こんなに差が出る土日も珍しい…/原ゆみこのマドリッド

2023.03.07 22:00 Tue
珍しくミックスゾーンで喋っていた柴崎選手[写真=原ゆみこ]
珍しくミックスゾーンで喋っていた柴崎選手[写真=原ゆみこ]
「ついにゆとりのミッドウィーク到来だわ」そんな風に私が喜んでいたのは月曜日、今週の予定をチェックしていたところ、リーガ次節が始まる金曜まで何もないことに気がついた時のことでした。いやあ、一応、木曜にはEL16強対決に出場するスペイン勢、セビージャ、レアル・ソシエダ、ベティスがそれぞれ、フェネルバフチェ、ローマ、マンチェスター・ユナイテッドと、コンフェレンスリーグ16強対決でもビジャレアルがアンデルレヒトと対戦するんですけどね。マドリッド勢が絡んでいる試合ではないため、どこか親切なTV局がオープン放送してくれるなら、チラ見してもいいかもぐらいの気分でいられるのは一体、いつ以来のことだったか。

といっても実際、今年になって週中もずっと戦っていたのは1チームだけで、ええ、弟分のラージョとヘタフェは早々にコパ・デル・レイから敗退。アトレティコも準々決勝でお隣さんに負けてしまった上、昨年中にヨーロッパの大会からも完全撤退していますからね。要は年末のリーガ再開から、コパに加え、スペイン・スーパーカップ、クラブW杯、それに伴うリーガの順延試合をこなし、更にCL決勝トーナメントも始まったレアル・マドリーだけが何と、10週間連続となる週2試合ペースとなっていたんですが、幸いなことにCL16強対決は2週に渡って開催。リバプール戦2ndレグは来週水曜に設定されているため、ようやく今週はアンチェロッティ監督のチームだけでなく、ファンも一息つけるのは助かった?
まあ、それはともかく、先週末のリーガのマドリッド勢がどうだったかをお伝えしていくことにすると、うーん、今季は1部4チームが2つずつ、ホーム、アウェイ戦に均等に分かれて開催されないせいか、私も1週間おきに梯子観戦三昧の週末を過ごしているんですが、これ程、土日で温度差がある節も珍しい。ええ、まず土曜は寒くはあるものの、お日様が眩しい午後2時のコリセウム・アルフォンソ・ペレスでのヘタフェvsジローナ戦でスタートしたんですが、いや、驚かされました。だってえ、また降格圏の19位に逆戻りしていた弟分が開始早々2分、GKガッサニガのゴールキックをムニルが奪い、ボルハ・マジョラルにパス。エリア内右奥から彼が出したラストパスをエネス・ウナルが撃ち込んで、先制点を奪っているんですから、物凄い速攻じゃないですか。

ただ、前節のビジャレアル戦では前半9分にやはりウナルが先制ゴールを挙げながら、最後は2-1で負けていたため、これだけでは全然、安心できなかったんですが、この日のヘタフェはまるで人が変わったかのように効率的。ええ、14分にはハビエル・エルナンデスがエリア内でハンドを犯し、先日の弟分ダービー、ラージョ戦では同僚のボルハ・マジョラルに頼まれて、PKを譲ったウナルも第1キッカーの本分をまっとうすることに。2点目を追加すると、43分にはマジョラルも自力でエリア前からシュートを決め、前半だけで3点も取ってしまうとは、盆と正月が一緒に来たとはまさにこのこと?

ただ、どうやらこれはミチェル監督の話を聞くと、「ウチは前半30分までに70%のドゥエルで負けていて、mi cabeza me decía 5-2-3 y no lo he hecho/ミ・カベサ・メ・デシア・シンコ・ドス・トレス・イ・ノー・ロ・エ・エッチョー(自分の頭は5-2-3のフォーメションにするべきと言っていたが、そうしなかった)」というジローナの戦略ミスのおかげもあったようなんですが、それでも相手はここ2試合で9点も挙げて2連勝しているチーム。一気に3人選手を代えた後半には立て直し、9分にはツィハンコフのアシストでカステジャーノスがゴールを決めると、35分には昨季まではRMカスティージャにいて、トップチームの試合にも何度か出場したことがあるミゲール・グティエレスがエリア前から、選手の密集地帯をスルリと抜けてゴールに収まるシュートを放ち、1点差まで迫られてしまったんですが、大丈夫。
ファンがドキドキして見守る中、そのまま3-2で試合は終わり、ヘタフェはホーム2連勝とすることに。ただ、今は下位6チームが勝ち点3差内でひしめいているおかげで、彼らは再び、降格圏外、それも15位まで一気に上昇することができたんですが、まだまだ安心はできません。ええ、他の試合の結果で24節は結局、16位で終わり、しかも17位のセビージャ、降格圏18位のアルメリアとも同じ勝ち点となれば、金曜開催のカディス戦でも頑張って勝ち点を貯めないと、またレッドゾーンに逆戻りする破目にもなりかねませんからね。私もこのままウナルとマジョラルのゴール運が続いてくれることを祈るばかりではありますが…。

