マドリーだけがミッドウィークも戦っている…/原ゆみこのマドリッド

2023.02.11 21:00 Sat
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©Atlético de Madrid
「何か余裕あるみたいね」そんな風に私が戸惑っていたのは金曜日、水曜にはクラブW杯準決勝のアル・アハリ戦に出ていたレアル・マドリーのナチョが第4子誕生に備えて緊急帰国。木曜に次女のララちゃんを抱っこしている姿がインスタに上がっていると知った時のことでした。いやあ、マルチDFの彼は普段、控えであることが多いんですが、年明けからずっと週2試合ペースが続くマドリーは最近になって、負傷者が増加傾向に。守備陣でもアラバ、メンディ、カルバハル、ルーカス・バスケス、ミリトンが稼働不能となっていたため、ここ数試合、ナチョがスタメンに入ってヘルプしていたんですが、それだけに決勝前日の金曜にモロッコのラバトに戻る弾丸旅行を許すとは、アンチェロッティ監督も本当に心が広い。

いえ、アラバは先週末のリーガ、マジョルカ戦から復帰していますし、準決勝に出なかったカルバハルは突発性発熱で休んだだけで、翌日には回復。木曜夜にはマドリッドからミリトンがベンゼマと共にやって来て、DF陣の人員不足もほぼ解消しつつあるんですけどね。少々、難を言えば、全治2カ月と長いリハビリ期間を要するメンディの左SBのポジションをずっと不慣れなカマビンガに任せておくと、相手に決定力が欠けていたため、これまで致命傷には至らなかったものの、いつかは裏を突かれて痛い目に遭うんじゃないかということぐらいですが、そこはアラバを移動させるか、頼りのナチョを使えば、大ごとにはならない?

まあ、その辺はアンチェロッティ監督の人事起用の妙を楽しみに待つとして、今はアル・アハリ戦がどうだったのか、お伝えしていくことにすると。タイトルの懸かった大会の準決勝ということで、この日は中盤にクロース、モドリッチ、チュアメニのレギュラートリオ、ベンゼマの代わりにはfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)としてロドリゴを配置したマドリーでしたが、エジプトの強豪相手になかなかエンジンがかからなかったよう。ようやく30分近くなって、ビニシウスやロドリゴが敵ゴールを脅かし始めたんですが、42分に入った先制点は自陣エリア前でバックパスミスをした向こうの自業自得だった風も。
ええ、ボールを拾ったビニシウスがエリア内に入り、GKエル・シェナウィの頭上を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)で決めたんですが、やっぱり彼にもモロッコ人のマドリーファンが多いスタッド・ムーレイ・アブドゥラの雰囲気がプラスになったんでしょう。というのも昨今、スペイン国内ではアウェイに行く度、スタンドからは容赦のないpito(ピト/ブーイング)を浴びるわ、敵選手たちの執拗なファールの標的になるわと、当人もサッカーだけに集中できない状態が続いていましたからね。

これを機に調子を上げていってもらいたいところですが、0-1でハーフタイムに入った試合のスコアは後半開始早々、再び動くことに。ええ、今度はモドリッチが出したスルーパスから、ロドリゴが撃ったシュートはGKに弾かれてしまったものの、エリア内に転がったボールをベルベルデが拾い、落ち着いて決めてくれます。何せ、前日記者会見では自ら、W杯でグループリーグ敗退したウルグアイ代表から戻って来た後、スランプに陥ったことを認めていた彼ですからね。おかげでparon(パロン/リーガの停止期間)前の8本で止まっていたゴール数も1つ増え、今季はバルベルデが10得点することにコーチライセンスを賭けていたアンチェロッティ監督もこれで少しは安心できた?

ただその後はマドリーに不運が続き、10分にビニシウスが敵DFにエリア内奥で倒されたプレーはペナルティを取ってもらえなかったのとは対照的に20分、カマビンガがエル・シャハトを引っかけたプレーは審判に見咎められてしまうことに。マジョルカ戦アップ中に感じた太ももの痛みはただの筋肉痛だったものの、大事をとって、クルトワはマドリッドでお留守番。クラブW杯の守護神を任されたGKルニンはアル・マールルのPKを止めることができず、1点差に迫られてしまったんですが…。

いやまあ、それも37分にビニシウスが今度はエル・ソリアにエリア内で足をかけられ、エリア内で倒れたプレーが、次のプレーが終わってからVAR(ビデオ審判)注進により、今度はペナルティを取ってもらえた時、モドリッチがそのPKをエル・シェナウィに弾かれていなければ、もっと早く決着がついていたんですけどね。リーガ前節マジョルカ戦ではPKキッカー3番手であるアセンシオが、この日も第2キッカーのモドリッチが失敗と、今季リーガ戦で1回もPKをもらっていないお隣さんなどにとっては真に贅沢な話でありますが、やっぱりこれは筆頭キッカーであるベンゼマの帰りを待つしかないのかも。

そして8分間のロスタイムに入ったんですが、まさか47分にこの試合一番のゴールが生まれるとは!ええ、周囲に敵がひしめく中、エリア前からロドリゴがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で途中出場していたセバージョスに送ると、こちらもヒールで返してくるって、このチームの選手たちの技術力たるや、まさに恐るべし。それをロドリゴがフィニッシュして、マドリーがとうとう3点目をゲットしたため、アンチェロッティ監督もモドリッチ、ロドリゴをオドリオソラ、マリアーノに交代させることに。更に最後の1分にはビニシウスに代えて、カンテラーノ(RMカスティージャの選手)のアリバスまで入れてみたところ、いやあ、ビックリです。

実はジダン監督時代の2020-21シーズンには19才ながら、10試合程、トップチームで経験を積ませてもらった彼ですが、アンチェロッティ監督が復帰した昨季はまったくお声がかからず。今季もコパ・デル・レイの初戦に出してもらったぐらいなんですが、まさか、ピッチに入って最初に触ったボールがネットに入るとは、どんなにラッキーなんでしょう。ええ、本人によると、アラバの蹴るFKに「クロスが入って来るのを見て、クリアボールに備えての位置取りしたんだ。Se me fue un poco el control, pero recontrolé y por suerte, gol/セ・メ・フエ・ウン・ポコ・エル・コントロル、ペロ・レコントロレ・イ・ポル・スエルテ、ゴル(ちょっとコントロールをミスったけど、コントロールし直して、幸運にもゴールになった)」そうですけどね。

普段、RFEF1部(実質3部)でプレーする自分と同じような年のビニシウスやロドリゴがトップチームでがんがん活躍しているのを見ているだけに、この得点はアリバスにとって大きな励みになったかと思いますが、そのまま試合は1-4で終了。土曜午後8時(日本時間翌午前4時)から、同じスタジアムで決勝を戦えることになったマドリーでしたが、意外にも相手はブラジルのフラメンゴではなく、彼らを火曜の準決勝で2-3と破ったサウジアラビアのアル・ヒラルなんですよね。それも決勝ゴールを挙げたのがビエットと、8年ぐらい前にアトレティコいた選手だったから、かなり意表を突かれたんですが、ただ、決勝のマドリーはベンゼマ、ミリトン、準決勝は筋肉痛でプレーできなかたアセンシオ、そしてカルバハルと使える選手が増えていますからね。

おそらく今季、UEFAスーパーカップに続く2つ目のトロフィーを恙なく獲得して、マドリッドに帰って来るんじゃないかと思いますが、その後は再び、厳しいリーガの現実に直面することに。というのも彼らがモロッコから戻る日曜にはバルサが21節でビジャレアルと対戦。もし勝てば、首位との勝ち点差が11といよいよ、remontada(レモンターダ/逆転優勝のこと)不可能域まで拡大しかねないためですが、6位のビジャレアルはCL圏の4位死守を宿命づけられたお隣りさんとたったの4差。それだけに私など、どっちが勝つのも嫌だったりするんですが、いやいや。マドリーにも水曜午後9時、また厳寒のサンティアゴ・ベルナベウに最下位エルチェを迎える試合で勝ち点差を8に戻すチャンスがありますって。

そう、クラブW杯がまったくの別世界である他のマドリッド勢もこの日曜にリーガ戦があるんですが、午後2時という早い時間にプレーするのはヘタフェとラージョで、今回はコリセウム・アルフォンソ・ペレスでの弟分ダービー。まったく、こうまで両者の状況が違うと、私も困ってしまうんですが、ご存知の通り、ヘタフェは2節前から19位の降格圏にドップリ浸っている始末でねえ。先週末、兄貴分のアトレティコと引分けたため、残留ゾーンまでは勝ち点2に迫っているとはいえ、メトロポリターノでもエネス・ウナルのPKで1点取っただけですからね。

しかもそのトルコ人エースは先日のトルコ・シリア大地震にかなりショックを受けているようだなんて聞くと、とても現在、EL出場圏の5位。4位まであと勝ち点3に迫っているイラオラ監督のチームには歯が立たないような気がしますが、さて。ちなみにヘタフェでは、アトレティコ戦でモラタへのペナルティをお目こぼししてもらったジェネが累積警告で出場停止。ラージョの方は前節アルメリア戦で負傷明け出場したアルバロ・ガルシアもその試合でゴールを挙げ、月曜から中5日もあるだけに皆、疲労から回復しているはずですが、果たしてどちらに軍配が挙がるんでしょうか。

そしてすぐその後の午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、アトレティコが最近、応援団のストで雰囲気がおかしくなっているホームスタジアムを遠く離れ、バライドスでセルタ戦に挑むんですが、こちらも弟分たちと同様、今季はもう週1試合のゆったりモードですからね。今はケガ人も出場停止者もいないため、シメオネ監督が選手を選び放題というのは恵まれているかと。今週の練習では、兄弟分ダービーとはスタメンを2人変えていて、コレア、レマルの代わりにマルコス・ジョレンテ、カンテラーノのバリオスが入っていたようです。

そうそう、金曜にはAS(スペインのスポーツ紙)にこの1月、チェルシーにレンタル移籍したジョアン・フェリックスのインタビューが出ていたんですけどね。彼はシメオネ監督のサッカースタイルを「Basicamente, es sufrir en el campo/バシカメンテ、エス・スフリル・エン・エル・カンポ(基本的にピッチでは苦しむもの)。まずは苦しんでいて、チャンスが来たら得点する」と説明。そういう風に理解していたのでは、楽しんでサッカーをしたい当人が逃げ出したくなった気持ちもわかりますが、もしや、苦しんで勝った方が喜びも大きいってことはない?

