋肉の負傷でここ2試合お休みしたカルバハルの復帰でお茶を濁すことになりそうですが…。 まあ、息もつかさず、火曜から始まったミッドウィークリーガのことはおいおい、お話していくことにして、先に先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。この6節は4チーム共、日曜開催となったんですが、最初にキックオフとなったのは弟分のヘタフェ。サン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)でレアル・ソシエダと対戦したところ、凄い乱戦になってしまってねえ。それも相手が前節、サンティアゴ・ベルナベウで開始6分にベルネチェアが先制点を挙げたように、序盤の速攻を得意としていることを、「incluso antes de saltar al campo lo hemos hablado/インクルソ・アンテス・デ・サルタル・アル・カンポ・ロ・エモス・アブラードー(ピッチに出る前にも話した)」(ボルダラス監督)にも関わらず、2分には久保建英選手にゴールを決められているのですから、困ったもんじゃないですか。 それでも39分にはアレニャがヘッドで同点ゴールを決め、前半ロスタイムにはデ・ノルマンドにエリア内で倒されてPKをゲットしたボルハ・マジョラル当人が2点目を挙げて、逆転して折り返したヘタフェだったんですが、後半、ソシエダにやられちゃったんですよ。そう、16分には今度はミトロビッチがブライス・メンデスにペナルティを犯し、オジャルサバルのPKで早くも追いつかれると、21分には敵のスローインをパンチングしようとゴールを離れたGKダビド・ソリアがすかしてしまい、バウンドしたボールをメンデスに頭で押し込まれて3点目を献上。更には44分にもオジャルサバルに4点目を追加されたため、ラタサがロスタイムにヘッドで決めた3点目も焼け石に水でしたっけ(最終結果4-3)。 前節オサスナ戦では同じ3得点で3-2と競り勝っていたヘタフェだけに、これにはボルダラス監督も「Te vas con una derrota habiendo hecho tres goles/テ・バス・コン・ウナ・デロータ・アビエンドー・エッチョー・トレス・ゴーレス(3ゴールも挙げながら、負けて帰ることになった)」と悔しがっていましたが、ここはいつものシーズンなら、ゴール不足に悩むチームが2試合連続で3点も取れたことで良しとするしかないかと。ただ、気になるのはヘタフェが今季、まだアウェイで3戦3敗と勝ち点を1つも獲れていないことで、ええ、この水曜のアスレティック戦もサン・マメスでの試合ですからね。しかも相手は2連勝中で、順位も4位と好調なスタートを切っているだけに、13位のヘタフェが勝ち点を上積みできるのは土曜のコリセウム・アルフォンソ・ペレス、ビジャレアル戦まで待たないといけないかもしれません。 そして日曜試合の第2弾ではラージョがエスタディオ・バジェカスにビジャレアルを迎えたんですが、さすがにファン待望の週末開催とあって、私がパシフィコ駅から乗る、メトロ1号線補修工事による代替バスもかなりの混雑ぶり。まあ、1台乗り過ごしても5分ぐらい待てば、次のバスが来るため、そんなに慌てることもないんですが、これが10月末まで続くとなると、却って平日試合の方が空いていていい?そんなことはともかく、試合の方は奇妙な展開で、ゴールが生まれたのは前半の1分間だけだったんですよ。そう、キックオフから積極的に攻めていたのはホームチームの方だったんですが、敵ゴール前でうだうだしていた15分、カウンターで上がったバエナがエリア内に入れたクロスをセルロートがワンタッチで決め、いきなりビジャレアルが先制しているって、一体、どうなっているのでしょう。 でも大丈夫。即座に反応したラージョは16分、ウナイ・ロペスが自陣から送ったロングボールをRdT(ラウール・デ・トマス)はコントロールできなかったものの、キケ・ペレスがGKヨルゲンセンの頭を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)を放ち、あっという間に同点に。でもまさか、それで両チーム共、打ち止めになってしまうとはねえ。とりわけ後半31分にはアルベルト・モレノが2枚目のイエローカードをもらい、ビジャレアルが1人少なくなっただけに、交代で入ったカメージョ、デ・フルート、トレホ、ベベらが勝ち越し点を奪えなかったのは、もったいなかったかと。 いえ、フランシスコ監督のチームは負傷でファルカオとエヌテカを欠いていたという事情もあったんですけどね。1-1の引分けで終わってしまったのでは、前節のアラベス戦のように、試合後は「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って、選手たちと勝利を祝おうとスタジアムに駆けつけたファンには残念でしたが、この水曜にカディスとのアウェイ戦が終われば、またチームは土曜にマジョルカ戦をバジェカスでプレー。その時には現在、5位のアトレティコ、6位のバレンシアと同じ勝ち点で7位につけているラージョも更なる高みを見据えた戦いに挑めるかもしれませんし、今週はあまり練習する時間はなくともRdTやカメージョら、FW陣がもう少し、ゴール力を磨いてくれることを期待しましょうか。 そしてその日はラッキーにもマドリーダービーと梯子するという顔見知りの記者がいたため、メトロポリターノへの移動はそのタクシーに便乗。代替バスの必要がない時でも、メトロ乗り継ぎだと1時間以上かかるところが、30分弱で到着できることに。バジェカスではキックオフから試合終了まで強い西日を背中にがっつり浴び、暑さに相当まいっていたせいもあって、有難かったんですが、収容人数を7万人に拡張したスタンドをほぼ埋め尽くしたファンが、キックオフ前から熱心にアトレティコを応援しているのを見ても、決して私の心臓は静まらず。だってえ、ここ12回のダービー中、勝ったのは2022年にマドリーがリーガ優勝を決めた後の消化試合1回だけで、あとは先制しようが何しようが、最後はマドリー十八番のremontada(レモンターダ/逆転劇)を喰らったり、追いつかれているのをイヤという程、見せられてきたんですよ。 それも相手は開幕から6連勝と無敵の首位であるのに対し、アトレティコは前節バレンシア戦で3-0と完敗。ミッドウィークのCLラツィオ戦なんて、後半ロスタイムに敵GKのゴールで1-1に追いつかれるという、稀に見る悲劇に襲われたとなれば、クラブも用心して、ダービーでは恒例のモザイクなどの演出を自粛して、応援団がfondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側スタンド)に「Nos sobran los motivos/ノス・ソブラン・ロス・モティーボス(我々には理由が沢山ある)」と書かれた横断幕を掲げるだけに留まったのも仕方ない? でもこの日のアトレティコは何かが違っていたんです。キックオフから、「Sabíamos que podíamos hacer daño por los costados/サビアモス・ケ・ポディアモス・アセール・ダーニョ・ポル・ロス・コスタードス(ウチはサイドから打撃を与えられることを知っていた)。ファーポストへのクロスに相手が苦労していることをね。だから、それを練習した」(シメオネ監督)というプレーを忠実に遂行し、早くも前半4分にはサムエル・リノのクロスをモラタがゴール前からヘッドして、先制点を取っているんですから、ビックリしたの何のって。ただ、それだけだったら、アルメリア戦の前半3分にやはり頭で決めたアリバス(RMカスティージャから移籍)やヘタフェ戦の前半11分に得点したマジョラルのように後々、逆転されて、古巣への恩返しゴールの甘酸っぱい思い出に終わっていたかもしれないんですが、ようやくアトレティコの選手たちも1点ぽっきりでは遅かれ早かれ、追いつかれることを学んだよう。 その日は早い時間の得点に気を緩めず、18分には再び、リノからパスをもらったサウールが左サイドからクロス。今度はグリーズマンが誰にも邪魔をされずにヘッドでゴールに叩き込み、あっさり2点目を奪ってしまったとなれば、少しは勝ち筋が見えてきた?いえいえ、そんなに簡単な話なら、こうもお隣さんに対して不成績が続く訳はなく、案の条、2点差になった後、アトレティコはお馴染みの「リードしたら一歩後退」を実行。おかげでマドリーに反撃スイッチが入り、35分にはバルベルデの右サイドからのクロスをサビッチが頭でクリアしたボールをクロースに拾われて、エリア前から弾丸シュートでgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められてしまったから、さあ大変! それどころか、43分にはクロースがゴール前に送ったボールを撃ったアラバはポストに弾かれたものの、ゴール前の反対サイドにいたカマビンガに押し込まれ、もう追いつかれたのかと冷や汗をかいたんですが、ツイていました。ええ、この時はボールには触っていないものの、ゴール正面でエルモーソとがっぷり四つで争っていたリュディガーがオフサイドだったと判断され、ノーゴールになるって、ついぞダービーでは見たことのないジャッジ運じゃない? 