この先、忙しいのはマドリーだけ…/原ゆみこのマドリッド

2023.01.28 20:00 Sat
twitterfacebookhatenalinegplus
 退場を免れたセバージョス[写真=原ゆみこ]
退場を免れたセバージョス[写真=原ゆみこ]
「シーズン終わるまでが長いわよね」そんな風に私が溜息をついていたのは金曜日、凍りつくような前夜、家に着いたのは午前様だったにも関わらず、風邪を引かずに済んだことを喜びつつ、早く春が来ないかなとカレンダーを眺めていた時のことでした。だってえ、今季のリーガ最終節はW杯を挟んだせいで通常より少し遅れて6月4日の週末。EL決勝が5月31日、CL決勝が6月10日にあるとはいえ、CLグループリーグ最下位敗退により、昨年のうちにヨーロッパから完全撤退したアトレティコにはまったく関係ないんですよ。

唯一、5月6日の決勝まで楽しめる可能性のあったコパ・デル・レイですら消えてしまった今や、3回程のミッドウィーク開催節を除いて、週末だけリーガの試合をこなせばいい、ヘタフェやラージョら、弟分チームたちと同じ身分とは、もう世も末。それも現在、4位の彼らは5位のビジャレアルと同じ勝ち点、3位レアル・ソシエダには勝ち点7、2位レアル・マドリーには10、そして首位バルサには13の差があるとなれば、逆転優勝の掛け声など、まったく聞こえるはずもなく、あとはリーガの残り20試合でちまちま、CL出場圏を維持していくことくらいしか望めないんですが、何かこれ、シメオネ監督以前のアトレティコに戻っていない?

まあ、愚痴っていても仕方ないので、木曜の準々決勝コパダービーがどんな試合だったのか、お話ししていくことにすると、まだ少しは暖かかった昼間のうちに話題になっていたのは、その日の未明、バルデベバス(バラハス空港の近く)にあるお隣さんの練習場近くの高速道路に「Madrid odia al Real/マドリッド・オディア・アル・レアル(マドリッドはレアル・マドリーを憎んでいる)」という横断幕と共にビニシウスのユニを着せた首吊り人形が出現。アトレティコのウルトラグループによる人種差別主義的ヘイトクライムだとして、両クラブやサッカー協会、スポーツ関連のお役所などから非難されていたんですが、幸いなことに今回のダービーはサンティアゴ・ベルナベウでの開催でしたからね。
直前に300から500枚ぐらいに割り当てチケットが増えたとはいえ、その前のメトロポリターノでのダービーのように、ウルトラたちがビニシウスに向けて猿の鳴き真似をするような蛮行が試合で起きるとは考えにくかったんですが、ホント、こういうアトレティコファン全体を貶めるような行動は慎んでほしいかと。そしてキックオフの午後9時が近づくにつれ、気温はぐんぐん低下していき、いえ、大改装中で色んなところに隙間があるとはいえ、そそり立つスタンドで囲まれているベルナベウではブタルケやコリセウム・アルフォンソ・ペレス、エスタディオ・バジェカスのように吹きつける寒風にモロにさらされるということはないんですけどね。

それでも昨年11月のカディス戦に私が訪れて以来、77日が経過していたこの試合ではプレス席が更なる高みに移動。以前は中段にあったのが、エレベーターでなければ、とても辿り着けない8階層と、いえ、アトレティコファンが固まっていたfondo norte(フォンド・ノルテ/北側ゴール裏)の最上階、ビジターファン区画よりは弱冠、低いみたいでしたけどね。グラウンドの熱気を感じるにはあまりに遠い距離だったのもあり、早くもキックオフ前からホッカイロの封を開けてしまった私でしたが、米粒のように見える選手たちも手足がかじかんでいたのでしょうか。どちらも序盤は比較的、ゆったりプレーしていたよう。

そんな中、いきなり動きが生じたのは前半19分、コケが送ったループパスがマドリーDFラインの頭を越え、エリア内に駈け込んできたナウエル・モリーナがワンタッチで反対サイドへ送ったところ、モラタの一押しで先制ゴールが決まったから、ビックリしたの何のって。いやあ、最近はコパ16強対決のレバンテ(2部)戦、バジャドリー戦と2試合連続得点して、ゴール生産周期に入っていた彼でしたけどね。おかげでW杯のスペイン代表でもグループリーグ3試合で決めていたのを思い出した次第でしたが、当人は古巣であるベルナベウのファンから、「Morata, eres rata!/モラタ、エレス・ラタ(モラタ、お前はドブネズミ)」と心無いカンティコを歌われたのが悔しかったんでしょうか。ゴールを祝う中、自分の背中のネームの文字、MOを手で隠して、RATAだけにするという開き直りパフォーマンスも。

これはメトロポリターノに戻る度に同じカンティコを歌われてしまうGKクルトワに使えない手ですが、とにかく前半のマドリーは、ユニフォームを取り替えてプレーしているのかと思うぐらいにパスミスの多いことといったらもう。本気で勝ちたいなら、アトレティコもハーフタイムが来る前にあと2点ぐらい、取っておくべきだったんですよ。それがクロースのFKから、ミリトンがヘッドでゴールを狙うのでなく、クリアしてしまうというドッキリがあった後の32分、レマルのゴール前のキラーパスにモラタは一歩及ず、更に40分過ぎにメンディが負傷でピッチを出て、セバージョスが入るまでの空白の時間も利用できずと、0-1のまま、試合は折り返すことに。

そして激動の後半が始まったんですが、最初に起きた悲劇はまだ5分も経っていなかった頃、モラタが接触プレーでマドリー陣内に倒れたまま、しばらくほっておかれたんですが、どうやらこれが18分に彼が交代する原因となったよう。ええ、試合終了の笛と同時にピッチ中央まで出向き、ソト・グラド主審と会話していたシメオネ監督が、会見で「Ya pasó en San Sebastián y le dije si tenía algo contra Morata/ジャー・パソ・エン・サン・セバスティアン・イ・レ・ディヘ・シー・テニア・アルゴ・コントラ・モラタ(サン・セバスティアンのレアル・ソシエダ戦でもあったんだが、モラタに対して何か恨みでもあるのかと訊いた)。モラタは大袈裟に倒れると言っていたが、その打撲のせいで交代を余儀なくされた」と説明していたんですけどね。

ただ、そこでメンフィス・デパイを代わりのCFとして入れるのでなく、守備的なMFビッツェルを選択。リードしているのをいいことにアトレティコが得意の一歩後退モードに移行したのも、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)の体現者、ロドリゴが投入されたマドリーを勢いづかせたのかもしれませんが、それも27分、自陣エリア前でレマルのヒザを蹴ったプレーにより、セバージョスに2枚目のイエローカードが出ていれば、どうなっていたことか。とはいえ、後でオブラクも「Eestamos acostumbrados a eso y es complicado/エスタモス・アコストクンブラードス・ア・エソ・イ・エス・コンプリカードー(ボクらはそういうのに慣れているけど、難しいよ)」と言っていたように、ホント、マドリーが不利になる判定が下ることって、ダービーで滅多にないんですよねえ。

結局、その時もらったペナルティエリア近くからのFKもグリーズマンがクルトワにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまい、ここでも追加点が奪えず。それでもスコアが変わらないまま、後半30分も過ぎると、いい加減、震えがくるほど寒い今日ぐらい、これまでシメオネ監督下で戦った一発勝負のダービーで初めて延長戦が避けられるんじゃないかという期待が少しは沸いたんですが、とんでもない。34分にはアトレティコの選手4、5人をかわして、ロドリゴがエリア内からシュート。オブラクの手が届かず、同点に追いつかれてしまったから、さあ大変!

