ゴールがないと更に寒く感じる…/原ゆみこのマドリッド

2023.01.31 22:00 Tue
©Atlético de Madrid
「当分、コパは忘れていいってことね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、コパ・デル・レイ準決勝の組み合わせが決まった時のことでした。いやあ、掛け持ちがリーガしかないオサスナvsアスレティックのカードの方は当初の予定通り、2月の第2週ミッドウィークに1stレグ、3月の第1週に2ndレグで全然、問題なかったんですけどね。もう1つのカードがレアル・マドリーvsバルサのクラシコ(伝統の一戦)となってしまったのがミソで、ええ、昨季のCL王者であるマドリーは2月8日のクラブW杯準決勝のため、モロッコに行くことになっているんですよ。

更に2月の第3、4週の木曜にはバルサがEL決勝トーナメント16強対決進出プレーオフのマンチェスター・ユナイテッド戦を迎えるだけでなく、マドリーも21日にはCL16強対決リバプール戦1stレグが控えているとあって、コパの日程が取れず。最終的にはどうやら3月の頭に準決勝1stレグ、2ndレグは4月4~6日に設定されるとか。ええ、3月19日には首位の座が入れ替わるかもしれないリーガクラシコもあって、ちょっとその辺、クラシコ祭りの匂いがプンプンするんですけどね。あまりに先のこと過ぎて、今からはとても考えていられない?
まあ、その辺はまた近くなったら、話題にするとして、今は先週末、マドリッド勢のリーガ戦がどうだったか、お伝えしていくことにすると。相変わらず、寒波の続く中、土曜は重ね着用のヒートテックも持参して、午後9時からのベティス戦を見にコリセウム・アルフォンソ・ペレスへ向かったんですが、さすがにここリーガ3連敗中、昼間の試合ではカディスがマジョルカに勝って、降格圏を脱出していたのも影響したんですかね。その日はヘタフェファンが早い時間に集まって、スタジアム入りするチームバスを大量のbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚いて迎えていたんですが、私が着いた頃には、botellon(ボテジョン/野外飲酒)をしていたベティスファンの残した空き瓶やゴミが周辺の道に溢れかえっているという有り様に。

それだけ大勢のビジターファンが来ていたせいか、逆にヘタフェファンはお出迎えをしただけで満足してしまったのか、試合が始まっても聞こえる応援の声はもっぱら、ベティスサイドからばかりだったんですが、かといって、スペイン・スーパーカップ準決勝でバルサに、コパ16強対決でオサスナに連続PK戦負けをし、士気を落としているペジェグリーニ監督のチームが優勢という訳でもなかったんですけどね。確かに序盤にボルハ・イグレシアスに2度程、チャンスはあったものの、GKとの1対1はダビド・ソリアに軍配が挙がり、もう1本のシュートはゴールポストに当たって得点には至らず。

それでもヘタフェにまったくゴールの兆しがないのでは、スタンドが盛り上がるはずもありませんが、後半も両者無得点のまま進み、寒さが耐え難い程になっていたせいもあって、誰もが0-0でいいから、早く終わってくれと祈っていた41分、まさかあんな悲劇が起こるとは!ええ、カナレスがエリア内にボールを入れようとしたところ、その前でブロックしていたドゥアルテの腕にボールが当たってしまったから、さあ大変!土壇場でベティスにPKが与えられ、ボルハ・イグレシアが決めた1点で0-1と負けたヘタフェはとうとう、4連敗となってしまいましたっけ。
いやあ、この日はリードされた途端、スタンドから最近恒例の「Quique vete ya!/キケ・ベテ・ジャー(キケ・サンチェス・フローレス監督、もう出て行け)」のカンティコが始まったんですが、それもベティスファンの歓喜の歌声の前にかき消され、あまり長続きしなかったのは不幸中の幸いでしたけどね。マズいのは土曜こそ、残留ラインギリギリの17位で終わったヘタフェだったものの、日曜にはバジャドリー、セルタがそれぞれ、バレンシア、アスレティックに勝利。とうとう降格圏の19位になってしまったことの方で、とはいえ、同じ勝ち点20でバレンシア、エスパニョール、セルタ、バジャドリーが並ぶセーフゾーンまではたったの3差ですからね。

