試合の多い週末だった…/原ゆみこのマドリッド

2023.02.21 23:55 Tue
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©Atlético de Madrid
「あそこまで無茶苦茶になっても勝てるんだ」そんな風に私が目を丸くしていたのは月曜日、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでのヘタフェvsバレンシア戦が終わった時のことでした。いやあ、ダントツ最下位のエルチェは別格として、降格圏残り2つの順位を占めていたチームの最弱対決は結局、後半37分にCKから2人がヘッドで繋いだ後、ゴール前でボルハ・マジョラルが蹴り込んで、キケ・サンチェス・フローレス監督のチームが虎の子の1点をゲット。今年になって初の白星を導いた当人も前回のホームゲーム、ラージョとの弟分ダービーでPK失敗のミスをファンの前で償うことができ、久々にスタンドもお祝いムードに包まれたんですけどね(最終結果1-0)。

そこに至るまでが恐ろしい展開で、とりわけ0-0まま、後半が進むにつれ、両チームはずっと勝てていない者特有のパニック状態に突入。ええ、どこぞの兄貴分もよく「パスが3度も続かない」と、ラジオの実況などでけなされることが多いんですが、こちらはそれどころではなく、自分が蹴っただけでジ・エンド、パスにすらならず、ボールが行ったり来たりという恐ろしい光景を見せられたため、場内には絶望感すら漂っていたんですが、たった1度、ゴールが入るだけでこうも世界が変わるとは!

おかげでヘタフェはバラハ新監督のデビューしたバレンシアを19位に突き落とし、アルメリア、カディスに勝ち点22で並ぶと、ゴールアベレージ差で一気に16位の降格圏外にジャンプアップ。とはいえ、できれば次はもう少し、プロサッカーらしいプレーをして勝ってくれたらと思ってしまうのはきっと、私だけではなかった?
ま、それはともかく、先週末のマドリッド勢のリーガ戦も振り返っていくことにすると、土曜に私が訪れたブタルケでのラス・パルマス戦は丁度、綺麗な夕日が見られる時間帯の試合で、スタンドを埋めたファンはクラブ創設25周年をお祝いする旗を振ってチームをお出迎え。そのレガネス最初の公式戦に出場したOBが何人も駆けつけて始球式をするなど、どこかお祭り気分で始まったんですが、彼らは早くも前半16分、不運に見舞われてしまったんです。というのもキャプテンのFWファン・ムニョスがシュートしようとした際、GKバジェスの胸を蹴ってしまい、レッドカードで一発退場してしまったからですが、実は彼らが退場者を出すのはこれで3試合連続のこと。

そう、前回のホームゲーム、スポルティング戦でこそ、柴崎岳選手が前半35分にレッドカードを受けたものの、早い時間にファン・ムニョスが奪っていた1点を守りきり、勝つことができたんですが、前節ラシン戦ではアルナイスのゴールで2-1としたすぐ後にカスミが退場。反撃ムードに水を差され、そのまま負けていたんですが、何せ、この日は2部の首位チームが相手でしたからね。レガネスが数的劣勢に耐えていた46分には、ジョナンタン・ビエイラがラバを乱暴なタックルで倒し、一旦はレッドカードが出されながら、VAR(ビデオ審判)注進により、イエローカードになってしまったなんてこともあり、疲れの出る後半が怖かったんですが…。

こうも退場が続くと、レガネスも10人でプレーするのに慣れてきたんでしょう。敵に効果的な攻撃を許すことなく、後半23分にはこの冬、レアル・ソシエダからレンタルしたFWカリカブルを投入。ちょっとだけ攻勢に出ると、ロスタイムにはフェデ・ビコを入れて、どうにか1点を奪おうと試みたんですけどね。結局、両チーム共、最後までゴールは生まれず、試合は0-0で終わったんですが、最近は昇格プレーオフ圏6位まで勝ち点7と停滞期に入ってしまったのは少々、残念だったかと。とりあえず、次のミランデス戦では退場ラッシュに終止符を打って、再び上昇気流に乗ってくれることを期待しています。

そして急いで自宅付近まで戻り、オサスナvsレラル・マドリー戦の前半終了間際に何とか、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に辿り着いたんですが、おやおや。まだ得点がなくて良かったとホッとしたのも束の間で、エル・サダルのスタンドから随分、大きなpito(ピト/ブーイング)が聞こえると思いきや、どうやら原因はモイ・ゴメスとビニシウスの諍いにあったよう。せっかく先日のクラブW杯ではMVPももらったというのに国内戦に戻った途端、またこの始末では、後でクルトワも「キックオフ前の黙祷の時もhijo de puta/イホ・デ・プータ(娼婦の息子という定型の悪口)と叫ばれていたし、Vinicius muérete/ビニシウス・ムエレテ(ビニシウス、死んじまえ)ってカンティコもあった」と告発していたんですが、ホント、このアウェイ戦でのビニシウスヘイト、留まるところを知らないようです。

その影響もあったか、後半になってもピッチでは拮抗した展開が続いていたんですが、ビニシウスにはツキもなかったですよね。ええ、後半6分、アラバからスルーパスをもらい、GKエレーラをかわして決めたゴールはオフサイドで認められず、11分にはせっかくエリア内で1対1となりながら、シュートを撃つ前にボールを奪われてしまったり、28分にはウナイ・ガルシアがクリアミスしたボールを拾ってシュートしたものの、エレーラがparadon(パラドン/スーパーセーブ)。この日はベンゼマがお休みだったため、このままでは首位バルサとの差を1日だけでも勝ち点5に縮めるという、マドリーの目論見もご破算になりかねないと私もイライラしていたところ…。

でも大丈夫。34分、さすがにこうも失敗が続くと、その日は自分のシュートでは決まらないとビニシウスも悟ったか、エリア内左奥から折り返すと、ゴール前に突っ込んできたバルベルデが軌道を変え、とうとう先制点を挙げてくれたんです!いえ、その後も43分にはモドリッチが自陣から放ったスルーパスを直前にロドリゴと交代でピッチに入った18才のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)、アルバロ・ロドリゲスがビニシウスに送り、そのシュートが決まって追加点かと思われたシーンもあったんですけどね。

それもVARでアルバロがオフサイドとされてしまったため、最後までビニシウスのゴール運は変わらなかったんですが、驚かされたのは12日までU20南米選手権のウルグアイ代表に参加、5得点して、チームを準優勝に導いたルーキーのハングリー精神だったかと。ええ、ロスタイムにはエリア前でディエゴ・ガルシアからボールを奪うと、同じく途中出場のアセンシオにラストパス。こちらはオフサイドもなく、そのシュートで2点目が入ったんですが、うーん、カンテラーノと言えば、クラブW杯準決勝アル・アハリ戦で最初に触ったボールをゴールに入れたアリバスも印象的ではありましたけどね。

ただ、あちらはすでにトップチームでの出場経験があったのと対照的に、アルバロはこれが正真正銘のデビュー戦。それもたった10分弱プレーしただけで、アンチェロッティ監督に「Si se va a quedar en el primer equipo es algo que tenemos que evaluar/シー・セ・バ・ア・ケダール・エン・エル・プリメール・エキポ・エス・アルゴ・ケ・テネモス・ケ・エバルアル(トップチームに残るかどうか、評価しないといけない)。ラウール(RMカスティージャ監督)と話すつもりだ」と言わせてしまうとは一体、どんな逸材なのか、興味が沸いたファンも多かったのでは?

おかげでマドリーが0-2で勝利できたのは幸いでしたが、残念ながら、バルサも翌日曜にカディスに勝ったため、勝ち点8差は変わらず。それより辛いのは今週も彼らの過密日程は続き、もう火曜午後9時(日本時間翌午前5時)にはCL16強対決リバプール戦1stレグという試練が到来することかと。ええ、オサスナ戦の後、アンチェロッティ監督のコーチライセンスを懸けた今季10得点はこの日でもう12得点となり、とっくにクリアしたものの、今後は20得点を目指すように言われているという、体力があり余っているようなバルベルデでさえ、「Se va notando el cansancio de tantos partidos esta temporada/セ・バ・ノタンドー・エル・カンサンシオ・デ・タントス・パルティードス・エスタ・テンポラーダ(今季、これだけ試合をこなしているせいでの疲労が出てきた)」と弱音を吐いていたぐらいですからね。

それだけに彼らが日曜もバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でセッション、インフルの治らないクロース、急性胃腸炎を患ってパンプローナにも行かなかったチュアメニを除いて、月曜にはもうリバプールに移動。しかも疲労傾向にあるベンゼマのヘルプができるようにと、その遠征メンバーにも入った、ブレークの兆しを感じるアルバロ、そしてエル・サダルのベンチにいたアリバスなど、日曜夕方に同じ敷地内にあるアルフレド・ディ・ステファノでのRMカスティージャvsリナレス戦(RFEF1部/実質4部)に出場しているんですよ。ええ、前者はアンチェロッティ監督とラウール監督の取り決めで60分間だけプレー、後者はフル出場してチームの2点目を挙げ、2-0の勝利に貢献していたなんて聞くと、ただただご苦労様としか言えないんですが、カンテラーノは若いから何てことない?

そんなマドリーがスペイン勢唯一の生き残りとして、昨季決勝の相手だったとはいえ、今季はCL出場圏まで勝ち点7差の8位という絶不調のシーズン、只中にあるリバプール相手にどんな戦いを見せてくれるのかは火曜のお楽しみに取っておくことにして、今は話を先週末のリーガに戻さないと。日曜の部は午後4時15分、いきなり春の陽光が降り注ぐようになったエスタディオ・バジャカスでのラージョvsセビージャ戦からスタートした私だったんですが、天候に恵まれたせいもあったか、キックオフ前から、スタンドのかなり大きな面積を占めるビジターファンもラージョファンもエンジン全開で応援。

それを見るだけで、先週は風邪のせいでウツっぽかった私もウキウキしてきたぐらいだったんですが、ラージョのチャンスは開始早々、カメージョのシュートがGKボノに止められたぐらい。それどころか、29分には自陣エリアからヘッドでクリアしたボールをスソにエリア前から撃たれ、更にそれをクリアしようとしたバレンティンが軌道を変えてGKディトリエフスキを破り、セビージャに先制点を奪われてしまうという不幸の二乗に見舞われたから、たまったもんじゃありません。

いやあ、何せ、その日は次の時間帯にアトレティコvsアスレティック戦が控えており、タクシーに同乗できるかと当てにしていた顔見知りのイギリス人記者も前日のオサスナ戦から戻るのが遅れて来ておらず。よって、0-1でリードされたラージョを見捨てて、ハーフタイムにはバジェカスを出ざるを得なかった私でしたからねえ。ただ、メトロでの1時間強の移動中、ずっとインターネットでオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況を聞いていたところ、決して力負けしていた訳ではなかった彼らは後半20分、イシの蹴ったCKをルジューヌがヘッドで決めて同点に追いつくことに成功。

そこから両チーム、前線のリフレッシュが始まり、ラージョはトレホをRdT(ラウール・デ・トマス)に、セビージャも木曜のEL16強進出プレーオフPSV戦1stレグで先制点を挙げていたエン・ネシリを投入したんですが、奇しくも終盤にその2人が決めたゴールは揃ってオフサイドで認められないことに。結局、1-1で引分けて、ラージョは前節の弟分ダービーに続き、「Hemos conseguido dos puntos, que no parecen mucho, pero sí que nos acercan al objetivo/エモス・コンセギードー・ドス・プントス、ケ・ノー・パレセン・ムーチョ、ペロ・シー・ケ・ノス・アセルカン・アル・オブヘティボ(ウチは勝ち点2を稼いだ。沢山には見えないが、目標達成へと近づけてくれる)」(イラオラ監督)ことで満足しないといけませんでしたっけ。

え、これで残留見込みラインの勝ち点40まであと6に迫った彼らだけど、EL出場圏内の6位キープが叶ったのは兄貴分の援護射撃も大きかったんじゃないかって?その通りで、まだ夕日が残るメトロポリターノに余裕を持って到着すると、折しもクラブ創設125周年を迎えたアスレティックをそのマドリッド支部、まさに弟分として誕生したアトレティコが第1ユニ着用権を相手に譲って祝福。カンテラの女子たちが花道を作り、旗を振って迎える中、選手たちが入場するのや、更に両チームでプレーしたOB、ハビエル・イルレタ、フリオ・サビーナ、ハビエル・クレメンテ氏といった面々が始球式に出て来るのも見ることができたんですが、あれ?地面に貼ってあるアトレティコの紋章を平気で踏んでいくOBが結構、多かったのは何故?

ちなみに試合の方は前半は両者無得点で、いえ、アトレティコはカラスコが2度、シュートをレギュラーGKのウナイ・シモンではなく、次の次の試合、3月1日に迎えるコパ・デル・レイ準決勝オサスナ戦1stレグに備えるため先発したアギレサバラにセーブされたり、アスレティックもダニ・ガルシアがフリーのシュートを天高く外したりとチャンスがなかった訳ではないんですけどね。スコアが動いたのはかなり遅くて、後半もコレア、デ・パウルがモラタ、バリオスに、カラスコがメンフィス・デパイにとシメオネ監督が前線のテコ入れを行った後の28分になってのこと。ええ、ピッチに入ったばかりのデパイと連携したグリーズマンがドリブルでエリア内に入り、斜めに突き刺さるgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めてくれたんですよ!

その途端、すでに3試合目となる応援団ストのせいで、それまでお隣さんのサンティアゴ・ベルナベウでよくあるような静けさに包まれていたスタンドが大爆発。歓喜の渦が生まれたんですが、うーん、この日は応援団に属さない一般のファンも工夫して、リード役がいなくても、最後まで歌い切るまで続くクラブ歌を合唱したりと、それはシメオネ監督も「Vi un cambio, la gente estuvo más cerca que otros partido y conectó/ビ・ウン・カンビオ、ラ・ヘンテ・エストゥーボ・マス・セルカ・ケ・オトロス・パルティードー・イ・コネクト(変化があったのを見た。他の試合よりファンは近くにいて、私たちと繋がっていた)」と評価していたんですけどね。

加えてキックオフ前の旗振り役に招集されたカンテラの女の子たちがスタンド上段から、声を揃えてずっと応援してくれていたんですが、如何せん、女児の声量では場内すべてのファンたちを牽引するにはとても足らず。相手が12試合、アトレティコに勝っていないバルベルデ監督のアスレティックだったこともあり、そのまま1-0で勝利した後、ピッチインタビューでグリーズマンも「応援ストの問題はボクらにも悪影響を与えている。Ojalá lo puedan arreglar cuanto antes porque los necesitamos/オハラ・ロ・プエダン・アレグラール・クアントー・アンテス・ポルケ・ロス・ネセシタモス(できるだけ早く解決してくれますように。自分たちにはファンが必要なのだから)」と応援回帰を頼んでいたんですが…今季のホームゲームは泣いても笑ってもあと7試合。弟分たちのスタジアムと比べて、寒すぎるメトロポリターノの雰囲気が元に戻る日が早くやって来るのを私も祈っています。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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リーガの焦点は優勝争いから2位争いになった…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱりこうなるか」そんな風に私が溜息をついていたのは火曜日、各国代表戦週間のparon(パロン/リーガの停止期間)前最後のリーガ26節はヨーロッパの大会敗退組がことごとく勝っているのに気がついた時のことでした。いやあ、確かに今季、タイトルが獲れる可能性がまったくなくなったとなれば、すでに昨年中にはCLグループ最下位敗退。早々とヨーロッパに別れを告げ、コパ・デル・レイでも準々決勝でお隣さん相手に敗退したアトレティコのように、目標がリーガ4位以内の来季CL出場権ゲットにシフトするのは当然なんですけどね。 この日曜にはEL16強対決で敗退した4位レアル・ソシエダが久保建英選手の先制ゴールなどでエルチェに2-0、同5位ベティスもマジョルカに1-0、コンレフェンス・リーグ敗退の6位ビジャレアルもオサスナに0-3と、3位のアトレティコを追う3チームが揃い踏みで勝利。まあ、シメオネ監督のチームもソツなく勝っていたため、勝ち点差はそれぞれ、3、6、10と変わらなかったものの、4月からは彼らだけが週1試合ペースを満喫という、アドバンテージがなくなりますからねえ。 それどころか、もちろんW杯程の影響はないはずですが、3月の代表戦もアトレティコからは各国代表に総勢11人が出向。ルイス・デ・ラ・フエンテ監督率いる新生スペインにはモラタしか呼ばれていないのとは対照的に、レアル・ソシエダからはオジャルサバル、ミケル・メリーノ、スビメンディの3人が招集されたとはいえ、日本代表に参加する久保選手を加えたって、そこまで多くないはずですからね。ちなみにベティスからは負傷で非招集となったバルサのペドリの代わりにボルハ・イルレシアスが呼ばれ、ビジャレアルは週末の試合でまたしてもふくらはぎを痛めたジェラール・モレノが落ちて、すでにU21スペインに招集されていたジェレミー・ピノがA代表に戻るなんてこともあったんですが、とりあえず、今は代表関連話は置いておくことにすると。 ええ、先週末のリーガでもマドリッド勢には悲喜こもごもがあって、先陣を切ったのは土曜の明るい時間、クラブのレジェンドであるミチェル監督率いるジローナをエスタディオ・バジェカスに迎えたラージョ。うーん、早くも前半23分にはイシがエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、3試合無得点のゴール日照りが終わったのは良かったんですけどね。スタンドのファンが「Isi Seleccion!/イシ・セレクシオン(イシをスペイン代表へ)」と歌っていたのも束の間、29分にはアトレティコからレンタル移籍中のリケルメがカステジャーノスへクロス。そのヘッドはGKディミトリエフスキが弾いたものの、こぼれたボールをツィハンコフに押し込まれ、あっという間に同点にされてしまうことに。 それでも34分にはアトレティコBの同僚、昨季はリケルメと共に2部のミランデスで修行し、3月のU21代表にも一緒に行くカメージョがトレホに繋ぐと、キャプテンが敵DFたちの隙間を縫ってゴールを決め、ラージョは再び勝ち越したんですが、悲劇が起こったのは38分のことでした。ええ、アルバロ・ガルシアがアルナウにエリア内で倒され、今季11本目という、PKを今季1度ももらっていないアトレティコなどにすれば、羨ましいチャンスを得た弟分だったんですが、トレホがGKガッサニガに弾かれてしまったから、さあ大変! というのもすでにラージョはPKを今季3回も失敗していた上、後でイシも「El ultimo fue yo, Raul de Tomas, Trejo/エル・ウルティモ・フエ・ジョ、ラウール・デ・トマス、トレホ(最後に入れられなかったのはボク、RdT、トレホだった)」と言っていた通り、他に自信のある選手もいなかったからでしょうかね。この時はジローナの選手が、トレホが蹴る前にエリア内に入ったとして、せっかく主審がPKのやり直しを命じてくれたにも関わらず、キッカーをリピートしたトレホはボールを横に出しただけ。後ろからイシが駆けつけて撃ったんですが、ゴール枠を大きく外してしまっては…。 後半7分にはハビ・エルナンデスのラストパスをツィハンコフに再び決められ、同点にされたラージョは、ラストプレーでサルビがエリア内でのハンドを取られる危険もあったものの、最後は2-2で引分けて終了。これにはイラオラ監督も「あの2度目のPKはトレホとイシが決めたこと。Lo único que puedo decir es que no lo hemos entrenado/ロ・ウニコ・ケ・プエド・デシール・エス・ケ・ノー・ロ・エモス・エントレナードー(唯一、言えるのは練習ではやっていなかったということ)。ああいうのをやるのもいいが、練習していればの話だ。PKについては心配している。おかげで幾つも勝ち点を失ったからね」とかなりおかんむりだったよう。 何せこれでラージョは6試合連続白星なしと、順位もヨーロッパの大会圏外の8位に落ちてしまいましたからね。ただ、降格圏とは勝ち点差9の余裕があるため、各国代表選手も5人に留まるこの2週間を利用して、4月3日(月)のバレンシア戦で再度、上を目指してもらいたいものですが、え?土曜の夜の試合でそのバレンシア相手に戦い方の見本を示してくれたのが、兄貴分のアトレティコじゃなかったかって? その通りで、バジェカスでは背中から吹きつける冷たい風に閉口して、シビタス・メトロポリターノに向かう前に家に寄って厚着してきた私だったんですが、この日は1月下旬のバジャドリー戦以来、ストを続けていた応援団が5試合ぶりに活動を再開。久々に入場時のクラブ歌合唱が終わってもスタンドが賑やかだったんですが、まあ、最近は一般のファンも応援団のリードなしに声を出すのに慣れてきていましたね。おかげで前回のホームゲーム、セビージャ戦など、チームは大量6点のgoleada(ゴレアダ/ゴ-ルラッシュ)を披露する程に成長。 よって、序盤からカラスコやメンフィス・デパイがシュートを放ち、とうとう前半23分にはマルコス・ジョレンテが出したスルーパスにグリーズマンが反応。見事に先制ゴールを決めてくれたのが、応援団のおかげだったかどうかは定かではないんですが、むしろ場内一斉、飛び跳ねて喜んでいたことの方が選手たちの気を散らしましたかね。ふと気がつくと、29分にはティエリのアシストでウーゴ・ドゥーロが同点ゴールを挙げていたから、ビックリしたの何のって! でも大丈夫。実はバレンシアのカウンターが進行している間、敵エリア付近でずっとデパイが倒れているのが私も気になっていたんですが、アトレティコの選手たちの猛抗議やスタンドのファンからのpito(ピト/ブーイング)を盛大に浴びた主審がVAR(ビデオ審判)の注進もあってか、モニターを見に行くことに。その結果、デパイを倒したフルキエのファールが判明し、ゴールは無効とされたため、試合は1-0のまま、ハーフタイムに入ることに。 そして後半も血気盛んなまま出て来たアトレティコは、いえ、バレンシアがなかなかピッチに現れなかったのには少々、私もイライラしたんですけどね。