ええ、おかげでスタンドの大部分を占めるマドリーファンが昨季のCL決勝トーナメント、怒涛の3連続逆転劇を思い出して、イケイケで応援を始めたからですが、うーん、一応、そのまま90分は終えることができたんですけどね。ここでアトレティコのゲームメーカー、グリーズマンのガソリンが尽き、先日、正式にトップチームの選手となることが決定。未だに30番を着けているバルサのガビなどとは違い、登録枠に余裕があったか、24という立派な背番号をもらった19才のンテラーノ(Bチーム出身の選手)、バリオスと代わったのも攻撃面では痛かったんですけどね。何よりマズかったのは延長戦前半、7分にはビニシウス、9分にはメンディの交代から左SBをやっていたカマビンガにサビッチが乱暴なタックルをかまして、あっという間にイエローカード2枚で退場になってしまったこと。

すると14分、セバージョスと並んで最近、先発としても十分合格ラインの冴えを見せるようになってきたアセンシオがエリア内に切り込み、そのゴールと平行に送ったパスをそれまで何度もチャンスを逃していたベンゼマがあっさり決めてしまうのですから、まさにマドリーの逆転力たるや恐るべし。いやあ、延長戦後半にはすでにピッチに出ていたデパイ、そしてカラスコにも同点ゴールを決める機会はあったんですが、とりわけ後者、このシーズン後半、いい成績を残せば、夏には2000万ユーロ(約30億円)の買取オプションを持つバルサに移籍できるせいで力んだか、それとも絶対、アトレティコに残りたいという天邪鬼精神だったかはわかりませんが、とにかくシュート精度が悪くてねえ。

ロスタイム最後にはカウンターからビニシウスに3点目を奪われて、もう寒さに耐えるのにも限界という私に帰りがもっと遅くなるだけでなく、シメオネ監督時代のダービーで勝った試しがないPK戦という、更なる試練が課されることはありませんでしたが、いやあ。アンチェロッティ監督も「La segunda parte ha sido más un cambio mental que de estrategia/ラ・セグンダ・パルテ・ア・シードー・ウン・カンビオ・メンタル・ケ・デ・エストラテヒア(後半は戦術というより、メンタルの変化だった)。それにしたって、前半あれだけ悪いプレーをしていたチームがどうやったら後半、あんなに良くなるのか理解するのは難しい」と告白していたんですけどね。

これはもう、コパ16強対決ビジャレアル戦で前半2-0の負けを後半に3点入れて覆した時から、マドリーのお家芸、レモンターダのスイッチが入ったとしか言えないんですが、その試合、スタメンでプレーしながら、途中交代。監督を無視してベンチに座ったのを注意されていたロドリゴを見事に更生させたアンチェロッティ監督の手腕もさすがと言うしかない?ただ、大変なのは彼らにはこの先も1週間2試合のハードスケジュールが当分、続くことで、ええ、火曜にセビージャを延長戦で破ったオサスナ、ブライス・メンデスが前半に退場となったレアル・ソシエダに1-0で勝ったバルサ、そして同日、バレンシアを1-3で破ったアスレティックらが参加するコパ準決勝の抽選は月曜にあるんですけどね。

その前日、日曜午後9時(日本時間翌午前5時)からはまたベルナベウで、久保建英選手の古巣訪問は叶うものの、ダビド・シルバは負傷で来られないレアル・ソシエダ戦。来週木曜にはスペイン・スーパーカップで延期されていた17節のバレンシア戦、次の日曜にマジョルカ戦を済ませた後、サッカー協会がコパ準決勝1stレグに予定していた2月の第2週にはFIFAクラブW杯でモロッコに行かないといけないため、コパの試合は先送りする破目に。大体がして、こうも連戦が続くと、メンディのようにケガ人も増えるばかりで、何とか、チュアメニやアラバ、カルバハルらの回復が間に合ってくれるよう、今はアンチェロッティ監督も祈るしかないんじゃないでしょうか。

そしてコパで退場したサビッチのリーガでの出場停止が明けるアトレティコはこの週末、コパ準々決勝の勝ち組、オサスナと日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からエル・サダルで試合なんですが、4位維持のためには弟分たちの援護射撃を多いに期待したいところ。ヘタフェが土曜にホームに迎えるのは6位で勝ち点差3のベティスとあって、いえ、キケ・サンチェス・フローレス監督のチーム自体もリーガでここ3連敗と、いよいよ降格圏18位のバジャドリーと同じ勝ち点、ゴールアベレージ差だけで16位にいる状態なので、どうしても勝たないといけないんですけどね。

昨年、足首を手術して長期リハビリをしていたアランバリがチーム練習に戻ったという嬉しい知らせはあるものの、まだ試合に出られる訳ではなく、何とかエネス・ウナルやマジョラルが当たって、ゴール不足を解消できるといいんですが、こればっかりはねえ。ガチに降格圏入りしてしまうと、それこそ監督交代の事態にもなりかねないため、スペイン・スーパーカップ準決勝ではバルサに、コパ16強対決ではオサスナにPK戦で負けたベティスが最近、少々凹んでいるのを利用できるといいのですが。

一方、ラージョはここ2節、月曜試合となっていて、第1弾はラ・セラミカでのビジャレアル戦。5位のこの相手も同じ勝ち点のアトレティコが4位を死守するためには是非とも、イラオラ監督のチームに頑張ってもらわないといけないんですが、相手はコパに敗退したせいか、1月の移籍市場クローズが迫って、FW放出の動きが加速しているよう。もうダンジュマがトッテナムにレンタル移籍することが決まっていますし、ニコ・ジャクソンもメディカルチェックでOKが出れば、ボーツマス入りとなるとか。

まあ、ジョアン・フェリックス(チェルシーにレンタル)、クーニャ(ウォルバーハンプトン)が出て、来たのはデパイだけ。もう今季、ビッグマッチはないものの、ダービーではかなり前線の手駒が薄くなった気がしたアトレティコと比べると、まだELに残っているビジャレアルの動きは不可解ですが、9位のラージョもEL出場圏まで、あと勝ち点2差だけですからね。前節ではレアル・ソシエダに不覚を取ったとはいえ、昨季後半、いきなり不調に陥って、残留確定までの勝ち点を貯めるのに苦労した経験をリピートしないためにも前半戦最後となるこの試合、気持ちよく白星で終えてくれたらいいですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。



関連ニュース
thumb

店じまいにはまだ早い…/原ゆみこのマドリッド

「この日曜も試合があるのよね」そんな風に私が思い出していたのは金曜日、6月半ばのネーションズリーグ・ファイナルフォーに備えたスペイン代表招集リスト発表とデ・ラ・フエンテ監督の会見をネット中継で見たせいもあり、もう完全に今季が終わったような気分になっていた時のことでした。いやあ、代表についてはまた後日、お話しすることにしますが、今週はそれ以外にもシーズン終了感満載のイベントが多数開催。リーガ優勝が何試合も前に決定していたバルサなど、これから1年半の全面改装工事期間に入るカンプ・ノウとのお別れセレモニーに続き、水木と連続して、今季限りで退団するブスケツ、ジョルディ・アルバのお別れセレモニーがあったんですけどね。 一方、バルサの宿敵のレアル・マドリーでは最近、サウジアラビアのアル・ヒラルから年棒1億ユーロ(約150億円)の2年契約オファーを受け、移籍するかもしれないと噂されているベンゼマが木曜にマルカのレジェンド授賞式に出席。司会者のしつこい質問に「話しているのはネットの中だけ。La realidad no es Internet/ラ・レアリダッド・ノー・エス・インテルネット(現実はネットにはない)」と答えたことから、残留の線が強いのではという推測も聞かれるように。 それでも女児のファンから、直球で「Te vas a quedar en el Real Madrid?/テ・バス・ア・ケダール・エン・エル・レアル・マドリッド(レアル・マドリーに残るの?)」と尋ねられた際、「Por el momento estoy aquí/ポル・エル・モメントー・エストイ・アキー(今のところ、自分はここにいる)。毎日を楽しんで、いい練習をしてるし,まだ試合もある」と答えて揚げ足を取られ、「今のところ」と言っているのが怪しいという意見もなきにしろあらず。まあ、どっちにしろ、アンチェロティ監督続投の決まった後、スポーツ紙のマドリーページにはこの夏の選手の出入り以外、話題がないとなれば、何でも針小棒大に報じられるのは仕方なかったかと。 加えてお隣さんも先週末、3位以上を確定したと思いきや、最終節を待たずにヒメネスが水曜にヒザの半月板の内視鏡手術を受け、一足先にバケーション入り。木曜にもカラスコが鼻を手術と、うーん、丁度、サビッチ、レマル、マルコス・ジョレンテが負傷のリハビリを終えて、チームに戻って来たからというのもあるんでしょうね。その日にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でセッション後、コロナ禍以降、初めてとなるバーベキューで、シーズン慰労ランチ会を開いていたなんて聞くと、もう日曜の試合が終わった途端、選手全員がリゾート地に旅立つ光景が目に浮かんでこない? え、それどころではなかったのが、セビージャのSeptima(セプティマ/7回目のEL優勝のこと)祝勝行事じゃなかったかって?その通りで、木曜にブダペストから帰還したその足で彼らはオープンデッキバスに乗ると、市内を延々4時間パレード。プエルタ・デ・ヘレス(セビージャファンがお祝いする定番スポット)、市役所、カテドラルと名所をもれなく回った後、午後11時過ぎに始まったサンチェス・ピスファンでの祝賀イベントが夜半過ぎまで続くって、前夜も午前零時まで、ローマとの決勝をプレーしていた選手たちの途方もない体力に感心するばかりですが、ええ、これで来季のCL出場権もゲットできましたしね。 日曜はレアル・ソシエダがホームのレアル・アレナで盛大に前節アトレティコ戦での4位確定、10年ぶりのCL復帰を勝利で祝うのにまったく異存はないということでしょうが、ちなみに水曜のセビージャのEL決勝がどんな試合だったのか、ちょっとお伝えしておくことにすると。実は私も今季、彼らのEL決勝トーナメントを近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で観戦するのは初めてだったんですが、やはり決勝ともなると皆、見ておこうと思うんでしょうかね。店内も普段のセビージャの試合では考えられないような賑わい方だったんですが、やっぱり彼ら、この大会の神様に後押しされていたよう。 だってえ、ローマのモウリーニョ監督が「20~30分ぐらいならプレーできる」と試合前日にブラフを張っていた負傷明けのディバラが先発し、前半35分にはセンターでラキティッチがボールを奪われたのをキッカケにマンチーニがスルーパス。これに応じた彼にエリア内からシュートを決められ、先制点を取られながら、オリベル・トーレス、ブライアン・ヒルから、スソ、ラメラに攻撃力増強した後半9分にはヘスス・ナバスのクロスをエン・ネシリの前でマンシーニがオウンゴールして、同点に追いついてしまったんですよ。 29分にはオカンポスがイバニェスにエリア内で倒され、PKをもらいかけたんですが、残念ながら、これはVAR(ビデオ審判)のモニターチェックでなしに。GKボノがベロッティのvolea(ボレア/ボレーシュート)をparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いだ後、ロスタイムのスソ、ラメラ、フェルナンドのトリプルチャンスも決まらすに延長戦に突入です。「La prórroga no se ha jugado casi nada/ラ・プロロガ・ノー・セ・ア・フガードー・カシー・ナーダ(延長戦はほとんどプレーしなかった)。ずっとボールが止まっていたし、ケガ人やら、選手交代やら…」(メンディリバル監督)という30分を、ていうか、大量ロスタイムのせいで40分以上もあったのを1-1のままやり過ごし、いよいよPK戦が始まったところ…。 圧倒的にセビージャが強かったんです!そう、第1キッカーはオカンポス、クリステンセンと両チームとも成功したものの、第2キッカーのラメラがGKルイ・パトリシオを破った後、マンチーニをボノが弾き、次のラキティッチは成功。すると、この試合、何度も接触戦で地面に倒れ、最後は唇を縫うケガを負っていたイバニェスのPKもボノが少しだけ触れてポストを直撃したから、ビックリしたの何のって。いやあ、その光景には昨年11月のW杯16強対決、PK戦でスペインのサラビア(当時はPSG)がポストに当て、カルロス・ソレル(PSG)、ブスケツと連続してボノに弾かれて敗退した悪夢がデジャブのように浮かんでくることに。 うーん、メンディリバル監督によると、「Montiel iba a ser el quinto pero luego se han cambiado el orden/モンティエル・イバ・ア・セル・エル・キント・ペロ・ルエゴ・セ・アン・カンビアードー・エル・オルデン(モンティエルは最初、5番目だったんだが、それから順番を変えた)」そうなんですけどね。この彼がまた、W杯決勝フランス戦で最後のPKを決めて、アルゼンチンに優勝をもたらした英雄だったんですが、第4キッカーの一撃はルイ・パトリシオに弾かれてしまったんですよ。それがGKの足がラインより前にあったとし、主審がやり直しを命じてくれたのが渡りに船となり、2度目のトライで成功。セビージャのEL戴冠もゲットしてしまうんですから、これぞまさにチャンピオンの幸運(PK戦スコア4-1)? え、記者会見では6回目にして初めてヨーロッパの大会の決勝で負けたモウリーニョ監督も「セビージャは偉大なチーム、それが現実だ。ウチにはない選手層があって、経験もある」と言っていた通り、「ボクはこういう瞬間を何度も生きていて、entendí que hay que tener mucha calma para afrontar estos momentos/エンテンディ・ケ・アイ・ケ・テネール・ムーチャ・カルマ・パラ・アフロンタール・エストス・モメントス(こういう時には落ち着きを保たないといけないことを理解していた)」(ボノ)という、W杯準決勝進出モロッコのGK、更に王者アルゼンチンのラメラ、アクニャ、パプ・ゴメスの3人がいるセビージャの方が元々、勝ち馬だったんじゃないのかって? いやまあ、それでもローマには優勝チームの同僚、ディバラがいましたし、大体、アクニャは準決勝ユベントス戦2ndレグでイエローカード2枚による無念の退場となり、この試合は出場停止でしたからね。パプもベンチ観戦だったんですが、何より、このチームにはラキティッチ、ヘスス・ナバスといったELのベテランに加え、2020年のコロナ禍無観客決勝でインテルを制したエン・ネシリ、オパンポス、フェルナンド、スソら、Sexta(セクスタ/6回目のEL優勝のこと)組もいたのは大きかったかと。おかげで試合後はまだ、来季の続投が決まっておらず、「Sería la leche no poder seguir/セリア・ラ・レッチェ・ノー・ポデール・セギール(これで続けられなかったら、最高だろう)」と皮肉を言っていたメンディリバル監督も翌日、祝賀イベントの席でカストロ会長から新契約のオファーをもらうことができましたっけ。 まあ、そんな幸せなセビージャの話はこれぐらいにして、一応、この最終節に挑むマドリッド勢のカードも紹介しておくと、前節同様、キックオフ時間にunificacion(ウニシカシオン/統一)がかかった日曜は午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)と午後9時(日本時間翌午前4時)の前後半に分かれていて、マドリー、アトレティコ、ラージョの3チームは早い方のスタートに。ホームゲームはサンティアゴ・ベルナベウにアスレティックを迎えるマドリーだけなんですが、アンチェロッティ監督のチームの目標はお隣さんとの勝ち点差1を守って、2位をキープすることだけなのに対して、ビルバオ勢はゴールアベレージ差で上回るオサスナを抜いて、コンフェレンスリーグ出場権獲得を熱望していますからね。 ただちょっと、この7位争いは複雑で、勝ち点1差下にはオサスナと直接対決となるジローナ、何も懸かっていないマジョルカと対戦するラージョ、そしてレアル・ソシエダ戦の後、何かの偶然で7位になってしまうと、スペインのコンフェレンスリーグ枠がなくなるというセビージャがいますからね。おまけに丁度、ネグレイラ事件(スペインの審判委員会副委員長に20年余り多額の報酬を払い、有利なジャッジを受けようとしたと疑われている)を調査中のUEFA倫理委員会が来季のバルサをCL出禁にするかもしれないという報道も。 これが現実となると、またヨーロッパの大会の出場順位がズレて、訳のわからないことになるため、6月12日にUEFAのCL出場チームリストが出るまで、確たることは私もわからないんですが、ベンゼマを始め、メスタジャでの人種差別的野次が大騒ぎになった後、ヒザの負傷で休んでいたビニシウス、マドリーと契約延長をせず、PSGに移籍する可能性が濃厚になったアセンシオが復帰。ベルナベウのファンの前で有終の美を飾りたいマドリーとあって、ケガで欠場者を多く抱えるアスレティックが勝ち点を稼ぐのは難しいかもしれません。 そしてラージョは今季限りで別れを告げるイラオラ監督最後の試合に臨み、アトレティコはすでに5位が確定したビジャレアルと対戦するんですが、シメオネ監督のチームは来季、チェルシーを率いるポチェッティーノ監督がジョアン・フェリクスを戦力外としたため、夏の補強計画がスタンドバイ状態に。というのもジョアンは絶対にシメオネ監督の下には戻りたくなく、かといって今、クラブが望む移籍金1億ユーロ以上どころか、オファーそのものがまったく来てないから。そのせいで選手獲得に幾ら使えるのかのメドが立たないとはいえ、まあその辺はリーガが終わってから、おいおい考えていけばいいですからね。 今は私もアトレティコの選手たちがエルチェ戦やエスパニョール戦のような、一足早い夏休み気分にならず、まっとうに最終戦をプレーしてもらいたいだけですが、やっぱり目を離せないのは日曜後半戦、前節エスパニョールの降格が決定した後、残り1つとなった2部行きの切符を引かないために争っている6チームの一つ、弟分のヘタフェでしょうか。いえ、彼らはここ2試合、ベティス、オサスナに連勝したおかげで降格圏外の14位に逃れ、ホセ・ソリージャで顔を合わす18位のバジャドリーとも勝ち点差2あるんですけどね。実は前回、降格した2016年も17位で最終節に挑み、最後のガラガラドボンで19位に落ちて、1部を去ることになったという黒歴史が。 それだけにその翌シーズン途中からチームを率い、昇格プレーオフで最短Uターンを達成したボルダラス監督も気を引き締めているはずですが、さて。ただ、水曜に売り出された300枚のアウェイチケットを求め、コリセウム・アルフォンソ・ペレスの前に徹夜組の行列もできる程、ファンも気合を入れているだけでなく、クラブも試合当日に無料バスを出してくれるんですが、何せバジャドリーもすでにチケットがソールドアウト。多勢に無勢となるのは避けられませんが、2年前、兄貴分のアトレティコがコロナ禍でファンの声援がまったくない中、彼の地で優勝を遂げたのを見習って、残留確定要件の引分け以上を勝ち取ってほしいかと。きっとエースのエネス・ウナルも水曜にヒザの靭帯の手術を受けたインスブルックから、ヘタフェを応援しているはずですよ。 【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.06.03 20:00 Sat
twitterfacebook
thumb

