週末は皆、試合があるけど…/原ゆみこのマドリッド

2023.04.05 21:00 Wed
©Atlético de Madrid
「楽観的でいいわよね」そんな風に私が感心していたのは火曜日、コパ・デル・レイ準決勝2ndレグ前日会見でアンチェロッティ監督がここ3回のクラシコ(伝統の一戦)でレアル・マドリーが3連敗していることについて訊かれ、「Mañana nos toca ganar a nosotros/マニャーナ・ノス・トカ・ガナール・ア・ノソトロス(明日はウチの勝つ番が回ってくるだろう)」と言っているのを聞いた時のことでした。いやあ、確かに今季のマドリーは昨年10月、サンティアゴ・ベルナベウでのリーガ・クラシコでこそ、3-1とバルサに完勝。

それがW杯を経て、年が変わってみれば、1月のスペイン・スーパーカップ決勝で1-3と負け、3月初旬のコパ・クラシコ1stレグもアセンシオのゴールがミリメートル単位のオフサイドVAR(ビデオ審判)判定で認められない不運もあったものの、ミリトンのオウンゴールで0-1の敗戦。代表戦週間直前のリーガ・クラシコでもカンプ・ノウで2-1と遅れをとり、とうとう勝ち点差12で逆転優勝を諦めなければならなくなったというのが3連敗の内容なんですけどね。何せ、チャビ監督も「Están acostumbrados a remontar/エスタン・アコストウンブラードス・ア・レモンタール(彼らは逆転するのに慣れている)」と言ってように、マドリーにはお家芸の根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)がありますからねえ。

近くは昨季のCL決勝トーナメント3連続逆転突破した試合を思い出せば、もうこれは理屈で説明できるようなものではなく、ただただ、「マドリーにはレモンターダのDNAが連綿と受け継がれている」という、当時者たちの言葉に頷くしかないんですが、折しも先週末のリーガ戦はどちらのチームもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で大勝。どうせなら、今季見納めとなる水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのクラシコでは華々しく撃ち合って、火曜に一足早く、アスレティックとの2ndレグ延長戦後半11分にパブロ・イバニェスが同点ゴールを挙げ、総合スコア2-1で準決勝を制したオサスナと当たる5月6日の決勝進出チームを決めてほしいものですが、果たしてどうなるんでしょうか。
まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったかもお伝えしていくことにすると、土曜はサン・マメスでヘタフェがアスレティックに挑み、コパで頭がいっぱいだった相手に降格圏と勝ち点3を維持する、殊勲のスコアレスドローを勝ち取っていた頃、私はブタルケにカルタヘナを迎える2部の弟分、レガネスを応援に。それがまた、しばらく行かないうちに7試合連続白星なし。直近は4連敗中という、6位の昇格プレーオフ圏到達どころか、残留争いに巻き込まれる恐れまで出てくる程の大スランプにチームが陥っていたせいでしょうか。

そう、まるでいつぞや、エスタディオ・バジェカスでブカネーロス(ラージョのウルトラグループ)がやっていたように、この日は試合がキックオフしても応援団のスタンドがガラガラだったんですよ。前半11分になって、ようやく入って来たんですが、まあこれは39分にカルタヘナのカレロがエリア内でボールを腕に当て、ハンドで得たPKをアルナイスが6試合ぶりとなるレガネスのゴールに変えてくれるのには間に合ったため、別にいいんですけどね。久々に得点を祝うことができて、ファンも一息ついたはずだったんですが、まさか後半、前節のマラガ戦を負傷欠場した柴崎岳選手がその日、ピッチでケガをしたウンダバレナと交代で入った後、試合もすでに終盤となった33分から、あんな悲劇が起きるとは!
ええ、フェレイラのクロスをオルトゥーニョにヘッドされ、同点ゴールを入れられただけだったらまだマシだったんですが、その3分後にはFK攻撃から、敵のカウンターを喰らい、ピッチを縦断したフランチュに勝ち越し点を奪われてしまったから、さあ大変。もうこれには速攻、スタンドから「Idiakez vete ya!/イディアケス・ベテ・ジャー(イディアケス監督、もう出て行け)」のカンティコが始まったんですが、それだけには留まりません。ロスタイム1分、オルトゥーニョのシュートはGKリエスゴが弾いたものの、ゴール前に守りに来ていたニヨムに当たってオウンゴールとなった日には、「Jugadores, merecenarios/フガードーレス、メレセナリオス(金目当ての傭兵選手)」と、批難の矛先はとうとう選手たちへも向かうことに。