45分にロドリゴに激しいタックルを見舞ったヒメネスも幸い、イエローカードで済みましたしね。昨季はコパ・デル・レイを入れて3度あったダービーでことごとく、退場者を出しているアトレティコにとって、これ以上ない朗報ですが、2-1のまま、ハーフタイムに入れたおかげで、選手たちもこの試合のミッションを思い出すことに。そう、シメオネ監督も「Con el 2-0 retrocedimos demasiado/コン・エル・ドス・セロ・レトロセディモス・デマシアドー(2-0になって、ウチは下がり過ぎた)から、ロッカールームではこのままだと負ける可能性が大いにある。プレーして、ファーポストにボールを送らないといけないと話した」と言っていたんですが、いやあ、監督の指示を直ちに実践できるとは彼らも成長したもの。 アンチェロッティ監督がCFなしの5人MF制を訂正し、モドリッチに代わり、ホセルが入ったマドリーに対し、開幕戦開始6分に負傷して、ようやくこの日、スタメンに戻って来たコケがガソリン切れ。ビッツェルがボランチを引き継いだアトレティコは後半が始まって1分も経たないうち、再びサウールが左サイドからクロスを上げ、アラバ、フラン・ガルシア、カマビンガが悠然と見守る中、モラタが再びヘッドで3点をゲットしたとなれば、ベンチから控え選手たちまで飛び出して、まるで優勝でも決まったかのようなお祝いをスタンドと一緒にしていたのもムリはなかった? いやあ、それでもマドリーは2点ぐらい、あのADNに刻まれたレモンターダ根性で引っくり返してしまうかもしれないと、長い45分間が過ぎ、後半ロスタイム6分が残り1分になるまで、恐れていた私だったんですけどね。どうやら普通のリーガ戦は、あの伝説となった2022年のDecimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)に至る決勝トーナメントとは違い、「今日は逆転近くまで行ったが、3-1となって全てが終わった。A partir de ese gol, ya es demasiado/ア・パルティル・デ・エセ・ゴル、ジャー・エス・デマシアドー(あのゴールが入って、もう逆転するには差が大き過ぎた)」(アンチェロッテイ監督)という状況にマドリーは陥ったよう。 実際、ホセルが入った後は逆転を目指しての交代といっても、サイドに隙を作りすぎたルーカス・バスケス、フラン・ガルシア、そしてカマビンガをナチョ、メンディ、チュアメニにした以外、ビニシウスのいないマドリーはせいぜい、ブライムを入れるぐらいしかできませんでしたからね。まったく危なげなく、そのまま3-1で勝利したアトレティコはロスタイム5分にベリンガムに蹴られ、相手はレッドでなく、イエローカード止まり。その時にヒザを捻って、全治2週間となったコレアも一緒に選手全員がピッチに出て、彼らの大好きな場内一周でファンと祝っていたんですが、いやあ。自分のカンティコを聞いて、「Estaba a punto de que alguna lágrima cayera/エスタバ・ア・プント・デ・ケ・アルグーナ・ラグリマ・カジェラ(嬉し涙がこぼれる寸前だった)」と言っていたのはグリーズマンですが、結構、私もそれに近かったかも。 おかげでマドリーとの勝ち点差が1試合少ない状態で5に縮まり、その日、お隣さんを追い抜いて首位に立ったバルサとも6差のまま(火曜にマジョルカと引分け7差になった)、アトレティコは木曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からのオサスナ戦に挑めることになったんですが、一旦は止まったかと思われたモラタのゴール運が続くかは祈るばかり。まあ、メンフィス・デパイもダービー後半の途中出場で復帰していますし、とりあえず、コレアが戻って来るまでぐらいは、次のケガをしないでくれるといいのですが。 一方、マドリーあるあるで、今季初黒星を喫しただけで、一気にクライシス入り。それまでの6連勝中にも散見された序盤の失点癖や守備の大穴、そして本来、FWではないベリンガムが当たりまくっていたため、問題にされていなかった前線のシュート精度の悪さとゴール不足だけでなく、アンチェロッティ監督が今季選んだ中盤をひし形にしたシステムの弱点まで一気に批判されることになったお隣さんは水曜午後7時(日本時間翌午前2時)にラス・パルマス戦を迎えるんですが、一応、相手は久々に1部に昇格したチームですからね。たとえ、前節のグラナダ戦で今季初白星を掴み、気勢が上がっているとはいえ、ビニシウスとカルバハルも戻るマドリーなら、全然、恐れるに足らないんじゃないかと思いますが…これで勝てないようなら、本当にマズいことになるかもしれませんよ。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.09.27 20:00 Wed

土壇場に強いチームになってほしい…/原ゆみこのマドリッド

「まだ9月なのにfinal(フィナル/決勝)になっちゃうの?」そんな風に私が我が目を疑っていたのは金曜日、マルカ(スポーツ紙)のアトレティコページを読んでいた時のことでした。いやあ、確かに言われてみれば、現在、7位のシメオネ監督のチームと完全無欠の首位であるお隣さんとの勝ち点差は8。この日曜のマドリーダービーで負けて11となれば、いくら4節のセビージャ戦が外れの集中豪雨警報で延期され、消化試合数が1つ少ないとはいえ、さすがにまだリーガは始まったばかりと目を瞑っていられる差ではありませんけどね。 ただ、何となく思ったのは、とにかく今週のCLグループリーグ1節の結果があまりに対照的でしたからね。更に悲壮感を煽らないと、7万人まで座席数を増やしたシビタス・メトロポリターノのアトレティコファンが無力感に囚われて、一生懸命応援してくれないかもしれないと恐れた番記者のいらぬお節介記事だったんじゃないかということですが、うーん、私だって、ラツィオ戦が終わった時には、「今季も昨季同様、CLグループリーグ敗退で、リーガも早々に4位以上が目標になるんだろうか」と溜息をついてしまったくらいでしたからね。まあ、とりあえず、その火曜の試合から、振り返っていくことにすると。 そう、昨季はグループリーグで1勝しかできず、最終節でレバークーゼンに抜かれて最下位敗退。ELにすら回れず、ヨーロッパから早期完全撤退をした悔しさをバネにスタディオ・オリンピコに乗り込んだアトレティコだったんですが、ゲーム開始から、ずっとラツィオに押し込まれる展開に。それがどういう拍子か、29分、モリーナが右サイドからエリア前に送ったパスに駆けつけたバリオスが力いっぱい蹴ったところ、鎌田大地選手が出した足に当たったボールが軌道を変え、GKプロベデルを破ってしまったから、ビックリしたの何のって。 まるで冗談のように先制したアトレティコだったんですが、その他、前半はラツィオのペッレグリーニが負傷でラッザリに代わったり、シメオネ監督とサッリ監督が揃ってイエローカードをもらっていたぐらいで、そのまま0-1でハーフタイム入り。殊勲のバリオスが後半のピッチに出ず、ヒメネスが入っていたのにも驚かされたんですが、ロッカールームでシメオネ監督にハッパをかけられたか、そこからチームは徐々に調子を上げていきます。といってもGKオブラクがゴールキックをエリア近くにいた敵選手に向けて蹴ってしまい、インモービレのシュートをセーブして、自らのミスを自ら修正した後、モラタのシュートはゴールポストを直撃。ジョレンテのキラーパスから、サムエル・リノが撃った渾身のシュートも敵GKにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったんですけどね。 同点のまま、終盤が近づくと、恒例のリードしたら一歩後退態勢に入ったため、最後は延々とラツィオの攻撃に耐えているだけになったんですが、ロスタイムは昨今にしては短めの4分。何とか逃げ切れるんじゃないかという気がしてきたものの、こんなこと、あっていい?そう、49分、珍しくコレアがカウンターで敵陣に向かって走り出したところをファールで止められたんですが、何故か、彼の方がイエローカードをもらっていたのは序の口で、そこからのFKがラストプレーとなるラツィオのCKが生まれることに。そのCKはエルモーソが胸で弾き、サウールがクリアしたんですが、どうしてこの時に限って、ピッチの外まで蹴らなかった?おかげでボールがカタルディからルイス・アルベルトに渡り、そのクロスをヘッドで同点ゴールにしたのは何と、全員攻撃で上がっていたGKプロベデルだったんですよ! いやあ、後で聞くと、「あのプレーでは敵GKにマークが付いていなかった」(サウール)だそうなんですけどね。いかにもどこか抜けてるアトレティコらしい話ではありますが、私が違和感を覚えるのは、1-1となったところで試合が終了し、勝ち点2をむざむざドブに捨てたようなものなのに、彼らの試合後のコメントが凄く前向きだったこと。ええ、「Jugamos un gran segundo tiempo. Tuvimos ocasiones/フガモス・ウン・グラン・セグンド・ティエンポ。