あとは最後の仕上げが待っている…/原ゆみこのマドリッド

「今度の日曜はもう、選挙はないわよね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、unificacion(ウニフィカシオン/統一)時間割で9試合が同時開催となった前日の夜、メトロポリターノから頭をクラクラさせて帰って来た疲れが抜けないまま、最終節の日曜も午後6時30分と9時の前後半2部に分かれただけの時間割を眺めていた時のことでした。いやあ、普段なら、マドリッド勢の試合が重なる時はオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の多元中継が大きな味方となって、逐一、他会場の進行も伝えてくれるんですけどね。 それが先週の日曜は何の因果か、スペイン全国地方自治体選挙を被り、サッカー中継転じて選挙速報番組と化していたため、全国放送の大手局の実況を聞いていたところ、ええ、これがまた揃って9試合の実況カルーセルなんですよ。次々とカードが変わるせいで、ラージョもヘタフェもゴールの報をリアルタイムで聞き逃し、結局、アトレティコの試合が終わった後、ネットで両者共、勝利を挙げていたことを知ったんですが、またレアル・マドリー、アトレティコ、ラージョの試合が同時開催となる今週末も同じ思いはしたくなかったから。 といっても土曜に1カードだけ先駆けしたセビージャvsレアル・マドリー戦もオンダ・マドリッドにはかなりムゲにされていて、その日のその時間帯はRFEF1部(実質3部)の最終節とほぼ同時進行。2部直接昇格の可能性のあったアルコルコン(プレーオフ出場に)とサンセ(RFEF2部/実質4部に降格)とのダービー、RMカスティージャ(プレーオフ)、ラージョ・マハダオンダ(残留確定)、フエンラブラダ(同)ら、下部カテゴリーのマドリッド勢の多元実況にかまけていたため、途中で聴くのを止めてしまったという経緯もあったんですけどね。 もちろん、片や水曜午後9時(日本時間午後4時)からのEL決勝ローマ戦しか眼中にないセビージャ、片や来季のチーム構想の方がすでに話題のメインになっているマドリーの消化試合とあれば、それなりの扱いを受けても仕方ないんですが、一応、どんな試合だったかお伝えしていくことにすると。まあ、ブダペストでのSeptima(セプティマ/7回目のEL優勝のこと)達成に来季CL出場を懸けているメンディリバル監督がエン・ネシリやオカンポスといった主力を温存したのは当然だったんですけどね。ベンゼマ、ビニシウス、アセンシオ、マリアノとFW陣を大量に負傷で欠くことになったアンチェロッティ監督は先発にワントップのロドリゴを置いて、MFを5人並べる布陣でスタート。 守備陣の方は普通にルーカス・バスケス、ミリトン、アラバ、メンディだったんですが、いくらバケーションが近づいているからといって、眠ったままピッチに立ってはいけませんよね。ええ、開始からすぐの3分、EL準決勝ユベントス戦2ndレグでレッドカードを受けていたアクーニャが決勝に出られない悔しさを晴らすべしと、ドリブルでエリア内左奥に侵入するのを誰も止められず。その折り返しのパスがミリトンに当たり、ヘスス・ヒルのシュートも他のDFに当たって跳ね返ったものの、最後はラファ・ミルに撃ち込まれ、先制点を奪われてしまうのですから、もしやこれ、アウェイ3連敗目になる? でも大丈夫だったんですよ。というのもボッチFWという重責にロドリゴが見事に応えてくれたおかげで、いえ、13分にはルーカス・バスケスからゴール前にラストパスをもらいながら、外してしまうなんてこともあったんですけどね。28分、敵エリア前からのFKをセビージャの壁が割れた隙間を縫って通し、ゴールにしてしまったから、ビックリしたの何のって。これで同点に追いついたマドリーは後半24分、得意の高速カウンターを発動させます。 ええ、それはセビージャのジョルダンが蹴ったFKをロドリゴがクリアしたことから始まり、モドリッチ、クロースと繋げ、最後は敵ゴール目掛けて爆走した当人がエリア内でモンティエルをかわすと、勝ち越しゴールも挙げてしまうって、何かと昨今はビニシウスばかりが注目されていたマドリーですけどね。1つ年下のブラジル人FWまで、ここまで成長していたとはホント、彼らの南米担当スカウト陣の目利きぶりには驚かされるばかりかと。 このdoblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)で今季通算を19得点まで伸ばしたロドリゴは36分にルーカス・バスケスと共にリュディガー、ナチョと交代となり、その際には怒ったようなリアクションを見せてもいたんですけどね。アンチェロッティ監督によると、これは「él quería quedarse en el campo para intentar hacer el hat-trick/エル・ケリア・ケダールセ・エン・エル・カンポ・パラ・インテンタール・アセール・エル・ハットトリック(ハットトリックを達成するために彼はピッチに残りたがった)から、私たちは違う目標を持っていると言った。『君はゴールを入れたいだろうが、私は失点したくない』とね」ということだったよう。 もうこの時にはカンテラーノ(RMカスティージャの選手)の大型FW、アルバロ・ロドリゲスも入っていましたし、何よりその2分後にはセビージャが自爆。そう、アクーニャがEL決勝に出られない悔しさを今度はセバージョスへの強烈タックルに込めてしまい、レッドカードで退場させられたからですが、いやはや。同僚たちがモウリーニョ監督のチームとの死闘で疲れ果てた後に来る、場合によってはコンフェレンスリーグ出場権のもらえる7位ゲットが必要となるかもしれないリーガの最終節、レアル・ソシエダ戦にも出られなくなってしまったのではねえ。赴任して以来、リーガ11試合で4人も退場者を出しているメンディリバル監督が「ウチはピッチでもベンチでもならず者のように振舞っていてはいけない」と言っていたのも当然だった? おかげでマドリーは長いロスタイム9分も無事にやり過ごし、そのまま1-2で逆転勝利。3位のアトレティコとの差を暫定で勝ち点4に広げたんですが、まあこちらは最終節まで楽しみに結果を待つとして、その日の夜には2部の最終節も行われ、1位と2位が決定。ええ、すでに残留が決定していた弟分、柴崎岳選手のいるレガネスに2-0と快勝したグラナダが1位となり、最短コースで1部復帰を決めただけでなく、アラベスとスコアレスドローしたラス・パルマスも2位で5年ぶりの復帰、残り1座席を争うプレーオフの準決勝はアルバセテvsレバンテ、エイバルvsアラベスという組み合わせに。今季は14位に終わったレガネスも早くこのグループに混じれることを祈っていますが、なかなか先行きが厳しそうなのはちょっと残念だったかと。 そして日曜はメトロポリターノでレアル・ソシエダ戦を見ることにした私だったんですが、シメオネ監督もアンチェロッティ監督を真似したようにグリーズマンのワントップ、FW1人の5-4-1体制でスタートしたのは単なる偶然の一致。