まあ、チェルシーは買取オプションを持っていないため、もし今季いっぱいでシメオネ監督が退任することになれば、ジョアンが帰って来る可能性もあるんですけどね。どちらにしろ、リーガ残りの18試合はモラタ、グリーズマン、コレア、メンフィス・デパイのゴールを当てにして凌ぐしかないんですが、ちなみに相手のセルタは先週、ベニト・ビジャマリンでベティスに3-4と勝利して、12位に上昇。といっても降格圏とは勝ち点4差しかなく、その1つ上のジローナも含めて安全圏とはとても言えないため、ここはうっかり、窮鼠猫を噛むみたいな目に遭わずに済めばいいんですが…せめてアトレティコも週末ぐらいはファンを楽しませてくださいね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。



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あと2試合でリーガの全てが決まる…/原ゆみこのマドリッド

「どんな試合になるのか、検討もつかないわ」そんな風に私が困惑していたのは金曜日、リーガ37節のカードをチェックしていた時のことでした。いやあ、もう残り2試合ということで、今週末はセビージャvsレアル・マドリー戦以外、全てキックオフが日曜午後7時(日本時間翌午前2時)にunificacion(ウニフィカシオン/統一)されているんですけどね。要は他試合を気にせず、ゆっくり観戦できるのはマドリーだけということですが、何と土曜午後7時からのサンチェス・ピスファンでの試合前日、アンチェロッティ監督が出した招集リストにはFWが3人しかおらず。しかもそのメンバーが問題で、ロドリゴはともかく、残り2人は今季ずっと員数外だったアザルとカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のアルバロ・ロドリゲスって、かなり頼りなく見えない? いえ、もちろんベンゼマには水曜の試合で足を踏まれ、5針縫う切り傷を作りながら、フル出場したという理由がありますし、その兄弟分ダービーを、バレンシア戦で出されたレッドカードは取り消されていたものの、ヒザの痛みで欠場。ペレス会長と並んでパルコ(貴賓席)観戦することにしたビニシウスもアンチェロッティ監督が言うには、セビージャファンの敵対的な雰囲気を警戒してではなく、「no viaja porque no puede jugar/ノー・ビアハ・ポルケ・ノー・プエデ・フガール(プレーできないから遠征に行かない)」そう。アセンシオも筋肉痛でお休みとなったものの、やはりバルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドに姿が見えなかったマリアーノについては正直、誰も気にしてないかと。 かといって、コンフェレンスリーグ出場圏の7位に届く可能性のあるセビージャが手ぐすね引いて待っているという訳ではなく、そう、彼らも今は来週水曜にブダペストで開催されるローマとのEL決勝しか眼中にありませんからね。一応、メンディリバル監督は「Si veo que no compiten, igual no son titulares ante la Roma/シー・ノー・ベオ・ケ・ノー・コンピーテン、イグアル・ノー・ソン・ティトゥラレス・アンテ・ラ・ローマ(競っていないのを見たら、ローマ戦のスタメンに選ばないかもしれない)」と記者会見で選手たちに警告していたものの、前節引分けたエルチェ戦で一発退場したゲイエ、累積警告になったヘスス・ナバスは出場停止。頭数合わせで、まだ負傷の治っていないジョルダン、マルコン、ニアンズを招集リストに入れたぐらいですからね。 前人未踏のSeptima(セプティマ/7回目の優勝のこと)をEL決勝で果たせば、来季のCL出場権も手に入るため、競争相手が6チームもいるコンフェレンスリーグのため、ちまちま戦っても仕方ないとセビージャが考えるのも当然ですが、そうなるとここ数節、お隣さんと2位争いを繰り返しているうち、ライバル心に火がついたんでしょうか。「Ahora no podemos quedar primeros así que hay que luchar por la segunda/アオラ・ノー・ポデモス・ケダール・プリメーロス・アシー・ケ・アイ・ケ・ルチャール・ポル・ラ・セグンダ(今ではもう1位にはなれないから、2位になるように戦わないといけない)」(カマビンガ)と、リーガでの目標を再設定したマドリーの方が有利にも見えなくありませんが…いえ、どっちもどっちですよ、きっと。 まあ、それはそれで置いておいて、今季最後のミッドウィークリーガのマドリッド勢がどうだったのか、お話ししていくことにすると。私はまず、水曜の早い時間帯に始まるマドリーとラージョの兄弟分ダービーをサンティアゴ・ベルナベウに見に行ったんですが、その試合は先週末、メスタジャで人種差別的野次や猿の物真似をされ、マリオ・ケンペス・スタンドの応援団と対峙したビニシウスにマドリーファンが連帯を示す絶好の機会に。Fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)には「Vinicius somos todos, basta ya/ビニシウス・ソモス・トードス、バスタ・ジャー(私たちは全員、ビニシウス。もう沢山だ)」という横断幕が掲げられ、マドリーの選手たちも揃って彼の背番号20のユニを着て入場したんですが、何せ、今回の人種差別騒動はスペインだけでなく、全世界から非難される大ごとになってしまいましたからね。 そこで珍しく、競技委員会が速攻でメスタジャの該当スタンド5試合閉鎖(上訴委員会で3試合に)と罰金4万5000ユーロ/約700万円(同2万7000ユーロ/約400万円に)を申し渡し、警察も画像で確認できた人種差別行為をした18才から21才の3人を逮捕。バレンシアも彼らをスタジアムから永久追放しただけでなく、マドリッドの警察も時同じくして、1月末のコパ準々決勝マドリーダービー前日に高速道路にビニシウスの首吊り人形をぶら下げた19才から24才の男性4人を逮捕していたんですが、え?ラージョと言えば、ブカネーロス(過激なファンのグループ)もヤバいんじゃないかって? そうですね、おかげでその日のベルナベウ周辺にはCLでもついぞ見たことのない程、大勢の警官がいたんですが、大丈夫。大体がして、ビニシウス本人がベンチにもいませんでしたしね。fondo norte/フォンド・ノルテ(北側ゴール裏席)最上階で応援していた500人程のラージョファンはよく、アウェイゲームに行くとホームファンたちから投げかけられる、「Vallecanos, yonkis y gitanos/バジェカーノス、ジャンキス・イ・ヒターノス(ラージョファン、ジャンキーでジプシー)」というカンティコを自虐的に歌っていたぐらいでしたから、全然、問題は起きませんでしたっけ。 そして試合の方は大舞台に張り切る弟分が序盤から、エリア外シュートを放って積極的に攻めていたんですが、まだ両チーム、無得点だった前半31分、クロースが機転を発揮。ええ、CKを守っていたイシが集団の中で倒れ、一旦、主審がプレーを止めた後、もらったドロップボールを素早くベンゼマに送ったんですよ。バルベルデを経由すると、最後はエースがGKデミトリエフスキをかわして、ゴールを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。いやあ、後でイラオラ監督も「La mitad de mi equipo no sabía que sacaban ellos/ラ・ミタッド・デ・ミ・エキポ・ノー・サビア・ケ・サカバン・エジョス(ウチのチームの半数は相手ボールだと知らなかった)」と説明していたんですけどね。 