トゥビモス・オカシオネス(ウチは素晴らしい後半をプレーした。チャンスも作ったしね)」というシメオネ監督に始まって、グリーズマンも「Hemos hecho un buen trabajo y tenemos que seguir/エモス・エッチョー・ウン・ブエン・トラバッホ・イ・テネモス・ケ・セギール(ボクらはいい仕事をして、これを続けないといけない)」と言っていましたし、サビッチなど、「Cero preocupaciones/セロ・プレオクパシオネス(心配はゼロだ)」ですからね。 まあ、これでCL6試合連続白星なしとなったとはいえ、ラツィオはグループ最強と見なされている相手ですし、アウェイということも考えれば、引分けでも御の字という見方もできますけどね。たとえ、移籍市場最終日にレンタルに出したジョアン・フェリックスの2ゴール1アシストの活躍で、同時進行だったバルサがアントワープに5-0と大勝していたとて、どうせアトレティコではそんなプレーはできないんだからと、自分を納得させていたんですが、それも翌水曜、サンティアゴ・ベルナベウにウニオン・ベルリンを迎えたレアル・マドリーの試合を見るまでのこと。だってえ、真逆の結末を見せられたんですよ。そう、ここ数試合は序盤に失点して、お家芸のremontada(レモンターダ/逆転劇)で勝利するパターンが続いていたアンチェロッティ監督のチームだったんですが、5000人のドイツ人ファンに後押しされたCL初出場チームは先制点こそ、挙げなかったものの、大舞台に気おされることなく、0-0を90分間キープ。 もちろん、それにはホセルやロドリゴを筆頭に計22本(枠内7本)もシュートを放ちながら、ゴールが入らなかったマドリーの精度の悪さのおかげもあったんですが、普通、後半ロスタイム5分もあと1分となれば、誰だって、スコアレスドローで終わると思うじゃないですか。それが、アンチェロッティ監督も「もっと前に得点できたが、大事なのは最後にゴールを挙げること。El espíritu de esta camiseta es esto, que nos permite creer siempre/エル・エスピリトゥ・デ・エスタ・カミセタ・エス・エスト、ケ・ノス・ペルミテ・クレエル・シエンプレ(それがこのユニフォームの持つ精神だ。常に自分たちを信じさせてくれる)」と言っていたように、49分、クロースの蹴った短いCKをバルベルデがエリア外から撃ったところ、ゴール前でベルリンの選手2人に当たって落ちたボールをすかさず拾い、シュートした選手が約1名。 それはご存知、ベリンガムで、ええ、彼はリーガのホーム開幕戦だった兄弟分ダービー、ヘタフェ戦でも後半ロスタイムに2-1とするゴールを挙げ、チームに土壇場の勝利をもたらしていますからね。その時同様、「自分はキラーになって、チームを助けるためにエリア内にいたい」という志を貫き、こぼれ球を決勝点に変えたんですが、いやあ。ちなみにアンチェロッティ監督はこのベリンガムの活躍を、「calidad es muy importante, también suerte, pero hay que estar ahí/カリダッド・エス・ムイ・インポルタンテ、タンビエン・スエルテ、ペロ・アイ・ケ・エスタル・アイー(質の高さは重要だが、ツキがあるのも大事だ。それでもあの場所にいる必要がある)」と解説していましたが、そんな選手を獲得できたマドリーだって、相当ラッキーだったかと。 そんな感じの兄貴分のCL初戦だったため、いよいよ日曜午後9時(日本時間翌午前4時)に迫ったマドリーダービーを前にして、私も全然、楽観的ではいられないんですが、アトレティコには追い打ちをかけるように、ふくらはぎを痛めたバリオスが10月の代表戦週間後まで戻って来られないという悪いニュースも。いえ、バトンタッチのように水曜からは開幕グラナダ戦前半6分でハムストリングを負傷し、ずっとリハビリしていたコケがチーム練習に合流しているんですけどね。幸い、ラツィオ戦で途中交代したビッツェルはただのこむら返りだったそうで、アルゼンチン代表戦でケガをしたデ・パウルがまだジム調整の中、ボランチ全滅という事態だけは避けられそうな。え?それよりラージョ戦とスペイン代表ジョージア戦で5得点したところで今回の全盛期が終わってしまったようなモラタの分のゴールを補うため、メンフィス・デパイが復帰したことの方が心強いって? その一方で、マドリーではベルリン戦も筋肉の負傷で欠場したカルバハルは全治10日となり、金曜から、バルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドでチーム練習に参加するようになったビニシウスとギュレルもまだダーバーには間に合わないよう。それもここまでマドリーが主にベリンガムの土壇場のゴールで開幕から6連勝していることを思うと、あまり影響なさそうですが、こればっかりはねえ。せめて8月14日以来、ようやく今季2度目のメトロポリターノでの試合を見られることになるファンの期待を裏切らないプレーをアトレティコが披露できるといいのですが。 そしてこの週末、ヨーロッパの大会不参加で、ミッドウィークにしっかり練習できたマドリッドの弟分たちの予定はというと、この6節は揃って日曜試合となり、まずは午後2時(日本時間午後9時)から、ヘタフェがレアル・ソシエダとサン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)で対戦。実は前節、サンティアゴ・ベルナベウでマドリーに2-1の逆転負けを喰らったイマノル監督のチームも今週はちょっとアトレティコと似ていて、10年ぶりとなるCLの初陣で終盤、インテルのラウタロウに同点ゴールを決められ、1-1のドロー発進。あまりローテーションはしないようなので、また久保建英選手が先発する可能性も高そうですが、ヘタフェにも早く今季アウェイ初勝利を挙げてもらいたいですからね。 幸い前節のオサスナ戦でベンチにいながら、退場させられたアンゲレリのレッドカードも取り消されたそうですし、今はケガ人もエネス・ウナルとルイス・ミジャの長期リハビリ組だけになったため、相手が連戦で疲れている状況を利用しない手はない?ちないにヘタフェでの注目選手は先週末にヘタフェデビューして、好印象を残した21才のイングランド人FW、グリーンウッド(マンUからレンタル)となりましょうか。 一方、ホーム連戦となるラージョは午後4時15分にビジャレアルをエスタディオ・バジェカスに迎えるんですが、こちらも相手は木曜にELグループリーグ1節パナシナイコス戦をアウェイでプレーして2-0と完敗。前節は金曜試合だったフランシスコ監督のチームの方が休養期間が全然、長いのは有利ですが、ただELあるあるで、アテネでの試合、パチェタ監督はスタメンほぼ全員をローテーションしているんですよね。となると、あまり疲労は関係なさそうですが、せっかく前節アラベス戦で今季ホーム初勝利を挙げ、順位もアトレティコを越える6位まで上がったラージョとなれば、貴重な週末開催ゲームに挑む選手たちもかなりやる気になっているかと。 そして最後に今週は遅れてネーションズリーグ用の招集リストが月曜に発表となり、そこからまた大騒動になっていたスペイン女子代表の様子も報告しておくと、ええ、モンセ・トメ新監督は23人中、W杯王者の15人を含む、サッカー協会の組織改革がなされるまで、招集を辞退するという宣言に署名した20人を指名。彼女たちが翌火曜からの合宿に来てくれるのかという当然の疑問はともかく、今回は運営の方も無茶苦茶で、当初はラス・ロサス(マドリッド近郊)の協会施設に集まるはずだったのが、急遽、合宿地を地中海沿岸のオリバ・ゴルフリゾートホテルに変更って、凄くない? 火曜の午前中にはマドリッドのクラブでプレーする6人のみが空港近くのホテルに集合して、スタッフと一緒にバレンシアに飛び、その他のクラブの選手たちは現地集合となったんですが、最大勢力バルサの8人はフライトの遅れで到着が午後9時過ぎに。これで一応、招集された選手は、負傷で来られなかったエステル(ゴッサム)以外、全員揃ったんですが、それからCSD(スポーツ上級委員会)の委員長を交えて、翌朝5時まで続く話し合いをしたというから、恐ろしい。その間、終わるのをホテルの前でずっと待っていたマスコミにもビックリですが、とりあえず、ルビアレス元会長寄りの協会幹部何人かの首を差し出す代わりに、選手たちがこの代表戦に出場することで決着がついたよう。 FIFAのお墨付きで、今回は招集辞退しても罰金や選手資格停止処分(2~15年)を受けないことを確認した上、合宿を離脱したのはマピ・レオンとパトリ・ギハーロの、昨年中にビルダ監督辞任を求めて招集拒否し、W杯にも行かなかったバルサの2人に留まり、チームは水曜夕方のセッションをこなしただけで、木曜にはスウェーデン戦の行われるイエーテボリに移動。スタジアム練習の前にはアレクシア・プテジャとイレーネ・パレデス(どちらバルサ)が会見し、試合については一切話さず、長年、協会から男女差別されてきたことや、平等を求めての闘いを続ける意志を表明していたんですが…。 やっぱりスペイン女子は世界王者なんですよ!これだけゴタゴタ続きで、練習もようようしていないというのに金曜の試合では前半23分にCKから、マグダレーナ・エリクソン(バイエルン)のヘッドで先制されながら、37分にはアテネア・デル・カスティージャ(マドリー)が同点ゴールを挙げて、1-1で折り返すことに。後半32分にエバ・ナバーロ(アトレティコ)のgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で勝ち越した後、残り8分にはリナ・ハルティグ(アーセナル)に同点にされてしまったんですが、ロスタイム終了間際、アマイレル・サルレギ(レアル・ソシエダ)がアマンダ・イレステッド(アーセナル)にエリア内で倒され、PKをゲットするとは!マリオナ・カルデンティ(バルサ)がこれをしっかり決め、W杯準決勝でも勝った相手に土壇場で2-3と勝利って、これじゃ、まるでどこぞの逆転体質チームじゃないですか。 まあ、これまで誰1人、経験したことのない騒動の渦中にありながら、ピッチでは決して競うことを止めない彼女たちにはもう、尊敬の念しか沸かないんですが、次のスペイン女子の試合は来週火曜のスイス戦。男子に倣って始まったネーションリーグだけに、レベルの近い強豪チームとばかり当たることになりますが、来年のパリ五輪の切符をゲットするだけでなく、今年の6月にファイナルフォーで優勝して、ネーションリーグ王者となったスペイン男子とも肩を並べられたら、きっと協会の女子代表に対する扱いも更なる改善が期待できるかもしれませんね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.09.23 18:30 Sat

息の抜けない7連戦x2が始まる…/原ゆみこのマドリッド

「これで一件落着してくれるといいけど」そんな風に私がまだ不安を拭えないでいたのは月曜日、とうとうスペイン女子A代表のネーションズリーグ用招集リストがラス・ロサス(マドリッド郊外)のサッカー協会本部の講堂で発表に。解任されたビルダ監督の後を継いだモンセ・トメ新監督のプレゼンと記者会見を兼ねたイベントをネット中継で見た後のことでした。いやあ、この夏には女子W杯に初優勝しながら、表彰式でジェニ・エルモーソ(パチューカ)にキスしたルビアレス前会長(すでに辞任)のセクハラ事件でずっとゴタゴタしていた協会と女子選手たちでしたが、暦は着々と進行。本来なら、先週の金曜に発表される予定だったリストもその直前、新たに39人の女子選手が代表参加条件に更なる協会の組織改革並び、事務総長や広報幹部らの交代を要請してきたため、延期になっていたんですけどね。 週末の間中、必死で協会が選手たちと交渉を続けた甲斐があったか、組織改革はおいおいやっていくからと、今週金曜のスウェーデン戦、来週火曜のスイス戦のために招集する選手たちを説得。渦中の人だったジェニはいないものの、W杯王者チームの15人を含む、協会が変わるまで招集に応じない宣言に署名した19名、そして昨年、ビルダ監督の下ではプレーしたくないと代表を去った4人で23選手のリストを完成させたんですが、いやあ、当然、スウェーデンなんかは月曜から練習を始めていますからね。 これで招集を断ると、2年から12年に渡る選手登録停止処分なども課される可能性があるため、先週末、ようやく労使協定が締結され、1週間遅れのリーガ開幕戦に挑んだスペイン国内でプレーする選手たちは火曜午前中にラス・ロサスに集合できると思いますが、日曜にゴッサムの試合で2得点を挙げ、ニューヨークから戻らないといけないエステル(昨季でレアル・マドリーを退団)など、時間がかかるかも。何にしてもこれ以上、騒ぎが長引くことなく、来年のパリ五輪の予選も兼ねているネーションズリーグで王者の名に恥じないプレーを見せてくれるといいのですが。 まあ、そんなことはともかく、こちらは9月の各国代表戦明け、スペイン男子リーガ5節に挑んだマドリッド勢の週末の試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。まずは金曜に先陣を切ったのは弟分のラージョで、ええ、もうこれで開幕から4試合目の平日試合ですからね。それでもエスタディオ・バジェカスにファンは律儀に駆けつけ、大入りとなったんですが、アラベス戦が始まってしばらくすると、スタンドには「No viernes/ノー・ビエルネス(金曜はノー)」、「No lunes/ノー・ルネス(月曜はノー)」というプラカードが幾つも現れることに。 ちなみに試合の方は拮抗した展開で、前半18分にはセットプレー中にアリダネがブランコを薙ぎ払い、危うくペナルティを取られかけたラージョだったんですが、この時はギリギリ、エリア外ということで、FKでセーフに。どうやらマドリッド遠征でジャッジ運がないのはアラベスの方だったようで、ええ、3節でもコリセウム・アルフォンソ・ペレスでpenaltito(ペナルティート/何ちゃってペナルティ)を取られ、ボルハ・マジョラルの決めたPKでヘタフェに1-0で負けてましたからね。この日も40分、エリア内に入ったアルバロ・ガルシアに後ろから足を出して倒したソラのプレーがVAR(ビデオ審判)レーダーに引っかかり、ラージョにPKを献上とはまったくツイていないじゃないですか。 ただ、PKに関しては、ラージョは昨季も失敗が多かったため、ええ、トレホやイシが何度か続けて失敗した後、とうとう、トレホがショートでPKを横に蹴り、そこに突っ込んだイシがご丁寧にも外して、イラオラ監督(現ボーンマス)に「創意工夫はいいが、練習でやってからじゃないとダメ」と怒られていたなんてこともあったんですけどね。よってファンはこの日、PKマークに立ったイシを固唾を飲んで見守っていたんですが、しっかりGKシベラの裏をかき、1点リードしてハーフタイムに入れたから、嬉しいじゃないですか。ゲリラ豪雨に襲われた後半は長らくスコアが動かなかったものの、雨が止まったのに呼応して、31分にイシとカメージョをデ・フルートとRdT(ラウール・デ・トマス)に代えたのが大成功。38分にはRdTのスルーパスを受けたアルバロ・ガルシアがエリア内でボールをゴール前に送り、突っ込んで来たデ・フルートが押し込んでくれたから、ようやく座席に戻れたファンたちもどんなに沸いたことか。 これで2-0と快勝したラージョは、今季初ホームゲームだった3節のアトレティコ戦では0-7と大敗したため、やれなかったファンと一緒に「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊生活)」を歌う定番のお祝いもできましたし、順位も兄貴分を追い越して4位に上昇。こちらは5節が進むうち、6位に落ちてしまったんですが、次節は待望の日曜ホームゲームですからね。相手はこのミッドウィークからELグループリーグが始まり、奇しくもプレシーズン初戦でラージョが勝利したパナシナイコスとの1節を木曜に挟むビジャレアルとなれば、ヨーロッパの大会不参加チームの強みを生かせるんじゃないでしょうか。 そして土曜はアトレティコがメスタジャでバレンシアと対戦したんですが、これが信じられないことに、弟分に見下ろされるという状況を覆せなかったんですよ。うーん、確かにシメオネ監督のチームはリハビリ中のコケとメンフィス・デパイがまだ合流できず、加えてFIFAウィルスのせいで、デ・パウルがアルゼンチン代表から痛みを抱えて帰還。更に日本との親善試合に出たトルコ代表のソユンチュが太ももをケガして全治2週間になってしまったなんてこともあったんですが、でもまさか、開始5分、カナスが左からエリア内に送ったパスがサビッチに当たって軌道を変え、それを拾ったウーゴ・ドゥーロに決められて先制点を奪われてしまうとは! いやあ、バレンシアにはここずっと、負けた記憶がなかったため、その時はまだ、あまり心配していなかったんですけどね。ここでチラッと私の脳裏をよぎったのは、やはり太陽が燦々と輝くメスタジャでの序盤、ミランダが正確無比なヘッドでオウンゴールを決めて始まった2014年10月の試合で、そう、眠ったまま、ピッチに立った彼らは3-0で負けてしまったんですよ。その試合を経験したのは今やスタメンではグリーズマンだけ、あとはベンチで見学していたGKオブラクとヒメネスだけと、当時とはメンバーも全然、違いますし、とにかく代表戦前最後となったラージョ戦では恐ろしい程のゴール力を披露したアトレティコですからね。あれ以来、バレンシアには17試合負けていませんし、長い残り時間でのremontada(レモンターダ/逆転劇)を私も期待していたんですが…。 もう、ダメダメですよお。モラタやマルコス・ジョレンテのシュートなどはあったものの、34分には同点に追いつくどころか、またしてもザル守備が爆発。グリーズマンが自陣で失ったボールを持って上がったフラン・ペレスを、すでにイエローカードをもらっていたエルモーソが止められず、そのラストパスを受けたドゥーロが再び倒れながらシュートして2点目を奪われているんですから、呆れて物も言えないとはまさにこのこと?更に前半終盤にはセットプレーでヘッドしたレマルが着地時にアキレス腱を断裂、即ガランと交代し、翌日の検査で全治5カ月と言われているって、一体、どこまで不運は続くのでしょう。 