結局、1-3の逆転負けで5連敗となったレガネスですが、週明けには降格圏と勝ち点差5の17位まで落ちてしまいましたからね。何せ、1部では先週末の試合の後、エスパニョールのディエゴ・マルティネス監督、バジャドリッドのパチェタ監督と低空飛行を続けているチームの指揮官が2人も解任。同様にイディアケス監督もかなり危うい状態だと思うんですが、2部は残り試合が1部より少なく、あと8試合だけなんですよ。そんな短期仕事では、引き受けてくれる指揮官がなかなか見つからないため、ギリギリ残留の線に懸けて続投もありえるんですが、お願いですから、来季は2部にマドリッド勢が1チームもないなんてことにはしないでくださいね。

え、そのバジャドリーのパチェタ監督解任の原因は翌日曜のマドリー戦が原因だったんじゃないかって?その通りで、お日様の燦々と輝く午後4時15分にキックオフだったサンティアゴ・ベルナベウでは、Semana Samta/サマナ・サンタ(イースター週間)のバケーションで訪れた大勢の観光客も大満足のゴール祭りが開催。いえ、「Empezamos en un 4-4-2 con Rodrygo y Benzema arriba/エンペサモス・エン・ウン・クアトロ・クアトロ・ドス・コン・ロドリゴ・イ・ベンゼマ・アリバ(ロドリゴとベンゼマを前線に置いて、4-4-2で始めた)」(アンチェロッティ監督)序盤はロケ・メサのシュートがゴールポストを直撃するなど、バジャヤドリーにもチャンスがあったんですけどね。

それを見て、「敵CBのプレスが上手かったから、ロドリゴをサイドに行かせて、アセンシオを自由にプレーさせた」アンチェロッティ監督の素早いシステム変更が功を奏し、22分にはアセンシオが抜け出して、エリア外から送ったパスをロドリゴがゴールに撃ち込むと、いよいよフィエスタがスタート。実際、これは前座のようなもので、29分からの7分間にはいよいよ真打の登場となりました。ええ、まずはビニシウスのクロスがゴール前でバウンド、かがんだ姿勢からヘッドして決めたベンゼマが、32分にはライン前からGKアセンホの守るゴール左隅に吸い込まれるゴール。更に36分にも今度はロドリゴが右から上げたクロスをジャンプしないchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)で叩き込んでいるって、こんな効率的なハットトリック、あっていい?

前半だけで4-0ともなれば、もう勝負は決まりですが、マドリーは後半にも飽くなきゴールへの執念を披露。もちろん、これには後半頭から選手を3人代え、1分にはオスカル・プラーノのシュートが前半のロケ・メサ同様、ゴールポストに弾かれたことから、再び、「Cualquier problema nos deshace como un azucarillo/クアルキエル・プロブレマ・ノス・デスアセ・コモ・ウン・アスカリージョ(問題が起きるとウチは角砂糖のように溶けてしまう)」(パチェタ監督)という状態になった、残留争い真っ只中にあるバジャドリーの協力もあったんですけどね。20分過ぎからベンゼマ、ビニシウス、アラバら、主力選手の温存を始め、ピッチにはアザールやバジェホなど、普段、あまり見られない選手が入った後の28分には、ロドリゴのパスからアセンシオが5点目をマーク。

おまけに後半ロスタイムなど、アセンホがゴールキックを3カ月ぶりの出場となるアザールに贈り、6点目のアシストをしてもらったルーカス・バスケスを「Me alegro mucho por él!/メ・アレグロ・ムーチョ・ポル・エル(彼のためにボクも嬉しいよ)」と喜ばせることに。いやあ、この6-0の勝利で何より良かったのは、水曜のクラシコに向けて、エースのベンゼマを始め、FW陣がゴールづいてくれたことだったんですが、いえ、カンプ・ノウでは0-2で十分なんですけどね。ただ、あちらも土曜には最下位のパブロ・マチン監督から、ベッカセセ監督に代わったばかりのエルチェに0-4と大勝しているため、量産体制でいるに越したことはありませんって。

そして日曜は珍しく、マドリッドの2強のホームゲームが被り、午後9時からのベティス戦に備えて、メトロでシビタス・メトロポリターノに向かった私だったんですが、アトレティコもこのところ、セビージャ、バレンシアにそれぞれ6点、3点を取って、ホーム2連勝していましたからね。お隣さんに負けないゴールラッシュを期待していた向きのファンも多かったかと思いますが、残念ながら、週1試合ペースになって以来、じっくり練習時間が取れるミッドウィークに磨いたワンタッチパスを景気よく繋いで攻めていた彼らながら、前半はGKルイ・シウバを破ることができず。

逆にサビッチが自陣エリアからのパスを敵目掛けて真っ直ぐ蹴って、アジョセにシュートされていたりしたんですが、幸い0-0のまま、ハーフタイムを迎えます。後半序盤、CKからのヒメネスのヘッドがゴールバーに嫌われると、うーん、こういう渋い展開となったW杯後のアトレティコは交代選手が活躍してくれますからね。シメオネ監督も14分から早速、まずはナウエル・モリーナ、レマルをデ・パウル、コレアと入れ代え、マルコス・ジョレンテを右SBに下げて、システム調整を行ったんですが、よくわからなかったのは23分にはCFモラタを19才のカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)、MFバリオスに代えてしまったこと。