そのせいでラージョが適切な守備体制を取れなかったのが失点の原因ですが、「Antes de sacar hay que aclarar de para quién es el saque/アンテス・デ・サカール・アイ・ケ・アクララル・デ・パラ・キエン・エス・エル・サケ(ドロップボールをする前にどちらのボールかはっきりさせるべきだ)」(イラオラ監督)というのは果たしてルールで決められていることなのか。私にはわかりかねますが、ラージョサイドの抗議も空しく、この1点はスコアに上がり、試合は1-0でマドリーがリードしてハーフタイムに入ります。 そして後半はマドリーがタランタランモードに入ったのもあり、トレホ、チャバリア、RdT(ラウール・デ・トマス)、ファルカオ、サルビと攻撃力アップの選手交代に特化したイラオラ監督の作戦がとうとう39分に実を結ぶことに。サルビの折り返しパスをRdTがエリア内からのシュートでGKクルトワを破り、彼のエスパニョール戦に続く、古巣への恩返しゴールでラージョは同点に追いついたんですが…。 あと終わりまで一息だった44分、昨季はCL決勝トーナメントでマドリーの根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神を体現したロドリゴにエリア前からゴールを決められてしまうとは!いやあ、当人によると、このゴールは「Fue para mi hermano y para Vini/フエ・パラ・ミ・エルマーノ・イ・パラ・ビニ(ボクの兄弟、ビニのため)」だったそうですけどね。入団も年も1つしか違わない、同じ肌の色をした彼の方にはまったく人種差別騒動を聞かないのはやっぱり、リーガにいた当時はヘイトクライムに相当する野次をかけられまくられていた、黒人ではないクリスチアーノ・ロナウド(アル・ナスル)やメッシ(PSG)のように、突出した選手だけが標的になるということ? 結局、そのまま2-1で負けてしまったラージョは翌日、バレンシアに勝ったマジョルカにも抜かれ、12位に落ちてしまったんですが、7位まで勝ち点差4というのは変わらず。日曜午後7時の試合ではEL出場圏の5位を確定しながら、まだ5差上のレアル・ソシエダの占める4位のCL出場圏到達を狙っているビジャレアルと対決するんですが、はあ。何でその上、やはり5差もあるアトレティコが、来季のスペイン・スーパーカップ出場権(コパ・デル・レイにマドリーが優勝したため、リーガ3位に回った)を脅かされている云々の流れにスポーツ紙がなってしまったのかというと。 いやまあ、この日曜、アトレティコがメトロポリターノにここ7試合無敗、その途中ではバルサやマドリーにも勝って、前節も久保建英選手のゴールで1-0とアルメリアを破ったレアル・ソシエダを迎えるのは確かですけどね。正直、原因は水曜のエスパニョール戦。だってえ、私が急いでベルナベウを後にし、メトロで移動している最中だった前半21分にはRCDEスタジアムでエルモーソのセンターからのロングパスを追って爆走したサウールが先制点をゲット。GKゲルビッチがparadon(パラドン/スーパーセーブ)連発だったのはラジオで聴いていても、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に着いてすぐだった44分にはラッキーにも2点目が入ったんですよ。 そう、この時のサウールのシュートはGKパチェコに弾かれてしまい、続くカラスコもゴールポストに当ててしまったものの、グリーズマンの最後の一撃をGKが掻き出した位置がゴールラインを越えていたとVAR(ビデオ審判)が連絡。おまけに後半開始数秒でコレアのエリア外からのシュートをパチェコが弾いたボールに詰めたカラスコが3点目を挙げたため、これは降格圏19位にいるエスパニョールにはあまりにきつい仕打ちだと私も同情してしまった程だったんですが、とんでもない。 19分にCKからモンテスがヘッドでゴールを決めて、反撃の狼煙を上げた相手は、モリーナがエリア内からのシュートを敵DFにゴール前でクリアされ、アトレティコが追加点のチャンスをモノにできなかったのが追い風になりましたかね。31分にはゲルビッチにプアドがエリア内で倒されてPKをもらうと、エースのホセルが決めて2点目。これで1点差になってもコレアとデ・パウルを下げ、カンテラーノのカルロス・マルティンとバリオスを入れたシメオネ監督にもちょっと首を傾げたんですが、34分にはアレイシ・ビダルのクロスをビニシウス・ソウザに頭で叩き込まれ、とうとう3-3に追いつかれているって、一体、どうなっている? うーん、前節のオサスナ戦ではクラブが設定したDia del Nino/ディア・デル・ニーニョ(子供の日)のお祭り効果で3-0と快勝していた彼らだったんですけどね。後でコケも「Desconexión total/デスコネクシオン・トタル(完全なスイッチオフ)」と言っていたんですが、1-0で負けたエルチェ戦同様、またアトレティコの選手たちはバケーションに入ってしまったよう。終盤は勝ち越し点を狙うどころか、コンドグビアとレギロンを入れて、何とかドローで御の字という結果に。ヒメネスなども「Siento vergüenza de lo que ha pasado/シエントー・ベルグエンサ・デ・ロ・ケ・ア・パサードー(起こったことを恥ずかしく感じる)。0-3で勝っていながら、引分けたなんて、子供たちにどう説明していいかわからないよ」と神妙にしていたんですが、シメオネ監督になってからでさえ、彼らは太古からの悪癖を完全に駆逐できていませんからね。 まあ幸い、アトレティコの2点目はボールが完全にラインを越えているのを示す映像がないため、バレンシアvsマドリー戦でウーゴ・ドゥーロに首を絞められているシーンが省かれ、ビニシウスが彼の顔を叩いたところだけ見て、主審が出したレッドカードが後日、取り消されたように、VARの落ち度により、無効試合にするよう、エスパニョールが申し立ているのもスルーされそうな感じですしね。こういう欠点もアトレティコあるあるとして受け入れるしかないかと。頸椎捻挫でこの試合をお休みしたモラタもレアル・ソシエダ戦には戻って来れそうですし、唯一、残念なのは2位をキープできなかったのはともかく、残留を争っている弟分、ヘタフェの援護射撃ができなかったことなんですが…。 とうとう勝てたんですよ、それも6位のベティスに。そう、アトレティコと同じ時間にキックオフしたベニト・ビジャマリンでは前半10分にエースのエネス・ウナルが負傷。ラタサと交代する逆境に見舞われたボルダラス監督のチームですが、相手がチャンスをことごとくムダにしてくれたのが運を引き寄せました。後半23分、ミジャの蹴ったCKをアンデレテがヘッドで撃ち込み、虎の子の1点を奪ったとなれば、翌日にはクラブがヘルタ・ベルリンからレンタルする際につけた買取オプション400万ユーロ(約6億円)を行使して、来季も彼にヘタフェの選手でいてもらうことにしたのも無理はない? 15分を残してベティスのペッツェラがレッドカードで退場したのにも助けられ、そのままヘタフェは0-1で逃げ切って勝ち点3を獲得。順位も18位から、降格圏外の16位へと上がったんですが、まだまだ安心するには程遠く、17位のカディスと18位のバジャドリーとポイント数が同じですからね。もうここは、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで今季最後の試合となる日曜のオサスナ戦に何が何でも勝って、現時点で7チームが絡む最終節のガラガラドボンに巻き込まれないことを祈るばかり。返す返すも痛いのはヒザの靭帯断裂と診断されたウナルの欠場ですが、嘆いている時間もないため、ベティス戦ではDFがゴールを決めたように、残り2試合は全員がFWの覚悟で挑んでくれたらと思います。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.27 19:00 Sat
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優勝は決まっても他はまだ決まっていない…/原ゆみこのマドリッド

「何も揃って水曜にしなくてもいいのに」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、リーガはあと3節しかないというのに、マドリッド勢のミッドウィークの予定が全て同じ日に集中していることに気がついた時のことでした。いやあ、実はこの責任は先週、ユベントスを破り、EL決勝進出を決めたセビージャにあって、ブダペストでローマと対決する大一番は5月31日(水)に開催。そのため、リーガ最後の2節はキックオフ日時のunificacion(ウニフィカシオン/統一)で日曜午後7時に10試合一斉にプレーするはずだったのをラ・リーガが気を利かせ、セビージャvsレアル・マドリー戦だけを土曜に前倒しすることに。おかげ木曜に設定されていた36節、マドリーvsラージョの兄弟分ダービーが水曜に繰り上がったという事情もあるんですけどね。 それはまだいいとしても許せないのは、うーん、4月の末から5月頭にかけてミッドウィークリーガが2週連続あった時もそうだったんですが、またしてもアトレティコとヘタフェの試合が同日同時刻に設定。ホームなら一方は完全に捨てるしかなく、アウェイだって、大抵のバル(スペインの喫茶店兼バー)は1カードしか店内のTVで流してくれず、需要に応じて兄貴分が優先されるのは仕方ありませんがませんからね。これってもしや、ラ・リーガがどちらのチームも応援しているマドリッドのサッカーファンに嫌がらせしている? まあ、弟分がすでに宿題を済ませていたら、それ程、私も怒りも感じないんですが、先週の土曜、前回から1カ月以上も間を空けて、私がコリセウム・アルフォンソ・ペレスで観戦することができたエルチェとの試合でもヘタフェは期待された結果を出せず。ええ、サンティアゴ・ベルナベウでの兄弟分ダービーで勝ち点が取れないことは織り込み済みで、この日の勝ち点3を当てにして、すでに2部降格が決定して2試合目となる相手を迎えたんですけどね。キックオフ1時間半前にスタジアム入りするチームバスを盛大にbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚いて、熱く歓迎をしてくれたファンに応えることができなかったんですよ。 いえ、立ち上がりは良く、前半8分にはダミアンのクロスを反対サイドにいたムニルが撃ち込んで、先制点を取ることができたんですけどね。そのまま直近のホームゲーム、3分にPKでエネス・ウナルがゴールを挙げたセルタ戦のように、最後まで虎の子の1点を守り切るのかと思いきや、とんでもない。35分にアランバリがもう今季、何度目かわからない足首の負傷を再発し、泣きながら、ファン・イグレシアスと交代せざるを得なくなったのもチームメートにもショックを与えたんでしょうか。あと一息でハーフタイムというロスタイム、CKからエルチェのエース、ボジェにヘッドを決められ、同点に追いつかれてしまったから、さあ大変! 後半はマジョラルやポルトゥ、ゴンサロ・ビジャル、ラタサらを投入して、勝ち越し点を狙ったんですが、いえ、ボルダラス監督は「Miedo se tiene a la muerte, no a un partido de fútbol/ミエードー・セ・テシエネ・ア・ラ・ムエルテ、ノー・ア・ウン・パルティードー・デ・フトボル(恐れは死に対して抱くもの。サッカーの試合にではない)」と言っていたんですけどね。ゴールを入れようと焦ったヘタフェの選手たちはパスが3度も続かない状態に陥ってしまうわ、またしてもマジョラルは絶好機にシュートを敵GKに向けて撃ってしまうわと、スコアボードは最後まで1-1のまま動かず。対照的にエルチェは前節、アトレティコに1-0で勝つなど、降格が決まってから、伸び伸びプレーできるようになっていましたからね。4-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らったラージョのような目に遭わなかっただけでもマシですが、おかげでコリセウム上空にも本当に残留達成できるのかという恐怖の暗雲が大きく立ち込めることに。 まあ、それでも勝ち点1を稼いだことでバジャドリーが18位に落ち、ポイントは同じでもヘタフェは17位と降格圏外に上がれたんですけどね。要はこの水曜、アンダルシアーダービーでセビージャとスコアレスドローとし、6位のEL出場圏でのフィニッシュが濃厚となったベティスとのアウェイゲーム、続くオサスナ戦、バジャドリー戦で下2チームより勝ち点を増やせれば、残留は決して不可能ではないんですが、懸念の種は19位だったエスパニョールにも勝ち点1差に迫られてしまったこと。それもこれも翌日曜、弟分仲間が援護射撃に失敗してしまったせいなんですが…。 そう、ここ3連勝中のエスタディオ・バジェカスにエスパニョールを迎えたラージョだったんですが、もしや前節は自分たちのホームで優勝を決められただけでなく、月曜には3時間にも渡る市内祝賀パレードでバルセロナ中を練り歩かれ、街がバルサ一色に染められてしまった鬱憤も相手にはあったんでしょうか。ピンクのアウェイユニを着たルイス・ガルシア監督のチームはブラースヴァイトもケガでいませんでしたし、それ程、怖くは見えなかったにも関わらず、前半22分にはオスカル・ヒルがエリア内で落としたボールをパテ・シスがクリアミス。ダルデルに先制ゴールを決められて、出鼻をくじかれてしまうことに。 いやあ、ラージョも反撃して、41分にはエリア内でオスカル・ヒルが犯したハンドから、RdT(ラウール・デ・トマス)がPKゴールを決め、一旦、同点に追いついたんですけどね。続く時間帯のアトレティコの試合に間に合わせるべく、にわか雨が激しく降りだす中、私がバジェカスを出なければならなかった後半はかなり、攻守交替の激しいせめぎ合いになったよう。ただ得点は13分、ダルデルのシュートはゴールポストに当たったものの、その跳ね返りをメラメドが押し込んだ1点だけで、イシがゴール前からのシュートを天高く撃ち上げてしまったこともあり、そのままラージョは1-2で負けてしまうんですから、まったく悔しいじゃないですか。 もちろん、すでに残留が確定しており、勝ち点差4の7位まで上がって、来季コンフェレンスリーグに出場できたらいいなとボンヤリ思っているラージョと、3年前の2部降格の悪夢を絶対避けたいと戦っているエスパニョールとは試合に対する覚悟が違って当然なんですけどね。「数字的なオプションはまだあるから、ウチは最後まで戦うが、creo que está prácticamente imposible/クレオ・ケ・エスタ・プラクティカメンテ・インポシーブレ(実際的にはほぼ不可能だと思う)」とイラオラ監督も言っていたように、11位のラージョの上にはアスレティック、ジローナ、セビージャ、オサスナと4チームもいますからね。 ただ次節の水曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)、ベルナベウにマドリーを訪ねる試合はトリッキーで、今は相手もゴタゴタしているため、運が良ければ、勝てるかもしれないんですが、ま、それは後で話すとして。今はアトレティコが前節、バケーション気分でプレーして負けたエルチェ戦をしっかり反省。メトロポリターノでファン公開練習をした土曜から開催されている、Dia del Nino/ディア・デル・ニーニョ(子供の日)のオサスナ戦を見に来たファンを喜ばすことができたのかどうかというと。 それが何か、最近のアトレティコはお祝い事が好きみたいで、シメオネ監督のクラブ歴代最多指揮試合数を達成した日や創設120周年記念の日のように盛り上がってしまったんですよ。幸いキッズパークのアトラクションもバジェカスより西にあるこちらでは雨の被害を受けなかったようで、選手たちも子供連れが多数。皆、キックオフ前に記念写真を撮るため、ボールが動きだすまでにちょっと時間がかかったんですが、序盤から、グリーズマンやサウールがシュートをゴール枠に当てるわ、モラタは2度もオフサイドで認められないゴールを決めるわと、彼らは積極的に攻めていくことに。とはいえ、先制点が入ったのはちょっと遅くて、前半44分になってからのことでした。 ええ、センターサークルでダビド・ガルシアとボールを争ったモラタが倒れているのをスルーして、サウールが蹴ったロングボールをグリーズマンが追い、エリア内でカラスコにアシストしてゴールが生まれたんですが、チームの半数が片側で祝っている間、モラタがメディカルスタッフに介抱されていたのはなかなかシュールな光景だったかと。結局、首を痛めた当人は頸椎捻挫で前半残り時間をプレーせず、ハーフタイムでコレアと交代したんですが、え?ということはメンフィス・デパイもいつ戻れるのかわからないですし、残り3試合、アトレティコのFWはグリーズマンとコレアだけ? その心配はまた後日にすることにして、その日は大丈夫でした。というのもオサスナが後半、チミ・アビラを引っ込め、5人DF制に変えたのも影響せず、17分にはデ・パウルがエリア内に送ったパスをサウールが胸トラップ、落としたボールをシュートして2点目を決めてくれたから。いえ、レマルの負傷で先発予想に入っていたのは19才のバリオスだったんですけどね。意表を突くスタメン出場で、カンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の序列を教えてくれるとはまったく、いい先輩じゃないですか。そして37分にもデ・パウルが閃き、今度はスルーパスをアルゼンチン代表W杯優勝仲間のコレアにプレゼント。こちらもGKエレーラを破り、ようやく4月上旬に病気で亡くなったお母さんに捧げるゴールを挙げることができましたっけ。 結局、コパ・デル・レイ決勝でマドリーに負けた後、アルメリアにはエル・サダルで勝ったものの、アトレティコと競える程、体力気力が残っていなかったオサスナはそのまま一矢も報いることなく、3-0でホームチームが快勝。これでシメオネ監督は11年連続のCL出場を確定したんですが、W杯前のCLグループリーグ最下位敗退イコール、ヨーロッパからの完全撤退を含む、超ダメダメ状態から立ち直り、ここまで辿り着いたのは大いに賞賛されてしかるべきかと。 どうやらこれには、「11月には入院していて、医者にほとんど死んでいると言われていた。Trabajamos día a día, buscando qué podíamos hacer... Nos preocupamos por lo que podíamos mejorar/トラバハモス・ディア・ア・ディア、ブスカンドー・ケ・ポディアモス・アセル…ノス・プレオクパモス・ポル・ロ・ケ・ポディアモス・メホラル(毎日、毎日、働いて、できることを探して、改善できることに取り組んだ)」(シメオネ監督)という、スタッフ、選手全員の地道な努力があったようなんですけどね。この時点で再び、お隣さんを追い越し、アトレティコは2位になったものの、どうせマドリーはバレンシアに勝つだろうし、次節水曜午後10時(日本時間翌午前5時)からのエスパニョール戦でヘタフェの援護射撃ができればいいと、メスタジャでの前半33分、クライファートのシュートをルュデガーもミリトンもクリアせず、ディエゴ・ロペスに先制点を取られたことはあまり気にせず、メトロに乗った私でしたが…。 いやあ、まさか後半15分過ぎに近所のバルに着いたところ、そこからとんでもない展開を目にすることになるとは!ピッチで騒動が始まったのは24分、まさかビニシウスとフルキエがバレンシアのエリア左奥でボールを争っている最中、そこにもう1個、ボールが飛んできたから、ビックリしたの何のって。実はこれ、スタンドから放り込まれたものをキュメルトが邪魔してやろうと蹴ったようですが、いくら降格の危機に瀕しているチームとはいえ、何をどう思えばそうなる?その時はキュメルトにイエローカードが出て、プレーはFKで再開されることになったんですが、一向に始まりません。それはビニシウスがスダンドのバレンシアファンから差別主義的な野次を受けたと抗議して、その張本人を指さしに行ったから。 うーん、彼はメスタジャ入りの時から、「Eres un mono/エレス・ウン・モノ(お前はサルだ)」と歌われていて、ずっとイヤな思いをしていたんですけどね。この時は警察官が猿の真似をしたファンをスタンドから追放して事を収めたんですが、ビニシウスもアンチェロッティ監督の交代した方がいいという勧めに従っていればねえ。この中断のせいで10分と出た長いロスタイム、クロースのFKをparadon(パラドン/スーパーセーブ)で逸らせたGKママルダシビリがビニシウスに突撃したことから、再びピッチはtangana(タンガナ/小競り合い)状態となり、ウーゴ・ドウーロに首を絞められたビニシウスが腕で相手の顔を払い、レッドカードで退場とはもう、メチャメチャですよう。 ロッカールームに引き揚げる時、ビニシウスがVサインを下に向けて、相手の2部落ちをあげつらったのも場内の敵意に拍車をかけたなんてこともあったんですが、こんな状態ではマドリーもお家芸、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を発現することができず、試合はそのまま1-0でバレンシアが勝つことに。勝ち点40を貯めて降格の危険を回避したんですが、とにかく試合後はビニシウスの受けた人種差別的野次の話題一辺倒です。まあ、当人から、SNSで「En Brasil, España es conocida como país de racistas/エン・ブラシル、エスパーニャ・エス・コノシーダ・コモ・パイス・デ・ラシスタス(ブラジルでスペインは人種差別主義者の国として知られている)」とまで書かれては、スペインのマスコミもそうじゃないと言い張るしかないですからね。 ただ、アンチェロッティ監督が「Nunca he visto un estadio entero haciendo un insulto racista/ヌンカ・エ・ビストー・ウン・エスタディオ・エンテーロ・アシエンドー・ウン・インスルト・ラシスタ(スタジアム中が差別主義的侮辱をしているのは見たことがない)」と怒っていたのは、ビニシウスが退場する際、皆が「Tonto, tonto/トント(バカ)」と唱和していたのを「mono(モノ/サル)」と聞き間違えたんじゃないかという、バレンシア側の主張もあったんですが、どちらにしろ失礼は失礼。要は根本的に差別主義者かどうかは別として、そういう野次を飛ばすファンには人に対する礼節が欠けているんじゃないかと思うんですが、さて。 こんな調子でマドリーの敗戦自体についてはあまり問題視されていないんですが、とにかくCL準決勝2ndレグでマンチェスター・シティにボロボロにやられたショックもありますしね。実際、いいプレーもできていなかったため、その辺が水曜に彼らに挑むラージョのつけどころになる?一応、マドリーもCL出場権は確定していますし、ここはリーガの順位に応じた分配金が700万ユーロ(約11億円)程、増えると喜んでいる、あまり裕福ではないお隣さんに2位を譲ってあげてもいいかもしれませんね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.23 20:00 Tue
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いきなりシーズンが終わってしまった…/原ゆみこのマドリッド

「こうなるとあと4試合もプレーしないといけないのは辛いわよね」そんな風に私が同情していたのは金曜日、レアル・マドリーのCL準決勝敗退のショックが癒えないというのにもう、週末のリーガ戦が迫っているのに気がついた時のことでした。いやあ、前節ではとうとうバルサの優勝が確定し、それでもマドリーファンが落ち着いていられたのは6月10日、イスタンブールでの決勝でDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)を達成して、宿命のライバルの鼻を明かしてやれる可能性が残っていたせいもあったんですけどね。 それがマンチェスター・シティに昨季のリベンジを喰らい、水の泡になったとなれば、まだ5月半ばだというのにスポーツ紙のマドリーページがこの夏の補強計画で埋まってしまうのも仕方ありませんが、そのせいでしょうか。木曜には何と、天下のユベントスを延長戦で2-1と破り、総合スコア3-2で勝ち抜け。5月31日、ブダペストでのEL決勝でローマを破れば、十八番の大会で自身の持つ最多記録を更新、Septima(セプティマ/7回目のEL優勝のこと)ゲットも夢でなくなったセビージャをやたら、羨ましく思ってしまったのは。 まあ、それには昨年中、CLグループリーグで最下位敗退のアトレティコに先んじて、3位でELに回ったチーム、シャビ・アロンソ監督率いるレバークーゼンが準決勝まで進み、モウリーニョ監督率いるローマに1stレグに取られた1点を2ndレグでも返せず。総合スコア1-0で涙を呑んでいたため、もしシメオネ監督のチームがELに行っていれば、こちらも3度優勝している得意の大会ですから、スペイン勢決勝という嬉しい出来事になっていたかもしれないせいもあったりするんですけどね。たらればを話していても仕方ないので、2月にはとうに今季が終わっていたアトレティコはほっといて、まずは水曜のシティ戦2ndレグを振り返っていくことにすると。 先週、サンティアゴ・ベルナベウでの1stレグを1-1で引き分けた後、エティハド・スタジアムに乗り込んだマドリーだったんですが、さすが準決勝ともなると、行きつけの近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)もキックオフ1時間前にお店に入って、ようやく席を確保できるという賑わいよう。お客さんの半分ぐらいがマドリーのユニを着ていたのにも驚かされたんですが、その頃にはいつも試合2時間前にツィッターなどに上がるマドリーのスタメンはもちろん、シティの方も明らかに。そう、後者が1週間前とまったく同じメンバーだったのに対して、前日記者会見でアンチェロッティ監督がリュディガー先発予告を誤解と訂正していた通り、1stレグでハーランドを完全に封じたCBに代えて、ミリトンが入っていたんですが、問題はそこじゃなかったんですよ。 というのも前半、早い時間にハーランドの撃った強烈ヘッドはどちらもGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いでくれたからですが、ベルナベウでと同様、相手にずっとボールを持たれていたマドリーは23分、デ・ブライネのスルーパスをベルナルド・シウバに決められて先制されてしまったから、さあ大変!34分には珍しく敵陣に近づいて、クロースのシュートがゴール枠を直撃したなんてこともあったんですが、その3分後、ギュンドガンのシュートはクルトワが弾いたものの、浮いたボールが再び、ベルナルド・シウバに渡り、今度はヘッドで2点目を取られてしまうとは、え?このマドリー、ちょっとヤバくない? といっても昨季の準決勝1stレグでも立ち上がり、前半11分までに2点を奪われながら、その後、ベンゼマの2本とビニシウスのゴールで3点を取って、最後は4-3の負けで終わった彼らでしたからね。おまけにベルナベウでの2ndレグでは後半45分から、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)が始まったとあって、2-0でハーフタイムに入った時はまだ、バルのファンたちもこれならremontable(レモンタブレ/逆転可能)という希望を捨てていなかったんですが、後半序盤はボールを取り戻して、攻めていたマドリーながら、一向にゴールが入る気配はなし。 15分からはモドリッチをリュディガーに、クロースをアセンシオにと選手を代え、チームのリフレッシュを図っても効果が見られないまま、とうとう30分、デ・ブライネの蹴ったFKをミリトンがクリアしようとしてオウンゴールにしてしまうという悲劇まで起きてしまうようではねえ。これでは最後までハーランドにゴールを許さなかったクルトワが、「Este año no nos cae a nuestro lado como sí el año pasado/エステ・アーニョ・ノー・ノス・カエ・ア・ヌエストロ・ラドー・コモ・シ・エル・アーニョ・パサードー(今年は去年のようにウチにいい目が出ない)」と嘆いていたのも仕方なかった? まあ、それを言っちゃえば、CL準々決勝の抽選で、決勝までの2ラウンドの2ndレグをベルナベウで戦えない組み合わせになってしまった辺りから、始まっていた不運の連鎖ですけどね。さすがに3点目を奪われ、その直後のベンチの動きがロドリゴ、カマビンガ、カルバハルから、セバージョス、チュアメニ、ルーカス・バスケスへの3人一斉交代だったことも合わせて、ええ、昨季はこの逆で、後から入ったロドリゴがゴールを決めてくれたんですよ。すると鬼っ子がいなくなって、ようやくグアルディオラ監督もトラウマから解放されたか、この2試合通じて初めての交代を実施。 ギュンドガンをマフレスに、デ・ブライネ、ハーランドをフォーデン、フリアン・アルバレスに代えたところ、ロスタイムにはフォーデンのスルーパスから、フリアン・アルバレスに4点目を決められているんですから、もう目も当てられないとはまさにこのこと?うーん、昨季はエティハドで4-3だったのが、今季は4-0の大敗ですからね。アンチェロッティ監督は「Esta plantilla ha ganado al City en una semifinal el año pasado/エスタ・プランティージャ・ア・ガナードー・アル・シティ・エン・ウナ・セミフィナル・エル・アーニョ・パサードー(このチームは昨年、シティに準決勝で勝った)。今年は彼らの方が良かっただけだ」と言っていたものの、やっぱりベンゼマ、モドリッチ、クロースら、30代の選手たちが年々、劣化していくのに目を背けてはいけないかと。 加えて、シティのウォーカーなども「凄い選手が沢山いるマドリーだが、一番いいのはビニシウス。でも彼が無効化された時、Bプランはあるのかい?」と揶揄していたように、この試合ではグアルディオラ監督が練りに練ったマドリー攻略法への対抗策がまったく見られなかったのも気になるところではありますけどね。前節のエルチェ戦では早くもバケーション気分でプレーして、降格済みチームに負けたお隣さんじゃあるまいし、そのせいで、「Tardamos mucho en hacer faltas, el segundo balón era de ellos, hemos fallado balones fáciles/タルダモス・ムーチョ・エン・アセール・ファルタス、エル・セグンド・バロン・エラ・デ・エジョス、エモス・ファジャードー・バロネス・ファシレス(ウチはファールするのに時間がかかって、ボール争いにも相手が勝ってたし、簡単なパスでもミスしていた)」(クルトワ)となったとは思えませんが、いやあ。 結局は「Hemos jugado con el dolor de un año que hemos tenido en la barriga/エモス・フガードー・コン・エル・ドロール・デ・ウン・アーニョ・ケ・エモス・テニードー・エン・ラ・バリガ(お腹にあった去年の痛みを抱えてプレーした)」(グアルディオラ監督)シティの執念が勝ったということなんでしょうが、彼らの決勝の相手は前日、サン・シーロでの2連戦でミランを総合スコア3-0で破ったインテル。ここは素直にCL初制覇に向けてシティの健闘を祈るばかりですが、そうそう、金曜からバルデベナス(バラハス空港の近く)での練習に戻ったマドリーには、実はクルトワがヘタフェ戦で上腕三頭筋を痛めながら、エティハドでプレーしていたというビックリなニュースも。 いえ、もうリーガは優勝が決まっていますし、マドリーに日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのバレンシア戦に必勝で挑む義務はないため、別にGKがルニンになっても構わないでしょうけどね。ただ、微妙なのはその相手が未だに残留確定しておらず、降格圏脱出を目指す弟分ヘタフェのライバルの1つであることですが、まずは何を置いてもボルダラス監督のチーム自体が土曜のエルチェ戦で勝たないことには始まらず。ちなみにヘタフェは先週のベルナベウでの兄弟分ダービーで1-0と負けた後、その試合でカマビンガの負傷で、急遽、ピッチを出る選手をアセンシオから変更した件について、alineracion indebida(アリネラシオン・インデビダ/選手出場規則違反)として、競技委員会に提訴。 この訴えが認められれば、ヘタフェの0-3勝ちとなって、14位のバレンシアと並ぶところまで勝ち点も増えるんですが、こういう審理は結論がいつ出るのか、わかりませんからね。とにかく今は、ボルダラス監督も「勝つこと以外、考えていない」と言っていた、マタは累積警告で出られないものの、エースのエネス・ウナルが満員のコリセウム・アルフォンソ・ペレスに戻ってくるエルチェ戦で白星をゲットすることに集中して、早いところ、ファンを安心させてあげられるといいのですが。 そしてもう1つの弟分、ラージョも日曜にこちらはヘタフェより更に下の19位。前節はホームのRCDEスタジアムでのカタルーニャダービーで宿敵に優勝を決められた上、実は試合後、ピッチに乱入して、バルサのお祝いを中断させたウルトラ(過激なファン)たちの目的は応援するチームの不甲斐ない選手たちに抗議することだったという、身も蓋もないオチになっていたエスパニョールをエスタディオ・バジェカスに迎えることに。先週は苦手なアウェイでベティスに負けてしまったイラオラ監督のチームではありますが、セビージャやオサスナの躍進で11位になってしまったとはいえ、7位のジローナとは勝ち点差2とまだまだ、来季のコンフェレンスリーグ出場権を勝ち取れる可能性は残っていますからね。 4試合連続でファンと「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って終われるといいんですが、日曜はそのすぐ後、午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、兄貴分のアトレティコもシビタス・メトロポリターノでオサスナ戦をプレーすることに。いやあ、この1週間で彼らもバケーション気分が抜けてくれていたらいいんですが、何せこの試合を毎年恒例のel Dia del Nino(エル・ディア・デル・ニーニョ/子供の日)に設定。前日土曜の練習もスタジアムでファンに公開して行い、すでにアボナードー(年間指定席保持者)は無料、それ以外には10ユーロ(約1500円)で売り出した見学チケットもすでに1万枚、捌けているのだとか。 もちろん土日を通してメトロポリターノ周辺ではキッズ向けのアクティビティも用意されているんですが、今度はお祭り気分に浸りかねない選手たちとは別にして、懸念の種となっているのはやはり負傷者の増加でしょうか。そう、すでにレイニウド(ヒザの靭帯断裂)、オブラク(頸椎間板ヘルニア)、サビッチ(足指骨折)らが今季絶望となっているのに加えて、メンフィス・デパイ、マルコス・ジョレンテもまだリハビリ途中、更にエルチェ戦ではレマルも筋肉系のケガをして今回、出られませんからね。とりあえず、前線はモラタとグリーズマンでいいとしても、コケ、デ・パウルとご一緒する中盤の選手がとうとう、バリオスかサウールしかいなくなってしまったというのは淋しいかと。 せっかく一時はお隣さんを追い越しながら、前節の敗戦で、また勝ち点差2つけられて、3位に戻ってしまったこともありますしね。いいプレーをして、ゴールをガンガン決めるアトレティコの姿が今季再び、見られるのかどうか、私もあまり確信はないんですが、リーガも残り4試合ぽっきり。せめてあと勝ち点1となったCL出場権確定をファンの前で達成すると同時にラージョの援護射撃をして、マドリッドのサッカーファンの楽しみを増やしてあげられるといいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.20 20:00 Sat
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リーガ優勝は決まったけど…/原ゆみこのマドリッド