これまでほとんど出場していなかったレギロンを左SBとして先発に使ったのは、「Queríamos que Kubo se enfrentara a un lateral y no a un extremo/ケリアモス・ケ・クボ・セ・エンフレンタラ・ア・ウン・ラテラル・イ・ノー・ア・ウン・エクストレーモ(久保のマッチアップはサイドハーフでなく、SBとさせたかった)」(シメオネ監督)という理由だったようですが、どうやらソシエダサイドも「前半は0-0で良かったから、もっと仕掛けようと思ったらできたけど、やらなかった」(久保建英選手)とあまり積極的でなかったのが幸い。 そう、ボールは持たれていたものの、前半37分にはデ・パウルの慧眼がまたしても輝いたんです。センターから彼が放ったロングパスに左サイドラインぎりぎりで追いついたグリーズマンがエリア内まで持ち込み、そこから対角線上に放ったシュートがすっぽりゴールに収まってくれたから、今季ホームで最後にプレーするアトレティコを応援に来たファンたちもどんなに喜んだことか。ただし、当人は「ソシエダは14才の時、フランスでどこのクラブにも入れなかったボクに門戸を開いてくれた。Si soy este jugador es gracias a ellos también/シー・ソイ・エステ・フガドール・エス・グラシアス・ア・エジョス・タンビエン(自分が今の選手になれたのは彼らのおかげでもあるから)」と祝いませんでしたけどね。 折しもその頃には、コリセウム・アルフォンソ・ペレスやエスタディオ・バジェカーノではキックオフ時から、ガンガン降っていた雨がメトロポリターノにも到着することに。ピッチに近い1階席に座っていた観客は気の毒なことになったんですが、この程度の雨に負けていては、前夜、ドシャ降りのブタルケ(レガネスのホーム)でコパ・デ・レイナ決勝のマドリーダービーを戦い、後半43分まで2-0とお隣さんにリードされながら、土壇場に2点を挙げて延長戦入り。日付が変わった深夜のPK戦でマドリーに勝って、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)返し優勝し、ソシエダ戦前にはピッチでトロフィーを披露していた女子チームに笑われてしまうと、私も心配しちゃいましたからね。1-0とリードしてハーフタイムに入れたのは嬉しかったんですが、最近の彼らは1点差では安全圏と言えないのが玉に瑕。 そのせいもあって、後半25分に久保選手とイジャラメンディがアリ・チョとカルロス・フェルナンデスと代わるのと同時にレギロンがコレアに交代。その3分後にはコレアからのパスをグリーズマンがワンタッチでモリーナに繋ぎ、シメオネ監督が「Está entre los mejores laterales de LaLiga/エスタ・エントレ・ロス・メホーレス・ラテラレス・デ・ラ・リーガ(リーガで最高のSBの1人)」と絶賛する彼のシュートが決まって2点目が入った時には皆、安堵したかと思いますが、とんでもない。終盤、頸椎捻挫の治ったモラタとコンドグビアがピッチ脇で入るのを待っているうち、43分にはブライス・メンデスのスルーパスを受けたセルロートに1点を返され、何せ、3点リードしながら、追いつかれたエスパニョール戦はほんの3日前のことでしたからね。 結局、シメオネ監督は選手交代をせず、終了の笛が鳴るまでスタンドも一生懸命応援することになったんですが、いや、驚きました。だってえ、2-1で勝ったのはアトレティコなのに、試合が終わるやいなや、ソシエダ勢がピッチでただ事ではないハイな状態でお祝いを始めたんですよ。静かに場内一周で3位以上確定、来年のスペイン・スーパーカップ出場権ゲットを後押ししてくれたファンに感謝していたホームチームとは対照的に、「We are Real」と書かれたお祝いTシャツには着替えるわ、胴上げはするわと、そうです。彼らも4位以上が確定して、10年ぶりとなるCL出場が決まったということは…。 5位のビジャレアルがラージョに勝てなかったということじゃないですか。そこでイマノル監督がロッカールームでお祝いを続け、なかなか記者会見に出て来ない時間を利用して、バジェカスの試合をようやくチェックしてみたところ、0-0で前半を終えた後、後半10分にはチェバリアのクロスをRdT(ラウール・デ・トマス)がヘッドで先制点を挙げると、17分にはコメサニャがエリア内右奥から敵に競り勝って出したラストパスをイシが決めて、2点をリード。37分にはペドラサのクロスから、ロ・チェルソに頭で1点を返されたものの、2-1で逃げ切って、この試合前に来季は続投しないと発表したイラオラ監督、最後のホームゲームを勝利で飾っているんですから、立派じゃないですか。 これで12位から10位に上がり、コンフェレンスリーグ出場の7位まで、勝ち点差1とラージョができたのには弟分仲間のおかげもあって、いえ、残留が懸かっているヘタフェは何が何でも勝たないといけなかったんですけどね。再び、チームバスを大勢のファンがお出迎えしたコリセウム・アルフォンソ・ペレスにその7位のオサスナを迎えた彼らは開始2分、FKからアリダネ、チミ・アビラとヘッドを繋がれて1点を奪われたとラジオで聴いて、心臓が凍りそうな想いをさせられることに。 得点源のエネス・ウナルが前節のベティス戦でヒザの靭帯断裂、松葉杖をついて見学しているというのにどうするのかとヤキモキしながらも私が展開を追えていないうち、前半38分にはルイス・ミジャのクロスをリーガ初先発のラタサがヘッドで叩き込んで、同点にしていたんですよ。それどころか、引分けかと思われた後半45分にはボルダラス監督第1期の頼りになるエース、マタが1度はGKエレーラに弾かれながら、2度目に撃ったシュートをゴールにして、土壇場で2-1と勝利。胸を張ってコリセウムのファンに別れを告げていたのがわかった時にはどんなに嬉しかったことか。 この日はエスパニョールがバレンシアと引分け、降格2チーム目となったため、14位に上がったヘタフェは今週の日曜午後9時、勝ち点差2で18位にいるバジャドリーとの直接対決で負けても他会場の結果次第では残留可能となったんですが、まあ確実なのはドロー以上。日曜にバルサのカンプ・ノウ&ブスケツ、ジョルディ・アルバお別れ試合で負け、完全に目標のなくなったマジョルカと午後6時30分から対戦するラージョも7位の座を争うオサスナとジローナは直接対決、降格決定後、最強チームと化したエルチェに負けたアスレティックはサンティアゴ・ベルナベウでマドリーに挑むとあって結構、夢を見てもいい気がしますが、さて。ちなみにアトレティコは5位が確定したビジャレアルと当たるんですが、彼らの2位奪取とラージョの7位到達を両立させるにはお隣さんが引分けるのが最適解?果たして最終節はどんな結末に終わるのか、今からドキドキです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.30 19:00 Tue
twitterfacebook
thumb