再開から4分もしないうち、今度はロッカルームでシメオネ監督が、「Lo habíamos hablado en el descanso para estar más fríos para definir/ロ・アビアモス・アブラードー・エン・エル・デスカンソ・パラ・エスタル・マス・フリオス・パラ・デフィニール(ハーフタイムにフィニッシュする時、もっと冷静でいるように話した)」というカラスコがデ・パウルからパスを受け、ゴール右側からのシュート。2点目を決めてくれたとなれば、相手はバラハ新監督になってから、1-0以外のスコアを知らないバレンシアだけにもう、大船に乗った気分になっていい? それでもシメオネ監督は手綱を緩めず、後半18分にはデパイ、デ・パウルをモラタ、レマルに交代。何せ、最近は控え選手がピッチに入るたびにゴールを挙げ、今季通算12得点となっているアトレティコですからね。この日も例外ではなく、22分にはグリーズマンのスルーパスから、エリア内に入ったモラタがクロスを上げ、小柄なレマルが悠々、ヘッドで3点目のゴールをゲットって、うんまあ、バレンシアの守備陣が崩壊していたのは事実ですけどね。最後は3-0の堂々勝利となり、ファンはここ10試合の無敗中、何度繰り返したかわからない、「どうしてW杯前にこのパフォーマンスを見せられなかったのだろう」という疑問をこの日も抱くことに。 何にせよ、試合後はジョレンテも「No podemos saberlo, seguimos trabajando igual, antes del Mundial no nos salía nada y ahora todo/ノー・ポデモス・サベールロ、セギモス・トラバハンドー・イグアル、アンテス・デル・ムンディアル・ノー・ノス・サリア・ナーダ・イ・アオラ・トードー(同じように取り組んでいるから、知りようがない。W杯前は何もかも上手くいかなくて、今は全部が上手くいく)」と言っていたように、選手たちもあれだけ不調だった理由はわからないようですし、後ろを振り返っても仕方ないんですけどね。この白星で一時的に2位のレアル・マドリーと勝ち点差が5に縮まったとはいえ、土曜の夜はやっぱりお隣さんを追い越すのは難しいだろうなと思っていた私でしたが…。 翌日曜はまず、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで弟分のヘタフェとスペイン勢EL唯一の生き残り、セビージャの対戦を見に行ったんですが、開始数秒でせっかくエネス・ウナルがGKボノからエリア内でボールを奪ってチャンスを作ったものの、敵DFに取り返されてモノにできず。35分にはボルハ・マジョラルのパスをフリーでもらいながら、ムニルがシュートを外してしまい、0-0のままでハープタイムに入ったところで、泣く泣くスタジアムを出ることに。いやあ、次の時間帯だったマドリーはカンプ・ノウでプレーするため、バル(スペインの喫茶店兼バー)観戦だったとはいえ、そこは天下のクラシコ(伝統の一戦)ですからね。アトレティコのアウェイゲーム時のようにコリセウム近辺のお店で席を確保する自信がなかったため、万全を期して、キックオフ30分前に近所のバルに辿り着きたかったからですが、おかげで弟分の奮闘を見逃す破目になるとは! ええ、メトロに乗ってインターネットラジオを聞いていた後半5分、まったく同じ組み合わせで今度はムニルが先制点を挙げることに成功。ようやく自宅最寄り駅を出て、あと一歩でお店到着という瞬間、後半ロスタイム5分に終盤、交代出場したマタのスルーパスからウナルが2点目を決めたと聞き、何とかTVのリプレーには間に合ったんですが、このホーム3連勝となる2-0の勝利は効果抜群でした。18位にいた彼らが一気に13位までジャンプアップって、いや、ホントに今季は下位が大混戦で、ヘタフェもまだ降格圏とは勝ち点3しか離れていないんですけどね。代表戦明け、苦手のアウェイでのアスレティック戦でも白星を掴めれば、かなり安心できるんですが、こればっかりはねえ。 そして私がやっとこ、画面が見られる最後のストールを確保して観戦したクラシコはというと。うーん、開始早々にベンゼマやレバンドフスキが試し撃ちした後、前半9分にビニシウスのエリア内右奥からのシュートがアラウホの頭に当たり、オウンゴールとなってくれた時には先日、ミリトンのオウンゴールでバルサが0-1勝利したコパ準決勝1stレグの逆バージョンになってくれる気もしたんですけどね。やはり先週水曜にはCL16強対決リバプール戦2ndレグをこなし、しかもその試合と同じスタメンを並べたマドリーより、1週間丸々練習に当てられたバルサの方が元気だったんでしょうか。 サンティアゴ・ベルナベウでの専守防衛ぶりはどこへやら、積極的に前に行ったのが功を奏したか、ハーフタイム直前にはラフィーニャのシュートがDFにブロックされた後、セルジ・ロベルトに同点ゴールを決められてしまうのですから、困ったもんじゃないですか。後半が進むにつれ、アンチェロッティ監督はロドリゴ、メンディ、アセンシオ、セバージョス、チュアメニと次々、フレッシュなメンバーを投入し、自慢のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神の発動を期待したんですが、え?そもそも1-1の同点なんだから、そんなの発動するはずないって?いえ、36分にはカルバハルのクロスをアセンシオがゴールにして、とうとう勝ち越し点が入ったかに見えたんですけどね。 これがVAR判定により、ミリメトロ単位でアセンシオがオフサイドだったとされたのが運の尽き。引き分けでは勝ち点差9のままですから、こうなるとなりふり構っていられず、バルサを自陣エリア内に囲い込む大攻勢に転じたマドリーだったんですが、まさか、「Fuimos más a lo loco, eramos casi todo jugadores de ataque/フイモス・マス・ア・ロ・ロコ、エラモス・カシー・トードー・フガドーレス・デ・アタケ(もうクレージーな状態で、ウチはほとんど選手全員がアタッカーだった)」(セバージョス)というロスタイム2分にカウンターを浴びてしまうとは!バルデのパスから、セルジ・ロベルトに代わって入っていたケシエが決め、一気に12差をつけられてしまうとは何と、運命は残酷なんでしょう(最終結果2-1)。 うーん、「Hay que ser honestos. Seguiremos peleando, pero hay cuatro partidos de diferencia/アイ・ケ・セル・オネストス。セギレモス・ペレアンドー、ペロ・アイ・クアトロ・パルティードス・デ・ディフェレンシア(正直にならないと。ボクらは戦い続けるけど、4試合の差がある)。難しいよ」とクルトワが言う前から、この時期に9差の時点でもそこから逆転優勝した前例はありませんでしたからね。この日はオフサイドによるゴール取り消しだけでなく、ガビがカルバハルの顔にcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞っても、ボールを持っていないセバージョスを後ろからド突いてもお咎めなしだったりと不運なところもあったんですが、彼らもリーガ優勝はもう諦めて、アトレティコとの2位争いに専念した方がいいかと。 珍しくVAR判定に疑義を申し立てていたアンチェロッティ監督も「Si jugamos así, ganaremos algo. Seguro/シー・フガモス・アシー、ガナレモス・アルゴ。セグロ(今日みたいにプレーすれば、きっと何かは勝ち獲れる)」と言っていたんですが、チェルシーとの準々決勝を控えたCLに加え、マドリーには1stレグの0-1負けでレモンターダ条件を満たしたコパ準決勝2ndレグも4月5日にありますしね。実際、第1期では最初のシーズンにクラブの悲願だったDecima(デシマ/10回目のCL優勝)達成しながら、次のシーズン、リーガ、コパ、CLで無冠となるとあっさり、解任されてしまったアンチェロッティ監督となれば、かなり真剣にこの事態を受け止めていると思いますが…何はともあれ、今は13人と大量出向している各国代表選手たちが無事に帰って来てくれるのを待つばかりでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.22 20:00 Wed
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毎年、同じチームと対戦している気がする…/原ゆみこのマドリッド