後半頭から、アルゼンチン代表の長旅帰りで温存していたコレアとモリーナをリケルメとサビッチの代わりに入れ、シメオネ監督も状況打破を図ったんですが、どうやらラージョ戦で2本、スペイン代表のジョージア戦ではハットトリックを挙げたモラタも今回の好調の波はそれで打ち止めだったよう。ええ、5分のヘッドもトビリシでの試合のリベンジを誓っていたGKママルダシビリに弾かれてしまいましたからね。それどころか9分には、昨季後半からカンテラーノ(下部組織出身の選手)の台頭著しいバレンシアは20才のハビ・ゲラがエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、とうとう3点差になってしまったとなれば、今週から週2試合ペースになるのを見据えて、シメオネ監督がグリーズマンを17分には下げてしまったのも仕方ない? 結局、「Nosotros hicimos el partido más flojo desde que llegué al club/ノソトロス・イシモス・エル・パルティード・マス・フロッホ・デスデ・ケ・ジェゲ・アル・クルブ(私がクラブに来てから、一番柔な試合をしてしまった)」(シメオネ監督)アトレティコはそのまま3-0で完敗。キャプテンのオブラクも「まったくいい目の出ない悪い試合をすることはあっても、la intensidad y la actitud nunca te pueden faltar/ラ・インテンシダッド・イ・ラ・アクティトッド・ヌンカ・テ・プエデン・ファルタル(プレーの強度と姿勢は決して欠けてはいけない)」と反省していたんですけどね。参ってしまうのは、今季は11月のW杯期間に入る前に全てを失ってしまった昨季の轍は絶対踏まないとチーム全員が誓いながら、代表戦週間入り直前の4節セビージャ戦が集中豪雨警報で延期となり、間が3週間空いただけで、この体たらく。 こうなると、怖いのはやはりコケやデパイ、デパイが間に合わず、レマル、ソユンチュもいない、トップチームの選手17人とカンテラーノで挑む火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのCLラツィオ戦で、ええ、グループリーグでヨーロッパ完全敗退をした昨季は5試合白星なしで終わっていますからね。相手も土曜にユベントスに3-1で負けているとはいえ、向こうにはルイス・アルベルトや鎌田大地選手などもいるため、何とも不安になってくるんですが…週末の日曜にはいよいよマドリーダービーも控えているだけに、とにかく今は早いところ風向きが変わるように努力してもらいたいものです。 そして日曜には雨の降る中、午後2時からのオサスナ戦を見にコリセウム・アルフォンソ・ペレスに向かった私だったんですが、合羽や傘で屋根のないスタンドに席があるファンはしっかり完全装備してのキックオフに。ただ、ピッチで動きがあったのは雨足が止まった前半36分で、ダミアンの蹴ったCKをミトロビッチがヘッドで決め、ヘタフェは先制したんですが、何でしょうかね。ハーフタイムまであと一息だった45分、オサスナもCKから繋いだイケル・ムニョスのvolea(ボレア/ボレーシュート)がネットに入り、同点に追いつかれてしまっては、ファンも安心してお昼ご飯のボカディージョ(スペインのサンドイッチ)を食べられなかったかも。 後半もその流れは繰り返し、6分にはディエゴ・リコのクロスをカルモナが頭で叩き込み、2-1とリードしたヘタフェだったものの、12分にはGKダビド・ソリアがブドミルをゴール前で倒してPKを献上。ブドミルがしっかり決め、また同点にされたんですが、その後、ボルダラス監督がアレニャ、アランバリ、そして新加入のオスカル・ロドリゲス(セビージャからレンタル)、更には32分、ラタサに代えて、ファンが一番見たがっていたグリーンウッド(同マンチェスター・ユナイテッド)と持てる戦力全てを投入したおかげでしょうか。何と41分にはCKから、この日、3本目のヘッドをマクシモビッチが叩き込んでいるって、ヘタフェって、実は頭自慢のチームだった? これで3-2となり、電光ボードの表示は10分、実質12分あったロスタイムも、「no hay balones ni recogepelotas, no hay continuidad/ノー・アイ・バロネス・ニ・レコヘペロータス、ノー・アイ・コンティヌイダッド(ボールは消えるし、ボールボーイはいないし、継続してプレーができない)」とアラサーテ監督は怒っていたものの、ボルダラス流を貫いたおかげで3度目の同点弾は受けず、ヘタフェは勝ち点3をゲット。ホームでは2勝1分けとなったため、アウェイの次節、レアル・ソシエダ戦でも余裕が持てるかと思いますが、そう、こちらの相手も水曜にはCLインテル戦が控えていますからね。丸々1週間、調整に当てられるヘタフェにはちょっと有利かもしれませんよ。 え、レアル・ソシエダと言えば、日曜夜のサンティアゴ・ベルナベウでマドリーと対戦していなかったかって?その通りで一旦、自宅に戻った後、私も梯子観戦に出かけたんですが、開閉式屋根があるとはいえ、その日はもう、雨がぶり返してくることがなかったのは良かったかと。ちなみにそのソシエダ戦、序盤から久保建英選手が躍動して、何と開始5分には彼がエリア前から送ったパスをバルネチェアが1度は完全にGKケパに弾かれながら、撃ち直しでゴールラインを割ったんですが、ええ、代表戦前、弟分ダービーでもマジョラルに早い時間に先制されながら、当然の如く、逆転勝利したマドリーでしたからね。 それも間が悪くオジャルサバルがオフサイドの位置におらず、10分に決まった久保選手のゴールが取り消されずに2点リードしていたら、わからなかったとはいえ、ソシエダの抵抗がもったのは後半1分までのこと。ええ、アンチェロッティ監督も後で「今のウチには敵が持ちこたえるのに苦労するプレーの強度がある」と言っていたようにフラン・ガルシアからボールを受け、バルベルデがエリア前から撃ったシュートがポストに当たってゴールに入り、再開早々、マドリーは同点に追いつくことに。おまけに15分には再び、フラン・ガルシアがクロスを上げ、タイミングばっちりでホセルがヘッド。これが2点目のゴールとなって、逆転に成功したんですが、その後、26分には久保選手に激しいタックルをしてイエローカードをもらった殊勲のフラン・ガルシアがすぐ、ナチョに代えられてしまったのはちょっとしたご愛敬? 結局、この日はここ4試合で5得点していたベリンガムはゴールを挙げず、いえ、ロスタイムに途中出場のブライムからラストパスをもらい、低位置から強烈なヘッドを撃ちながら、GKラミロにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったなんてこともあったんですけどね。チームは2-1で勝利して(https://onl.la/uVaHiLv)、開幕5連勝となりましたし、慌てなくも次の試合は水曜日。CL開幕のユニオン・ベルリン戦で再び、彼のゴール力を必要とするシーンもあるはずなので、ソシエダ戦は充電期間と考えて、ファンも楽しみに待っていればいいかと。 ちなみにマドリーの戦力状況ですが、セバージョスはすでに回復して、ベンチに入っていたものの、ソシエダ戦で出番はなし。一緒に復帰予定だったにも関わらず、招集リストに入らなかったメンディも戻って来れそうですが、ビニシウスは9月いっぱいぐらい無理のようだとか。どちらにしろ、相手はCL初出場チームですし、ここは胸を貸すつもりで、この大会の厳しさを教えてあげられたらいいかと思います。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.09.19 20:00 Tue

いよいよ中2日サイクルが始まる…/原ゆみこのマドリッド

「さっさと平常モードに戻らないと」そんな風に私が気を引き締めていたのは木曜日、9月の各国代表戦が終わり、もう週末のリーガ戦が目前に迫っているのに気がついた時のことでした。いやあ、8月半ばに開幕して以来、4節まではずっと週1試合ののんびりペースだったんですけどね。それが転じて、paron(パロン/リーガの停止期間)明けは10月の代表戦までの4週間はずっと週2試合がデフォルトに。というのも来週から、CLグループリーグが始まるせいで、ええ、よって、ヨーロッパの大会不参加の弟分、ヘタフェとラージョはミッドウィーク開催リーガのある9月最終週だけが忙しいんですが、兄貴分の方はとにかく休む間もありゃしませんって! そう、アトレティコは来週火曜にグループ1節のラツィオ戦でローマ遠征しますし、翌水曜にはレアル・マドリーがサンティゴ・ベルナベウにウニオン・ベルリンを迎えるのに始まって、10月第1週も2節でマドリーがナポリ遠征、アトレティコはメトロポリターノでフェイエノールト戦と続きますからね。この連戦状態がようやく止まる11月第1週もスペイン・スーパーカップ出場で免除となる4チーム(バルサ、マドリー、アトレティコ、オサスナ)以外、コパ・デル・レイ1回戦があって、ミッドウィークを使えないため、4節に外れの集中豪雨警報で順延となったアトレティコvsセビージャ戦など、クリスマスイブ前日、12月23日に設定される程。