あと2試合でリーガの全てが決まる…/原ゆみこのマドリッド

「どんな試合になるのか、検討もつかないわ」そんな風に私が困惑していたのは金曜日、リーガ37節のカードをチェックしていた時のことでした。いやあ、もう残り2試合ということで、今週末はセビージャvsレアル・マドリー戦以外、全てキックオフが日曜午後7時(日本時間翌午前2時)にunificacion(ウニフィカシオン/統一)されているんですけどね。要は他試合を気にせず、ゆっくり観戦できるのはマドリーだけということですが、何と土曜午後7時からのサンチェス・ピスファンでの試合前日、アンチェロッティ監督が出した招集リストにはFWが3人しかおらず。しかもそのメンバーが問題で、ロドリゴはともかく、残り2人は今季ずっと員数外だったアザルとカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のアルバロ・ロドリゲスって、かなり頼りなく見えない? いえ、もちろんベンゼマには水曜の試合で足を踏まれ、5針縫う切り傷を作りながら、フル出場したという理由がありますし、その兄弟分ダービーを、バレンシア戦で出されたレッドカードは取り消されていたものの、ヒザの痛みで欠場。ペレス会長と並んでパルコ(貴賓席)観戦することにしたビニシウスもアンチェロッティ監督が言うには、セビージャファンの敵対的な雰囲気を警戒してではなく、「no viaja porque no puede jugar/ノー・ビアハ・ポルケ・ノー・プエデ・フガール(プレーできないから遠征に行かない)」そう。アセンシオも筋肉痛でお休みとなったものの、やはりバルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドに姿が見えなかったマリアーノについては正直、誰も気にしてないかと。 かといって、コンフェレンスリーグ出場圏の7位に届く可能性のあるセビージャが手ぐすね引いて待っているという訳ではなく、そう、彼らも今は来週水曜にブダペストで開催されるローマとのEL決勝しか眼中にありませんからね。一応、メンディリバル監督は「Si veo que no compiten, igual no son titulares ante la Roma/シー・ノー・ベオ・ケ・ノー・コンピーテン、イグアル・ノー・ソン・ティトゥラレス・アンテ・ラ・ローマ(競っていないのを見たら、ローマ戦のスタメンに選ばないかもしれない)」と記者会見で選手たちに警告していたものの、前節引分けたエルチェ戦で一発退場したゲイエ、累積警告になったヘスス・ナバスは出場停止。頭数合わせで、まだ負傷の治っていないジョルダン、マルコン、ニアンズを招集リストに入れたぐらいですからね。 前人未踏のSeptima(セプティマ/7回目の優勝のこと)をEL決勝で果たせば、来季のCL出場権も手に入るため、競争相手が6チームもいるコンフェレンスリーグのため、ちまちま戦っても仕方ないとセビージャが考えるのも当然ですが、そうなるとここ数節、お隣さんと2位争いを繰り返しているうち、ライバル心に火がついたんでしょうか。「Ahora no podemos quedar primeros así que hay que luchar por la segunda/アオラ・ノー・ポデモス・ケダール・プリメーロス・アシー・ケ・アイ・ケ・ルチャール・ポル・ラ・セグンダ(今ではもう1位にはなれないから、2位になるように戦わないといけない)」(カマビンガ)と、リーガでの目標を再設定したマドリーの方が有利にも見えなくありませんが…いえ、どっちもどっちですよ、きっと。 まあ、それはそれで置いておいて、今季最後のミッドウィークリーガのマドリッド勢がどうだったのか、お話ししていくことにすると。私はまず、水曜の早い時間帯に始まるマドリーとラージョの兄弟分ダービーをサンティアゴ・ベルナベウに見に行ったんですが、その試合は先週末、メスタジャで人種差別的野次や猿の物真似をされ、マリオ・ケンペス・スタンドの応援団と対峙したビニシウスにマドリーファンが連帯を示す絶好の機会に。Fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)には「Vinicius somos todos, basta ya/ビニシウス・ソモス・トードス、バスタ・ジャー(私たちは全員、ビニシウス。もう沢山だ)」という横断幕が掲げられ、マドリーの選手たちも揃って彼の背番号20のユニを着て入場したんですが、何せ、今回の人種差別騒動はスペインだけでなく、全世界から非難される大ごとになってしまいましたからね。 そこで珍しく、競技委員会が速攻でメスタジャの該当スタンド5試合閉鎖(上訴委員会で3試合に)と罰金4万5000ユーロ/約700万円(同2万7000ユーロ/約400万円に)を申し渡し、警察も画像で確認できた人種差別行為をした18才から21才の3人を逮捕。バレンシアも彼らをスタジアムから永久追放しただけでなく、マドリッドの警察も時同じくして、1月末のコパ準々決勝マドリーダービー前日に高速道路にビニシウスの首吊り人形をぶら下げた19才から24才の男性4人を逮捕していたんですが、え?ラージョと言えば、ブカネーロス(過激なファンのグループ)もヤバいんじゃないかって? そうですね、おかげでその日のベルナベウ周辺にはCLでもついぞ見たことのない程、大勢の警官がいたんですが、大丈夫。大体がして、ビニシウス本人がベンチにもいませんでしたしね。fondo norte/フォンド・ノルテ(北側ゴール裏席)最上階で応援していた500人程のラージョファンはよく、アウェイゲームに行くとホームファンたちから投げかけられる、「Vallecanos, yonkis y gitanos/バジェカーノス、ジャンキス・イ・ヒターノス(ラージョファン、ジャンキーでジプシー)」というカンティコを自虐的に歌っていたぐらいでしたから、全然、問題は起きませんでしたっけ。 そして試合の方は大舞台に張り切る弟分が序盤から、エリア外シュートを放って積極的に攻めていたんですが、まだ両チーム、無得点だった前半31分、クロースが機転を発揮。ええ、CKを守っていたイシが集団の中で倒れ、一旦、主審がプレーを止めた後、もらったドロップボールを素早くベンゼマに送ったんですよ。バルベルデを経由すると、最後はエースがGKデミトリエフスキをかわして、ゴールを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。いやあ、後でイラオラ監督も「La mitad de mi equipo no sabía que sacaban ellos/ラ・ミタッド・デ・ミ・エキポ・ノー・サビア・ケ・サカバン・エジョス(ウチのチームの半数は相手ボールだと知らなかった)」と説明していたんですけどね。 そのせいでラージョが適切な守備体制を取れなかったのが失点の原因ですが、「Antes de sacar hay que aclarar de para quién es el saque/アンテス・デ・サカール・アイ・ケ・アクララル・デ・パラ・キエン・エス・エル・サケ(ドロップボールをする前にどちらのボールかはっきりさせるべきだ)」(イラオラ監督)というのは果たしてルールで決められていることなのか。私にはわかりかねますが、ラージョサイドの抗議も空しく、この1点はスコアに上がり、試合は1-0でマドリーがリードしてハーフタイムに入ります。 そして後半はマドリーがタランタランモードに入ったのもあり、トレホ、チャバリア、RdT(ラウール・デ・トマス)、ファルカオ、サルビと攻撃力アップの選手交代に特化したイラオラ監督の作戦がとうとう39分に実を結ぶことに。サルビの折り返しパスをRdTがエリア内からのシュートでGKクルトワを破り、彼のエスパニョール戦に続く、古巣への恩返しゴールでラージョは同点に追いついたんですが…。 あと終わりまで一息だった44分、昨季はCL決勝トーナメントでマドリーの根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神を体現したロドリゴにエリア前からゴールを決められてしまうとは!いやあ、当人によると、このゴールは「Fue para mi hermano y para Vini/フエ・パラ・ミ・エルマーノ・イ・パラ・ビニ(ボクの兄弟、ビニのため)」だったそうですけどね。入団も年も1つしか違わない、同じ肌の色をした彼の方にはまったく人種差別騒動を聞かないのはやっぱり、リーガにいた当時はヘイトクライムに相当する野次をかけられまくられていた、黒人ではないクリスチアーノ・ロナウド(アル・ナスル)やメッシ(PSG)のように、突出した選手だけが標的になるということ? 結局、そのまま2-1で負けてしまったラージョは翌日、バレンシアに勝ったマジョルカにも抜かれ、12位に落ちてしまったんですが、7位まで勝ち点差4というのは変わらず。日曜午後7時の試合ではEL出場圏の5位を確定しながら、まだ5差上のレアル・ソシエダの占める4位のCL出場圏到達を狙っているビジャレアルと対決するんですが、はあ。何でその上、やはり5差もあるアトレティコが、来季のスペイン・スーパーカップ出場権(コパ・デル・レイにマドリーが優勝したため、リーガ3位に回った)を脅かされている云々の流れにスポーツ紙がなってしまったのかというと。 いやまあ、この日曜、アトレティコがメトロポリターノにここ7試合無敗、その途中ではバルサやマドリーにも勝って、前節も久保建英選手のゴールで1-0とアルメリアを破ったレアル・ソシエダを迎えるのは確かですけどね。正直、原因は水曜のエスパニョール戦。だってえ、私が急いでベルナベウを後にし、メトロで移動している最中だった前半21分にはRCDEスタジアムでエルモーソのセンターからのロングパスを追って爆走したサウールが先制点をゲット。GKゲルビッチがparadon(パラドン/スーパーセーブ)連発だったのはラジオで聴いていても、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に着いてすぐだった44分にはラッキーにも2点目が入ったんですよ。 そう、この時のサウールのシュートはGKパチェコに弾かれてしまい、続くカラスコもゴールポストに当ててしまったものの、グリーズマンの最後の一撃をGKが掻き出した位置がゴールラインを越えていたとVAR(ビデオ審判)が連絡。おまけに後半開始数秒でコレアのエリア外からのシュートをパチェコが弾いたボールに詰めたカラスコが3点目を挙げたため、これは降格圏19位にいるエスパニョールにはあまりにきつい仕打ちだと私も同情してしまった程だったんですが、とんでもない。 19分にCKからモンテスがヘッドでゴールを決めて、反撃の狼煙を上げた相手は、モリーナがエリア内からのシュートを敵DFにゴール前でクリアされ、アトレティコが追加点のチャンスをモノにできなかったのが追い風になりましたかね。31分にはゲルビッチにプアドがエリア内で倒されてPKをもらうと、エースのホセルが決めて2点目。これで1点差になってもコレアとデ・パウルを下げ、カンテラーノのカルロス・マルティンとバリオスを入れたシメオネ監督にもちょっと首を傾げたんですが、34分にはアレイシ・ビダルのクロスをビニシウス・ソウザに頭で叩き込まれ、とうとう3-3に追いつかれているって、一体、どうなっている? うーん、前節のオサスナ戦ではクラブが設定したDia del Nino/ディア・デル・ニーニョ(子供の日)のお祭り効果で3-0と快勝していた彼らだったんですけどね。後でコケも「Desconexión total/デスコネクシオン・トタル(完全なスイッチオフ)」と言っていたんですが、1-0で負けたエルチェ戦同様、またアトレティコの選手たちはバケーションに入ってしまったよう。終盤は勝ち越し点を狙うどころか、コンドグビアとレギロンを入れて、何とかドローで御の字という結果に。ヒメネスなども「Siento vergüenza de lo que ha pasado/シエントー・ベルグエンサ・デ・ロ・ケ・ア・パサードー(起こったことを恥ずかしく感じる)。0-3で勝っていながら、引分けたなんて、子供たちにどう説明していいかわからないよ」と神妙にしていたんですが、シメオネ監督になってからでさえ、彼らは太古からの悪癖を完全に駆逐できていませんからね。 まあ幸い、アトレティコの2点目はボールが完全にラインを越えているのを示す映像がないため、バレンシアvsマドリー戦でウーゴ・ドゥーロに首を絞められているシーンが省かれ、ビニシウスが彼の顔を叩いたところだけ見て、主審が出したレッドカードが後日、取り消されたように、VARの落ち度により、無効試合にするよう、エスパニョールが申し立ているのもスルーされそうな感じですしね。こういう欠点もアトレティコあるあるとして受け入れるしかないかと。頸椎捻挫でこの試合をお休みしたモラタもレアル・ソシエダ戦には戻って来れそうですし、唯一、残念なのは2位をキープできなかったのはともかく、残留を争っている弟分、ヘタフェの援護射撃ができなかったことなんですが…。 とうとう勝てたんですよ、それも6位のベティスに。そう、アトレティコと同じ時間にキックオフしたベニト・ビジャマリンでは前半10分にエースのエネス・ウナルが負傷。ラタサと交代する逆境に見舞われたボルダラス監督のチームですが、相手がチャンスをことごとくムダにしてくれたのが運を引き寄せました。後半23分、ミジャの蹴ったCKをアンデレテがヘッドで撃ち込み、虎の子の1点を奪ったとなれば、翌日にはクラブがヘルタ・ベルリンからレンタルする際につけた買取オプション400万ユーロ(約6億円)を行使して、来季も彼にヘタフェの選手でいてもらうことにしたのも無理はない? 15分を残してベティスのペッツェラがレッドカードで退場したのにも助けられ、そのままヘタフェは0-1で逃げ切って勝ち点3を獲得。順位も18位から、降格圏外の16位へと上がったんですが、まだまだ安心するには程遠く、17位のカディスと18位のバジャドリーとポイント数が同じですからね。もうここは、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで今季最後の試合となる日曜のオサスナ戦に何が何でも勝って、現時点で7チームが絡む最終節のガラガラドボンに巻き込まれないことを祈るばかり。返す返すも痛いのはヒザの靭帯断裂と診断されたウナルの欠場ですが、嘆いている時間もないため、ベティス戦ではDFがゴールを決めたように、残り2試合は全員がFWの覚悟で挑んでくれたらと思います。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.27 19:00 Sat
twitterfacebook
thumb