「タイミング的には今で良かったのかもね」そんな風に私が達観していたのは月曜日、前夜にはバルサがエスパニョールに2-4の勝利で自力優勝を決め、TVやスポーツ紙がその話題一色になっているのを見た時のことでした。いえ、オープンデッキバスに乗って、バルセロナ市内を巡る優勝パレードは一足早く、全勝でリーガ優勝を決めていた女子チームと合同で月曜夕方に行われたんですけどね。RCDEスタジアムでの試合が終わり、選手たちがピッチで手を繋いで輪になって祝っていたところ、スタンドからエスパニョールのウルトラ(過激なファン)が大挙して乱入。 バルサ勢は脱兎のごとくロッカールームに逃げ帰らないといけなかったなんてこともあったせいで、報道映像や記事が増えてしまった面はあったものの、だってえ、この水曜には永遠のライバルの2年連続CL決勝進出が決まるかもしれないんですよ。そうなれば、世間の注目も6月10日にイスタンブールで開かれる試合をプレーするレアル・マドリーの方に移ってしまいますし、となると準決勝がまだ五分五分で、決勝行きが宙ぶらりんな先週末はまたとないチャンスだった?ただし、それでもアンチェロッティ監督のチームはリーガで最低限の責任は果たしたことを言っておかないと。 そう、先週火曜のCL準決勝マンチェスター・シティ戦1stレグで1-1と引分けた彼らは土曜日、弟分ヘタフェとの兄弟分ダービーを再びサンティアゴ・ベルナベウで迎えたんですが、本心を言えば、オール控え選手プラス、RMカスティージャで挑みたいのを我慢して、スタメンにGKクルトワ、カマビンガ、ミリトン、バルベルデのレギュラー4人を起用。ベンゼマ、ロドリゴ、アラバ、カルバハルこそ、休養で招集外となりましたけどね。キックオフ前、ヘタフェの選手たちが作るPasillo de campeon/パシージョ・デ・カンペオン(チャンピオンを称える花道)を通って入場した後、先のコパ・デル・レイ決勝でオサスナを倒してゲットしたトロフィーを披露する際にはベンチスタートのモドリッチもちゃんとユニを着て、ナチョと一緒に登場しています。 そのモドリッチ、そしてクロース、ビニシウスも途中出場していますから、まさしく「Jugar con fuego... siempre se juega en este trabajo/フガール・コン・フエゴ…シエンプレ・セ・フエガ・エン・エステ・トラバッホ(火遊び…常にこの仕事ではそれをしないといけない)」(アンチェロッティ監督)だった訳ですが、え?ローテーションなら、1部残留が懸かっているボルダラス監督だってやっていたじゃないかって?まあ、そうなんですが、ヘタフェには前節、6試合ぶりに勝利したセルタ戦でエースのエネス・ウナルとダミアンが累積警告となり、その日は出場停止という逆境が。 更にアランバリも負傷で使えず、CBのジェネをボランチとして配置、守備を強化しつつ、ボルハ・マジョラル、マタ、ポルトゥのFWトリオでワンチャンを狙ったんですが、そこは「Son jugadores del Real Madrid por algo, que no están para rellenar/ソン・フガドーレス・デル・レアル・マドリッド・ポル・アルゴ、ケ・ノー・エスタン・パラ・レジェナル(何かの理由があって、彼らもレアル・マドリーの選手たちだ。ただ隙間を埋めるためだけじゃない)」(ボルダラス監督)というのもごもっとも。いえ、もちろん最後がいつか思い出せない程、久々の先発出場となったアザールや後半途中に入ったマリアーノが何かした訳ではないんですけどね。 試合開始初っ端にはマクシモビッチがシュートを撃ち、スタンドをヒヤリとさせたヘタフェが以降、大したことができないでいる間、マドリーは0-0のまま迎えた後半頭から、負傷が治り、2カ月ぶりで先発していたメンディをクロースと交代。16分にもモドリッチとビニシウスを入れたのと対照的に、スコアレスドローで勝ち点1を稼げれば御の字だったヘタフェは20分、3人の先発FWを下げることに。ラタサも負傷でおらず、ベンチに残っていた唯一のアタッカー、ムニルは入ったものの、残りはアルゴビア、アンギレリらのMFとDF増強で更なる守備強化を図ったものの、25分、アセンシオにやられてしまったんですよ。 そう、リーガでベンゼマ、ビニシウスに次ぐ8得点を記録している彼がエリア前から得意のzurdazo(スルダソ/左足のシュート)を放ち、そのボールがマクシモビッチの胸に当たるという不運もあって、GKダビド・ソリアが破られてしまったから、ビジター席を満員にして応援していたヘタフェファンもたまったもんじゃありません。何せ、ボルダラス監督が「Nos ha faltado el remate/ノス・ア・ファルタードー・エル・レマテ(ウチはシュートが欠けていた)」と言うまでもなく、今季の彼らはゴール日照りに苦しめられていますからね。そこへ頼みの綱のウナルもいなくてはとても同点など望めず、リードされた後もほとんどマドリーに自陣エリア付近に押し込まれたまま、ビニシウスのゴールはオフサイドで認められなかったため、1-0の最少得点差負けで終わることになりましたっけ。 え、それにしても後半39分、アセンシオが場内の拍手を浴びながら、ベンチに向かって歩いて来る間にファン・イグレシアスに足をかけられたカマビンガが左ヒザの痛みを訴え、交代を要請。急遽、彼がオドリオソラと代わることになった時はドキリとしなかったかって?そうですね、最近は左SBでもボランチでもいい働きをしている選手なだけに、記者会見でアンチェロッティ監督が「Es sólo un golpe. ¡Tiene 20 años, se va a recuperar muy pronto!/エス・ソロ・ウン・ゴルペ。ティエネ・ベインテ・アーニョス、セ・バ・ア・レクペラール・ムイ・プロントー(ただの打撲だ。彼は20才だから、すぐ治るだろう)」と言った後も3度程、当人の状態に関する質問が出るぐらいだったんですけどね。 実際、日曜の検査で軽傷ということが判明し、月曜にはもうバルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドで練習する姿が見られたため、一安心となりましたが、まあ、日曜にはデ・ブライネやグリーリッシュ、ジョン・ストーンズ、ベルナルド・シウバらを温存しながら、ギュンドガンの2発とハーランドの今季52得点目によりエバートンに0-3と快勝。プレミアリーグ優勝まであと一息としたものの、その試合の終盤にはロドリが違和感を覚えて交代したため、グァルディオラ監督がマドリー戦までには回復すると説明しなければならなかったなんてこともありましたからね。 どちらの国のマスコミも水曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、エティハド・スタジアムで行われるCL準決勝2ndレグを前にナーバスなっているということでしょうが、月曜に出たマドリーの招集リストにはトップチーム全員の名前が。対ハーランド要員のリュデガーもベンチ観戦で体力温存できましたし、まだもう1人の先発CBはアラバかミリトンかといった些細な疑問はあるとはいえ、マドリーファンも2000人程、応援に行くそうですしね。アウェイのハンデに臆せず、またCL最強チームであるところを示して、6月にはシベレス広場でバルサに負けない派手な祝賀セモニーを開いてほしいものです。 一方、ベルナベウで勝ち点を取れないのは織り込み済みだったヘタフェは、この土曜のエルチェ戦を「Es una final. Es ganar o ganar y así lo sabemos todos/エス・ウナ・フィナル。エス・ガナール・オ・ガナール・イ・アシー・ロ・サベモス・トードス(決勝だ。勝つしかないと皆もわかっている)」(ボルダラス監督)と位置付けていたんですが、まあ相手は前節、すでに2部降格がダントツ最下位で決定していますからね。ボルダラス流回帰で今度はマタが出場停止となるものの、先週末はカディスがマジョルカに、バジャドリーもEL準決勝1stレグでユベントスと1-1で分け、木曜の2ndレグを今か今かと待っているセビージャに負けたため、18位のままだったヘタフェとすぐ上の彼らの差は勝ち点1に留まることに。 クラブもコリセウム・アルフォンソ・ペレスを満員にしようと、週明けにはアボナードー(年間指定席保持者)1人につき1枚5ユーロ(約800円)の激安チケットを売り出したところ、月曜午後にはもう完売。ファンのエルチェ戦に懸ける期待もかなり大きいんですが、そんな中、引分けてあげられなかったマドリーに続いて、もう1つの兄貴分、アトレティコも日曜の試合で水を差すような真似をするとはこれ如何に! そう、W杯後の再開リーガでどこよりいい成績を残し、コパ決勝のparon(パロン/リーガの停止期間)前も3試合で13点も取って3連勝していたアトレティコだったんですが、中10日、うち3日間は完全休業としたせいで、選手たちがもう夏のバケーションに入ったと勘違いしてしまったんでしょうかね。先週は一旦、気温が下がったマドリッドと違い、マルティネス・バレロが真夏日だったのも影響したか、もう2部のチームであるエルチェに気合で負けて、1点も奪えないとは一体、どういうことでしょう。それどころか、前半41分にはラウタロのスローインをGKゲルビッチがパンチングミス。フィデルにvolea(ボレア/ボレーシュート)で先制点を奪われているのですから、呆れて物も言えませんって。 1-0で始まった後半は9分にはレマルがケガでコレアと代わるというアクシデントがあったものの、16分にデ・パウルとエルモーソをバリオスとレギロンに代え、DF4人制に変えてもまったく効果は現れず、何より最悪だったのはモラタが撃っても撃ってもゴールが入らない病を再発してしまったこと。ええ、開始早々にもヘッドをGKバディアに弾かれていた彼は後半もシュートを相手の正面に蹴ってしまうわ、ロスタイムなど、ゴール前からのヘッドまで外してしまう有り様なんですよ。最後はシメオネ監督がアトレティコB(RFEF2部/実質4部)のエース、カルロス・マルティンまで投入していたのを見れば、その絶望度の高さがわかるかと。 うーん、勝ち続けていた時はあまり気にならなかったんですが、もう頚椎間板ヘルニアのGKオブラクが4試合も不在で、メンフィス・デパイやマルコス・ジョレンテもリハビリ中ですしね。加えて足指骨折のサビッチも長期離脱中と負傷欠場者が多いツケがモロに現れた感じでしたが、結局、アトレティコは1-0で敗戦。エルチェに「Uno de los partidos más completos de principio a fin/ア・シードー・ウノ・デ・ロス・パルティードス・マス・コンプレトス・デ・プリンシピオ・ア・フィン(最初から最後まで一番、完璧な試合の1つ)」(ベッカセセ監督)を贈ってしまったんですが、え、彼らは前回のホームゲームでもマドリッドの弟分、ラージョに4-0と大勝していなかったかって? まあ、そうなんですが、あの試合、イラオラ監督のチームは前半途中にCBルジューヌがレッドカードで退場という悲劇に見舞われていますからね。アトレティコにも前半終盤のセットプレーでGKバディアにヒメネスが押し倒されながら、PKをもらえなかったという不運はありましたが、33節で今季初めてもらったPKが2試合続けてもらえると思える方がどうかしていますって。おかげでまたお隣さんに抜かれ、3位に後退。4位以内確定にもあと勝ち点1が足りないため、シメオネ監督も「Solo pensamos en clasificarnos para la Champions/ソロ・ペンサモス・エン・クラシフィカルノス・パラ・ラ・チャンピオンズ(ウチはCL出場圏入りすることだけを考えている)」とまた、お決まりのスタンスに戻っていましたしね。 とにかく今、やってほしいのは休み呆けでいきなりダメダメになってしまった選手たちを再び公式戦モードに戻すことですが、まったくクラブも何を考えているんだか、この土曜にはメトロポリターノにファンを招いて、公開練習をやるのだとか。日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からのオサスナ戦も恒例のEl Dia de Ninos/エル・ディア・デ・ニーニョス(子供の日)に設定して、試合前はスタジアム周辺でアクティビティを楽しむことができるようですが、いや、これじゃ、選手たちのバケーション気分が続くばかりじゃない? その相手のオサスナもコパ決勝に負けてヘコんでいるかと思えば、先週末はアルメリアに3-1で勝って、立ち直っていますし、何より彼らはコンフェレンスリーグ出場圏を目指しているラージョのライバルでもありますからね。月曜試合ではまたアウェイでベティスに3-1で負け、順位こそ、11位に下がってしまった弟分ですが、7位のジローナと勝ち点差2だけなら、まだ諦めるのは早い?そんなラージョには日曜の次節、エスタディオ・バジェカスにエスパニョールを迎え、19位で残留争いの末端にいる相手を叩いて、弟分仲間のヘタフェを援護射撃するという役目もありますしね。同じことはやはり日曜にバレンシアを迎えるマドリーにも言えるんですが…アトレティコの下剋上2位も懸かっているため、そこはちょっと微妙なところでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.17 10:30 Wed
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1stレグには延長戦がないのが嬉しい…/原ゆみこのマドリッド