そして土曜は余裕を持って、午後9時にシビタス・メトロポリターノに向かった私ですが、いやあ、まさかこちらでは盆と正月どころじゃなく、クリスマスとサマナ・サンタ(イースター週間)が一緒に来たようなお祭りを見ることになるとは!いえ、元々、このセビージャ戦では故ルイス・アラゴネス監督が残した、アトレティコの指揮官として最多記録となる612試合をシメオネ監督が613試合に更新することから、キックオフ前にその数字が入った記念ユニをアラゴネス監督の息子さんがピッチで贈呈。その額縁と再婚したカルラ・ペレイラさんとの間に生まれた2人の幼い娘さんだけでなく、前妻との長男、今季からナポリでプレーしているジョバンニ・シメオネも丁度、前日にラツィオ戦を済ませ、週末まで試合がなかったせいでしょうかね。

父親の偉業を称えるために駆けつけ、一緒にポーズするなど、確かにその時からお祝いムードではあったんですけどね。試合が始まると、序盤は相変わらず、応援団ストが続行中だったため、スタンドは静かだったんですが、セビージャのエン・ネシリやラキティッチ、グデリなどが試し撃ちした後の23分、グリーズマンの送ったスルーパスから、メンフィス・デパイがGKボノとの1対1を制して、先制点を挙げてくれたから、場内も沸いたの何のって。しかもそれだけでなく、デパイはその3分後にも今度はジョレンテからもらったボールをエリア前から決めて2点目もゲット。いやもう、初先発でこの働きぶりとは、またしてもアトレティコに最高の贈り物をしてくれたバルサに感謝するファンも多かったのでは?

ただ39分にはヒメネスの油断が祟って、ゲイエにエリア内奥からラストパスを出され、エン・ネシリに1点を返されたため、前半は2-1とまだ先の読めないスコアで終わったんですけどね。本格的な祝祭が始まったのは後半8分、ロングボールをグリーズマンが頭で落とし、コケがそれを戻したところ、エリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)が決まってからでしょうか。ええ、アトレティコにいた最初の5年間、シメオネ監督のおかげで一流選手として開花したものの、何を思ったか、4年前にはバルサに移籍。そちらでの2シーズンが上手くいかなかった後、再び迎え入れてくれた彼に物凄い恩を感じている当人も真っすぐ、シメオネ監督のところまで走って、抱きついてお祝いしていましたっけ。

「Lo que es un día importante para él es un día importante para mí/ロ・ケ・エス・ウン・ディア・インポルタンテ・パラ・エル・エス・ウン・ディア・インポルタンテ・パラ・ミー(彼にとって大事な日はボクにとっても大事な日)。この試合をマジカルなものにしたいという大きな願望があった」とグリーズマンも後で話していましたが、いや、そのフラッシュインタビューにシメオネ監督が乱入し、彼の頬にキスしていたのはもしや相思相愛?「人としてのグリーズマンが好きだし、サッカー選手としてはもっと評価している。El beso era más para el futbolista/エル・ベソ・エラ・マス・パラ・エル・フトボリスタ(キスはサッカー選手としての彼へのもの)」(シメオネ監督)だそうですが、実はシメオネ教の忠実な信者はグリーズマンだけではなかったんですよ。

ええ、デパイとレマルがモラタとバリオスに代わった後の24分、今度はレマルのエリア内右からの横パスをバリオスが流し、ファーサイドにいたカラスコが決めて4点目が入ったからですが、彼もオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の解説者から、「hombre equivocado/オンブレ・エキボカードー(間違えている男)」と再三、言われる程、残念なプレーをしながら、シメオネ監督は辛抱強く、使ってあげていましたからね。前節のマドリーダービーでヒザの靭帯を断裂したレイニウドが今季、もう出られない中、左のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)としてのカラスコの存在は貴重なため、このゴールが自信回復に繋がるんじゃないかと私も嬉しかったんですが、27分には出場停止だったナウエル・モリーナの代わりを務めていたジョレンテがゲイエをエリア内で引っかけてPKを献上するという逆境も。

ただ、それすらも最近、絶不調に陥っているセビージャには利用できず、ラキティッチがゴールポストに当ててしまったんですが、この頃になるともう、アトレティコの勢いは留まるところを知らず。31分にはモラタが1度はボノに弾かれながら、こぼれたボールをネットに押し込むと、ロスタイムにも敵DFのクリアからシュートを決め、doblete(ドブレテ/1人で1試合2ゴール)達成となれば、スタンドのファンが”Ola(オラ/ウェーブ)”を始めてしまったのも無理はない?6-1の勝利という滅多にないgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)には、プレスルームに向かうエレベーターで一緒になったラジオの実況記者も「こんなにゴールを叫んだ試合は覚えていない」と漏らしていましたが、さもありなん。そう、ここ6試合、ずっと1点しか取っていなかったアトレティコがいきなり爆発するなんて、一体、誰が予想できたでしょう。

え、シメオネ監督のお祝いのために選手たちがこんなにも奮起するなら、もう今季、メトロポリターノでの残り7試合、毎回、最多試合記録更新をピッチで祝えば、アトレティコは爆勝街道まっしぐらじゃないかって?うーん、そうなったら嬉しいんですが、惜しむらくはこの強さを昨年中に発揮できなかったこと。今となってはこの日の勝利でレアル・ソシエダを追い越し、勝ち点差1で3位に上昇したことぐらいしか、喜べないのはちょっと淋しいかと。ただ翌朝、行きつけの売店に行ったところ、アトレティコ大勝利を一面にしたASがすでに完売。F1がトップだったマルカ(どちらもスペインの大手スポーツ紙)は残っていたところ見ると、少なくともファンの慰めにはなったんじゃないかと思いますが、来週月曜のジローナ戦でも彼らのゴール力は持続するんでしょうかね。

そしてマドリッド勢のゴールを9本も楽しめた土曜と完全に対照的だったのが日曜で、ええ、天気までこの日は変わって、ブタルケでのレガネスvsイビサ戦が終わる頃には雨も降り始め、もう寒かったの何のって。おまけに2部最下位の相手に後半19分、CKをクリアしたボールをボガスに決められ、いくらエースのアルナイスが出場停止だったとはいえ、その1点を最後まで返せず、0-1で負けてしまうようでは、やっぱりレガネスで柴崎岳選手が1部昇格するのは今季も難しい?

ええ、ここ4試合、2分2敗と白星のないイディアケス監督のチームはこれで10位となり、プレーオフ圏の6位まで勝ち点10と遠ざかってしまったからですが、次に向かったエスタディオ・バジェカスでも私はラージョのゴールを見ることはできず。ええ、前半はアルバロ・ガルシアのシュートがゴールポストに当たるという、惜しいチャンスもあったものの、後半、早めにカメージョから、RdT(ラウール・デ・トマス)に代えても全然、シュートが入らないのでは、悪天候にも関わらず、スタンドを満員にしたファンもガッカリだったかと。相手のアスレティックも終盤にニコ・ウィリアムスが枠を直撃していたため、0-0で終わって不幸中の幸いだったとも言えますが、もうこれでラージョも3分け1敗で4試合白星なしですからね。

そのせいでとうとう、ビジャレアルに抜かれて7位に落ちてしまった上、月曜には8位のオサスナに勝ち点差1に迫られてしまったんですが、イラオラ監督にとって、気になるのはむしろ、ここ最近、下位チームが勝ち始め、残留ラインが当初の見込みの勝ち点40ではなく、42辺りまで上がりそうなことの方だったよう。とりあえず、あと7ポイント稼いで、そこに到達するまでは、来季のヨーロッパの大会出場権のことは考えられないそうですが、まずは土曜のセルタ戦から、巻き返しを図ってほしいところです。

え、最悪の日曜を仕上げしてくれたのはマドリーだったんじゃないかって?その通りで、寒さに耐えかねて、エスタディオ・バジェカス近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に緊急避難した私が、熱いコーヒーを飲みながら見ていたベティス戦の序盤にはベンゼマのFKから、ゴールが入ったんですけどね。ここ数試合、不調を疑われていた当人も盛大に祝っていたんですが、VAR(ビデオ審判)のモニターチェックで主審が壁に入っていたルュディガーの腕にボールが当たり、軌道を変えていたことを確認し、ノーゴールにされてしまうとはツイていない。

そこでお店を出て、試合の後半を自宅近くのバルで見るべく、メトロで移動したんですが、幸か不幸か、前半の残りは大したこともなかったよう。それどころか、最後までマドリーは点を取ることができなかったんですが、もしや再開後7分にボルハ・イグレシアスの至近距離シュートをGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)せず、リードされていたら、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神が発動して、結果は変わっていた?

いやあ、終盤など、大攻勢をかけていたマドリーでしたが、アンチェロッティ監督も「En este momento nos falta eficacia/エン・エステ・モメントー・ノス・ファルタ・エフィカシア(今のウチは効率性に欠けている)。余分なドリブルやパス、多すぎるワンツー」と嘆いていたように、15本もシュートを撃ちながら、1点も取れないって、いや、お隣さんなどではよくあることですけどね。結局、試合はスコアレスドローで終わったんですが、前節のダービーでの引分けとは違い、この日はバルサがバレンシアに勝っていたため、とうとう首位との勝ち点差が9まで拡大することに。

リーガ逆転優勝もまた、絶望的と評されるようになってしまったんですが、今年になって初めてフリーのミッドウィークを迎えるマドリーはこの土曜のエスパニョール戦でシュート精度を取り戻すため、バルデベナス(バラハス空港の近く)でじっくり練習することができますからね。その先にはリバプール戦2ndレグも控えているだけに、ここ3試合、アトレティコ戦で18才のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)、アルバロ・ロドリゲスがヘッドで挙げた1点しか取れていないという、ゴール日照りは早いところ解消するに越したことはありませんよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。



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