すでに他のチームが休暇に入っている日付にされてしまったんですが、とりわけ南米系の選手たちは母国で家族と過ごす時間が短くなるのを嘆いているんじゃないでしょうか。 まあ、リーガのことはまた後で話すことにして、先にスペイン代表の2試合目がどうだったかをお伝えしていくことにすると。金曜にユーロ予選3節のジョージア戦で1-7と大勝し、その夜のうちにトビリシからマドリッドに帰京。土曜午後から、練習を再開したデ・ラ・フエンテ監督のチームをラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で待っていたのは、前半終盤に負傷し、交代となったアセンシオ(PSG)とダニ・オルモ(ライプツィヒ)に代わりに速攻、追加招集されたフェラン・トーレス(バルサ)とジェレミー・ピノ(ビジャレアル)の2人で早速、そのセッションから、皆と一緒に汗を流すことに。 恙なく、日曜も練習した後、土曜にチームは4節キプロス戦の舞台となるグラナダ(スペイン南部、アルハンブラ宮殿で有名な観光都市)に移動。一つだけ間が悪かったのは、折しも前日の夜、スペインの優勝した女子W杯表彰式でジェニ・エルモーソ(パチューカ)にキスしたセクラハ事件により、FIFAの規律委員会から90日間の停職処分を喰らって以来、居所不明だったサッカー協会のルビアレス前会長の辞任が伝わってきたことで、いえ、自身がそう言っているイギリス人記者のインタビュー本編が流れたのは水曜だったんですけどね。先行映像で明らかになったため、本来なら、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)勝利の後、デ・ラ・フエンテ監督も胸を張って臨めるはずだったロス・カルメネス(グラナダのホーム)での前日記者会見が、またしてもルビアレス関連質問6連発から始まってしまったことでしょうか。 その辺については金曜にはルビアレス前会長にかけられたジェニへのセクハラと脅迫容疑の裁判に備え、本人が出頭する公聴会も予定されているため、また後日、お伝えしようと思いますが、実は月曜の夜には一足早く、弟分のU21スペイン代表が同じアンダルシア州のハエンでスコットランドとユーロ2025予選の2戦目をプレー。やはり先週金曜にマルタに0-6と大勝した時とは違い、後半38分にパブロ・トレ(バルサからジローナにレンタル移籍)の蹴ったCKをトリエンテス(レアル・ソシエダ)がヘッドで決めて、1-0で勝利するという渋い結果だったんですが、まあ、スコットランドの兄貴分たるや、現在、A代表のユーロ2024予選でスペインのいるグループのダントツ首位ですからね。後輩たちもそれなりに強いのは当然ですが、サンティ・デミア監督のチームも2連勝できて、更にバリオス(アトレティコ)が順調に代表でもボランチ修行が継続できたのは良かったかと。 そしてそのスコットランドA代表がユーロ予選の狭間、イングランドと親善試合を行い、ベリンガム(マドリー)の1得点1アシストの活躍もあって、1-3と負けた火曜、キプロス戦に挑んだスペインだったんですが、この日はジョージア戦から3人をスタメン変更。アセンシオとオルモの後をトリビシでの試合でも引き継いだ16才のジャマル(バルサ)と21才のニコ・ウィリアムス(アスレティック)が入ったのは順当な流れで、あとは2021年のユーロ2020以来の復帰出場で絶賛されていたファビアン・ルイス(PSG)がミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)に変わっていたんですが、まあ相手はグループ最弱のチームですからね。前半17分には左サイドをドリブルで上がったニコの折り返しパスを受けたガビ(バルサ)があっさり、先制点を決めてくれることに。 32分にもニコのクロスをメリーノがヘッドで沈めて、スペインが2点目を奪った時には誰もがこの日もゴール祭りが見られるものと疑わなかったんですが、残念ながら、アトレティコと代表のここ2試合で5得点を挙げているモラタは再び、オフサイド癖が復活したよう。ええ、38分にはジャマルがジョージア戦に続いて、代表最年少デビュー月にもう一花咲かせようと、エリア前か撃ったシュートがゴールポストに弾かれ、落ちてきたところを蹴り込んだ彼だったんですが、恨むべきはVAR(ビデオ審判)注進?ノーゴールとなって、ハーフタイムまでには2点しか取れませんでしたっけ。 それよりショックだったのは、まるで金曜の試合のデジャブのようにニコが44分、ピッチに座り込み、交代を要請。どうやら太ももを痛めたようで、後半頭からピノが入ったんですが、足首を痛めたアセンシオ、ヒザを捻ったオルモと一緒で、全治3、4週間となり、次にプレーできるのは10月の代表戦の頃になるかもしれないって、デ・ラ・フエンテ監督は良くても、出向元のクラブにとってはたまったもんじゃない?そんなこともあるため、モラタが後半は出ず、ホセル(マドリー)に代わってくれて、私もホッとしたんですが、後半、ゴール祭りを再開してくれたのは、奥さん同士が姉妹のマドリー勢だったんですよ。 そう、15分ぐらいしてジャマルとガジャ(バレンシア)がフェランとバルデ(バルサ)に代わった後の25分、カルバハル(マドリー)が右サイドから上げたクロスをホセルが頭で叩き込み、スペインは3点目をゲット。実はこのプレー、「後半が始まる前、ピッチのあの区画を利用しようとカルバハルと話したんだ。 Hemos encontrado muchos espacios ahí/エモス・エンコントラードー・ムーチョス・エスパシオス・アイー(沢山、スペースを見つけたからね)」とホセルも言っていたように、2人の連携の賜物だったんですが、マドリーの右SBはバルサの選手とも通じることができるよう。というのもその2分後にはフェランのパスでエリア内に入った後、またフェランに戻して、そのシュートで4点目が入ったから。 進んで32分、今度はフェランが右サイドから上げたクロスをホセルがvolea(ボレア/ボレーシュート)で撃ったボールは敵GKに弾かれてしまったものの、そこから粘って彼が出したtaconazo(タコナソ/ヒールキック)から、ガビに代わって、ピッチに入ったばかりのアレックス・バエナ(ビジャレアル)がシュート。それがゴールに入り、ジャマルに続いて、代表デビュー&代表初得点を達成するとはツイているじゃありませんか。そしてこの日の締めは38分。モラタからキャプテンマークを引き継いだロドリ(マンチェスター・シティ)が放ったキプロス守備陣の頭上を越えるパスに反応したフェランが自身2点目を挙げて終わったんですが、何せ彼は今季、まだバルサでも先発出場がないのに、途中から入って2ゴールを挙げていますからね。 代表に来たのも昨年のW杯以来ですが、この調子が続けば、デ・ラ・フエンテ監督も「No creo que podamos contar el mes próximo con Olmo y Asensio/ノー・クレオ・ケ・ポダモス・コンタル・エル・メス・プロキシモ・コン・オルモ・イ・アセンシオ(来月、オルモとアセンシオを当てにできるとは思っていない)」と言っていた10月の招集リストには最初から、名前があるのでは?そのまま試合は6-0で終わり、キプロスのケツバイア監督が、「こういう相手とプレーする時、ウチの勝利の可能性はゼロだ。自分のサッカーキャリアの中で一番長い90分だった」と言っているのを聞いたりすると、何かちょっと、気の毒になっちゃうんですけどね。いよいよ、次節はセビージャにスコットランドを迎え、首位との勝ち点差6を3に縮めるチャンスですし、その頃には大概、ルビアレス騒動の片もついて、ネーションズリーグ・ファイナルフォー王者の実力がダテではなかったことを証明できるといいのですが。 そして木曜には各国代表に参加していた選手たちもほとんど所属クラブに戻り、週末のリーガ戦の準備も本格的になってきたんですが、とりあえず、マドリッド勢の試合予定を見ていくことにすると。再開節から早速、平日試合をリピートするのは弟分のラージョで、金曜にアラベスをエスタディオ・バジェカスに迎えることに。フランシスコ監督のチームにも代表戦に行っていた選手が5人いて、イタリア戦で殊勲の1-1ドローを勝ち取ったGKディトリエフスキ(マケドニア)、レバンドフスキ(バルサ)のいるポーランドに勝ち、チームはグループ首位とユーロ初出場への道を進んでいるものの、出番がなかったバリウ(アルバニア)、地元ファンの相手国を侮辱するカンティコで1時間近くも中断したコソボ戦で2-0の勝利にスタメンとして貢献した新戦力、ラティウ(ルーマニア、ウエスカから移籍)、パテ・シス(セネガル)、ベベ(カーボベルデ)ら、アフリカ出張組も皆、ケガなく戻って来られたよう。 開幕2連勝の後、兄貴分のアトレティコに7-0の大敗したのが尾を引いて、続くベティス戦も1-0で落としてしまったラージョは現在、12位で、対するアラベスは同じ2勝2敗でありながら9位。これは単なるゴールアベレージ差故ではありますが、今、チーム状態より心配なのは、2週間前のように再び、金曜のマドリッドが集中豪雨に見舞われそうだということで、当日、スマホに一斉アラートが届かないことを祈るばかり。