だってえ、この日はオランダ代表で太ももをケガして帰ってきたメンフィス・デパイがお休みで、ベンチにはもうFWが1人もいなかったんですよ。おまけにモラタはスペイン代表2試合目のスコットランド戦でプレーしておらず、体力切れにはとても見えなかった上、その間、ペジェグリーニ監督は前線をホルハ・イグレシアス、アジョセから、ファンミ、ウィリアム・ホセにリフレッシュ。26分にジョレンテがルイ・シウバに弾かれた後、コケが蹴り込んだゴールもオフサイドで認められず、39分の最後の交代枠ではサウール、ビッツェルのMF2人が入るしかなったとなれば、今季は10月のCLクラブ・ブルージュ戦だけだったスコアレスドローを覚悟してしまったのは私だけではなかった?

でも奇跡が起こったんです!それは41分、「Necesitábamos encontrar algo diferente con un Betis bajo y Correa lo tiene/ネセシタバモス・エンコントラール・アルゴ・ディフェレンテ・コン・ウン・ベティス・バホ・イ・コレア・ロ・ティエネ(ウチは低い位置で守るベティス相手に何か違うものが必要だった。コレアはそれを持っている)」とシメオネ監督の期待を背負ってピッチに立っていた彼が、うーん、スタンドからはどうやってあれだけの敵選手をかき分けて、シュート態勢まで行けたのか全然、わからなかったんですけどね。当人に言わせると、グリーズマンからパスをもらった後、「ちょっと見て、ペッツェッラの動きを読んで、luego recorté y pateé porque estaba ya en el área/ルエゴ・レコルテー・イ・パテエ・ポルケ・エスタバ・ジャー・エン・エル・アレア(それから切り返して、もうエリア内にいたからシュートした)」のだとか。

それが見事に決まってくれたから、諦めかけていた場内のファンたちも大歓喜。ベンチから駆けつけた選手たちも一緒にスタンドになだれ込む勢いで盛大にお祝いしていましたが、こうなればもう残り時間、ロスタイムも入れての9分は守り倒すしかありませんって。シメオネ監督も先頭に立って、最後まで選手たちを励ますよう、ファンをアジっていたんですが、大丈夫。試合はそのまま1-0で終わり、GKオブラクもゴディンと並ぶ、アトレティコの外国籍選手として最多出場記録となる389試合目を無失点勝利で飾ることができましたっけ。

え、それにしてもアトレティコ8年目と長い選手なのにこれまで絶対レギュラーにはなれず、3月の代表戦週間も遥々アルゼンチンまで行きながら、W杯優勝記念親善2試合で出場機会がまったくなくても決して不貞腐れることはなし。「No es nada fácil, uno siempre quiere jugar, pero el míster decide/ノー・エス・ナーダ・ファシル、ウノ・シンプレ・キエレ・フガール、ペロ・エル・ミステル・デシデ(誰でも常にプレーしたいものだから、全然簡単じゃないよ。でも決めるのは監督だ)。前線にはポジション争いがあるから、自分にできるのは常にプレーする準備をしておいて、チームメートを助けることだけさ」というコレアは凄く、健気じゃないかって?

そうですね、実際、今季はアトレティコの交代選手がゴールを挙げるのはもう14回目と、今のチームはそれだけ皆、試合に勝つことに集中しているということでしょうが、ホント、返す返すもこの結束状態が昨年中に現れてくれていればねえ。そうであれば、ファンも2週間おきでなくて、もっと頻繁にCLなり、ELなり、コパなりでメトロポリターノに応援に来られたはずでしたが、まさに後悔先に立たず。今はリーガで2位のお隣さんとの差が勝ち点5から広がらず、4位のレアル・ソシエダとは6差に、5位のベティスとも9差になって、来季のCL出場権ゲットがほぼ確実になってきたのを喜ぶしかありません。

そしてもう1つの弟分、ラージョは月曜試合でバレンシアと対戦したんですが、せっかく前半9分にはアルバロ・ガルシアのクロスをコメサニャが決めて、メスタジャで先手を取りながら、後半36分にはサムエル・リノのヘッドがバリウの腕にエリア内で当たったとして、VAR注進でペナルティを取られてしまうことに。今季7回PKをもらいながら、4回も失敗しているイラオラ監督のチームとは違い、クライファールトがしっかりPKを決めたバレンシアと1-1の引分けで終わったんですが、これで彼らの白星なしもとうとう7試合目。いえ、7位のアスレティックと同じ勝ち点の8位というのは変わらないんですが、何せ次節の日曜はホームに兄貴分のアトレティコを迎えないといけないですからね。そこを越えるまで、再び勝利を掴むのは難しそうですが、目標の残留達成まではあと勝ち点3程というのは気休めになりますでしょうか。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly