今更悔やんでも遅いけど…/原ゆみこのマドリッド

2023.02.18 21:30 Sat
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「試合があれば、やっぱり盛り上がるのよ」そんな風に私が羨ましく思っていたのは金曜日、CLグループリーグに敗退後、EL転戦で迎えた16強対決進出プレーオフPSV戦1stレグでサンチェス・ピスファンのファンがgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)に歓喜している様子をTVで見た時のことでした。いやあ、リーガでは今季、一時は降格圏に沈んだこともあったセビージャですが、大会最多となる7度の優勝を誇るELではエン・ネシリ、オカンポス、グデリがゴールを挙げて、ファン・ニステルローイ監督率いるPSVに3-0と堂々勝利。本気でタイトルを狙いにいく姿勢を見せつけることに。

一方、カンプ・ノウに名門マンチェスター・ユナイテッドを迎えた、同じくCLから転戦組のバルサは前日、2018年までの17年間、元審判で審判委員会副理事だったネグレイラ氏の経営する企業に毎年、諮問料として多額の支払いをしていたことが発覚。有利なジャッジをしてもらうための買収行為として疑いをかけられる、一大スキャンダルに見舞われた影響もあったか、試合も2-2と引分けてしまったものの、大物チームの来訪にスタジアムは満員御礼となりましたからね。

それがアトレティコときてみれば、うーん、さすがに天下のマンU相手となると厳しいかもしれませんが、昨年のグループリーグで3位を奪ったシャビ・アロンソ監督のレバークーゼンが2-3と負けていたモナコや、それこそPSV辺りのレベルのチームとの試合があれば、シビタス・メトロポリターノにもファンが大結集。ELに優勝した2018年の再現を目指して皆が一生懸命応援する、いい雰囲気の試合が楽しめたんじゃないかと思うんですけどね。最後の期待を懸けていたコパ・デル・レイですら、準々決勝でお隣さんの前に敗退してしまったため、今季のホームゲームはあと9試合を残すばかり。
あまりに稼働日が少ないためか、とうとう先日は3月1日のUEFAユースリーグ16強対決、フベニル(Bチームの1つ下のカテゴリー)のゲンク戦もメトロポリターノで開催することが発表されていましたが、更に数日前からは昨年7月に大々的にスポンサー契約のプレゼンをしていた中国のアンバーグループ傘下のWhaleFin(ホェールフィン)が仮想通貨事業の不振により、早くもアトレティコから手を引くという不穏な話が。2027年まで毎年4000万ユーロ(約58億円)入るはずだったのがパーになり、ヨーロッパの大会からの完全撤退に輪を掛けて、ますます来季の資金調達が大変になりそうなのだとか。

大体がして、今季はCL決勝トーナメントの生き残りスペイン勢がレアル・マドリーだけ。彼らの16強対決リバプール戦1stレグは来週火曜のため、今週は火水のCL戦はスルーしていたものの、1月にアトレティコからレンタルでジョアン・フェリックスが移ったチェルシーにしてもドルトムントに1-0で負けている始末でしたからね。このまま最初のラウンドで敗退してしまったら、買取オプションは付いていないものの、ジョアンの完全移籍に意欲的というチェルシーフロントもあまり高値はつけてくれないでしょうし、現在10位で来季のヨーロッパの大会出場さえおぼつかないプレミアリーグでプレーするだけでは、とてもベンフィカに払った1億2800万ユーロ(約184億円)の超高額移籍金の元を取れるオファーを出してくれるクラブは現れない?

まあ、そんなことはともかく、このミッドウィーク、マドリッドであったのはクラブW杯のため、先週はモロッコにいたマドリーが水曜に遅れてプレーしたリーガ21節のエルチェ戦だけで、幸い、最近ずっと恒例の午後9時キックオフでも少しは寒さが和らいだんですけどね。入場の際にはエルチェの選手たちがPasillo de campeones/パシージョ・デ・カンペオネス(チャンピオンの花道)を作って迎えてくれて、今季3度目の貼り替えをした芝の上でクラブW杯の優勝トロフィーのお披露目。更にピッチに広げられたトルコとシリアの国旗の前で両国を襲った大地震の犠牲者及び、先日、お亡くなりになったマルコス・アロンソ氏(バルサの同名選手の父でバルサやアトレティコでプレー)へ捧げる黙祷もあったため、かなり待たされたエルチェサイドは集中力が途切れてしまったというのもあったんでしょうか。

だってえ、開始8分など、何人もの選手がドリブルでエリアに入って行くアセンシオを見ているだけで全然、止めようとしないんですよ。そのシュートで呆気なく先制点が決まり、週末にバルサがビジャレアルに勝っていたため、勝ち点11になっていた首位との差を8に戻すことができ、マドリーもプレッシャーから解放されたのも良かったんでしょうね。32分にはエリア内でベンゼマがヘッドしたボールがロコの手に当たってPKをもらうと、ここ2回、アセンシオ、モドリッチが続けて失敗していたマドリーながら、この日は第1キッカーであるベンゼマがソツなくゴールに。

実際、前半ロスタイムにもディエゴ・ガルシアにロドリゴが倒され、再びPKが与えられると、こちらもしっかりベンゼマが決め、ハーフタイム前にもう3-0ともなれば、エルチェがここまで21試合で1勝しかしておらず、未だに一桁の勝ち点9しかないダントツ最下位であるのも納得がいったかと。これだけ点差がつけば、この先もまだまだ週2試合ペースの続くマドリー。アンチェロッティ監督も「No puedo meter siempre los mismos once. Tengo que rotar/ノー・プエド・メテール・シエンプレ・ロス・ミスモス・オンセ。テンゴ・ケ・ロタール(いつも同じイレブンを使う訳にはいかない。ローテーションの必要がある)」と言っていたように、後半は早めの選手交代が始まることに。

ええ、右サイド、第2FW、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)と何でも器用にこなすものの、ビニシウスが出場停止だったおかげで、一番得意な左サイドでこの日、器用されていたロドリゴが序盤に2度、シュートをGKエドガー・バディアに弾かれた後、23分にはカルバハル、バルベルデ、セバージョスがオドリオソラ、チュアメニ、モドリッチに代わると、うーん、もしや平日の寒い夜にわざわざサンティアゴ・ベルナベウに足を運んでくれたファンに気遣った?別にベンゼマを32分までピッチに置いておく必要はなかったと思うんですけどね。最後は35分、モドリッチがvaselina(バセリーナ/ループシュート)でgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、後半、だらけそうになっていた試合を4-0で締めくくってくれましたっけ。

え、この日のゴールを決めた3人が揃って6月には契約が満了、まだ延長が決まっていないというのは凄い偶然じゃないかって?そうですね。モドリッチに関しては夏にベリンガム(ドルトムント)が獲れるか獲れないかにも左右されるようなんですが、アンチェロッティ監督はいつも彼のようなレジェンドはマドリーでキャリアを終えるべきと言っていますからね。同様にベンゼマについても「Ojalá pueda seguir, porque todo el madridismo lo pide a este nivel/オハラ・プエダ・セギール、ポルケ・トードー・エル・マドリディスモ・ロ・ピデ・ア・エステ・ニベル(マドリーもファンも皆、彼のような高いレベルを求めているのだから、残留できるといい)」と前向きだったんですが、対照的な扱いを受けていたのはアセンシオ。

「Puede ser que se quede o no, no lo sé, no me importa mucho/プエデ・セル・ケ・セ・ケデ・オ・ノー、ノー・ロ・セ、ノー・メ・インポルタ・ムーチョ(残留するかもしれないし、しないかも。わからない。あまり気にしていないから)」とはあまりに冷たい感じがしますが、まあいい加減、アンチェロッティ監督も記者会見の度にクロース、セバージョスも含め、契約が終わる選手たちついて質問責めにされて、うんざりしていたのかもしれませんしね。シーズン終了までには時間が沢山あるのと違い、中2日で土曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのオサスナ戦の準備を、火曜のCLリバプール戦を考えながらしないといけない監督としてはいちいち、構っていられないといったところでしょうが…。

そう、バルサが日曜にカディス戦を迎える前に勝ち点差5にして、プレッシャーをかけたいマドリーだったんですが、ベンゼマが疲労蓄積でオサスナ戦をお休みすることになってしまったんですよ。エルチェ戦を急性胃腸炎で欠場したクロースも実はインフルだったようで、まだ出られませんしね。出場停止処分明けでビニシウスが戻るといっても彼の場合、スペイン国内のアウェイでは相手チームのファール攻勢に遭ったり、スタンドからpito(ピト/ブーイング)の的にされるため、クラブW杯前はかなりパフォーマンスが低下しており、その点においてはエル・サダル程、最悪の場所はないと言ってもいいかと。

逆に心強いのはGKクルトワが戻ることで、幸いオサスナもエースのチミ・アビラが出場停止でいませんからね。アラサーテ監督のチームも9位といえど、EL出場圏6位のラージョまで勝ち点3と上を狙える位置にいるため、かなりの激戦になりそうですが、何はともあれ、アンフィールド遠征まで、なるたけケガ人を増やさないようにしてもらいたいものです。

そして今週もゆとり日程を満喫した他のマドリッド勢たちの試合予定もお伝えしておくと、日曜午後4時15分にはラージョがELで快勝したばかりのセビージャをエスタディオ・バジェカスに迎えることに。前節、ヘタフェとの弟分ダービーで引分けてしまったため、CL出場圏4位の兄貴分とは勝ち点5差になってしまいましたが、一応、当面の目標は1部残留をほぼ確定するため、あと7ポイントを稼ぐことですからね。相手は久々のミッドウィーク試合で疲れている上、来週木曜にはPSV戦の2ndレグも控えているとあって、イラオラ監督のチームにとっては白星をゲットするいいチャンスになるんじゃないでしょうか。

同じ日曜の続く時間帯、午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からはアトレティコがメトロポリターノでアスレティック戦キックオフとなるんですが、まさにこれぞ週1試合の冥利と言いますか、先週末のセルタ戦で決勝ゴールを挙げながら、木曜まで打撲が治らず、別メニューだったメンフィス・デパイも金曜には合流。出場に問題ないようなのは助かりましたが、今回はそのバライドスの試合で退場したサビッチが欠場に。シメオネ監督はCBにヒメネスを入れ、前線はグリーズマンとコレアのツートップで試していたようですが、丁度、金曜に2024年までの契約延長が発表されたバルベルデ監督率いるアスレティックはラージョと勝ち点差1の7位。今季はホームでの勝率が低いアトレティコとはいえ、ここは4位死守を貫くと同時に、弟分への援護射撃をしてあげたいところですが、さて。

一方、今節も19位で、勝ち点差1で18位にいるバレンシアと降格圏脱出を懸けた死闘を月曜に控えているのがもう1つの弟分ヘタフェで、うーん、今回はキャプテンのCBジェネは戻ってくるものの、ラージョとの弟分ダービーで退場したアレニャが代わって出場停止。その試合の前半に負傷交代したルイス・ミジャもまだ治っていないため、キケ・サンチェス・フローレス監督も中盤の編成に苦労しているようですが、もしや一番、怖いのは今週、バレンシアが黄金期のレジェンド、バラハ氏を指揮官として任命したことの方でしょうか。

ええ、ガットゥーゾ監督退任後、8回目の暫定監督を務めていたチームマネージャーのボロ氏が3試合で1勝もできなかったための苦肉の策のようでしたが、サッカーにはいわゆる新監督効果というのがありますからね。向こうにも前節アスレティック戦でエースのカバーニが負傷、1カ月の欠場となってしまったという逆境もありますが、そのせいでヘタフェのカンテラーノ(Bチーム出身の選手)、ウーゴ・ドゥーロが古巣への恩返しを狙っているなんて話も聞きますし、今年になって1勝もしていない者同士のこの勝負、果たしてどちらに軍配が挙がるのか。ここは何とか、コリセウム・アルフォンソ・ペレスのファンの応援が選手たちに届いてくれることを私も祈るばかりです。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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スペイン復権への道は遠い…/原ゆみこのマドリッド

「また地獄のハードスケジュールが戻ってくるのね」そんな風に私が同情していたのは木曜日、そろそろ代表戦気分を返上すべく、4月の試合予定を眺めていた時のことでした。いやあ、1月から9週連続週2試合ペースを継続していたレアル・マドリーでしたが、3月第2週にはようやく今年初めてフリーとなるミッドウィークが到来。翌週はCL16強対決リバプール戦2ndレグがあったものの、週末のリーガ・クラシコ(伝統の一戦)の後はインターナショナルマッチウィークのparon(パロン/リーガの停止期間)に入ったため、とりわけベンゼマ(フランス代表を引退)、クロース(同ドイツ)、リュディガー(公式戦がないためドイツ代表をお休み)、アセンシオ(スペイン代表非招集)ら、各国代表のお勤めがなかった選手たちにはいい息抜きになったかと。 それが4月に入った途端、いえ、まずこの日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)、サンティアゴ・ベルナベウに残留争い真っ只中にいる16位のバジャドリーを迎える24節は何せ、もうリーガは先日、首位バルサに負けて差が勝ち点12まで拡大。ほとんど追い越せる可能性がなくなってしまったため、それこそ来週水曜のコパ・デル・レイ準決勝クラシコ、0-1負けの1stレグの結果をカンプ・ノウで引っくり返すという、根性のremontada(レモンターダ/逆転突破)に向けた足慣らしになりそうなんですけどね。 実はその先もマドリーの週2試合ペースは続き、5回ある4月の週末全てにリーガが入るのは当然ですが、12日と18日にはCL準々決勝チェルシー戦がセットアップ。最終週にはミッドウィーク開催リーガもあって、要は30日間で9試合をこなすことに。これはEL準々決勝マンチェスター・ユナイテッド戦があるセビージャの8試合とあまり差がないように見えますが、他のマドリッド勢など、4月は6試合だけですからね。そして5月第1週もミッドウィークリーガがリピートし、あとは勝者の自己責任となりますが、コパ決勝は5月6日。そして第2、第3週はCL準決勝、5月最終週はまたミッドゥークリーガとなるため、アンチェロッティ監督のチームは再び、9週連続で週2試合ペースになることもありえるって、いやホント、私まで気が遠くなりそうですよ。 まあ、あまり先のことまで考えてクラクラしていても仕方ないので、今は火曜にスペインがグラスゴーでプレーしたユーロ2024予選2節がどうだったのか、お話ししていくことにすると。いやあ、これが初っ端から驚かされっぱなしで、まずはスタメン。U21代表時代から、デ・ラ・フエンテ監督はローテーションを習慣にしているとは聞いてはいたものの、まさか土曜に3-0と快勝したノルウェー戦から、一気に8人も変えてくるとはこれ如何に。 要はリピートしたのがGKケパ(チェルシー)、ロドリ(マンチェスター・シティ)、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)の3人だけだったんですが、うーん、ラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)で終盤ピッチに入り、2ゴールを挙げたホセル(エスパニョール)の先発抜擢はわからないでもないんですけどね。DFラインまでカルバハル(マドリー)、ラポール(マンチェスター・シティ)、ナチョ(マドリー)、バルデ(バルサ)から、ペドロ・ポロ(トッテナム)、ダビド・ガルシア(オアスナ)、イニゴ・マルティネス(アスレティック)、ガヤ(バレンシア)へと完全に面替わりしていたのには私も懸念しか沸かず。案の条、開始早々の7分、ポロがエリアのすぐ外で転倒してロバートソン(リバプール)を逃がすと、エリア内奥からラストパスを出され、マクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)に先制ゴールを決められてしまうって、一体、どうなっているんでしょう。 それでも前半残りは積極的に攻めて、ホセルがヘッドを2度程、撃ったスペインだったんですが、1本はバーを直撃、もう1本はGKガン(ノリッジ・シティ)にキャッチされてしまってはねえ。1-0で始まった後半頭から、デ・ラ・フエンテ監督はポロとオジャルサバル(レアル・ソシエダ)に代え、カルバハルとニコ・ウィリアムス(アスレティック)を入れていたんですが、もうこの日は右SBに呪いでもかかっていたとしか思えません。だってえ、6分にはカルバハルが自陣でティアニー(アーセナル)にボールを奪われた上、相手の独走を許し、エリア内奥からのラストパスが今度はダビド・ガルシアを経由して、再びマクトミネイがゴールを挙げているんですよお。これでキプロス戦での2ゴールと合わせて2試合4得点って、もしや彼、負傷で泣く泣くスペイン戦を諦めたハーランド(ノルウェー、マンチェスター・シティ)に憑依でもされていた? その後はミケル・メリーノをイアゴ・アスパス(セルタ)に、ホセルをボルハ・イグレシアス(ベティス)にと手持ちのサラ(スペイン人の得点王)たちを投入して、反撃を図ったデ・ラ・フエンテ監督だったんですが、まあ、ハムデンパークの芝が伸びていたため、「El balón rodaba muy lento/エル・バロン・ロダバ・ムイ・レントー(ボールの転がる速度がとても遅かった)」(セバージョス/マドリー)という事情もあったようですけどね。更にアトレティコからマンチェスター・シティに移ってすでに4年目、流暢になった英語でロドリも「It's the way they play, but for me it's rubbish, always wasting time, provoking you, always they fall. For me, this is not football(それが彼らのプレースタイルなんだろうけど、ゴミみたいなもんだよ。常に時間稼ぎして、ボクらを挑発して、すぐ倒れる。自分にとって、あれはサッカーじゃない)」と怒っていたんですが、いやいや、この世界はゴールが入って何ぼ。 それどころか、試合も終盤になるともう、スペインは右往左往するばかりで、ええ、昨年中など、絶不調のアトレティコの試合で酷いプレーには慣れていたはずの私まで、目が点になる程だったんですけどね。おまけに34分、スペイン最後の交代カードが18才のMFガビ(バルサ)って何?ええ、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)は筋肉痛でベンチ外でしたが、2月から週1ペースになり、しかもここ数試合は控えスタート。体力が余りまくっているモラタ(アトレティコ)を温存する理由が一体、どこにあるんでしょう!そのまま2-0で負け、試合前に「スペインのパフォーマンスがちょっと落ちてくれたら、ウチはポジティブな結果を得られるだろう」と発言。実はFIFAランキングではノルウェーより1つ上の42位だったスコットランドのクラーク監督の予告通りになっているんですから、まったく困ったもんじゃないですか(スペインは10位)。 うーん、それでもデ・ラ・フエンテ監督は「Con el resultado no estoy content/コン・エル・レスルタードー・ノー・エストイ・コンテントー(結果には満足していない)が、この4日間で練習したプレーをチームが見せてくれたことには満足している」と話していたんですけどね。どうもこれまで、スペインマスコミはルイス・エンリケ前監督に対する反感から現監督を持ち上げていたようなところもあったんですが、結局、効率的な攻撃ができなかったり、ゴールが決まらないという、前任者の時代と同じ欠点が露呈してしまった今は少々、風向きが変わりそうな気配も。 まあ、ユーロ予選に関してはその日、ノルウェーがジョージアと1-1で引き分けたのもあって、スペインは2連勝したスコットランドの下で2位ですし、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーを挟んで、9月から再開する残り6試合で3位以下に終わったとしても、彼らにはネーションズリーグのグループ1位特典、12チーム中3チームがユーロに行けるプレーオフ参加権がありますからね。よってそれ程、心配することはないんですが、どうにもU代表から昇格してきた監督には私もいい思い出がなくてねえ。 そう、スペイン黄金期の礎を作った故ルイス・アラゴネス監督の前、2002-04年を担当したイニャキ・サエス監督は1998年U21ユーロ、1999年U20W杯、2000年シドニー五輪優勝と輝かしい経歴の持ち主だったんですが、その業績を支えたチャビ(現バルサ監督)やカシージャス(元マドリー)もA代表に上がっていたユーロ2004にはプレーオフ経由で出場して、グループ敗退する惨状。今はウォルバーハンプトンを率いているロペテギ監督も2013年U21ユーロで優勝したものの、2016年から率いたA代表では2018年W杯開幕直前、マドリーの監督就任発表に怒ったルビアレス会長にクビにされてしまったなんてこともありましたっけ。 その前例を鑑みると、U19やU21でユーロ優勝、東京五輪でも銀メダルを獲ったデ・ラ・フエンテ監督も大人の代表で果たして、上手くいくのかどうかわからないんですが、とにかく次の試合は6月ですからね。その時までには今回、ケガで来られなかったペドリ(バルサ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)らも治っているはずですし、逆にシーズン残り試合で負傷する選手もいるかもしれないとなれば、今、あれこれ悩んでも仕方ないってことでしょうか。 そしてマドリッド勢の週末の試合についても触れておくと、土曜に先陣を切るのは弟分のヘタフェ。代表戦直前のセビージャ戦で勝利して、降格圏から一気に13位までジャンプアップしたキケ・サンチェス・フローレス監督のチームですが、まだ18位とは勝ち点3差しかないとあって、サン・マメスでのアスレティック戦には500人のファンが応援に行く予定だとか。幸いトルコ代表のアルメニア戦で負傷したと言われていたエースのエネス・ウナルも大丈夫だったようで、2試合目のクロアチア戦でも先発していましたからね。相手は来週火曜のコパ・デル・レイ準決勝、1stレグでオサスナに1-0と先勝されて迎える2ndレグの方が大いに気になっているはずなので、きっと勝機はあるはずです。 一方、兄貴分は両方とも日曜試合で、先にベルギー代表予選1節だけで早退してきたクルトワも回復。2月21日のCL16強対決リバプール戦1stレグでハムストリングを痛め、そこからずっと休んでいたアラバ(オーストリア)もエストニア戦で復帰したマドリーが累積警告のナチョ抜きでバジャドリー戦を済ませた後、通常はホームゲームとアウェイに分かれて重ならないようになっているため、かなり珍しいんですけどね。午後9時(日本時間翌午前4時)から、アトレティコもメトロポリターノでベティス戦を迎えることに。 いやあ、お隣さんと違い、彼らはもう今季のホームゲームがリーガの6試合しかないためか、今週火曜にはモロッコvsペルーの親善試合なども開催していたんですけどね。丁度、メトロポリターノの直近2試合ではセビージャ、バレンシアにgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で勝っているだけにファンも期待して駆けつけてくれかと。ただ、今回の代表戦週間では1人だけ被害者が出ていて、メンフィス・デパイ(オランダ)がジブラルタル戦でゴールを挙げた後、試合終盤に負傷。水曜に検査を受けたところ、太もものケガで全治2週間だそうですが、え?ならば、デ・ラ・フエンテ監督がモラタをスコットランド戦で使わなかったのはラッキーじゃないかって? まあ、結果的にそうなりますが、予選2戦目のアイルランド戦では0-1の勝利と苦労したものの、オランダ戦ではゴールを挙げるなど、相変わらずグリーズマンも好調ですからね。カラスコもドイツとの親善試合で得点しましたし、アルゼンチンのW杯優勝祝勝親善試合パナマ戦、キュラソー戦のどちらも出番がなかったコレアはちょっと気の毒でしたが、その分、アトレティコに集中してもらえるかと。ちなみに相手のベティスは6位でCL圏内入りを狙っているんですが、もう3位の彼らとは勝ち点6差になってしまいましたからね。 おまけにカナレスが10月のカディス戦で2枚イエローカードをもらい、退場させられたのはマテウ・ラオス主審の企みだったと、2月のバジャドリー戦の後で蒸し返した件について、いきなり4試合の出場停止処分の裁定が下ったり、フェキルは負傷中だったりと、やや戦力的に苦しいようですが、アトレティコも油断は禁物。せっかくリーガ11試合無敗を続けているのですから、この調子を維持して、過密日程が始まる2位マドリーとの勝ち点5差を少しでも縮める方向で行ってもらいたいものです。 そしてもう1つの弟分、現在8位とヨーロッパの大会出場圏から落ちてしまったラージョは月曜試合でバレンシアにメスタジャで挑むんですが、とにかく今はここ6試合白星なしというスランプを抜け出さないと。ええ、7位のアスレティックとは勝ち点が同じなので、弟分仲間が善戦してくれれば、コンフェレンスリーグ出場圏にはすぐ戻れるんですけどね。U21スペイン代表の親善試合に駆り出されていたカメージョ、遥々日本までコロンビア代表の親善試合で行ったファルカオら、各国代表選手の負傷も聞かれてないため、18位と降格圏に沈むバレンシアとの試合を利用しない手はないかと。実際、勝ち点が39になれば、もう1部残留達成も見えてきますし、イラオラ監督のチームもここが踏ん張り時ですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.31 20:00 Fri
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まずまずのスタートだったけど…/原ゆみこのマドリッド

「今のところ、あまり心配はしなくていいようね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、先週木曜に始まったユーロ2024予選1節のスウェーデン戦に0-3と勝利した後、次は開催国としての出場が決まっているドイツとの親善試合ということもあってか、太ももの筋肉を傷めていたGKクルトワがベルギー代表を日曜に離脱。週明けに検査を受け、週末のバジャドリー戦までには回復しそうだと聞いた時のことでした。いやあ、ドメニコ・テデスコ新監督率いる新生ベルギー代表にはアトレティコから参加のカラスコもいるため、まだ目を離す訳にはいかないんですけどね。 ただ、レアル・マドリーの場合はparon(パロン/リーガの停止期間)直前のクラシコ(伝統の一戦)で2-1と負けてしまったため、首位との差が勝ち点12に拡大。これはもう、天変地異でも起こらない限り、残り12試合で引っくり返る可能性はほぼないため、クリステンセンがデンマーク代表で負傷したとか、オランダ代表に行かなかったデ・ヨングも実はケガをしていたとか、デンベレとペドリもまだ治っていないとか、バルサが戦力減退しているという話を聞いても、それこそ、来週水曜のコパ・デル・レイ準決勝クラシコ2ndレグで、0-1負けしている1stレグから、remontada(レモンターダ/逆転勝ち抜け)の可能性が増した程度にしか思えなくてねえ。 更に言うと、マドリーにとっては4月12、18日のCL準々決勝チェルシー戦の方がずっと重要で、それまでには絶対、クルトワが元気になってくれないとマズいんですよ。そう、「Ya he dicho muchas veces que continuaría toda mi vida en el Real Madrid/ジャー・エ・ディッチョー・ムーチャス・ベセス・ケ・コンティヌアリア・トーダ・ミ・ビダ・エン・エル・レアル・マドリッド(もう何度も一生、レアル・マドリーに居続けたいと言っている)」というアンチェロッティ監督も2024年までの契約をまっとうするには今や、CL2連覇の道しか残されていませんからね。となると、少しでも彼に不安があれば、ムリさせることはない? まあ、先日は親善試合でモロッコに負けた後、ブラジルのサッカー協会会長から直々、チッチ監督がW杯後に退任してから、暫定監督が率いている代表チームの新指揮官として、「カルロは選手たちにも、ファンにとっても一番の候補」とラブコールを贈られていたアンチェロッティ監督ですから、いくらかは気が軽くなったかもしれないんですけどね。それでもビニシウス、ロドリゴ、ミリトンが参加していたブラジル代表以外、まだインターナショナルマッチウィークは終わっていないだけに今はとにかく、モドリッチ(クロアチア)やチュアメニ(フランス)、バルベルデ(ウルグアイ)、そしてスペイン代表のカルバハル、セバージョス、ナチョらが無傷で戻って来るのを待つ日々が続くんでしょうね。 その一方でアトレティコの守護神、オブラクは木曜にカザフスタンに1-2、日曜にはサンマリノに2-0とスロベニアをユーロ予選2連勝に導いて、もう月曜にはマドリッドに帰還。週末休みだったマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習は火曜に再開とあって、勝ち点差5のお隣さんから、2位を奪い取る戦いの準備を始めるのにまったく支障はないかと。ただ、金曜にはグリーズマンが先制点を挙げたフランスが4-0と大勝した反面、その相手のオランダにいたメンフィス・デパイはPKまで失敗するという、前線の選手の吉凶が完璧に分かれてしまったなんてこともあったんですが、大丈夫。 代表合宿中、「最高のフィジカル状態を保つには一定の練習が必要なんだが、バルサではいつもそうという訳にはいかなかった。でもアトレティコの練習方法は完璧に自分に合う。シメオネ監督はいつも全力を求めていて、それがボクをより強くしてくれた」というコメントを出していたFWは、月曜のジブラルタル戦で3-0の勝利を挙げたオランダの先制点をヘッドでゲット。その間、グリーズマンはアイルランド戦で1月から同僚になったばかり。まだ12分ぐらいしか、アトレティコでプレーしていないドハーティ(トッテナムを自由契約)と対決して、パヴァール(バイエルン)のゴールでフランスが0-1の辛勝をするのに貢献していたんですが、まあ、12人も各国代表選手がいると、イロイロありますって。 そして弟分ではヘタフェのエース、エネス・ウナルが1-2勝利の決勝点をアシストした土曜のアルメリア戦終盤でケガしたとの報が入り、未だに残留達成の道半ばにあるキケ・サンチェス・フローレス監督のチームをショックに陥れたんですが、幸い大したことはなく、土曜のアスレティック戦には出られるらしいというのは不幸中の幸いだったかと。ちなみにそのウナルはリーガ12得点で現在、ピチチ(リーガの得点王)であるバルサのレバンドフスキの15得点に次ぐ2位なんですが、その下、11得点で並ぶサモラ(スペイン人の最多得点者)、イアゴ・アスパス(セルタ)、ホセル(エスパニョール)、ボルハ・イグレシアス(ベティス)。更に10得点のモラタ(アトレティコ)を総動員したスペイン代表、デ・ラ・フエンテ新監督のデビューとなったノルウェー戦はどうだったかというと。 いやあ、昨年6月のネーションズリーグ、チェコ戦以来となる代表戦をマラガのファンは大歓迎。月曜にはレガネス戦を控えたラ・ロサレダ(2018年からずっと2部にいるマラガのホーム)も満員となったんですが、出だしと終わりは最高でしたね。そう、ルイス・エンリケ監督の4-3-3から、4-2-3-1にシステム変更したスペインはCFにモラタ、2列目にダニ・オルモ(ライプツィヒ)、イアゴ・アスパス、ガビ(バルサ)を並べたところ、早くも前半13分にはモラタが敵陣エリア前をドリブルでボールを運んでバルデ(バルサ)にパス。彼のスピードのあるクロスをゴール前にいたオルモが軌道を変え、クラブの同僚、GKナイランドを破って先制点を奪ったとなれば、何せ相手には今季、ヨーロッパで最高にノッていると言っていいFW、ハーランド(マンチェスター・シティ)が負傷離脱していませんでしたからね。 W杯で正GKを務めたウナイ・シモン(アスレティック)がケガでおらずとも、2016-18年には先輩として、アスレティックの守護神を務め、8000万ユーロ(約114億円)の契約破棄金額をクラブにもたらしてチェルシーに移籍。スタンフォード・ブリッジで出場機会に恵まれない時期が続いたせいもあったか、2020年10月以来、代表から遠ざかりながら、グラハム・ポッター監督の下でレギュラーを奪回し、来月のCLマドリー戦でもサンティアゴ・ベルナベウでゴールを守ることになるケパが苦労することはないかと思われたんですが、とんでもない。28分にはセルロート(レアル・ソシエダ)のクロスから、アウルスネス(ベンフィカ)にゴール左前至近距離のvolea(ボレア/ボレーシュート)を撃たれ、「Con el alma, con todo/コン・エル・アルマ、トードー(全身全霊を込めた)」(ケパ)のparadon(パラドン/スーパーセーブ)を披露する破目に。 そのすぐ後にはスペインもミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)のシュートがナイランドに弾かれ、追加点が取れないと、うーん、今回、アトレティコの選手はモラタしかいないんですけどね。リードしたら一歩後退する理由はどこにもないんですが、自陣でパスを回しているだけで、1-0のままハーフタイムに入ってしまったんですよ。後半10分にもケパがペデルセン(アサネ・フットボール)のシュートをゴールライン上から必死で掻き出すという、危ういシーンを目にしたデ・ラ・フエンテ監督は早めにプランBに移行。ええ、13分にはガビとアスパスに代え、セバージョスとオジャルサバル(レアル・ソシエダ)を入れると、13分にはカタールには行ったものの、W杯でルイス・エンリケ監督に出番をもらえなかったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)とオルモをスイッチします。 ただ一番の効果があったのはセルロートがエリア内からフリーで撃ったシュートを外し、ソルバッケン監督を「彼がゴールを決めていれば、ノルウェー代表のアウェイ戦最高の出来の試合だったろう」と嘆かせた後の36分。ファビアン・ルイス(PSG)と月曜に33才のバースデーを控えての代表デビューとなったホセル(エスパニョール)の投入で、いやもう、それから僅か2分で前者のクロスを後者がヘッドでゴールにした時には一体、何の冗談かと思ったぐらい。おまけにその2分後にもホセルはオジャルサバルのシュートが弾かれてゴール前に転がったボールを押し込み、doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成しているって、ちょっとお、こんなに簡単にゴールが決まっていいんでしょうか。 ええ、これにはホセルも「No me lo creo aún/ノー・メ・ロ・クレオ・アウン(ボク自身もまだ信じられないよ)」と言っていたんですが、おかげで試合は3-0でスペインの快勝。デ・ラ・フエンテ監督によると、代表には1人参加ながら、RMカスティージャからドイツのホッフェンハイムへのレンタル移籍中に仲を深めた、奥さん同士も姉妹というカルバハル(当時はレバークーゼン)やモラタといった親しい選手の多い彼は、「自信に溢れていて、ha tenido una concentración enorme, por eso ha marcado/ア・テニードー・ウナ・コンセントラシオン・エノルメ、ポル・エソ・ア・マルカードー(集中力がとても高かったから得点できた)」そうなんですけどね。 ただ、以前から代表にいる選手の「Quizá ahora apostamos por un juego más profundo, atacando más los espacios/キサ・アオラ・アポスタモス・ポル・ウン・フエゴ・マス・プロフンドー、アタカンドー・マス・ロス・エスパシオス(多分、今のウチはもっと奥行きのあるプレーをしていて、スペースを突いて攻撃している)」(オルモ)といった意見もあるんですが、ルイス・エンリケ監督時代によく見た、ただ横パスを出しているだけの時間帯もスペインにはなきにしろあらず。ええ、ゴールが入るか入らないかは結構、時の運だったりもしますからね。 実際、16才で入団したマドリーには定着することができなかったものの、24才の今はノルウェーのキャプテンとして、チームを引っ張っているウーデゴール(アーセナル)なども、「セルロートも今日は大きな仕事をしてくれたけど、ボクらにはハーランドの欠場が凄く痛かった。Al final es el mejor delantero del mundo/アル・フィナル・エス・エル・メホール・デランテーロ・デル・ムンド(とどのつまり、彼は世界一のFWだからね)」と言っていたように、スペインにはそういう絶対的FWがいないのが辛いところ。よって、これからもデ・ラ・フエンテ監督はコンビネーションプレーでゴールを探していくしかないと思いますが、とりあえず、予選なら近年のスペインはあまり苦労しないで突破できるはずなんですよ。 ええ、日曜にマラガでのリハビリトレを終え、チームは夜にグラスゴー入り。キプロス戦で3-0の勝利を目撃したハムデンパークで火曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分、先週末ヨーロッパは夏時間がスタート)に行われるスコットランド戦が済めば、残りの相手はジョージア、キプロスとかなり格下ですからね。この5チーム編成のグループで2位までがユーロ2024に行けるんですから、この3月の山場さえ越えればこちらのもんですが、中2日の試合とあって、デ・ラ・フエンテ監督は前日練習でオルモが筋肉痛で早退したのもあり、スタメン変更を考えているよう。 どうやらU21代表を率いていた時分から、それが習慣らしいんですが、今のところ、候補に挙がっているのは殊勲の2ゴールのホセル、途中出場で試合の流れを変えたセバージョス。そして本来は対ハーランドとして初招集されたダニ・ガルシア(オサスナ)が3人CB制でセットプレーや空中戦を武器とするスコットランド相手に先発デビューとなりそうですが、代表ファンとしては3人目のCF、ボルハ・イグレシアスも気になるかと。何はともあれ、まずはこのプレミアリーグでプレーする選手もいるチームとのユーロ予選2試合目を手堅く連勝で終えて、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォー優勝への道筋を作ることができればいいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.28 20:00 Tue
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今度はどんなサッカーを見せてくれるのだろう…/原ゆみこのマドリッド

「今は休むが勝ちよね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、W杯以来のparon(パロン/リーガの休止期間)を迎えた今週末のアトレティコが土日月と練習をしないと知った時のことでした。いやあ、この3月のインターナショナルマッチウィークは代表常連だったコケ、マルコス・ジョレンテ(スペイン)、ビッツェル(ベルギー)、ヒメネス(ウルグアイ、W杯最後のガーナ戦での騒動で4試合の出場停止処分)がお留守番に。1月末にコパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに敗退して以来、ずっと週1ペースでしか試合をしていない彼らだけに却って、代表戦に行った選手たちの方が運動不足にならずにいいんじゃないかとも思ったんですけどね。 週中にはバリオスがスペインU21に、控えGKのゲルビッチもクロアチアに追加招集されたため、ここ数日は前述の4人に加え、サウール、レマル、エルモーソの7人と大量のカンテラーノ(下部組織の選手)たち、そしてピッチの隅で細々とリハビリを続けるレギロンといった陣容でマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションは進行。おそらくシメオネ監督が週末に三男ジュリアーノのプレーするサラゴサ(2部)の試合を見に行きたかったとか、リーガ残り12試合で勝ち点差5あるレアル・マドリーに追いついて、2位にのし上がる計画の詳細を詰めたかったとか、3連休の理由はその辺にあるのかもしれませんが、まあ、見れば、弟分のラージョ、ヘタフェも金土日とお休みしていますしね。 各国代表選手はファルカオ(コロンビア)、ディミトリエフスキ(北マケドニア)、バリウ(アルバニア)、カメージョ(スペインU21)、シス(セネガル)と5人だけの前者には来週末のバレンシア戦に勝って、またヨーロッパの大会出場圏である7位以上に戻りたいという野望がありますし、出向中のエネス・ウナル(トルコ)、ジェネ(トーゴ)、アルデレテ(ポルトガル)抜きで木曜にはレアル・ハエン(RFEF3部/実質5部)と親善試合。マタの2ゴールとラタサの得点で2-3と勝利した後者もようやく、前節のセビージャ戦勝利で13位とジャンプアップしたものの、まだ降格圏とは勝ち点3差だけで残留への闘いはまだ道半ばなんですけどね。それでも皆、3連休にするんですから、別にいいかと思いますが、日曜のクラシコ(伝統の一戦)でバルサに負け、首位との差が勝ち点12に拡大。 リーガ逆転優勝がほぼ不可能となってしまったマドリーだけは土曜も練習するようなのはちょっと不思議なんですが、何せ、アンチェロッティ監督にはDecima(デシマ/CL優勝10回目)を達成した翌年、リーガ、コパ・デル・レイ、CLのメインタイトルを1つも獲れず、解任されたという、第1期2年目の悪夢の再来が迫っていますからね。もちろん当面は4月5日のコパ準決勝クラシコ2ndレグでremontada(レモンターダ/逆転劇)を果たし、オサスナかアスレティックと当たる決勝も制して、まさに当人の下で2014年に優勝して以来、ご無沙汰しているタイトルを獲るのも大切ですが、スペインのビッグ2ではあまりコパは高い評価をされないという傾向も。 よって、契約2年目をまっとうするにはCL2連覇、Decimoquinta/デシモキンタ(15回目のCL優勝)を達成するしかないんですが、それにはまず、4月12日、18日の準々決勝チェルシー戦で勝ち抜ける必要が。次の準決勝でもマンチェスター・シティかバイエルンと当たりますから、全然、楽な戦いではないんですけどね。折しも今はビニシウス、ロドリゴ、ミリトンがブラジル代表に参加中というのもあってか、チッチ監督がW杯後に退任してから、まだ正式な指揮官のいない同代表にアンチェロッティ監督が招聘されるのではないかという噂もチラホラと。それはそれとして、当面はフランス代表を引退したベンゼマ、スペイン代表に呼ばれなかったアセンシオ、その他、メンディ、リュディガー(オーストリア代表をお休み)、ルーカス・バスケスらをしっかり鍛えて、11人の各国代表選手たちがケガをせずに戻って来るのを祈るばかりじゃないでしょうか。 え、それで新監督を迎えたスペイン代表はどうしているのかって?いやあ、昨年のW杯16強対決ではモロッコにPK戦3人連続失敗で敗退して、ルイス・エンリケ監督の契約が延長されず。後任として2013年からU19代表、U21代表を率い、銀メダルを獲った2021年東京五輪の指揮も執ったルイス・デ・ラ・フエンテ監督に選ばれたA代表チームはユーロ2024の予選に備え、月曜にラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会本部で合宿入りしたんですけどね。すでに最初の招集リストからは日曜のクラシコにも回復が間に合わなかったペドリ(バルサ)、オサスナ戦でまたしても負傷してしまったジェラール・モレノ(ビジャレアル)が落ちて、代わりにボルハ・イグレシア(ベティス)、U21に出戻りする予定だったジェレミー・ピノ(ビジャレアル)を追加招集で補った総勢26人はその日の夕方、施設のメイングランドでもう3年ぶりぐらいになる一般公開練習を行うことに。 もちろん私も張り切って見に行ったんですが、開始時間の10分前ぐらいに着いた時には入口に長蛇の列が。聞くと、すでに500人座れるスタンドが満員となり、入場制限がかかっていたそうで、いえ、幸い私はプレス用ゲートから入れもらえて助かったんですけどね。さすがにこれだけ大勢のファンが見学できなかったとなると、世間体が悪いと協会も考えたか、最後は彼らもゴール裏の壁の上に鈴なりになって立ち見するのを許されたんですが、コロナ禍と重なったのもあって、ルイス・エンリケ監督時代には昔は恒例だった初日の公開練習がなくなっていましたからね。 おまけにW杯から16人も選手が入れ替わっていたため、ファンもちょっと戸惑ったんじゃないかと思いますが、え?ブスケツ(バルサ)が代表引退、同僚のジョルディ・アルバも呼ばれずと、2008年から2012年までユーロ、W杯、ユーロとビッグタイトルを3連覇したスペイン黄金期を経験した選手がとうとう消滅。更に代表73キャップ、カタール大会ではキャプテンの1人にもなっていたコケ(アトレティコ)も落選し、1人参加となったモラタがメンバー最多の66キャップで新キャプテンになっていたのはビックリじゃないかって? そうですね、スペイン代表のキャプテンは出場試合の多い順で決まるんですが、今回の副キャプテンなんか、39キャップのロドリ(マンチェスター・シティ)、同33のカルバハル(マドリー)とかなり少なめ。第4キャプテンのオジャルサバル(レアル・ソシエダ)だけはダニ・オルモ(ライプツィヒ、29キャップ)、4年ぶりの代表復帰となるナチョ(マドリー、同22)を差し置いて、デ・ラ・フエンテ監督が指名したんですが、まあ、スビメンディ、ミケル・メリーノと選手を3人出しているのは、セバージョスも呼ばれたマドリーとレアル・ソシエダだけなので、クラブでもキャプテンを務めているオジャルサバルは結構、妥当な人選なのかもしれません。 ちなみに初日の練習で注目を浴びていたのは折しも前夜、カンプ・ノウでの試合でカルバハルにcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞い、ボールがあるのとは全然違うところにいたセバージョスを後ろからド突くなど大暴れ。それでもイエローカードさえ受けず、「Esa jugada es de la roja clara/エサ・フガーダ・エス・デ・ラ・ロハ・クラーラ(あのプレーは明らかにレッドカードだ)」(セバージョス)と批判されていたガビとマドリー勢の関係だったんですが、もしや、他の選手たちがアップやロンド(輪の中に入った選手がボールを奪うゲーム)している間、ガビとバルデ、バルサのティーンエイジャー2人だけが自転車漕ぎだったのは用心のためだった? ただ、セバージョスによると、「監督はボクらの間にイザコザがあったことを知っていて、nos dijo que lo habláramos/ノス・ディホ・ケ・ロ・アブララモス(話し合うように言われた)」そうで、実は彼らはどちらもセビージャに近い村の出身。「Ya sabéis como somos en el sur. Somos muy calientes/ジャー・サベイス・コモ・ソモス・エン・エル・スール。ソモス・ムイ・カリエンテス(南部出身者がどんなだか知っているだろう。とても熱いんだ)」という訳のわかったような、わからないような理由で和解したそうですけどね。 以前、モウリーニョ監督率いるマドリーとグァルディオラ監督のバルサがクラシコ祭りになった時もプジョルやチャビ(現バルサ監督)、イニエスタ(ヴィッセル神戸)らとカシージャス、シャビ・アロンソ(現レバークーゼン監督)、セルヒオ・ラモス(PSG)らが代表にも険悪な雰囲気を引きずって、デル・ボスケ監督が仲立ちに一役買ったなんて話があったのを思い出しますが、大丈夫。選手たちが土曜試合組と日曜試合組に分かれ、後者が軽いランニングに入ったところからはガビとバルデも合流し、マドリー勢の横には行かなかったものの、これといったイザコザは起こりませんでしたっけ。 そして1時間ぐらいで公開セッションは終わったんですが、ファンにとって嬉しかったのはこの日は選手たちが全員、スタンドに近づいて、サインや写真に応じてくれたこと。逆に意外だったのは2月にデ・ラ・フエンテ監督から電話をもらい、「パフォーマンスとは無関係に自分を当てにしていないし、これからも当てにすることはないと言われた」ため、代表引退声明を出したラモスを惜しむ声がまったく上がっていなかったことなんですが、いやまあ、彼は36才という年齢差別を仄めかしていたんですけどね。今回は35才のイアゴ・アスパス(セルタ)や33才のナチョも再招集されていますし、やはり年とは関係なく、招集リスト発表時の記者会見ではただの電話ではなく、ビデオ電話だったと強調していたデ・ラ・フエンテ監督がまったく新しい代表チームを作りたかっただけ? そんなスペイン代表の練習は水曜のマスコミ向け15分限定公開セッションでも見ることができたんですが、やっぱりこの部分だけでは一体、誰が先発候補なのかとか、フォーメーションはどうなるのかとかいった辺りはまったくわからず。いえ、サッカー協会の施設は外に出されても、マハダオンダ(マドリッド近郊)のアトレティコ練習場のように周りをシートで覆われている訳ではないので、遠めながらグラウンドが見えるんですけどね。 それでわかったのかどうかは不明ですが、AS(スポーツ紙)などは木曜にスタメン予想を掲載。GKは負傷中のウナイ・シモン(アスレティック)の代わりに再招集となったケパ(チェルシー)、DFはカルバハル、ラポール(マンチェスター・シティ)、イニゴ・マルティネス(アスレティック)、そしてW杯開幕前に足首ネンザで涙の代表離脱したガヤ(バレンシア)、ボランチとしてロドリ、スビメンディ、その前にセバージョス、アスパス、ガビ、そしてモラタのワントップの4-2-3-1となっていたんですが、もしやそのせいでしょうか。 木曜にブライアン・ヒル(セビージャ)がケガで代表離脱した後、金曜にはユーロ2024予選1節のノルウェー戦が行われるマラガにチームは移動。ラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)での前日練習の方は以前のように一般公開せず、デ・ラ・フエンテ監督は「プライバシーの必要なセッションをするから」と言っていたんですが、月曜からマルベージャ(マラガに近いビーチリゾート都市)で合宿していた相手もスペインマスコミはシャットアウトしていたようですしね。このグループはその他、スコットランド、キプロス、ジョージアという5チーム編成で、うち上位2チームが本大会に行けるという、またしても甘目の予選とはいえ、その辺は真剣勝負の公式戦っぽい? ちなみに今回、ノルウェーの目玉だったエースのハーランド(マンチェスター・シティ)は足の付け根のケガの回復が間に合わないことが判明して、火曜にはイギリスに帰還。彼を見るにはマドリーのCL準決勝まで待たないといけないことになったのは、私も残念なんですけどね。あとは2015年にマドリーに16才の若さで入団しながら、結局、定着できずに現在はアーセナルで活躍しているウーデゴールぐらいしか、楽しみがないのは何ですが、新生スペインのスタートとなるノルウェー戦は土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)キックオフ。今度はただボールを持っているだけでなく、効率的に攻めていけるスペインになっていてくれたらと思います。 <hr> 【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.25 19:30 Sat
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リーガの焦点は優勝争いから2位争いになった…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱりこうなるか」そんな風に私が溜息をついていたのは火曜日、各国代表戦週間のparon(パロン/リーガの停止期間)前最後のリーガ26節はヨーロッパの大会敗退組がことごとく勝っているのに気がついた時のことでした。いやあ、確かに今季、タイトルが獲れる可能性がまったくなくなったとなれば、すでに昨年中にはCLグループ最下位敗退。早々とヨーロッパに別れを告げ、コパ・デル・レイでも準々決勝でお隣さん相手に敗退したアトレティコのように、目標がリーガ4位以内の来季CL出場権ゲットにシフトするのは当然なんですけどね。 この日曜にはEL16強対決で敗退した4位レアル・ソシエダが久保建英選手の先制ゴールなどでエルチェに2-0、同5位ベティスもマジョルカに1-0、コンレフェンス・リーグ敗退の6位ビジャレアルもオサスナに0-3と、3位のアトレティコを追う3チームが揃い踏みで勝利。まあ、シメオネ監督のチームもソツなく勝っていたため、勝ち点差はそれぞれ、3、6、10と変わらなかったものの、4月からは彼らだけが週1試合ペースを満喫という、アドバンテージがなくなりますからねえ。 それどころか、もちろんW杯程の影響はないはずですが、3月の代表戦もアトレティコからは各国代表に総勢11人が出向。ルイス・デ・ラ・フエンテ監督率いる新生スペインにはモラタしか呼ばれていないのとは対照的に、レアル・ソシエダからはオジャルサバル、ミケル・メリーノ、スビメンディの3人が招集されたとはいえ、日本代表に参加する久保選手を加えたって、そこまで多くないはずですからね。ちなみにベティスからは負傷で非招集となったバルサのペドリの代わりにボルハ・イルレシアスが呼ばれ、ビジャレアルは週末の試合でまたしてもふくらはぎを痛めたジェラール・モレノが落ちて、すでにU21スペインに招集されていたジェレミー・ピノがA代表に戻るなんてこともあったんですが、とりあえず、今は代表関連話は置いておくことにすると。 ええ、先週末のリーガでもマドリッド勢には悲喜こもごもがあって、先陣を切ったのは土曜の明るい時間、クラブのレジェンドであるミチェル監督率いるジローナをエスタディオ・バジェカスに迎えたラージョ。うーん、早くも前半23分にはイシがエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、3試合無得点のゴール日照りが終わったのは良かったんですけどね。スタンドのファンが「Isi Seleccion!/イシ・セレクシオン(イシをスペイン代表へ)」と歌っていたのも束の間、29分にはアトレティコからレンタル移籍中のリケルメがカステジャーノスへクロス。そのヘッドはGKディミトリエフスキが弾いたものの、こぼれたボールをツィハンコフに押し込まれ、あっという間に同点にされてしまうことに。 それでも34分にはアトレティコBの同僚、昨季はリケルメと共に2部のミランデスで修行し、3月のU21代表にも一緒に行くカメージョがトレホに繋ぐと、キャプテンが敵DFたちの隙間を縫ってゴールを決め、ラージョは再び勝ち越したんですが、悲劇が起こったのは38分のことでした。ええ、アルバロ・ガルシアがアルナウにエリア内で倒され、今季11本目という、PKを今季1度ももらっていないアトレティコなどにすれば、羨ましいチャンスを得た弟分だったんですが、トレホがGKガッサニガに弾かれてしまったから、さあ大変! というのもすでにラージョはPKを今季3回も失敗していた上、後でイシも「El ultimo fue yo, Raul de Tomas, Trejo/エル・ウルティモ・フエ・ジョ、ラウール・デ・トマス、トレホ(最後に入れられなかったのはボク、RdT、トレホだった)」と言っていた通り、他に自信のある選手もいなかったからでしょうかね。この時はジローナの選手が、トレホが蹴る前にエリア内に入ったとして、せっかく主審がPKのやり直しを命じてくれたにも関わらず、キッカーをリピートしたトレホはボールを横に出しただけ。後ろからイシが駆けつけて撃ったんですが、ゴール枠を大きく外してしまっては…。 後半7分にはハビ・エルナンデスのラストパスをツィハンコフに再び決められ、同点にされたラージョは、ラストプレーでサルビがエリア内でのハンドを取られる危険もあったものの、最後は2-2で引分けて終了。これにはイラオラ監督も「あの2度目のPKはトレホとイシが決めたこと。Lo único que puedo decir es que no lo hemos entrenado/ロ・ウニコ・ケ・プエド・デシール・エス・ケ・ノー・ロ・エモス・エントレナードー(唯一、言えるのは練習ではやっていなかったということ)。ああいうのをやるのもいいが、練習していればの話だ。PKについては心配している。おかげで幾つも勝ち点を失ったからね」とかなりおかんむりだったよう。 何せこれでラージョは6試合連続白星なしと、順位もヨーロッパの大会圏外の8位に落ちてしまいましたからね。ただ、降格圏とは勝ち点差9の余裕があるため、各国代表選手も5人に留まるこの2週間を利用して、4月3日(月)のバレンシア戦で再度、上を目指してもらいたいものですが、え?土曜の夜の試合でそのバレンシア相手に戦い方の見本を示してくれたのが、兄貴分のアトレティコじゃなかったかって? その通りで、バジェカスでは背中から吹きつける冷たい風に閉口して、シビタス・メトロポリターノに向かう前に家に寄って厚着してきた私だったんですが、この日は1月下旬のバジャドリー戦以来、ストを続けていた応援団が5試合ぶりに活動を再開。久々に入場時のクラブ歌合唱が終わってもスタンドが賑やかだったんですが、まあ、最近は一般のファンも応援団のリードなしに声を出すのに慣れてきていましたね。おかげで前回のホームゲーム、セビージャ戦など、チームは大量6点のgoleada(ゴレアダ/ゴ-ルラッシュ)を披露する程に成長。 よって、序盤からカラスコやメンフィス・デパイがシュートを放ち、とうとう前半23分にはマルコス・ジョレンテが出したスルーパスにグリーズマンが反応。見事に先制ゴールを決めてくれたのが、応援団のおかげだったかどうかは定かではないんですが、むしろ場内一斉、飛び跳ねて喜んでいたことの方が選手たちの気を散らしましたかね。ふと気がつくと、29分にはティエリのアシストでウーゴ・ドゥーロが同点ゴールを挙げていたから、ビックリしたの何のって! でも大丈夫。実はバレンシアのカウンターが進行している間、敵エリア付近でずっとデパイが倒れているのが私も気になっていたんですが、アトレティコの選手たちの猛抗議やスタンドのファンからのpito(ピト/ブーイング)を盛大に浴びた主審がVAR(ビデオ審判)の注進もあってか、モニターを見に行くことに。その結果、デパイを倒したフルキエのファールが判明し、ゴールは無効とされたため、試合は1-0のまま、ハーフタイムに入ることに。 そして後半も血気盛んなまま出て来たアトレティコは、いえ、バレンシアがなかなかピッチに現れなかったのには少々、私もイライラしたんですけどね。再開から4分もしないうち、今度はロッカルームでシメオネ監督が、「Lo habíamos hablado en el descanso para estar más fríos para definir/ロ・アビアモス・アブラードー・エン・エル・デスカンソ・パラ・エスタル・マス・フリオス・パラ・デフィニール(ハーフタイムにフィニッシュする時、もっと冷静でいるように話した)」というカラスコがデ・パウルからパスを受け、ゴール右側からのシュート。2点目を決めてくれたとなれば、相手はバラハ新監督になってから、1-0以外のスコアを知らないバレンシアだけにもう、大船に乗った気分になっていい? それでもシメオネ監督は手綱を緩めず、後半18分にはデパイ、デ・パウルをモラタ、レマルに交代。何せ、最近は控え選手がピッチに入るたびにゴールを挙げ、今季通算12得点となっているアトレティコですからね。この日も例外ではなく、22分にはグリーズマンのスルーパスから、エリア内に入ったモラタがクロスを上げ、小柄なレマルが悠々、ヘッドで3点目のゴールをゲットって、うんまあ、バレンシアの守備陣が崩壊していたのは事実ですけどね。最後は3-0の堂々勝利となり、ファンはここ10試合の無敗中、何度繰り返したかわからない、「どうしてW杯前にこのパフォーマンスを見せられなかったのだろう」という疑問をこの日も抱くことに。 何にせよ、試合後はジョレンテも「No podemos saberlo, seguimos trabajando igual, antes del Mundial no nos salía nada y ahora todo/ノー・ポデモス・サベールロ、セギモス・トラバハンドー・イグアル、アンテス・デル・ムンディアル・ノー・ノス・サリア・ナーダ・イ・アオラ・トードー(同じように取り組んでいるから、知りようがない。W杯前は何もかも上手くいかなくて、今は全部が上手くいく)」と言っていたように、選手たちもあれだけ不調だった理由はわからないようですし、後ろを振り返っても仕方ないんですけどね。この白星で一時的に2位のレアル・マドリーと勝ち点差が5に縮まったとはいえ、土曜の夜はやっぱりお隣さんを追い越すのは難しいだろうなと思っていた私でしたが…。 翌日曜はまず、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで弟分のヘタフェとスペイン勢EL唯一の生き残り、セビージャの対戦を見に行ったんですが、開始数秒でせっかくエネス・ウナルがGKボノからエリア内でボールを奪ってチャンスを作ったものの、敵DFに取り返されてモノにできず。35分にはボルハ・マジョラルのパスをフリーでもらいながら、ムニルがシュートを外してしまい、0-0のままでハープタイムに入ったところで、泣く泣くスタジアムを出ることに。いやあ、次の時間帯だったマドリーはカンプ・ノウでプレーするため、バル(スペインの喫茶店兼バー)観戦だったとはいえ、そこは天下のクラシコ(伝統の一戦)ですからね。アトレティコのアウェイゲーム時のようにコリセウム近辺のお店で席を確保する自信がなかったため、万全を期して、キックオフ30分前に近所のバルに辿り着きたかったからですが、おかげで弟分の奮闘を見逃す破目になるとは! ええ、メトロに乗ってインターネットラジオを聞いていた後半5分、まったく同じ組み合わせで今度はムニルが先制点を挙げることに成功。ようやく自宅最寄り駅を出て、あと一歩でお店到着という瞬間、後半ロスタイム5分に終盤、交代出場したマタのスルーパスからウナルが2点目を決めたと聞き、何とかTVのリプレーには間に合ったんですが、このホーム3連勝となる2-0の勝利は効果抜群でした。18位にいた彼らが一気に13位までジャンプアップって、いや、ホントに今季は下位が大混戦で、ヘタフェもまだ降格圏とは勝ち点3しか離れていないんですけどね。代表戦明け、苦手のアウェイでのアスレティック戦でも白星を掴めれば、かなり安心できるんですが、こればっかりはねえ。 そして私がやっとこ、画面が見られる最後のストールを確保して観戦したクラシコはというと。うーん、開始早々にベンゼマやレバンドフスキが試し撃ちした後、前半9分にビニシウスのエリア内右奥からのシュートがアラウホの頭に当たり、オウンゴールとなってくれた時には先日、ミリトンのオウンゴールでバルサが0-1勝利したコパ準決勝1stレグの逆バージョンになってくれる気もしたんですけどね。やはり先週水曜にはCL16強対決リバプール戦2ndレグをこなし、しかもその試合と同じスタメンを並べたマドリーより、1週間丸々練習に当てられたバルサの方が元気だったんでしょうか。 サンティアゴ・ベルナベウでの専守防衛ぶりはどこへやら、積極的に前に行ったのが功を奏したか、ハーフタイム直前にはラフィーニャのシュートがDFにブロックされた後、セルジ・ロベルトに同点ゴールを決められてしまうのですから、困ったもんじゃないですか。後半が進むにつれ、アンチェロッティ監督はロドリゴ、メンディ、アセンシオ、セバージョス、チュアメニと次々、フレッシュなメンバーを投入し、自慢のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神の発動を期待したんですが、え?そもそも1-1の同点なんだから、そんなの発動するはずないって?いえ、36分にはカルバハルのクロスをアセンシオがゴールにして、とうとう勝ち越し点が入ったかに見えたんですけどね。 これがVAR判定により、ミリメトロ単位でアセンシオがオフサイドだったとされたのが運の尽き。引き分けでは勝ち点差9のままですから、こうなるとなりふり構っていられず、バルサを自陣エリア内に囲い込む大攻勢に転じたマドリーだったんですが、まさか、「Fuimos más a lo loco, eramos casi todo jugadores de ataque/フイモス・マス・ア・ロ・ロコ、エラモス・カシー・トードー・フガドーレス・デ・アタケ(もうクレージーな状態で、ウチはほとんど選手全員がアタッカーだった)」(セバージョス)というロスタイム2分にカウンターを浴びてしまうとは!バルデのパスから、セルジ・ロベルトに代わって入っていたケシエが決め、一気に12差をつけられてしまうとは何と、運命は残酷なんでしょう(最終結果2-1)。 うーん、「Hay que ser honestos. Seguiremos peleando, pero hay cuatro partidos de diferencia/アイ・ケ・セル・オネストス。セギレモス・ペレアンドー、ペロ・アイ・クアトロ・パルティードス・デ・ディフェレンシア(正直にならないと。ボクらは戦い続けるけど、4試合の差がある)。難しいよ」とクルトワが言う前から、この時期に9差の時点でもそこから逆転優勝した前例はありませんでしたからね。この日はオフサイドによるゴール取り消しだけでなく、ガビがカルバハルの顔にcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞っても、ボールを持っていないセバージョスを後ろからド突いてもお咎めなしだったりと不運なところもあったんですが、彼らもリーガ優勝はもう諦めて、アトレティコとの2位争いに専念した方がいいかと。 珍しくVAR判定に疑義を申し立てていたアンチェロッティ監督も「Si jugamos así, ganaremos algo. Seguro/シー・フガモス・アシー、ガナレモス・アルゴ。セグロ(今日みたいにプレーすれば、きっと何かは勝ち獲れる)」と言っていたんですが、チェルシーとの準々決勝を控えたCLに加え、マドリーには1stレグの0-1負けでレモンターダ条件を満たしたコパ準決勝2ndレグも4月5日にありますしね。実際、第1期では最初のシーズンにクラブの悲願だったDecima(デシマ/10回目のCL優勝)達成しながら、次のシーズン、リーガ、コパ、CLで無冠となるとあっさり、解任されてしまったアンチェロッティ監督となれば、かなり真剣にこの事態を受け止めていると思いますが…何はともあれ、今は13人と大量出向している各国代表選手たちが無事に帰って来てくれるのを待つばかりでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.22 20:00 Wed
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毎年、同じチームと対戦している気がする…/原ゆみこのマドリッド

「またチェルシーなんだ」そんな風に私がデジャブを覚えていたのは金曜日、丁度、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場外から、覆いのシート越しに今季はもう、ヨーロッパの大会とは何の関係もないアトレティコのセッションを覗き見していた時のことでした。いやあ、もう最近は何でもネットストリーミングしているため、UEFA本部で行われたCL準々決勝組み合わせ抽選会もスマホで眺めていたんですけどね。ご存知の通り、今季CLスペイン勢唯一の生き残り、レアル・マドリーはこのロンドンのチームとは昨季の同ラウンドでも当たり、1stレグでベンゼマのハットトリックで1-3と快勝しながら、2ndレグでは0-3と逆転までされた後、根性のremotanda(レモンターダ/逆転劇)精神が発動。 ロドリゴが総合スコアをタイにするゴールを挙げ、延長戦でベンゼマも決めて、2-3で負けながらも総合スコア5-4で突破すると、準決勝でもマンチェスター・シティを1stレグ4-3の負けから、2ndレグ3-1勝利で総合スコア6-5の逆転勝ち抜けをすることに。そして決勝ではリバプールを倒し、Decimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)達成というのはまだ記憶に新しいところなんですけどね。そのせいで忘れがちですが、実はチェルシーとは2年前、ジダン監督時代の2020-21シーズンにも準決勝で対戦していて、この時は1stレグで1-1と引分けた後、2ndレグで2-0と負けて敗退しているんですよ。 その後、トゥーヘル監督率いるチェルシーがマンチェスター・シティを破って優勝したというのはともかく、注意すべきはホーム、アウェイの順番で、ええ、昨季決勝トーナメントの3連続レモンターダは全て、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグあってのことでしたからね。逆に今季は4月12日の1stレグがベルナベウ、18日の2ndレグがスタンフォード・ブリッジと、これは敗退した2年前と同じパターン。もちろん、3週間前のCL16強対決リバプール戦1stレグではアンフィールドで前半14分までに2点奪われながら、大量5点を取って、1試合完結レモンターダも見せているマドリーとなれば、ホーム限定のお家芸とは言えないとはいえ、ちょっと気にならなくはない? どちらにしろ、アトレティコから1月にレンタル移籍したジョアン・フェリックスもいるチェルシーとのCL準々決勝はまだかなり先の話なので、今は水曜の16強対決2ndレグで敗退が決まったリバプールのクロップ監督が、「CLに優勝するにはマドリーとマンチェスター・シティに勝たないといけない」と発言。それが金曜の抽選では、マドリーがチェルシーに勝てば、マンチェスター・シティvsバイエルン戦の勝者と準決勝で当たることも決まることに。よって、アンチェロッティ監督のチームはライプツィヒ戦2ndレグでハーランドの5ゴールを始め、計7得点のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を披露したシティとの対戦を避けられるかもしれないのを喜ぶ程度にしておきますが、準決勝でもマドリーは1stレグがホーム開催となるため、今季はレモンターダのエクスタシーをベルナベウのファンが体験できないのは残念ですよね。 え、それでリバプール戦2ndレグはどんな試合だったのかって?そうですね、初戦で2-5と大差がついていながら、さすがCLだと気合が入るんでしょうか。午後7時半頃にはベルナベウ周辺にマドリーのチームバスをお出迎えするファンが大勢集まっていたようで、私はその光景を近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のTVでコーヒーを飲みながら確認した後、メトロでスタジアムに向かうことに。クロップ監督がスタメンにサラー、ダルウィン・ヌニェス、ガプコ、ジオゴ・ジョタの4FWを並べる超攻撃的布陣できたと知った時にはちょっと、ワクワクしたものでしたが、アンフィールドで序盤に痛い目に遭ったマドリーの選手たちはよく学んでいたよう。 ええ、fondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側席)のファンが掲げるモザイクと昨季の決勝前にGKクルトワが口走り、アトレティコファンに不快感を与えた「El lado bueno de la historia/エル・ラドー・ブエノ・デ・ラ・イストリア(歴史のいい方の側)」と書かれた横断幕に迎えられてキックオフすると、6分にはリュディガーがエリア前で転倒。逃したヌニェスのシュートをクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)して、ドッキリさせられたなんてこともあったんですけどね。アンチェロッティ監督も「Me ha gustado el equipo, a nivel psicológico/メ・ア・グスタードー・エル・エキポ、ア・ニベル・シコロヒコ(チームの心理的なレベルが気に入った)。ウチは3点リードしていて、足が遅くなっても仕方なかったのにそうならなかった」と言っていたように、1stレグでザル状態だったアラバがまだ負傷中のため、最初からナチョを左SBに置いたのも功を奏し、そう簡単にリバプールも攻め込めません。 マドリーも早い時間にはビニシウスの至近距離シュートをGKアリソンが好セーブしたり、カマビンガのエリア外からの一撃がゴールバーで逸れたりしたものの、両チーム共、前半は無得点で終わります。これであと45分間、スローインやCKなどに時間をかけて、何事もなく過ごせば勝ち抜けるマドリーに対し、クロップ監督は後半11分には戦略を修正。ヌニェスとジョタをフィルミーノとエリオットに代えてきたんですが、ほとんど流れは変わることなく、いよいよ試合は最後の15分に残すばかりに。ゴール祝いができるのを今か今かと待っていたファンたちをようやく、満足させてくれたのはお馴染みの2人でした。 33分、足首を打撲して先週末のエスパニョール戦を休んでいたせいで、その日も本調子には見えなったベンゼマですが、そのシュートが敵に当たって転がったボールをビニシウスが拾ったところ、いやあ、自身で撃とうとして失敗し、彼は倒れてしまったんですけどね。地面から足を伸ばしてパスを送り、それを何故か、誰にもマークされていなかったベンゼマが蹴り込んで、ゴールを挙げているんですから、fondo norte/フォンド・ノルテ(ゴール裏北側席)の最上階に陣取った2500人のビジターファンを除いて、どんなに場内が沸いたことか。 これで総合スコアが6-2となったため、「Quería hacer los cambios para parar el partido si teníamos problemas al final/ケリア・アセール・ロス・カンビオス・パラ・パラール・エル・パルティードー・シー・テニアモス・プロブレマス・アル・フィナル(終盤に問題があった時、試合を止めるために交代カードは使いたかった)というアンチェロッティ監督も選手の温存を開始。何せ、週末にもリーガ・クラシコ(伝統の一戦)が控えていますからね。いくら、この日はモドリッチやクロースが良かったとはいえ、というか、良かったから尚更、疲労を抱えてカンプ・ノウに行ってほしくなかったんですが、やっと37分過ぎから、大きな拍手を浴びてモドリッチとベンゼマ、続いてクロースとビニシウス、そして最後はカルバハルもピッチを退くことができましたっけ。 え、試合が無事に1-0で終わり、アンフィールドでは1stレグ当日にお亡くなりになったマドリー名誉会長のアマンシオ氏にリバプールが花籠を捧げる気配り。それに感謝して、もうイギリス人たちはあまり残っていなかったものの、You’ll never walk aloneの歌が場内に流れたのは感動的だったとはいえ、ゴールを挙げた後、足を引きずっていたベンゼマは大丈夫なのかって?まあ、当人も「スネに強い打撲を受けただけ。Estaré el domingo/エスタレ・エル・ドミンゴ(日曜は出られるよ)」と言っていたため、多分、午後9時(日本時間翌午前5時)からのクラシコには問題ないはずなんですけどね。 その治療のせいか、決勝ゴールの殊勲者は試合後のミックスゾーンには現れず、クルトワが1人でTV、ラジオ、文字媒体メディアに延々と応対。折しもロスタイムにはマドリーエリア内でリバプールの選手の手にボールが当たり、ペナルティかどうかのVAR(ビデオ審判)判定(リバウンドでPKなし)があったせいもあるんでしょうかね。アンチェロッティ監督とクロップ監督も前日のマンチェスター・シティvsライプツィヒ戦でハーランドが1点目を挙げたPKの原因であるハンドについてありかなしか、話をしたそうですが、マドリーの守護神の思考は遥か先に。 まさか、その試合のスペイン人VAR担当審判が2年前のマドリーダービーの主審と同じと気がついて、「彼は同じようにはっきりしていたアトレティコのハンドを取らなかった。Me gustaría preguntarle por qué/メ・グスタリア・プレグンタールレ・ポル・ケ(どうしてなのか、訊きたいよ)」とはもしや、クルトワって結構、しつこい?マドリー番記者の間でもいつも試合後、マイクの前で喋るので有名な彼ですが、一旦、私がクロップ監督の記者会見を聞くため、ミックスゾーンを中座。終わって戻って来た時にもまだ話していて、最後はハーランド評までイギリス人記者たちに英語でペラペラやっていたのにはビックリさせられたかと。 まあ、現在、勝ち点9ある首位との差を縮めるにはバルサ戦でもクルトワの活躍が欠かせないため、当人が気分良く帰っていったのはいいことなんでしょうが、ペドリの回復が間に合わず、デンベレも欠場するとはいえ、EL16強対決プレーオフで敗退した相手は今週もミッドウィークフリーでしたからね。向こうの方が体力的に有利なのは気に入りませんが、そうそう、そのバルサを負かしたマンチェスター・ユナイテッドは木曜の16強対決2ndレグでもベティスに0-1と勝ち、総合スコア5-1で準々決勝に進出。レアル・ソシエダも1stレグでのローマの2-0勝利を引っくり返せず、コンフェレンス・リーグでもビジャレアルがアヤックスに敗退させられる中、奇しくも金曜の抽選では、フェネルバフチェに総合スコア2-1で勝って、マドリー以外唯一、ヨーロッパの大会のスペイン勢生き残りとなったセビージャと対戦することに。 おかげでリーガでは降格圏と勝ち点2差という、残留争いの渦中にあるサンパオリ監督のチームは気持ちがかなり、大会最多の7回優勝しているELの方に向くことになったんじゃないかと思いますが、それがもしかしたら、日曜にセビージャをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるヘタフェの大きな味方になるかも。ええ、最近は毎節、一時的に降格圏を抜け出しても、全カード終了後にはまた戻ってしまうという蟻地獄状態から、弟分チームが脱出するにははっきりくっきり、2連勝ぐらいしないといけないからですが、アランバリが足首の再手術となり、代表戦明けまで戻って来られないのはちょっと辛いところでしょうか。 そしてもう1つの弟分、ラージョは土曜にジローナとエスタディオ・バジェカスで対戦なんですが、折しも相手はヘタフェ、アトレティコとマドリッド勢に2連敗中。このところ、5試合白星がないだけでなく、3試合連続無得点のイラオラ監督のチームとあって、いきなりゴール日照りを解消するのは難しいかもしれませんが、こちらで注目したいのはカメージョとリケルメ、アトレティコのレンタル移籍中カンテラーノ(Bチームの選手)対決でしょうか。ええ、彼らは昨季一緒に2部のミランデスで修行した後、今季はそれぞれラージョとジローナに分かれて1部での実戦を積んでいるんですけどね。2人共、サンティ・デミア監督に3月のスペインU21代表に招集されたため、その合宿中にはシメオネ監督のチームにどちらが先に戻れるか、話したりするのかも。 そう、金曜には来週から始まる国際マッチウィークでユーロ2024予選のノルウェイ戦とスコットランド戦に挑む、スペインA代表の招集リストの発表もあって、いやあ、それも私はマハダオンダでの練習伺い中にスマホで見ていたんですけどね。W杯後に退任したルイス・エンリケ監督の後を継いだ、それまでU21を担当していたルイス・デ・ラ・フエンテ監督はカタール大会のメンバーから15人もの選手を一気に変更。細かいことは省きますが、それでトバッチリを喰らったチームの1つがアトレティコで今回、招集されたのは何と、ここ2試合で3得点しているものの、土曜午後9時のバレンシア戦でも3試合連続控えとなる予定のモラタだけなんです! 実際、1月初旬にバルサに負けて以来、リーガ9試合で無敗の彼らは4位のレアル・ソシエダと勝ち点3、5位のベティスとは6の差をつけて、堂々と3位の座に君臨。コパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに負けて以来、2月からはずっと週1ペースで体力も余っているというのに一体、コケやマルコス・ジョレンテにこれ以上、休養日を与えてどうしようっていうのでしょう。いえ、もちろんグリーズマン(フランス)やカラスコ(ベルギー)、オブラク(スロベニア)、コレア、デ・パウル、モリーナらのアルゼンチン勢といった常連は各国代表に出向するんですけどね。もうこうなったら、paron(パロン/リーガの中断期間)を挟んでメトロポリターノで連続開催となるバレンシア戦、ベティス戦でも白星街道を維持。いずれは勝ち点差8のマドリーを抜かし、2位でリーガを終えるぐらいしないと、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーでもスペイン代表のアトレティコ勢は増やしてもらえない? ちなみに現在、ヘタフェと同じ勝ち点でギリ降格圏外の17位にいるバレンシアは今回、4試合を負傷で欠場していたカバーニが復帰。ボロ暫定監督をバラハ監督が引き継いでその間、全て1-0での2勝2敗と、メスタジャで勝って、アウェイでは負けているんですが、アトレティコも6点を奪って大勝した前回のホームゲーム、セビージャ戦以外、1試合1得点が最近の基調路線ですからね。恐らく渋い展開になるんじゃないかと思いますが、チケットの売れ行きもいいようですし、ファンが喜ぶ結果を出せるといいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.03.18 20:00 Sat
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