そのくらい、次節で白星を挙げれば、あっさり覆ったりするものですが、今週末土曜の相手は兄貴分のアトレティコ。これがまた、2011年以来、勝ったことがないという超鬼門ですし、会場もシビタス・メトロポリターノですからね。その次もラージョ戦とダービーが続くのも辛いところですが、とりあえず、アンヘル・トーレス会長は近日中の監督交代を否定。噂によると、後任と目されていたボルダラス監督の復帰はまた練習が3時間になるのをイヤがったか、選手たちに反対されたようで、他には2005-07年にコパ準優勝などでヘタフェの第1次黄金期を作ったシュスター監督などが挙がっていましたが、こちらは2019年に中国の大連を離れて以来、現場から遠ざかっているのが気掛かりですしね。何はともあれ、今はキケ・サンチェス・フローレス監督が打開策を見つけてくれるのを祈るしかありません。

そして翌日曜、午後4時15分という早い時間の上、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で観戦できたため、アトレティコがエル・サダルでオサスナに挑む試合では寒さに苦しむ必要のなかった私でしたが、いやあ、これもなかなかゴールが生まれない展開でねえ。どちらもミッドウィークにコパ準々決勝、しかも延長戦までもつれ込んでいたせいもあり、その疲れもあったんだと思いますが、前半はチミ・アビラのシュートをGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いだぐらいで、0-0のまま、ハーフタイムを迎えることに。

後半もモイ・ゴメスの危ないシュートをオブラクが弾いていたりしたんですが、このままではいけないとシメオネ監督が選手交代のカードを切ったのは20分のこと。コパ・ダービーで受けた打撲のせいで先発できなかったモラタとサウールを、コレアとバリオスに代えてピッチに送り込んだんですが、それがバッチリ当たったんですよ。29分、デ・パウルが自陣から出したロングボールに抜け出したのはここ数日、今月中のバレンシア移籍が噂されていたサウール。ええ、「Dudo si controlar con el pecho o con el pie/ドゥド・シー・コントロラル・コン・エル・ペチョ・イ・コン・エル・ピエ(トラップを胸でするか、足でするか迷った)けど、後はあんまり考えなくて、出たとこ勝負だった」という当人のシュートがGKアイトール・フェルナンデスを破り、先制しているんですから、ビックリしたの何のって。

このサウールの2年越しのアトレティコでのゴールで他の選手たちも元気が出たか、それからはグリーズマンの1対1、ヒメネスのヘッド、モラタのカウンターなど、追加点のチャンスもあったんですけどね。どれも決まらず、最後はモンカジョラのシュートをジャンピングセーブしたオブラクに結局は救われることになったんですが、とにかく先週はお隣さんに負けて、唯一、優勝の可能性があったコパも敗退。今ではリーガ4位以上で来季のCL出場権を獲得するしか目的がなく、尾羽打ち枯らしていたアトレティコですからね。コパ準決勝進出が決まり、浮かれているオサスナ相手に0-1の辛勝しかできなくても、彼らがシーズンをまだ投げていない証明になった?

ちなみにそのことに関しては試合後、シメオネ監督が「No hay mayor motivación que jugar en el Atlético de Madrid/ノー・アイ・マジョール・モティバシオン・ケ・フガール・エン・エル・アトレティコ・デ・マドリッド(アトレティコでプレーする以上のモチベーションはない)。今日はそのことを選手たちに言った。確かにウチはCL、コパに敗退したが、アトレティコでプレーしている。そしてアトレティコでは全力を尽くしてプレーしないといけないとね」とコメント。このところまた、契約はあと1年あるものの、今季終了後の去就を問われることが多くなっていた彼ですが、シーズンまだ半ばでチームがやる気を失ってしまうのを防いでくれたのは有難い限りかと。

実際、ヘタフェが6位ベティスを止めるのに失敗したため、このオサスナ戦前には同じ勝ち点で並ばれていた上、月曜にもう1つの弟分、ラージョがレンタル修行中のアトレティコのカンテラーノ(Bチームの選手)、カメージョのゴールでビジャレアルに0-1と勝ってくれたおかげで、ようやく5位と勝ち点3つけることができたアトレティコですからね。たかが4位とはいえ、今季は激戦区になっているため、選手たちも自覚を持って、このシーズン後半戦に取り組んでもらいたいものですが、逆にこれからはほとんど週1ペースでしか試合がないのが、強みになっていくかもしれませんね。

そして日曜夜は再び、厳寒のサンティアゴ・ベルナベウに意を決して赴いたんですが、ヘタフェの夜の辛さに懲りて、とうとう滅多に使わないヒートテックのレギンズまで着用することに。もうこれでダメだったら、スペイン・スーパーカップのせいで順延になっていた木曜、やはり午後9時(日本時間翌午前5時)からのバレンシア戦には毛布でも被っていくしかないんじゃないかと、かなり悲壮な気分になっていたんですが、更にそれに拍車をかけたのは2位マドリーと勝ち点3差でそれを追う3位レアル・ソシエダの対戦でありながら、待っても待ってもゴールが入らなかったことでしょうか。