「またチェルシーなんだ」そんな風に私がデジャブを覚えていたのは金曜日、丁度、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場外から、覆いのシート越しに今季はもう、ヨーロッパの大会とは何の関係もないアトレティコのセッションを覗き見していた時のことでした。いやあ、もう最近は何でもネットストリーミングしているため、UEFA本部で行われたCL準々決勝組み合わせ抽選会もスマホで眺めていたんですけどね。ご存知の通り、今季CLスペイン勢唯一の生き残り、レアル・マドリーはこのロンドンのチームとは昨季の同ラウンドでも当たり、1stレグでベンゼマのハットトリックで1-3と快勝しながら、2ndレグでは0-3と逆転までされた後、根性のremotanda(レモンターダ/逆転劇)精神が発動。 ロドリゴが総合スコアをタイにするゴールを挙げ、延長戦でベンゼマも決めて、2-3で負けながらも総合スコア5-4で突破すると、準決勝でもマンチェスター・シティを1stレグ4-3の負けから、2ndレグ3-1勝利で総合スコア6-5の逆転勝ち抜けをすることに。そして決勝ではリバプールを倒し、Decimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)達成というのはまだ記憶に新しいところなんですけどね。そのせいで忘れがちですが、実はチェルシーとは2年前、ジダン監督時代の2020-21シーズンにも準決勝で対戦していて、この時は1stレグで1-1と引分けた後、2ndレグで2-0と負けて敗退しているんですよ。 その後、トゥーヘル監督率いるチェルシーがマンチェスター・シティを破って優勝したというのはともかく、注意すべきはホーム、アウェイの順番で、ええ、昨季決勝トーナメントの3連続レモンターダは全て、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグあってのことでしたからね。逆に今季は4月12日の1stレグがベルナベウ、18日の2ndレグがスタンフォード・ブリッジと、これは敗退した2年前と同じパターン。もちろん、3週間前のCL16強対決リバプール戦1stレグではアンフィールドで前半14分までに2点奪われながら、大量5点を取って、1試合完結レモンターダも見せているマドリーとなれば、ホーム限定のお家芸とは言えないとはいえ、ちょっと気にならなくはない? どちらにしろ、アトレティコから1月にレンタル移籍したジョアン・フェリックスもいるチェルシーとのCL準々決勝はまだかなり先の話なので、今は水曜の16強対決2ndレグで敗退が決まったリバプールのクロップ監督が、「CLに優勝するにはマドリーとマンチェスター・シティに勝たないといけない」と発言。それが金曜の抽選では、マドリーがチェルシーに勝てば、マンチェスター・シティvsバイエルン戦の勝者と準決勝で当たることも決まることに。よって、アンチェロッティ監督のチームはライプツィヒ戦2ndレグでハーランドの5ゴールを始め、計7得点のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を披露したシティとの対戦を避けられるかもしれないのを喜ぶ程度にしておきますが、準決勝でもマドリーは1stレグがホーム開催となるため、今季はレモンターダのエクスタシーをベルナベウのファンが体験できないのは残念ですよね。 え、それでリバプール戦2ndレグはどんな試合だったのかって?そうですね、初戦で2-5と大差がついていながら、さすがCLだと気合が入るんでしょうか。午後7時半頃にはベルナベウ周辺にマドリーのチームバスをお出迎えするファンが大勢集まっていたようで、私はその光景を近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のTVでコーヒーを飲みながら確認した後、メトロでスタジアムに向かうことに。クロップ監督がスタメンにサラー、ダルウィン・ヌニェス、ガプコ、ジオゴ・ジョタの4FWを並べる超攻撃的布陣できたと知った時にはちょっと、ワクワクしたものでしたが、アンフィールドで序盤に痛い目に遭ったマドリーの選手たちはよく学んでいたよう。 ええ、fondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側席)のファンが掲げるモザイクと昨季の決勝前にGKクルトワが口走り、アトレティコファンに不快感を与えた「El lado bueno de la historia/エル・ラドー・ブエノ・デ・ラ・イストリア(歴史のいい方の側)」と書かれた横断幕に迎えられてキックオフすると、6分にはリュディガーがエリア前で転倒。逃したヌニェスのシュートをクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)して、ドッキリさせられたなんてこともあったんですけどね。アンチェロッティ監督も「Me ha gustado el equipo, a nivel psicológico/メ・ア・グスタードー・エル・エキポ、ア・ニベル・シコロヒコ(チームの心理的なレベルが気に入った)。ウチは3点リードしていて、足が遅くなっても仕方なかったのにそうならなかった」と言っていたように、1stレグでザル状態だったアラバがまだ負傷中のため、最初からナチョを左SBに置いたのも功を奏し、そう簡単にリバプールも攻め込めません。 マドリーも早い時間にはビニシウスの至近距離シュートをGKアリソンが好セーブしたり、カマビンガのエリア外からの一撃がゴールバーで逸れたりしたものの、両チーム共、前半は無得点で終わります。これであと45分間、スローインやCKなどに時間をかけて、何事もなく過ごせば勝ち抜けるマドリーに対し、クロップ監督は後半11分には戦略を修正。ヌニェスとジョタをフィルミーノとエリオットに代えてきたんですが、ほとんど流れは変わることなく、いよいよ試合は最後の15分に残すばかりに。ゴール祝いができるのを今か今かと待っていたファンたちをようやく、満足させてくれたのはお馴染みの2人でした。 33分、足首を打撲して先週末のエスパニョール戦を休んでいたせいで、その日も本調子には見えなったベンゼマですが、そのシュートが敵に当たって転がったボールをビニシウスが拾ったところ、いやあ、自身で撃とうとして失敗し、彼は倒れてしまったんですけどね。地面から足を伸ばしてパスを送り、それを何故か、誰にもマークされていなかったベンゼマが蹴り込んで、ゴールを挙げているんですから、fondo norte/フォンド・ノルテ(ゴール裏北側席)の最上階に陣取った2500人のビジターファンを除いて、どんなに場内が沸いたことか。 これで総合スコアが6-2となったため、「Quería hacer los cambios para parar el partido si teníamos problemas al final/ケリア・アセール・ロス・カンビオス・パラ・パラール・エル・パルティードー・シー・テニアモス・プロブレマス・アル・フィナル(終盤に問題があった時、試合を止めるために交代カードは使いたかった)というアンチェロッティ監督も選手の温存を開始。何せ、週末にもリーガ・クラシコ(伝統の一戦)が控えていますからね。いくら、この日はモドリッチやクロースが良かったとはいえ、というか、良かったから尚更、疲労を抱えてカンプ・ノウに行ってほしくなかったんですが、やっと37分過ぎから、大きな拍手を浴びてモドリッチとベンゼマ、続いてクロースとビニシウス、そして最後はカルバハルもピッチを退くことができましたっけ。 え、試合が無事に1-0で終わり、アンフィールドでは1stレグ当日にお亡くなりになったマドリー名誉会長のアマンシオ氏にリバプールが花籠を捧げる気配り。それに感謝して、もうイギリス人たちはあまり残っていなかったものの、You’ll never walk aloneの歌が場内に流れたのは感動的だったとはいえ、ゴールを挙げた後、足を引きずっていたベンゼマは大丈夫なのかって?まあ、当人も「スネに強い打撲を受けただけ。Estaré el domingo/エスタレ・エル・ドミンゴ(日曜は出られるよ)」と言っていたため、多分、午後9時(日本時間翌午前5時)からのクラシコには問題ないはずなんですけどね。 その治療のせいか、決勝ゴールの殊勲者は試合後のミックスゾーンには現れず、クルトワが1人でTV、ラジオ、文字媒体メディアに延々と応対。折しもロスタイムにはマドリーエリア内でリバプールの選手の手にボールが当たり、ペナルティかどうかのVAR(ビデオ審判)判定(リバウンドでPKなし)があったせいもあるんでしょうかね。アンチェロッティ監督とクロップ監督も前日のマンチェスター・シティvsライプツィヒ戦でハーランドが1点目を挙げたPKの原因であるハンドについてありかなしか、話をしたそうですが、マドリーの守護神の思考は遥か先に。 まさか、その試合のスペイン人VAR担当審判が2年前のマドリーダービーの主審と同じと気がついて、「彼は同じようにはっきりしていたアトレティコのハンドを取らなかった。Me gustaría preguntarle por qué/メ・グスタリア・プレグンタールレ・ポル・ケ(どうしてなのか、訊きたいよ)」とはもしや、クルトワって結構、しつこい?マドリー番記者の間でもいつも試合後、マイクの前で喋るので有名な彼ですが、一旦、私がクロップ監督の記者会見を聞くため、ミックスゾーンを中座。終わって戻って来た時にもまだ話していて、最後はハーランド評までイギリス人記者たちに英語でペラペラやっていたのにはビックリさせられたかと。 まあ、現在、勝ち点9ある首位との差を縮めるにはバルサ戦でもクルトワの活躍が欠かせないため、当人が気分良く帰っていったのはいいことなんでしょうが、ペドリの回復が間に合わず、デンベレも欠場するとはいえ、EL16強対決プレーオフで敗退した相手は今週もミッドウィークフリーでしたからね。向こうの方が体力的に有利なのは気に入りませんが、そうそう、そのバルサを負かしたマンチェスター・ユナイテッドは木曜の16強対決2ndレグでもベティスに0-1と勝ち、総合スコア5-1で準々決勝に進出。レアル・ソシエダも1stレグでのローマの2-0勝利を引っくり返せず、コンフェレンス・リーグでもビジャレアルがアヤックスに敗退させられる中、奇しくも金曜の抽選では、フェネルバフチェに総合スコア2-1で勝って、マドリー以外唯一、ヨーロッパの大会のスペイン勢生き残りとなったセビージャと対戦することに。 おかげでリーガでは降格圏と勝ち点2差という、残留争いの渦中にあるサンパオリ監督のチームは気持ちがかなり、大会最多の7回優勝しているELの方に向くことになったんじゃないかと思いますが、それがもしかしたら、日曜にセビージャをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるヘタフェの大きな味方になるかも。ええ、最近は毎節、一時的に降格圏を抜け出しても、全カード終了後にはまた戻ってしまうという蟻地獄状態から、弟分チームが脱出するにははっきりくっきり、2連勝ぐらいしないといけないからですが、アランバリが足首の再手術となり、代表戦明けまで戻って来られないのはちょっと辛いところでしょうか。 そしてもう1つの弟分、ラージョは土曜にジローナとエスタディオ・バジェカスで対戦なんですが、折しも相手はヘタフェ、アトレティコとマドリッド勢に2連敗中。このところ、5試合白星がないだけでなく、3試合連続無得点のイラオラ監督のチームとあって、いきなりゴール日照りを解消するのは難しいかもしれませんが、こちらで注目したいのはカメージョとリケルメ、アトレティコのレンタル移籍中カンテラーノ(Bチームの選手)対決でしょうか。ええ、彼らは昨季一緒に2部のミランデスで修行した後、今季はそれぞれラージョとジローナに分かれて1部での実戦を積んでいるんですけどね。2人共、サンティ・デミア監督に3月のスペインU21代表に招集されたため、その合宿中にはシメオネ監督のチームにどちらが先に戻れるか、話したりするのかも。 そう、金曜には来週から始まる国際マッチウィークでユーロ2024予選のノルウェイ戦とスコットランド戦に挑む、スペインA代表の招集リストの発表もあって、いやあ、それも私はマハダオンダでの練習伺い中にスマホで見ていたんですけどね。W杯後に退任したルイス・エンリケ監督の後を継いだ、それまでU21を担当していたルイス・デ・ラ・フエンテ監督はカタール大会のメンバーから15人もの選手を一気に変更。細かいことは省きますが、それでトバッチリを喰らったチームの1つがアトレティコで今回、招集されたのは何と、ここ2試合で3得点しているものの、土曜午後9時のバレンシア戦でも3試合連続控えとなる予定のモラタだけなんです! 実際、1月初旬にバルサに負けて以来、リーガ9試合で無敗の彼らは4位のレアル・ソシエダと勝ち点3、5位のベティスとは6の差をつけて、堂々と3位の座に君臨。コパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに負けて以来、2月からはずっと週1ペースで体力も余っているというのに一体、コケやマルコス・ジョレンテにこれ以上、休養日を与えてどうしようっていうのでしょう。いえ、もちろんグリーズマン(フランス)やカラスコ(ベルギー)、オブラク(スロベニア)、コレア、デ・パウル、モリーナらのアルゼンチン勢といった常連は各国代表に出向するんですけどね。もうこうなったら、paron(パロン/リーガの中断期間)を挟んでメトロポリターノで連続開催となるバレンシア戦、ベティス戦でも白星街道を維持。いずれは勝ち点差8のマドリーを抜かし、2位でリーガを終えるぐらいしないと、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーでもスペイン代表のアトレティコ勢は増やしてもらえない? ちなみに現在、ヘタフェと同じ勝ち点でギリ降格圏外の17位にいるバレンシアは今回、4試合を負傷で欠場していたカバーニが復帰。ボロ暫定監督をバラハ監督が引き継いでその間、全て1-0での2勝2敗と、メスタジャで勝って、アウェイでは負けているんですが、アトレティコも6点を奪って大勝した前回のホームゲーム、セビージャ戦以外、1試合1得点が最近の基調路線ですからね。恐らく渋い展開になるんじゃないかと思いますが、チケットの売れ行きもいいようですし、ファンが喜ぶ結果を出せるといいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.18 20:00 Sat
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もちろんゴールは多いに越したことはないけど…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱりセビージャ戦のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)は例外だったのね」そんな風に私が納得していたのは火曜日、25節の最後を飾って月曜にアトレティコがジローナ戦を終えた後、直近の成績を振り返ってみたところ、コパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに負けて以来、彼らは無敗。リーガで5勝2分けなんですが、うち2点以上取ったのが先日、メトロポリターノでシメオネ監督のクラブ最多記録となる613試合達成を6-1で祝った、その試合しかないのに気づいた時のことでした。いやあ、今季は首位を独走するバルサもこの日曜のアスレティック戦を含め、1-0勝利がかなりあるんですけどね。 それにはシメオネ監督も「Últimamente veo que el 1-0 se valora mucho en otros equipos y me pone contento/ウルティマメンテ・ベオ・ケ・エル・ウノ・セロ・セ・バロラ・ムーチョ・エン・オトロス・エキポス・イ・メ・ポネ・コンテントー(最近は他のチームの1-0勝利も高評価されるようになって満足だ)」と皮肉っていたんですが、惜しむらくはもっと早く、今の調子に持っていけなかったこと。ええ、オブラクも「ウチはW杯の後から良くなって、試合に勝てるようになったけど、es una pena que estemos tan lejos de los dos primeros/エス・ウナ・ペナ・ケ・エステモス・タン・レホス・デ・ロス・ドス・プリメーロス(上位2チームとあれだけ差がついているのは残念だ)」と言っていたんですけどね。3位のアトレティコと2位のレアル・マドリーの差は勝ち点8、首位に至っては17の彼岸の彼方となれば、もう他の大会もありませんし、今季残りの目標がCL出場権獲得だけになるのも仕方がない? そんなことはともかく、そのジローナ戦がどんな試合だったか、お伝えしていくと、うーん、コパ敗退後の2月から延々と試合が週1ペースになった上、今回は週明けの月曜とかなり間が空いたのも相まったか、モンテリビでは軽快にスタートしたアトレティコだったんですけどね。マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でたっぷり磨いた高速パス回しのテクなども披露していたんですが、ふと気づくと敵目掛けて真っすぐ蹴っていたりするのはまあ、ご愛敬。それよりその日はセビージャ戦であれ程あった決定力が欠けていて、いやあ、20分にメンフィス・デパイがグリーズマンからのクロスをフリーで受けながら、volea(ボレア/ボレーシュート)を撃ち上げてしまった時など、私も口をあんぐり開けてしまったものでしたけどね。 デパイは36分にもゴール前からのシュートも外しているんですが、グリーズマンもGKガッサニガに止められ、エルモーソのヘッドも決まらずと、前半は両者無得点で終わることに。再開後すぐにもマルコス・ジョレンテが弾かれるわ、せっかくFKからエルモーソのヘッドが敵の腕に当たっても、そのエルモーソのファールで今季初となるはずだったPKはもらえないわと、スコアが動かなかったため、17分にはシメオネ監督が3人一斉交代の荒療治を決行。ええ、デパイ、ジョレテンテ、レマルから、モラタ、コレア、デ・パウルに代わったんですが、オブラクがツィハンコフ、ダビド・ロペス、リケルメらのシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)する傍ら、どんどん時間は経つばかりで…。 そしていよいよ45分が過ぎて、8分のロスタイムが提示されたんですが、信じられないことにそこでドラマが起きたんですよ!そう、1分も過ぎないうちに、コレアがゴール前からシュートしようとしてアルナウにクリアされ、アトレティコにCKが与えられたところ、グリーズマンがニアポストに出したボールをコレアが繋ぎ、そのボールがストゥアーニに当たってファーサイドのゴール前へ。その場にいたモラタが足を出し、ネットに押し込んだんですが、いやもう、線審も彼が関わると反射的に旗を揚げてしまうんですかね。まずはオフサイドとされたそのゴールはもちろん、VAR(ビデオ審判)判定にかけられることに。 それに3分余りも時間がかかったため、その間、モラタも「Me echaban la bronca de por qué la toco/メ・エチャン・ラ・ブロンカ・デ・ポル・ケ・ラ・トコ(何で自分は蹴ったのかと腹が立った)。でもボールが来たら蹴らないのは難しいし、蹴らなくて逸れてしまったら、それも腹が立つし」と忸怩たる思いを噛みしめていたようですが、大丈夫。当人の位置はかろうじてオフサイドにならず、しかも直前に触ったのが敵だったため、しっかり得点として認められたとなれば、もうこっちのもんです。ロスタイムが12分まで延びたって、remontada(逆転劇)特異体質のお隣さんならいざしらず、ジローナ相手にこのぐらいの残り時間なら、アトレティコは逃げ切れますって(最終結果0-1)。 いえ、ミチェル監督のチームにはロメウとアレイクス・ガルシアを負傷で失うという不運もあったんですけどね。おかげで週末にマジョルカと引分けた4位のレアル・ソシエダとは勝ち点3、6位のビジャレアルと引分けた5位のベティスとは勝ち点6に差が開き、シメオネ監督もゆったりした気分で土曜のバレンシア戦の準備ができることになったんですが、これはもしかしたら、次節、マドリッド勢との3連戦最後を迎えるジローナと当たる弟分にもいい目が出たかも。 というのも土曜の夕方、セルタ戦をプレーしたラージョはいよいよ、ゴール日照りが深刻化。バライドスででは後半、RdT(ラウール・デ・トマス)のシュートがゴールバーを直撃したすぐ後、6分にはガランのクロスからイアゴ・アスパスに先制点を奪われ、その2分後にもセフェロビッチのシュートはGKディミトリエフスキが弾いたものの、シスの足に当たってオウンゴールを献上してしまうことに。更に40分にはトレホのバックパスをアスパスに奪われて、3点差にされていたのは困りもんですが、カメジョやファルカオを投入しても1点も返せないのではねえ(最終結果3-0)。 さすがにこれには前節0-0で引き分けたアスレティック戦の後には、チャンスは作っているからと太っ腹に構えていたイラオラ監督も、「Me preocupa que hemos dejado de hacer goles/メ・プレオクパ・ケ・エモス・デハードー・デ・アセール・ゴーレス(ウチがゴールを入れなくなったことを心配している)。シュート精度がなくなって、それはこれまでなかったことだから」と言っていましたが、まあ、それでも6位のビジャレアルと勝ち点3差で7位はキープしていますからね。金曜に土壇場でカディスと2-2と引分け、一旦は降格圏を脱出しながら、他の試合の結果で週明けにはまた18位と、蟻地獄状態に陥っている弟分仲間のヘタフェよりはずっとマシでは?とりあえず、ラージョとしてはこの1週間、シュート練習に精を出して、エスタディオ・バジェカスのファンの応援が期待できるこの土曜、ヘタフェ、アトレティコに連敗しているジローナ相手に巻き返しを図るしかありませんよね。 え、それで今週、マドリッド勢として唯一、ミッドウィークに試合があるレアル・マドリーはどうしているのかって?いやあ、彼らは土曜にサンティアゴ・ベルナベウでエスパニョール戦だったんですが、何より嬉しかったのは、もちろん先週末はかなり気温が上がり、ヒートテックを重ね着しなくてもよくなったこともあるんですけどね。今年は夜9時からの試合が多かったため、久々に午後2時というお日様の照る時間に観戦できたことだったかと。だからって、水曜のCL16強対決リバプール戦2ndレグの先乗り隊なのか、バケーションを兼ねて来ているらしい、結構な数のイギリス人ファンたちのようにショートパンツや生足サンダルで出歩く程、暑くはなかったはずですが、そんな陽気も影響したか、まさかマドリーの選手たちが眠ったまま、ピッチに出てしまうとは。 ええ、開始早々のブライトワイテのシュートはDFに当たって逸れたものの、7分には左SBに入っていたカマビンガがルーベン・サンチェスを逃し、そのラストパスをホセルにエリア内からワンタッチで決められてしまう始末。ただこの日はそのおかげで、持ち前のレモタンダーダ精神が早い時間から発揮されることになったんです!口火を切ったのはビニシウスで、後で当人も「Es una jugada que entreno bastante pero en los partidos es más difícil/エス・ウナ・フガダ・ケ・エントレノ・バスタンテ・ペロ・エン・ロス・パルティードス・エス・マス・ディフィシル(よく練習しているプレーなんだけど、試合では難しいんだ)。ボクには沢山の選手が付いてくるからね」と説明していたんですけどね。22分にはエリア内で前を塞ぐエスパニョールの選手4人の隙間を狙い、ゴールを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。 それで当人も調子に乗ったか、32分には手をかけてルーベン・サンチェスを止め、イエローカードをもらい、FWながら今季もう8枚目という、不名誉な記録を作っていたりもしたんですけどね。実際、ここ数週、バルサが2001年から2018年まで、元審判で審判技術委員会の副委員長を務めていたネグレイラ氏の会社に730万ユーロ(約11億円)という大金を払い、ジャッジに手心を加えてもらっていたのではないかという疑惑がどんどん拡大。 検察がバルサやバルトメウ前会長らを贈賄で提訴することになったことから、マドリーもエスパニョール戦の前に役員会を開き、捜査が終わった暁には独自に訴えを起こすことを表明したせいもあったんでしょうか。スタンドには審判に対する不穏な空気が漂ったんですが、39分にチュアメニのクロスから、ミリトンが見事なヘッドで2点目を挙げ、あっさり逆転してくれたとなれば、場内はもう、お祭りムードですって。 2-1で始まった後半は割と落ち着いていて、いやあ、何せマドリーにはCLリバプール戦だけでなく、日曜にもリーガ・クラシコ(伝統の一戦)と大事な試合が控えていましたからね。25分過ぎにはアンチェロッティ監督もモドリッチ、クロース、チュアメニら、中盤の選手を休ませて、アセンシオ、セバージョス、リュディガーを投入。30分にはロドリゴのFKがゴールバーを直撃というドッキリもあったものの、そのままスコアは変わらずに終わるかと思ったところ…ロスタイムにまさか、マドリーの3点目を見ることができようとは! ええ、この時はカマビンガがボランチに戻るのに合わせ、CBから左SBに移っていたナチョが敵陣をドリブルで爆走。そのラストパスをアセンシオがエリア内から決めて、ここ2試合出番のなかった憂さを晴らしていたんですが、何せこのところ、3試合で1点しか取れていなかったマドリーですからね。しかもその日は足首を痛めたベンゼマがお休みしていただけに、首位との勝ち点差9を縮める役には立たなかったとはいえ、3-1での勝利はこの先のビッグゲームに向けて、いい励みになったのでは? え、水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのリバプール戦はアンフィールドでの1stレグで2-5と大勝しているんだし、前節にはマンチェスター・ユナイテッドを7-0と粉砕した相手も同日はプレミアリーグ下位のボーンマスに1-0の最少得点差負け。やはりCL決勝を戦った昨季と比べると、安定してないため、気楽に構えていてもいいんじゃないかって?いやあ、それがアンチェロッティ監督も「Hemos tenido la experiencia del año pasado contra el Chelsea/エモス・テニードー・ラ・エクスペリエンシア・デル・アーニョ・パサードー・コントラ・エル・チェルシー(ウチには昨季のチェルシー戦の経験がある)」と言っていたように、その準々決勝1stレグでマドリーはスタンフォード・ブリッジで1-3と余裕の勝利。 ところが、相手のトゥーヘル監督が「もう結果は決まった」とその時、白旗を揚げていたのを信用してしまったか、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグで後半30分までに3点を取られ、まさかの逆転をされてしまう破目に。最後はロドリゴのゴールで延長戦にもつれ込むと、ベンゼマが2-3として、総合スコア5-4で勝ち抜けたんですが、もしやその試合、ファンを喜ばすためにわざと、レモンターダのお膳立てをしたんじゃないかと疑ってしまったのは、私だけではなかった? どちらにしろ、マドリーは「Tenemos ventaja, por eso somos favoritos/テネモス・ベンタハ、ポル・エソ・ソモス・ファボリートス(ウチはアドバンテージを持っていて、だから勝ち抜け候補だ)。それでもあと90分間を1stレグと同じ態度でプレーしないといけない」(アンチェロッティ監督)んですが、エスパニョール戦をお休みしたベンゼマ、そしてようやくメンディもリバプール戦では復帰。1年ぶりのCL決勝トーナメントの晴れ舞台ですし、4月からスペインでCLが1試合も見られなくなるのもつまらないので、私も全力で彼らを応援していますが、当面はあまり心臓が引っくり返りそうな思いをファンにさせずに、順調に準々決勝に駒を進めてくれたらいいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.15 20:00 Wed
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週1ペースのチームが増えるのは困る…/原ゆみこのマドリッド

「これはもしかすると、4月からアトレティコのライバルが皆、平日フリーになるかも」そんな風に私が慮っていたのは金曜日、今週はミッドウィークに戦ったチームが4つもありながら、16強対決1stレグで勝利したのが残留争いをしているセビージャだけだったことに気づいた時のことでした。いやあ、もちろんマッチングの運不運もありますが、前節アトレティコに7-1とボロ負けしながら、大会最多記録となる6回の優勝を誇るELでサンチェス・ピスファンにフェネルバフチェを迎えたホルヘ・サンパオリ監督のチームは前半にホルダン、後半にラメラがゴールを決めて2-0と先勝。7度目の戴冠の目も出てきたんですが、万が一、リーガで降格しようものなら、来季は2部でプレーしながら、EL王者としてCL出場という変わり種になりかねないんですけどね。 その一方で残るEL2チーム、レアル・ソシエダとベティスは来週木曜の2ndレグで奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)が必要な状況に。ええ、フランスの航空管制官のストで乗り継ぎができず、200人余りのファンがローマに辿り着けなかった前者は、オリンピコ・スタジアムでモウリーニョ監督率いるチームに前半はシャーラウィ、後半はクンナラにゴールを決められて、先発した久保建英選手も奮闘したものの、2-0で敗戦。後者もオールド・トラフォードで前半こそ、アジョセのゴールで1-1に追いつきながら、後半に3点を奪われて、マンチェスター・ユナイテッドに4-1と完敗しているんですが、まさにこの両者はリーガで勝ち点差1と4の4位と5位で、3位のアトレティコを追っているんです! ええ、コンフェレンス・リーグ(UEFA第3の大会)でアンデルレヒトと1-1で分けてきたビジャレアルも前節、弟分のラージョを7位に落として6位に上がった上位チームですからね。よって、3月中に敗退してしまうと、一足早く昨年のW杯前にCLグループリーグ最下位敗退して、ヨーロッパの大会から完全撤退。コパ・デル・レイも準々決勝でお隣さんに負けたため、優雅な週1試合ペースを満喫しているアトレティコのアドバンテージが消滅してしまうことになりますが、え?昨年の今頃はそれこそ、CL16強対決マンチェスター・ユナイテッド戦1stレグをメトロポリターノで1-1と引分けた後、2ndレグの準備を粛々と進めていたのとは大違い。時間がありすぎるのも問題じゃないかって? そうですね。それに輪を掛けて、リーガ25節ジローナ戦が月曜午後9時(日本時間翌午前5時)に設定されたせいもあったんでしょうか。水曜には、てっきり先週末のセビージャ戦で済んだものと思っていたシメオネ監督のクラブ最多記録となる、アトレティコを率いて613試合達成の記念イベントをスタジアムの講堂で大々的に開催。それもいつもの入団プレゼンのような簡素なイベントではなく、TV局とタイアップして、舞台を居間のようにセッティング、獲得した8つのトロフィーが照明に輝く中、ソファに座ったシメオネ監督が司会者やゲストと語り合うというショー仕立てだったんですよ。テレマドリッド(ローカルTV局)を始め、中南米でも生放送されたんですが、最初から最後まで私もネット配信で見ていたところ、何と1時間も続いたから、ビックリしたの何のって。 そのイベント直前にメトロポリターノのジムで練習を終えた選手たちも全員参加していた上、OB選手のゲストとしてビジャやファンフラン、まあ、近いせいもあるんでしょうが、現役のファルカオやマリオ・スアレスも出席。その前でシメオネ監督が、「初めてELに優勝した後(2012年)、クラブには収入が必要だったが、ファルカオを引き留める決断をした。Para mí fue un momento donde el club empezó a marcar que el camino era crecer/パラ・ミー・フエ・ウン・モメントー・ドンデ・エル・クルブ・エンペソ・ア・マルカル・ケ・エル・カミーノ・エラ・クレセル(私にとって、そこが成長への道をクラブが決断した瞬間だった)」と翌年、お隣さんをサンティアゴ・ベルナベルで倒してのコパ・デル・レイ優勝にも欠かせなかった、今はラージョにいる彼を引き合いに出していたのはほっこりする逸話だったんですけどね。 逆に一番心に残る試合を訊かれて、「ミラノでレアル・マドリーにPK戦で負けたCL決勝(2016年)。あれ程、優勝に近づいたことはなく、そこまでの道のりは素晴らしかった。Por desgracia el destino no nos quiso dar ese lugar/ポル・デスグラシア・エル・デスティーノ・ノー・ノス・キソ・ダル・エサ・ルガール(残念なことに運命はウチにその地位を与えたくなかった)」と返答。こちらはアトレティコ4番目のPKをゴールポストに当て、クリスチアーノ・ロナウド(現アル・ナサル)がマドリーにUndecima(ウンデシマ/11回目のCL優勝)をもたらす元凶を作ったファンフランに再び、苦い思い出を蘇らせることになったのでは? 他にも2011年12月に不成績によりマンサノ監督が解任となった後、丁度、三男のジュリアーノと休暇でカターニアにいた時にヒル・マリン筆頭株主から、「el Atlético te necesita/エル・アトレティコ・テ・ネセシータ(アトレティコが君を必要としている)」と監督就任依頼の電話を受けた時の秘話も披露。当時、7、8才だった息子は、「ahí es donde juegan Cristiano y Messi, pero si te va bien no vas a volver más/アイー・エス・ドンデ・フエガン・クリスティアーノ・イ・メッシ、メロ・シー・テ・バ・ビエン・ノー・バス・ア・ボルベル・マス(クリスチアーノやメッシがプレーしているところだね。でもあっちで上手くいったら、もうボクらのところには戻ってこないんだろう)」と寂しがったのだとか。 後ほど、舞台には再婚した奥さんのカルラ・ペレイラさん、2人の幼い娘さんと共に今はもう20才、サラゴサでレンタル修行するまでに育ったジュリアーノも舞台に登場。どうやらナポリでプレーする長男のジョバンニと違い、翌日に試合が控えていたため、土曜のセビージャ戦には来られなかったようですが、それを見て、そういえば、シメオネ監督がアトレティコに来て最初の数年はよく、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場にやはり、まだ小さかった次男のジャンルカ(RFEF2部ヘレス)と彼が一緒に来ていたことを私も思い出すことに。当時は金髪で女の子みたいだったのに今や、立派に2部でプレーする選手になっているのですから、まったく時の経つのは早い。 そしてもう1つ記憶に残ったのは、「Las cosas no pasan por casualidad/ラス・コーサス・ノー・パサン・ポル・カスアリダッド(偶然に物事は起こらない)。いいエネルギーがある時はいいことが起きるし、悪いエネルギーがある時は悪いことが起きる。だから、私たちにはファンの強いエネルギーが必要だ」というシメオネ監督の言葉ですが、まあ、今は応援団のストが常態化していて、メトロポリターノの雰囲気も以前とは違いますからね。ただ、昨年中は普通に皆、チームバスのお出迎えなどもして、一生懸命応援していたにも関わらず、CL敗退してしまったり、アトレティコが最後にリーガ優勝した2021年はコロナ禍でずっと無観客試合。それを考えると、スタンドのファンからの応援のあるなしでチームのパフォーマンスが変化するとは限らない気もするんですが、実際のところ、どうなんでしょうか。 まあ、そんなアトレティコは今週もじっくりジローナ戦に向けて調整して、今のところ前節、累積警告で出場停止だったナウエル・モリーナが右SBに復帰、ジョレンテが中盤に上がって、前線は初先発だったセビージャ戦で2得点を挙げたメンフィス・デパイとグリーズマンのリピートといった感じのスタメンになるよう。ただ、11位のジローナは先週末、弟分のヘタフェに3-2で負けたものの、ここ3試合で11得点とゴールづいているため、3CBの5人守備体制は維持するとはいえ、用心するにこしたことはないかと。2位のお隣さんとは勝ち点差8もありますし、まずはせっかくゲットした3位の座を失わないよう、後続との距離を広げることを考えないといけませんよね。 え、それでここ3試合で1得点しかできず、リーガでは2連続ドロー。とうとう首位バルサとの差が勝ち点9に開いてしまったマドリーは、今年に入って初めてとなるフリーのミッドウィークでしっかり充電できたのかって?いやあ、また悪いニュースがあって、今季は身体の不調ですでに13試合も欠場しているベンゼマが今度は足首を打撲。土曜午後2時(日本時間午後10時)、急に春めいてきて、気温が20℃まで上がる予定のサンティゴ・ベルナベウに私も何を着ていこうかとウキウキしていたエスパニョール戦に出られないことになってしまったから、さあ大変。 いえ、アンチェロッティ監督はメンディと共に、「Estará disponible para el partido frente al Liverpool/エスタラ・ディスポニブレ・パラ・エル・パルティードー・フレンテ・アル・リベルプール(リバプールとの試合には出られるだろう)」と言ってはいたんですけどね。ある意味、1stレグでは2-5の大勝をしていても、先日はマンチェスター・ユナイテッド戦に7-0の大勝した相手を警戒して、CL16強対決2ndレグに備えての温存とも言えなくもありませんが、逆転優勝の前例がない程、距離が開いていてもリーガを諦める訳にはいきませんしね。大体がして、日曜にバルサがアスレティックに勝ち、二桁差にでもなったら、かなり外聞が悪いかと。代わりのCFはロドリゴが務めるそうですが、モドリッチが出場停止から戻ってくるのは心強いものの、今はとにかく、チームのゴール日照りをどうにかしないことには。 相手のエスパニョールも降格圏まで勝ち点差2しかない13位とはいえ、ホセルが11得点、ブライトワイテが8得点と前線が結構、当たっていますしね。そういえば、2010-12年にはRMカスティージャにいた前者は昨季、パリで行われたCL決勝にマドリーの応援に行っていたそうで、ええ、スタッド・ド・フランスにファンがなかなか入れず、ようやくこの木曜にはUEFAが遅れの生じたゲートのチケット所持者には代金を返却すると表明した、あの試合です。うーん、それには帰りにスタジアム周辺で暴徒に襲撃され、被害にあったファンも少なくなかったことから、返金だけでは不足と、マドリーはクラブを通じてチケットを購入したソシオ(協賛会員)への手続きを進めるのを拒否しているようなんですけどね。 ただ、高額所得者のホセルにしてみれば、「Prefiero que no juegue Benzema a recuperar la pasta de la entrada/プレフィエロ・ケ・ノー・フエゲ・ベンゼマ・ア・レクペラル・ラ・パスタ・デ・ラ・エントラーダ(入場券代が戻ってくるより、ベンゼマが出ない方がいい)」そうで、まさしくその望みが叶ったことになりますが、果たして結果は吉と出るか凶と出るか。2012-13シーズン以来、ベルナベウで勝ち点を稼いでないエスパニョールだけに引き分けでも大金星になるため、ビニシウス、ロドリゴ、アセンシオらがしっかりエースの穴を埋めて、4試合ぶりの勝利を掴めるといいのですが。 そして同じ土曜日の夕方、ラージョはアウェイのセルタ戦に挑むんですが、実はこちらもこのところ4試合で3分け1敗。しかもここ2試合は得点できずと、ゴール不足に悩んでいるんですが、最近、ファルカオの出場機会が減っているのも気になるところかと。ええ、この1月からはRdT(ラウール・デ・トマス)も加わったため、チーム内競争も激しくなってはいるんですが、その彼も出戻り後、まだゴールを決めていませんからね。ずっとレギュラーCFとして使われている、アトレティコからレンタル出向中のカメージョもここまで5得点とあまり量産タイプではないため、結局はイシやアルバロ・ガルシアのゴールに頼っているんですが、丁度、ビジャレアルがヨーロッパの試合で疲れている今節と次節は6位に返り咲くいいチャンスになるのでは? 一方、マドリッド勢で1チームだけ残留争いの渦中にいるヘタフェは金曜試合のカディス戦だったんですが、いやあ、何か命拾いした感じですかね。前回もせっかくホームでバレンシアに勝って降格圏を脱出した後、ビジャレアルに負けて逆戻り。また先週、ホームでジローナに勝つと、何とか16位まで這い上がったものの、ヌエボ・ミランディージャでは前半39分にソブリーノに先制され、いえ、一旦はエネス・ウナルのPKで追いついたんですけどね。後半41分になって、ドゥアルテのハンドでカディスにPKを献上し、ルーベン・アルカラスに2点目を決められて、また2-1で負けてしまうのかと思いきや、とんでもない。 何と10分と出たロスタイム中に波乱が起こり、エスピーノのハンドでヘタフェは再びPKをもらえることに。VAR(ビデオ審判)のモニターチェックもあったため、ウナルのこの試合、2度目のPKが決まったのはロスタイム16分という恐ろしい時間でしたっけ。うーん、最後は興奮したファンが投げたペットボトルがヘタフェ選手の頭に当たり、両チームがかなり揉めたりもしていたんですけどね。カディスにリードされた際、ドゥアルテが2枚目のイエローカードで退場しながら、2-2に追いついた弟分の根性は見事だったものの、下にいるセビージャ、アルメリア、バレンシアがまだ試合をしていないため、またしても今節、降格圏に落ちる可能性もなきにしろあらず。現在は12位から19位までが勝ち点3差内にひしめいているだけに、せめて2連勝できれば、一息つける順位に上がれるとはいえ、なかなか上手くいかないものです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.11 21:00 Sat
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こんなに差が出る土日も珍しい…/原ゆみこのマドリッド

「ついにゆとりのミッドウィーク到来だわ」そんな風に私が喜んでいたのは月曜日、今週の予定をチェックしていたところ、リーガ次節が始まる金曜まで何もないことに気がついた時のことでした。いやあ、一応、木曜にはEL16強対決に出場するスペイン勢、セビージャ、レアル・ソシエダ、ベティスがそれぞれ、フェネルバフチェ、ローマ、マンチェスター・ユナイテッドと、コンフェレンスリーグ16強対決でもビジャレアルがアンデルレヒトと対戦するんですけどね。マドリッド勢が絡んでいる試合ではないため、どこか親切なTV局がオープン放送してくれるなら、チラ見してもいいかもぐらいの気分でいられるのは一体、いつ以来のことだったか。 といっても実際、今年になって週中もずっと戦っていたのは1チームだけで、ええ、弟分のラージョとヘタフェは早々にコパ・デル・レイから敗退。アトレティコも準々決勝でお隣さんに負けてしまった上、昨年中にヨーロッパの大会からも完全撤退していますからね。要は年末のリーガ再開から、コパに加え、スペイン・スーパーカップ、クラブW杯、それに伴うリーガの順延試合をこなし、更にCL決勝トーナメントも始まったレアル・マドリーだけが何と、10週間連続となる週2試合ペースとなっていたんですが、幸いなことにCL16強対決は2週に渡って開催。リバプール戦2ndレグは来週水曜に設定されているため、ようやく今週はアンチェロッティ監督のチームだけでなく、ファンも一息つけるのは助かった? まあ、それはともかく、先週末のリーガのマドリッド勢がどうだったかをお伝えしていくことにすると、うーん、今季は1部4チームが2つずつ、ホーム、アウェイ戦に均等に分かれて開催されないせいか、私も1週間おきに梯子観戦三昧の週末を過ごしているんですが、これ程、土日で温度差がある節も珍しい。ええ、まず土曜は寒くはあるものの、お日様が眩しい午後2時のコリセウム・アルフォンソ・ペレスでのヘタフェvsジローナ戦でスタートしたんですが、いや、驚かされました。だってえ、また降格圏の19位に逆戻りしていた弟分が開始早々2分、GKガッサニガのゴールキックをムニルが奪い、ボルハ・マジョラルにパス。エリア内右奥から彼が出したラストパスをエネス・ウナルが撃ち込んで、先制点を奪っているんですから、物凄い速攻じゃないですか。 ただ、前節のビジャレアル戦では前半9分にやはりウナルが先制ゴールを挙げながら、最後は2-1で負けていたため、これだけでは全然、安心できなかったんですが、この日のヘタフェはまるで人が変わったかのように効率的。ええ、14分にはハビエル・エルナンデスがエリア内でハンドを犯し、先日の弟分ダービー、ラージョ戦では同僚のボルハ・マジョラルに頼まれて、PKを譲ったウナルも第1キッカーの本分をまっとうすることに。2点目を追加すると、43分にはマジョラルも自力でエリア前からシュートを決め、前半だけで3点も取ってしまうとは、盆と正月が一緒に来たとはまさにこのこと? ただ、どうやらこれはミチェル監督の話を聞くと、「ウチは前半30分までに70%のドゥエルで負けていて、mi cabeza me decía 5-2-3 y no lo he hecho/ミ・カベサ・メ・デシア・シンコ・ドス・トレス・イ・ノー・ロ・エ・エッチョー(自分の頭は5-2-3のフォーメションにするべきと言っていたが、そうしなかった)」というジローナの戦略ミスのおかげもあったようなんですが、それでも相手はここ2試合で9点も挙げて2連勝しているチーム。一気に3人選手を代えた後半には立て直し、9分にはツィハンコフのアシストでカステジャーノスがゴールを決めると、35分には昨季まではRMカスティージャにいて、トップチームの試合にも何度か出場したことがあるミゲール・グティエレスがエリア前から、選手の密集地帯をスルリと抜けてゴールに収まるシュートを放ち、1点差まで迫られてしまったんですが、大丈夫。 ファンがドキドキして見守る中、そのまま3-2で試合は終わり、ヘタフェはホーム2連勝とすることに。ただ、今は下位6チームが勝ち点3差内でひしめいているおかげで、彼らは再び、降格圏外、それも15位まで一気に上昇することができたんですが、まだまだ安心はできません。ええ、他の試合の結果で24節は結局、16位で終わり、しかも17位のセビージャ、降格圏18位のアルメリアとも同じ勝ち点となれば、金曜開催のカディス戦でも頑張って勝ち点を貯めないと、またレッドゾーンに逆戻りする破目にもなりかねませんからね。私もこのままウナルとマジョラルのゴール運が続いてくれることを祈るばかりではありますが…。 そして土曜は余裕を持って、午後9時にシビタス・メトロポリターノに向かった私ですが、いやあ、まさかこちらでは盆と正月どころじゃなく、クリスマスとサマナ・サンタ(イースター週間)が一緒に来たようなお祭りを見ることになるとは!いえ、元々、このセビージャ戦では故ルイス・アラゴネス監督が残した、アトレティコの指揮官として最多記録となる612試合をシメオネ監督が613試合に更新することから、キックオフ前にその数字が入った記念ユニをアラゴネス監督の息子さんがピッチで贈呈。その額縁と再婚したカルラ・ペレイラさんとの間に生まれた2人の幼い娘さんだけでなく、前妻との長男、今季からナポリでプレーしているジョバンニ・シメオネも丁度、前日にラツィオ戦を済ませ、週末まで試合がなかったせいでしょうかね。 父親の偉業を称えるために駆けつけ、一緒にポーズするなど、確かにその時からお祝いムードではあったんですけどね。試合が始まると、序盤は相変わらず、応援団ストが続行中だったため、スタンドは静かだったんですが、セビージャのエン・ネシリやラキティッチ、グデリなどが試し撃ちした後の23分、グリーズマンの送ったスルーパスから、メンフィス・デパイがGKボノとの1対1を制して、先制点を挙げてくれたから、場内も沸いたの何のって。しかもそれだけでなく、デパイはその3分後にも今度はジョレンテからもらったボールをエリア前から決めて2点目もゲット。いやもう、初先発でこの働きぶりとは、またしてもアトレティコに最高の贈り物をしてくれたバルサに感謝するファンも多かったのでは? ただ39分にはヒメネスの油断が祟って、ゲイエにエリア内奥からラストパスを出され、エン・ネシリに1点を返されたため、前半は2-1とまだ先の読めないスコアで終わったんですけどね。本格的な祝祭が始まったのは後半8分、ロングボールをグリーズマンが頭で落とし、コケがそれを戻したところ、エリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)が決まってからでしょうか。ええ、アトレティコにいた最初の5年間、シメオネ監督のおかげで一流選手として開花したものの、何を思ったか、4年前にはバルサに移籍。そちらでの2シーズンが上手くいかなかった後、再び迎え入れてくれた彼に物凄い恩を感じている当人も真っすぐ、シメオネ監督のところまで走って、抱きついてお祝いしていましたっけ。 「Lo que es un día importante para él es un día importante para mí/ロ・ケ・エス・ウン・ディア・インポルタンテ・パラ・エル・エス・ウン・ディア・インポルタンテ・パラ・ミー(彼にとって大事な日はボクにとっても大事な日)。この試合をマジカルなものにしたいという大きな願望があった」とグリーズマンも後で話していましたが、いや、そのフラッシュインタビューにシメオネ監督が乱入し、彼の頬にキスしていたのはもしや相思相愛?「人としてのグリーズマンが好きだし、サッカー選手としてはもっと評価している。El beso era más para el futbolista/エル・ベソ・エラ・マス・パラ・エル・フトボリスタ(キスはサッカー選手としての彼へのもの)」(シメオネ監督)だそうですが、実はシメオネ教の忠実な信者はグリーズマンだけではなかったんですよ。 ええ、デパイとレマルがモラタとバリオスに代わった後の24分、今度はレマルのエリア内右からの横パスをバリオスが流し、ファーサイドにいたカラスコが決めて4点目が入ったからですが、彼もオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の解説者から、「hombre equivocado/オンブレ・エキボカードー(間違えている男)」と再三、言われる程、残念なプレーをしながら、シメオネ監督は辛抱強く、使ってあげていましたからね。前節のマドリーダービーでヒザの靭帯を断裂したレイニウドが今季、もう出られない中、左のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)としてのカラスコの存在は貴重なため、このゴールが自信回復に繋がるんじゃないかと私も嬉しかったんですが、27分には出場停止だったナウエル・モリーナの代わりを務めていたジョレンテがゲイエをエリア内で引っかけてPKを献上するという逆境も。 ただ、それすらも最近、絶不調に陥っているセビージャには利用できず、ラキティッチがゴールポストに当ててしまったんですが、この頃になるともう、アトレティコの勢いは留まるところを知らず。31分にはモラタが1度はボノに弾かれながら、こぼれたボールをネットに押し込むと、ロスタイムにも敵DFのクリアからシュートを決め、doblete(ドブレテ/1人で1試合2ゴール)達成となれば、スタンドのファンが”Ola(オラ/ウェーブ)”を始めてしまったのも無理はない?6-1の勝利という滅多にないgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)には、プレスルームに向かうエレベーターで一緒になったラジオの実況記者も「こんなにゴールを叫んだ試合は覚えていない」と漏らしていましたが、さもありなん。そう、ここ6試合、ずっと1点しか取っていなかったアトレティコがいきなり爆発するなんて、一体、誰が予想できたでしょう。 え、シメオネ監督のお祝いのために選手たちがこんなにも奮起するなら、もう今季、メトロポリターノでの残り7試合、毎回、最多試合記録更新をピッチで祝えば、アトレティコは爆勝街道まっしぐらじゃないかって?うーん、そうなったら嬉しいんですが、惜しむらくはこの強さを昨年中に発揮できなかったこと。今となってはこの日の勝利でレアル・ソシエダを追い越し、勝ち点差1で3位に上昇したことぐらいしか、喜べないのはちょっと淋しいかと。ただ翌朝、行きつけの売店に行ったところ、アトレティコ大勝利を一面にしたASがすでに完売。F1がトップだったマルカ(どちらもスペインの大手スポーツ紙)は残っていたところ見ると、少なくともファンの慰めにはなったんじゃないかと思いますが、来週月曜のジローナ戦でも彼らのゴール力は持続するんでしょうかね。 そしてマドリッド勢のゴールを9本も楽しめた土曜と完全に対照的だったのが日曜で、ええ、天気までこの日は変わって、ブタルケでのレガネスvsイビサ戦が終わる頃には雨も降り始め、もう寒かったの何のって。おまけに2部最下位の相手に後半19分、CKをクリアしたボールをボガスに決められ、いくらエースのアルナイスが出場停止だったとはいえ、その1点を最後まで返せず、0-1で負けてしまうようでは、やっぱりレガネスで柴崎岳選手が1部昇格するのは今季も難しい? ええ、ここ4試合、2分2敗と白星のないイディアケス監督のチームはこれで10位となり、プレーオフ圏の6位まで勝ち点10と遠ざかってしまったからですが、次に向かったエスタディオ・バジェカスでも私はラージョのゴールを見ることはできず。ええ、前半はアルバロ・ガルシアのシュートがゴールポストに当たるという、惜しいチャンスもあったものの、後半、早めにカメージョから、RdT(ラウール・デ・トマス)に代えても全然、シュートが入らないのでは、悪天候にも関わらず、スタンドを満員にしたファンもガッカリだったかと。相手のアスレティックも終盤にニコ・ウィリアムスが枠を直撃していたため、0-0で終わって不幸中の幸いだったとも言えますが、もうこれでラージョも3分け1敗で4試合白星なしですからね。 そのせいでとうとう、ビジャレアルに抜かれて7位に落ちてしまった上、月曜には8位のオサスナに勝ち点差1に迫られてしまったんですが、イラオラ監督にとって、気になるのはむしろ、ここ最近、下位チームが勝ち始め、残留ラインが当初の見込みの勝ち点40ではなく、42辺りまで上がりそうなことの方だったよう。とりあえず、あと7ポイント稼いで、そこに到達するまでは、来季のヨーロッパの大会出場権のことは考えられないそうですが、まずは土曜のセルタ戦から、巻き返しを図ってほしいところです。 え、最悪の日曜を仕上げしてくれたのはマドリーだったんじゃないかって?その通りで、寒さに耐えかねて、エスタディオ・バジェカス近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に緊急避難した私が、熱いコーヒーを飲みながら見ていたベティス戦の序盤にはベンゼマのFKから、ゴールが入ったんですけどね。ここ数試合、不調を疑われていた当人も盛大に祝っていたんですが、VAR(ビデオ審判)のモニターチェックで主審が壁に入っていたルュディガーの腕にボールが当たり、軌道を変えていたことを確認し、ノーゴールにされてしまうとはツイていない。 そこでお店を出て、試合の後半を自宅近くのバルで見るべく、メトロで移動したんですが、幸か不幸か、前半の残りは大したこともなかったよう。それどころか、最後までマドリーは点を取ることができなかったんですが、もしや再開後7分にボルハ・イグレシアスの至近距離シュートをGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)せず、リードされていたら、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神が発動して、結果は変わっていた? いやあ、終盤など、大攻勢をかけていたマドリーでしたが、アンチェロッティ監督も「En este momento nos falta eficacia/エン・エステ・モメントー・ノス・ファルタ・エフィカシア(今のウチは効率性に欠けている)。余分なドリブルやパス、多すぎるワンツー」と嘆いていたように、15本もシュートを撃ちながら、1点も取れないって、いや、お隣さんなどではよくあることですけどね。結局、試合はスコアレスドローで終わったんですが、前節のダービーでの引分けとは違い、この日はバルサがバレンシアに勝っていたため、とうとう首位との勝ち点差が9まで拡大することに。 リーガ逆転優勝もまた、絶望的と評されるようになってしまったんですが、今年になって初めてフリーのミッドウィークを迎えるマドリーはこの土曜のエスパニョール戦でシュート精度を取り戻すため、バルデベナス(バラハス空港の近く)でじっくり練習することができますからね。その先にはリバプール戦2ndレグも控えているだけに、ここ3試合、アトレティコ戦で18才のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)、アルバロ・ロドリゲスがヘッドで挙げた1点しか取れていないという、ゴール日照りは早いところ解消するに越したことはありませんよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.07 22:00 Tue
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