「ヘタフェには有難いことだけど」そんな風に私が複雑な心境になっていたのは木曜日、丁度、CL準決勝マンチェスター・シティ戦の狭間に当たる今週末のリーガ34節の兄弟分ダービーで、アンチェロッティ監督が大規模ローテーションを行うという記事をマルカ(スポーツ紙)で読んだ時のことでした。そう、ご存知の通り、マドリッドの弟分チームのヘタフェは未だ1部残留が決定しておらず。2節前にキケ・サンチェス・フローレス監督を解任して、ボルダラス監督を再招聘したところ、何とか前節のセルタ戦には勝利したものの、未だに降格圏の18位にいますからね。 救いとなるのは彼らが17位のバレンシアと同じ勝ち点、更に2ポイント差以内に14位以下、アルメリア、カディス、バジャドリーと4チームもあるため、いやまあ、普通のシーズンなら、もう1つの兄貴分のメトロポリターノと共にサンティアゴ・ベルナベウは最初から、勝ち点を勘定しない試合ではありますよ。とはいえ、レアル・マドリーのスタメンにマリアーノやアザール、バジェホ、オドリオソラ、GKルニンといった今季、数える程しか、プレーしていない選手たちが並んでいたら、もしかしてワンチャン狙えるかもと思ったから。 ただ、この土曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのマドリー戦では、ボルダラス監督もエースのエネス・ウナルとダミアンを累積警告による出場停止で使うことができないんですけどね。よって、ゴールはRMカスティージャ出身で、トップチームでも何シーズンかプレーしたことのあるボルハ・マジョラルの古巣への恩返しや、キケ・サンチェス・フローレス監督には窓際に追いやられていたものの、セルタ戦で今季初先発。ボルダラス監督1期中の2018-19シーズンには5位でEL出場権を勝ち取ったチームの牽引役となり、スペイン代表にも招集されたマタらの肩に懸かってくることになりますが、え? いくらリーガを諦めたマドリーといえど、負ければ、前節、お隣さんに奪われた2位との差が勝ち点1以上になるかもしれないのはともかく、翌日曜にエスパニョールとのカタルーニャダービーに挑む前から、バルサに優勝トロフィーを献上してやるのは悔しんじゃないかって?まあ、それはそうでしょうけど、彼らはシティ戦1stレグを1-1の引分けで終わり、来週水曜の2ndレグを前にアドバンテージを得られず。エティハド・スタジアムでの一発勝負となってしまったとなれば、3月のインターナショナルマッチデーのparon(パロン/リーガの停止期間)以降、スペインで唯一、週2試合ペースを延々と継続し、すでに8週目になろうかというチームですからね。30代のレギュラー選手も多々いますし、Decimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)及び2連覇達成の懸かったCL決勝進出に向けて必勝を期すためにはもう、この方法しかないのかも。 ま、そんなことはともかく、そのベルナベウでのシティ戦1stレグがどんな試合だったか、お話ししていくことにすると。さすが今季のCL戦、ホーム開催の最終戦とあって、火曜はいつにも増して、キックオフ1時間半前にスタジアム入りするマドリーのチームバスをお出迎えするファンも多かったようですが、何せ、現場で人込みに揉まれて立って待っているのも辛いですし、結局、いつバスが着くかわからなくてスマホ画面頼りになるのは同じですからね。今季は16強対決からやっているように、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でカフェ・コン・レッチェ(カフェオレ)を飲みながら、その光景をレアル・マドリーTVの追っかけ生中継で見た後、私も試合に向かうことに。 メトロの中ではもう、シティファンのイギリス人たちが大声で気勢を上げていたんですが、CL決勝トーナメント恒例、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)に「El Rey y su Copa/エル・レイ・イ・ス・コパ(王とそのトロフィー)」と書かれた横断幕が現れ、うーん、もしや先日のお隣さんがメトロポリーノで祝ったクラブ創設120周年イベントのスタンド旗振り演出に触発されたんでしょうかね。この日はモザイクではなく、横断幕と色を合わせた白と紫の旗をファンが振って、入場する選手たちを迎えた後、前半30分ぐらいまではシティがほぼボールを独占。GKクルトワに止められたものの、デ・ブライネやロドリがシュートを放ち、fondo norte/フォンド・ノルテ(北側ゴール裏席)最上階右側に陣取る1800人のビジターファンを喜ばせたものでしたけどね。 ただ、これはマドリーの作戦のせいもあったようで、ポゼッションが30%程度しかなくても、「Ellos tocan, tocan, pero lo importante es cerrar bien los espacios entre líneas/エジョス・トカン、トカン、ペロ・ロ・インポルタンテ・エス・セラール・ビエン・ロス・エスパシオス・エントレ・リネアス(彼らはパスを回しまくっていたが、大事なのはライン間のスペースを閉じることだ)」(アンチェロッティ監督)という用心を怠らなかった彼らは失点には至らず。それどころか、36分にはカマビンガが自陣でボールを受け、敵陣を縫ってドリブル。エリア付近でビニシウスにパスしたところ、それを彼がエリア外からシュートして、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めてしまったから、ビックリしたの何のって。 そのまま前半は1-0でマドリーがリードして終わり、後半になると攻守交替。「ウチはハーフタイムに幾つか訂正した。El míster ha dicho que tenemos que tener más balón y crear más/エル・ミステル・ア・ディッチョー・ケ・テネモス・ケ・テネール・マス・バロン・イ・クレアル・マス(監督がもっとボールを持って、もっとチャンスを作れと言った)から、それをやったんだ」(モドリッチ)という彼らが今度は敵エリアを囲む形になっていたんですが、ホント、サッカーって不思議ですよね。今にもマドリーの2点目が入るんじゃないかと思っていた22分、自陣近くでボールを取り戻したカマビンガのパスミスから、シティがギュンドガン、デ・ブライネと繋いで、こちらもエリア外からのシュートがGKクルトワを破ってしまうんですから、やってくれるじゃないですか。 いえまあ、実はこのゴールが決まる前のプレーでシティの選手のボールがサイドラインを完全に出ていたにも関わらず、プレーが続行。そのままゴールまで行っていれば、VAR(ビデオ審判)注進もあったかもしれないんですが、一旦、カマビンガが奪い返していたのが災いしたんでしょうか。それをアンチェロッティ監督が主審に抗議して、イエローカードをもらうという珍しいシーンも。そのままスコア1-1のままで試合は進行し、32分にはベンゼマのヘッドがGKエデルソンにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されるなんてこともあったものの、マドリーは最後まで勝ち越し点を奪うことは叶いません。 対するシティももう、これは昨季の準決勝2ndレグの後遺症としか言いようがないんですが、ええ、何せ後半45分、そしてロスタイムにロドリゴが決めた2発で追いつかれて延長戦に入り、ベンゼマのPKゴールで止めを刺されるという、常人には理解不能なマドリーの奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)の犠牲になったグアルディオラ監督ですからね。同点に追いついた後、再びボールポゼッションは取り戻したものの、ゆったりパスを回していることが多くなり、35分からはロドリゴからアセンシオ、クロースからチュアメニ、モドリッチからナチョとチームをリフレッシュさせたマドリーとは真逆で、まさか1人も選手交代せずに終わってしまうとは! それもグアルディオラ監督によると、「ピッチにいる選手たちの方がボール保持してくれると思った。El Madrid tiene jugadores que hacen transiciones en carrera/エル・マドリッド・ティエネ・フガドーレス・ケ・アセン・トランシシオネス・エン・カレラ(マドリーには攻守の切り替えを走りながらできる選手がいる)。もし試合が行ったり来たりの展開になったら、ウチにはそのレベルで彼らのようにいい選手がいない」という理由だからだそうですが、はい。怖かったんですね、マドリーの高速カウンターが。今季、驚異の51得点を挙げているハーランドが見せ場を作れなかったことについては、「アラバとリュディガーがいつも近くにいて、彼にとっては簡単な試合じゃなかった」そうで、ええ、まさにその通り。 とりわけ出場停止のミリトンの代わりに入ったリュデシガーは秀逸で、ことごとくノルウェイ人大型FWへのボールを切っていたため、マドリーの2024年補強候補として取り沙汰されることの多い彼のゴールを見てみたかったというファンには残念な結果となりましたけどね。とはいえ、「A lo mejor en la vuelta que estamos en casa jugamos con más ritmo/ア・ロ・メホール・エン・ラ・ブエルタ・ケ・エスタモス・エン・カサ・フガモス・コン・マス・リトモ(ホームでプレーする2ndレグではもっと速いリズムでプレーした方がいいかもしれない)」(グアルディオラ監督)という、来週水曜のエティハドではまた違った展開になる可能性もなきにしろあらず。 何せ、モドリッチなども「Sigue la eliminatoria 50-50/シゲ・ラ・エリミナトリア・シンクエンタ・シンクエンタ(準決勝は5分5分のままだ)」と言っていたように、次の対戦の結果がそのまま勝敗に繋がりますからね。一応、マドリーは過去、1stレグを引分けたCL決勝トーナメント10試合中8試合で突破しているというデータもあるものの、シティはホームでのCL戦25試合負けなし。プレミアリーグでも10連勝中で今や、優勝まであと一歩という強さであることを考えると、決して楽観はできませんが、こればっかりはねえ。策士のアンチェロッティ監督なら、昨季のレモンターダラッシュを鑑みて、次はロドリゴを控えで終盤まで取っておくなんていう手もあるかもしれません。 まあ、そんなマドリーには週末のヘタフェ戦をゆったりプレーしてもらうとして、他のマドリッド勢の予定はどうなっているかというと。バルサに負けた後、また3連勝して、とうとう2位まで上がったアトレティコは日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からアウェイのエルチェ戦で、相手は前節にダントツ最下位での2部降格が確定。その状態で最後に地元のファンにいいところを見せようと、4-0で大勝した先日のラージョ戦のように頑張る恐れもあるかもしれませんが、シメオネ監督のチームもせめて、エスパニョールに勝たない限り、バルサはリーガ優勝できないぐらいの意地を示せればいいかと。 ただ、負傷欠場者の数はあまり変わらっておらず、いえ、前節のカディス戦で足首をネンザしたコレアは先週末、リーガがなかったおかげもあって、もうチーム練習に戻っているんですけどね。バルサ戦を最後に頸椎捻挫でずっとお休みしているGKオブラクは、ようやくここ最近になって、各紙の番記者も心配になったんでしょうか。どうやら彼の首の痛みは今になって始まったものではなく、ずっと悩まされている慢性の疾患だったという報道が。その原因もよくわからず、手術を勧める向きもあり、今季残り試合全てお休みするかもって、一体どうなっているのやら。 それでも控えのゲルビッチがしっかりやってくれていますし、サビッチ(足指骨折)、ジョレンテ(太もも肉離れ)、デンベレ(ふくらはぎのケガ)が欠けていても特に問題が起きていないのは幸いですが、これもヨーロッパから昨年のうちに完全撤退。コパ・デル・レイも準々決勝でお隣さん相手に敗退して、2月から週1試合ペースが続いているおかげかと思うと痛し痒しですからね。何はともあれ、もう今季は泣いても笑ってもあと5試合だけとなれば、毎回、ファンを笑顔にさせて、シーズンを終わってほしいですよね。 そしてもう1つの弟分ラージョは月曜、休養十分で6位のベティスとベニト・ビジャマリンで対戦するんですが、ホームではここ3連勝している彼らもアウェイでは2連敗中。一応、コパ王者がマドリーに決まったことで、コンフェレンスリーグ出場権がもらえる7位まではあと勝ち点1とはいえ、9位のラージョの上にはジローナとアスレティックがいるのも難点ですが、せっかく今週はイシも2028年まで契約を延長してくれたことですし、夢はあくまで大きく持たないと。 相手のベティスもすでに9差となってしまった、レアル・ソシエダの占める4位のCL出場圏末席到達は諦めて、EL出場圏を死守といったスタンスでしょうが、7位以下とは勝ち点5差あるのが油断に繋がってくれれば、イラオラ監督のチームが白星を掴むこともできる?何せ、木曜にはセビージャがEL準決勝ユベントス戦1stレグを最後の瞬間に追いつかれたものの、1-1の引分けという奮闘ぶり。来週木曜の2ndレグでは街中の注目を集めることがわかっているだけに、ベティスもその前にしっかり勝って、体面を保っておきたいところというのはちょっと、用心しないといけないですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.12 19:30 Fri
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