いやまあ、10人近く負傷者がいて、先週はバルサにコパ準々決勝で敗退。いくらカンテラーノで水増ししても疲労の極致にあったソシエダが序盤から、時間稼ぎのようなゆとりプレーをしていたのは下手に先制すると、相手の尋常ではないremontada(レモンターダ/逆転劇)精神を呼び覚ましてしまうのを恐れていたせいかもしれないんですけどね。この日のマドリーはシュート精度が悪く、前半はベンゼマ、クロース、ビニシウスがGKレミロに弾かれてしまう始末。

後半はソシエダも活性化して、ええ、久保建英選手など2度もシュートを撃って、GKクルトワの手を煩わせていただけでなく、33分には勢いついて止まれず、クルトワを蹴って、イエローカードまでもらっていたぐらいだったんですけどね。ちょっと不思議な話なんですが、そこまで元気だった彼はイマノル監督によると太ももを痛めていて、「Lleva tres semanas sin poder entrenar, tan sólo compite/ジェバ・トレス・セマーナス・シン・ポデール・エントレナール、タン・ソロ・コンピテ(3週間、練習ができてなくて、ただ試合に出るだけ)」なんだそう。それにしたって、リーガ前節のラージョ戦には出場していないものの、水曜のカンプ・ノウではチームで一番の活躍をしていたようですし、中3日でまた、ここまで頑張れるのはもしかして、両古巣相手の大舞台故のアドレナリン効果?

その一方でマドリーは後半もガンガン撃っていって、この試合のシュート数は20本(うち枠内7本)にも達したんですが、GKレミロがナイスセーブを連発したこともあり、結局、90分で1点も入れられないとは、これではまるでかの日お隣さんとまったく同じ。いやもう、ホントにこれがリーガ戦で0-0でも試合が終わり、延長がないのは助かりましたが、え?点が一向に取れないのにも関わらず、アンチェロッティ監督がモドリッチとアセンシオの2人しか、交代でピッチに入れなかったのはどうしてなのかって?

うーん、当人は「Ha sido difícil hacer los cambios porque nadie merecía salir del campo/ア・シードー・デフィシル・アセール・ロス・カンビオス・ポルケ・ナディエ・メレシア・サリール・デル・カンポ(どの選手もピッチを去るに値いしなかったから、交代は難しかった)。チームはいいポジショニングができていて、流れを変えたくなかった」と説明していたんですけどね。実のところ、今季のマドリーはアンチェロッティ監督に使われる選手が決まっていて、ベンチにはアザールやマリアーノらのFWもいたんですが、よっぽどのことがない限り、プレーすることはなし。そこへルーカス・バスケス、カルバハル、アラバ、チュアメニ、メンディらが負傷欠場中となると、選手交代が少なかったのも当然の帰結ですが、中には「Hemos acusado la prórroga con el partido de Copa/エモス・アクサードー・ラ・プロロガ・コン・エル・パルティードー・デ・コパ(コパの試合の延長戦が響いた)」(ナチョ)という声も。

そう、彼らもアトレティコとの試合で120分を戦い抜いたばかりですからね。ただ、アンチェロッティ監督は「Hemos empujado 90 minutos a tope, con mucha intensidad/エモス・エンプハードー・ノベンタ・ミヌートス・ア・トペ、コン・ムーチャ・インテンシダッド(ウチは全力で90分、押し上げ続けた。とても強度のあるプレーでね)。木曜の延長戦の影響は感じられなかった」と言っていたため、ちょっとこの辺に選手たちと感覚のズレがあるのかもしれませんが、さて。何せ、この日もメンディの代わりに左SBを務めたカマビンガなどは、「Cinco puntos no son nada en la temporada/シンコ・プントス・ノー・ソン・ナーダ・エン・ラ・テンポラーダ(勝ち点5なんて、シーズンの中では何てことないよ)」と言っていたものの、おかげで首位のバルサとの差も開いてしまいましたしね。

それだけにスペイン・スーパーカップに参加したチーム以外、プレーしないこのミッドウィークの順延17節は絶対に落とせませんが、朗報はそろそろ、アラバ、チュタメニ、カルバハルの3人が戻ってこれそうなこと。ただ、相手のバレンシアは月曜にガットゥーゾ監督と契約を解除、伝説の暫定監督、チーム付ディレクターのボロ氏が8度目の指揮官となって、ベルナベウにやって来ますからね。意外と侮れないんじゃないかと思いますが、とにかく今、何より望んでいるのはこの寒波が少しは和らいでくれていることでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。


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