今回もファンの大半はソルで折り返し運転中のメトロ1号線の代わりに走っているバスでスタジアムに行かないといけませんしね。延期にならずとも、大雨になると、ダイヤが乱れそうなのはイヤですよね。 そして土曜に2番手としてプレーするのは午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、メスタジャでバレンシアと対戦するアトレティコで、こちらはすでにFIFAウィルス被害が2件発覚。トルコ代表に行っていたソユンチュ、木曜早朝に帰京したため、まだ練習に出て来ていないアルゼンチン代表勢のデ・パウルが痛みを抱えているそうで、いえまあ、居残り組でもサムエル・リノが火曜から、筋肉痛で個別メニューとなっているため、別に悪いのは代表奉公ばかりではないんですけどね。2ゴールを挙げてきたサビッチ(モンテネグロ)も疲労蓄積が激しいそうなんですが、折よく、夏の世界一周ツアー前日に脛骨にヒビが入ったヒメネスが丁度、復帰してきたのは不幸中の幸い? とはいえ、まだコケもメンフィス・デパイも個人練習でチームに合流していませんからね。シメオネ監督も中盤はレマル、サウール、マルコス・ジョレンテ、バリオスらでやりくり、前線はドイツとの親善試合でPKゴールを決めてきたグリーズマン、そしてバレンシアの正GK、ママルダシビリにジョージア戦でハットトリックを浴びせたモラタ一択でいくしかありませんが、アトレティコが最後に試合をしたのは遥か3週間前。ラージョ戦でのゴール運の良さが未だに続いているかは定かではありませんが、来週のCLラツィオ戦の後にはいよいよマドリーダービー到来ですからね。できれば、首位のお隣さんとの勝ち点差を5に保ったまま、メトロポリターノでの決戦に挑んでほしいときっと、ファンも思っているんじゃないでしょうか。 一方、マドリッド勢残りの2チームは日曜試合となり、まずは午後2時からコリセウム・アルフォンソ・ペレスにヘタフェがオサスナを迎えます。こちらも各国代表参加選手が二桁に昇る兄貴分とは違い、マドリッドを離れていたのはロサーノ(ホンジュラス)、アルデレテ(パラグアイ)、ジェネ(トーゴ)、マクシモビッチ(セルビア)と4人だけなんですが、サンティアボ・ベルナベウで後半ロスタイムまで、1-1で粘った後、ベリンガムに勝ち越しゴールを決められて悔しい思いをしてから、もう2週間も経っていますからね。先日、スタジアムにファンを招き入れ、華々しく入団プレゼンされた、空白期間の長かったグリーンウッド(マンチェスター・ユナイテッドからレンタル移籍)はともかく、オスカル・ロドリゲス(同セビージャ)、ディエゴ・リコ(同レアル・ソシエダ)はデビューの準備が整っているはずですし、何はなくても1部残留が目標の直接ライバル相手のホームゲームで勝っておかない手はないかと。 そして日曜午後9時(日本時間翌午前4時)にレアル・ソシエダ戦でトリを務めるのがマドリーなんですが、今のところ、代表帰り選手の負傷情報は聞こえてこず。それどころか、ベリンガムを始め、ロドリゴ(ブラジル)、バルベルデ(ウルグアイ)、チュアメニ(フランス)らは代表でゴールを挙げて気をよくしていますし、義兄弟関係を深めたホセルとカルバハスのコンビも怖いところ。いくら久保建英選手が4節グラナダ戦で2得点し、続く日本代表の親善ドイツ戦、トルコ戦連勝にも貢献と波に乗っていても、ここまで4連勝で首位に立っているマドリーに一泡吹かすのは難しいかと思いますが、さて。ビニシウスの復帰はまだとはいえ、メンディが回復したマドリーは、木曜にはヘタフェ戦の後、地下に折り畳み収納していたサンティアゴ・ベルナベウの芝のピッチを戻して、臨戦態勢を着々と整えています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.09.15 20:00 Fri

ユーロやW杯でなくてもヨーロッパ王者は強かった…/原ゆみこのマドリッド

「へえ、やるじゃない」そんな風に私が感心していたのは日曜日、現在、絶賛開催中のユーロ予選のアゼルバイジャン戦でベルギー勝利の1点を挙げたのがカラスコだと知った時のことでした。いやあ、彼はこの9月のparon(パロン/リーガの停止期間)が始まると同時にサウジアラビアのエル・シャバブに移籍。今はお隣さんのGKクルトワもヒザの靭帯断裂で長期療養中なため、あまりベルギー代表のことは気にしていなかった私ですが、カラスコは開幕から3試合をアトレティコのスタメンとして出場し、まだ新天地では1回もプレーしていませんからね。要はリーガの競争力レベルを保って、代表戦に挑んだとなれば、テデスコ代表監督が信頼して使うのもわかりますが、問題はこの先も彼が同じレベルでいられるのかということ。 実際、これはスペイン代表にとっても他人事ではなく、ええ、先週金曜、ジョージア戦で先発したラポールも8月にマンチェスター・シティからアル・ナサルに移り、当地のリーグですでに3試合プレー。もちろん、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーの準決勝イタリア戦、決勝クロアチア戦でもル・ノルマン(レアル・ソシエダ)とCBコンビを組み、11年ぶりとなるスペインのタイトル獲得に貢献したDFですから、今回もデ・ラ・フエンテ監督に招集されたのは納得とはいえ、こちらも10月以降の代表戦でリピートできるかは微妙かも。幸いこのジョージア戦では特に大きなミスもなく、というか、正直、スペインの攻撃陣ばかりが注目される展開だったため、その議論は先送りされることになったんですが…。 そう、水曜夜にジョージアのトビリシに到着し、翌木曜はボリス・パイチャーゼ・ディナモ・アレナで前日練習。その前にあった記者会見でも現在、FIFAにより停職中のスペイン・サッカー協会ルビアレス会長が女子W杯優勝の表彰式でやらかしたジェニ・エルモーソ(パチューカ)へのセクハラ事件の後、協会総会でそのルビアレス前会長に女子代表のビルダ監督と共に熱烈な拍手を贈りながら、自分だけ解任を免れたせいもあったんですかね。相変わらず、引きも切らないそちら関連の質問を全て、「Mañana tenemos un partido importantísimo/マニャーナ・テネモス・ウン・パルティードー・インポルタンティシモ(ウチには明日、非常に大事な試合がある)から、私たちはそれだけに集中している」という言葉でいなしていたデ・ラ・フエンテ監督だったんですが、ジョージア戦が何もかも不問に処されそうな程のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)勝利だったから、私も驚いたの何のって。 それも手違いで、選手たちのサッカーシューズやGKグローブなどが入ったトランクだけが一緒の飛行機で来ず、前日練習はボールなしで、普通のスニーカーでできるストレッチや体を動かすゲームばかりだったというのに、キックオフ直後から、スペインはチャンスを作りまくっているんですよお。しかもただの空脅しに終わらず、前半22分にはもう、アセンシオ(PSG)のクロスをモラタ(アトレティコ)が頭で叩き込み、早い時間に先制点を奪っているとなれば、選手たちのただならぬ意気込みが感じられるってもんじゃないですか。 でもこれはほんの序の口にすぎず、その6分後にはガジャ(バレンシア)からパスをもらったファビアン・ルイス(PSG)がゴール前に送ったボールをクリアしようとしたクベルクベリア(アル・オクフドッド)がオウンゴールし、スペインは2点目をゲット。いえ、残念ながら、モラタのスルーパスを撃ったファビアンのシュートがGKママルダシビリ(バレンシア)の手を弾き、ゴールに入った時はVAR(ビデオ審判)により、モラタではなく、ファビアンのオフサイドでノーゴールにされてしまったんですけどね。折しも大雨が降り始めた37分、今回の代表合宿では直前のオサスナ戦での接触プレーで右耳をザックリ。傷を縫合したホッチキスの針が取れないよう、黒いヘッドギア着用でプレーしていたガビ(バルサ)も発奮することに。 ええ、敵をすり抜けてエリア前まで上がると、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)にパスを送り、そのシュートで3点目が入ったとなれば、もう勝負は決まった?でも違うんです。相手が気落ちしたところに畳みかけたのはモラタで、その2分後、ファビアンとのワンツーでエリア内から撃ち込み、とうとう前半だけで0-4になるって、え?これ、リーガ3節でアトレティコが弟分のラージョに0-7の大勝をした時より、得点ペースが早くない?となれば、そのすぐ後、オルモに続いて、アセンシオもケガで交代を要請。予定より早い時間にニコ・ウィリアムス(アスレティック)と共にこの9月の招集リストの目玉、若干16才のラミネ・ジャマル(バルサ)がピッチに入り、ガビの持つスペイン代表最年少デビュー記録を書き換えることになっても全然、余裕ですって。 そして後半は選手3人を交代したジョージアですが、そのうちの1人、チャクベタゼが3分に放ったシュートを、うーん、ザーザー降りの雨のせいで手が滑ったんですかね。GKウナイ・シモン(アスレティック)が取りこぼし、1点を返されて始まったんですが、どうやらラージョ戦で2ゴール挙げ、調子に乗りかけながら、代表合宿直前の4節、セビージャ戦が外れの集中豪雨警報で延期となったのがよっぽど悔しかったんでしょうね。20分にはミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)のアシストから、モラタが再び決めて、とうとう代表初ハットトリックを達成。これには当人も「Cuando tienes grandes jugadores al lado es más fácil meter goles/クアンドー・ティエネス・グランデス・フガドーレス・アル・ラドー・エス・マス・ファシル・メテール・ゴーレス(横に偉大な選手たちがいる時はゴールを入れるのがずっと容易い)」と言っていたんですが、それって、しょっちゅう自分のオフサイドでゴールが取り消されるのはアトレティコのチームメートが悪いってこと? まあ、それは冗談ですが、おかげでますますセビージャ戦の延期がもったいなく思えたのはともかく、ジョージアのGKママルダシビリとはリーガ再開となるバレンシア戦でも対決しますからね。それだけにモラタが自信をつけてくれたのは有難いんですが、試合の方ではスペインのゴール祭りがいよいよ佳境に。ええ、22分にはウナイ・シモンが出したボールを受けたガジャがドリブルで上がり、繋いだニコが敵ゴール前まで侵入。6点目のゴールを挙げたかと思えば、28分にはそのニコがエリア内右奥から折り返したパスを合宿初日から懇意にしているジャマルがワンタッチでシュートして7点目を決め、デビュー戦でスペイン最年少得点選手にもなってしまうとは! いやあ、15才だった昨季4月にバルサのトップチームでデビューして、今季はリーガ戦でも先発を経験。U21以下、U19、U17のスペイン代表弟分たちの間で奪い合いになっていた彼は今回、両親の母国であるモロッコ代表の勧誘に対抗するため、飛び級でA代表招集されたという経緯もあるんですけどね。まさか、ここまで大人に引けを取らない実力の持ち主だったとなれば、私も舌を巻くしかありませんが、グループ内で曲者扱いされていたジョージアに1-7で大勝したスペインは一気に4位から2位に上昇。 おかげでデ・ラ・フエンテ監督にも「Me siento fuerte por el apoyo de mis jugadores/メ・シエントー・フエルテ・ポル・エル・アポジョ・デ・ミス・フガドーレス(選手たちに支持してもらえて、自分を力強く感じる)」と笑顔が戻ってきましたしね。要はジョージアのサニョル監督も「この結果はウチが素晴らしい選手のいる代表、最近、ネーションズリーグに優勝したばかりのチームと対戦したから」と言っていたように、今のスペインはスキャンダルにも負けない強さがあるってことなんでしょう。これでファンも一安心できたかと思いますが、彼らは試合後、その足で飛行機に乗り、マドリッドに帰京。 翌日にはヒザを捻ったオルモと足を打撲したアセンシオの代わりにフェラン・トーレス(バルサ)とジェレミー・ピノ(ビジャレアル)の追加招集が発表され、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で土曜夕方のセッションに加わっていますが、とにかく、火曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からの次の相手はグループ最弱のキプロスですからね。ロス・カルメネス(グラナダのホーム)でも沢山ゴールを挙げて、地元のファンを喜ばせてあげたいところですが、さて。その日は丁度、これまで5試合全勝、孤高のグループ首位のスコットランドもイングランドとの親善試合で一息つくため、現在、勝ち点9ある差を6に縮めるいいチャンスとなるんじゃないでしょうか。 そして同金曜にはこの夏、ユーロ2023で準優勝に終わった後、リケルメ(アトレティコ)やカメージョ(ラージョ)ら大勢が卒業し、代替わりしたU21スペイン代表もユーロ2025予選でマルタに0-6で大勝。ゴールラッシュを続けて堪能することになったんですが、ふと見ると、21才の若い身空でセルタからアル・アハリに移籍したガブリ・ベイガが2ゴールを挙げていたなんてことも。こちらも先行きが気になるものの、とりあえず、20才のバリオスが、コケが負傷中のアトレティコでと同様、立派にボランチを務めているのがわかったのは収穫だったかと。月曜にはスコットランドと対戦して、最初の2節を終えるU21ですが、まずは好スタートが切れて良かったですよね。 え、てことは今週末、私はずっと自宅でTV観戦ばかりしていたのかって?いやあ、1部のリーガ戦がないため、日曜にはこれ幸いと2部の弟分、レガネスをブタルケに応援に行ったんですが、トビリシとマドリッドはかなり離れているにも関わらず、こちらも試合途中から大雨が降ったり止んだりを繰り返す、不安定な天候でねえ。それでも開幕戦でアンドラに0-1と惜敗した後、3連勝中だったボルハ・ヒメンス監督のチームは今季まだ白星のないウエスカに勢いの差を見せつけ、前半42分にはミゲール・デ・ラ・フエンテ(アラベスからレンタル)がエリア内右奥から送ったラストパスをミラモンが決めて先制。 後半32分にもCKクリアからカウンターを発動し、敵エリアまでドリブルしたフランケサが2点目を挙げて、手堅く2-0で4連勝としたんですが、ちょっと残念だったのは、せっかく1部直接昇格圏の2位に上がったのに、翌日曜にはサラゴサがカルタヘナに勝って首位復帰。そのせいでプレーオフ圏の3位に落ちてしまったことでしょうか。そうそう、このレガネスの試合時間は丁度、RFEF1部(実質3部)のRMカスティージャのリナレス戦と重なっていて、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)ではお馴染みの2元中継を実施。ラウール監督のチームは途中、1度は1-1と引分けに持ち込みながら、後半41分に1点を奪われ、2-1の敗戦でまたしても今季初勝利を挙げられなかったなんて報も。 そう、ラウール監督は先週火曜に電撃解任されたビジャレアルのセティエン監督の後任として名が挙がっており、マドリーサイドからもRMカスティージャはフベニルA担当のアルベロア監督を昇格させればいいと、反対の声も出なかったため、金曜にはほぼ就任確実とまで言われていたんですけどね。それがどういう訳が、彼がチームと共にリナレス(スペイン南部)に向かって出発した土曜午後にはビジャレアルがパチェコ監督との契約を発表。せっかくのリーガ1部で腕試しをするチャンスを逃した上、チームも負けてしまうというのは当人にとって、ダブルショックだったかと。 ちなみにその土曜には他にもマドリー関連の残念なニュースがあって、いえ、この週末に始まるリーガF(スペイン女子1部)の1節は選手労組とラ・リーガの最低賃金交渉が、年棒2万3000ユーロ(約370万円)を主張する前者と2万ユーロ(約320万円)を譲らなかった後者の間でまとまらず、スト決行という流れになっていたんですけどね。RMカスティージャがアウェイゲームなのをいいことに、開幕ベティス戦が予定されていたエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノでプレーするマドリー女子を見ようと駆けつけた多くのファンは待っても待っても両チームが現れず、すっぽかしを喰らうことに。 それだけでなく、スペインの女子サッカーは混乱の極みで、ルビアレス前会長事件の煽りもあって、W杯初優勝の殊勲者であるビルダ代表監督が解任された後、後任に彼の下で第2監督と務めていたモントセ・トメ女史が昇格したものの、先日、サッカー協会の構造改革がなされるまで、代表招集を受けないと声明を出した23人のワールドチャンピオンを含む、81人の女子選手はその決意を翻さず。そのため、15日に発表が迫っている女子ネーションズリーグ(22日にスウェーデン戦、27日にイタリア戦)の招集リストが作れず、クラブへの事前通告もできずにFIFAの定めた期限が過ぎたため、いざ呼ばれてもその選手の所属クラブは参加を拒むことができるのだとか。 うーん、最悪、まだコロナ禍が尾を引いていた2021年の男子ユーロの準備試合前、ブスケツ(現インテル・マイアミ)の感染でA代表がプレーすることができず。当時、デ・ラ・フエンテ監督が率いていたU21代表メンバーがそのままA代表を名乗って、リトアニアとブタルケでプレーしたみたいな手も使えなくはないと思うんですけどね。栄えある女子W杯現王者として、恥ずかしい試合を見せる訳にもいきませんし、このネーションズリーグは来年のパリ五輪の予選も兼ねているのが辛いところ。日曜の夜になって、セクハラをジェニ・エルモーソ当人からも司法当局に訴えられたルビアレス前会長がとうとう辞表を提出したというニュースが入ってきたとはいえ、これが女子代表チーム再建のキッカケとなるかどうかはまだわかりません。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.09.12 01:00 Tue
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