優勝は決まっても他はまだ決まっていない…/原ゆみこのマドリッド

「何も揃って水曜にしなくてもいいのに」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、リーガはあと3節しかないというのに、マドリッド勢のミッドウィークの予定が全て同じ日に集中していることに気がついた時のことでした。いやあ、実はこの責任は先週、ユベントスを破り、EL決勝進出を決めたセビージャにあって、ブダペストでローマと対決する大一番は5月31日(水)に開催。そのため、リーガ最後の2節はキックオフ日時のunificacion(ウニフィカシオン/統一)で日曜午後7時に10試合一斉にプレーするはずだったのをラ・リーガが気を利かせ、セビージャvsレアル・マドリー戦だけを土曜に前倒しすることに。おかげ木曜に設定されていた36節、マドリーvsラージョの兄弟分ダービーが水曜に繰り上がったという事情もあるんですけどね。 それはまだいいとしても許せないのは、うーん、4月の末から5月頭にかけてミッドウィークリーガが2週連続あった時もそうだったんですが、またしてもアトレティコとヘタフェの試合が同日同時刻に設定。ホームなら一方は完全に捨てるしかなく、アウェイだって、大抵のバル(スペインの喫茶店兼バー)は1カードしか店内のTVで流してくれず、需要に応じて兄貴分が優先されるのは仕方ありませんがませんからね。これってもしや、ラ・リーガがどちらのチームも応援しているマドリッドのサッカーファンに嫌がらせしている? まあ、弟分がすでに宿題を済ませていたら、それ程、私も怒りも感じないんですが、先週の土曜、前回から1カ月以上も間を空けて、私がコリセウム・アルフォンソ・ペレスで観戦することができたエルチェとの試合でもヘタフェは期待された結果を出せず。ええ、サンティアゴ・ベルナベウでの兄弟分ダービーで勝ち点が取れないことは織り込み済みで、この日の勝ち点3を当てにして、すでに2部降格が決定して2試合目となる相手を迎えたんですけどね。キックオフ1時間半前にスタジアム入りするチームバスを盛大にbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚いて、熱く歓迎をしてくれたファンに応えることができなかったんですよ。 いえ、立ち上がりは良く、前半8分にはダミアンのクロスを反対サイドにいたムニルが撃ち込んで、先制点を取ることができたんですけどね。そのまま直近のホームゲーム、3分にPKでエネス・ウナルがゴールを挙げたセルタ戦のように、最後まで虎の子の1点を守り切るのかと思いきや、とんでもない。35分にアランバリがもう今季、何度目かわからない足首の負傷を再発し、泣きながら、ファン・イグレシアスと交代せざるを得なくなったのもチームメートにもショックを与えたんでしょうか。あと一息でハーフタイムというロスタイム、CKからエルチェのエース、ボジェにヘッドを決められ、同点に追いつかれてしまったから、さあ大変! 後半はマジョラルやポルトゥ、ゴンサロ・ビジャル、ラタサらを投入して、勝ち越し点を狙ったんですが、いえ、ボルダラス監督は「Miedo se tiene a la muerte, no a un partido de fútbol/ミエードー・セ・テシエネ・ア・ラ・ムエルテ、ノー・ア・ウン・パルティードー・デ・フトボル(恐れは死に対して抱くもの。サッカーの試合にではない)」と言っていたんですけどね。ゴールを入れようと焦ったヘタフェの選手たちはパスが3度も続かない状態に陥ってしまうわ、またしてもマジョラルは絶好機にシュートを敵GKに向けて撃ってしまうわと、スコアボードは最後まで1-1のまま動かず。対照的にエルチェは前節、アトレティコに1-0で勝つなど、降格が決まってから、伸び伸びプレーできるようになっていましたからね。4-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らったラージョのような目に遭わなかっただけでもマシですが、おかげでコリセウム上空にも本当に残留達成できるのかという恐怖の暗雲が大きく立ち込めることに。 まあ、それでも勝ち点1を稼いだことでバジャドリーが18位に落ち、ポイントは同じでもヘタフェは17位と降格圏外に上がれたんですけどね。要はこの水曜、アンダルシアーダービーでセビージャとスコアレスドローとし、6位のEL出場圏でのフィニッシュが濃厚となったベティスとのアウェイゲーム、続くオサスナ戦、バジャドリー戦で下2チームより勝ち点を増やせれば、残留は決して不可能ではないんですが、懸念の種は19位だったエスパニョールにも勝ち点1差に迫られてしまったこと。それもこれも翌日曜、弟分仲間が援護射撃に失敗してしまったせいなんですが…。 そう、ここ3連勝中のエスタディオ・バジェカスにエスパニョールを迎えたラージョだったんですが、もしや前節は自分たちのホームで優勝を決められただけでなく、月曜には3時間にも渡る市内祝賀パレードでバルセロナ中を練り歩かれ、街がバルサ一色に染められてしまった鬱憤も相手にはあったんでしょうか。ピンクのアウェイユニを着たルイス・ガルシア監督のチームはブラースヴァイトもケガでいませんでしたし、それ程、怖くは見えなかったにも関わらず、前半22分にはオスカル・ヒルがエリア内で落としたボールをパテ・シスがクリアミス。ダルデルに先制ゴールを決められて、出鼻をくじかれてしまうことに。 いやあ、ラージョも反撃して、41分にはエリア内でオスカル・ヒルが犯したハンドから、RdT(ラウール・デ・トマス)がPKゴールを決め、一旦、同点に追いついたんですけどね。続く時間帯のアトレティコの試合に間に合わせるべく、にわか雨が激しく降りだす中、私がバジェカスを出なければならなかった後半はかなり、攻守交替の激しいせめぎ合いになったよう。ただ得点は13分、ダルデルのシュートはゴールポストに当たったものの、その跳ね返りをメラメドが押し込んだ1点だけで、イシがゴール前からのシュートを天高く撃ち上げてしまったこともあり、そのままラージョは1-2で負けてしまうんですから、まったく悔しいじゃないですか。 もちろん、すでに残留が確定しており、勝ち点差4の7位まで上がって、来季コンフェレンスリーグに出場できたらいいなとボンヤリ思っているラージョと、3年前の2部降格の悪夢を絶対避けたいと戦っているエスパニョールとは試合に対する覚悟が違って当然なんですけどね。「数字的なオプションはまだあるから、ウチは最後まで戦うが、creo que está prácticamente imposible/クレオ・ケ・エスタ・プラクティカメンテ・インポシーブレ(実際的にはほぼ不可能だと思う)」とイラオラ監督も言っていたように、11位のラージョの上にはアスレティック、ジローナ、セビージャ、オサスナと4チームもいますからね。 ただ次節の水曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)、ベルナベウにマドリーを訪ねる試合はトリッキーで、今は相手もゴタゴタしているため、運が良ければ、勝てるかもしれないんですが、ま、それは後で話すとして。今はアトレティコが前節、バケーション気分でプレーして負けたエルチェ戦をしっかり反省。メトロポリターノでファン公開練習をした土曜から開催されている、Dia del Nino/ディア・デル・ニーニョ(子供の日)のオサスナ戦を見に来たファンを喜ばすことができたのかどうかというと。 それが何か、最近のアトレティコはお祝い事が好きみたいで、シメオネ監督のクラブ歴代最多指揮試合数を達成した日や創設120周年記念の日のように盛り上がってしまったんですよ。幸いキッズパークのアトラクションもバジェカスより西にあるこちらでは雨の被害を受けなかったようで、選手たちも子供連れが多数。皆、キックオフ前に記念写真を撮るため、ボールが動きだすまでにちょっと時間がかかったんですが、序盤から、グリーズマンやサウールがシュートをゴール枠に当てるわ、モラタは2度もオフサイドで認められないゴールを決めるわと、彼らは積極的に攻めていくことに。とはいえ、先制点が入ったのはちょっと遅くて、前半44分になってからのことでした。 ええ、センターサークルでダビド・ガルシアとボールを争ったモラタが倒れているのをスルーして、サウールが蹴ったロングボールをグリーズマンが追い、エリア内でカラスコにアシストしてゴールが生まれたんですが、チームの半数が片側で祝っている間、モラタがメディカルスタッフに介抱されていたのはなかなかシュールな光景だったかと。結局、首を痛めた当人は頸椎捻挫で前半残り時間をプレーせず、ハーフタイムでコレアと交代したんですが、え?ということはメンフィス・デパイもいつ戻れるのかわからないですし、残り3試合、アトレティコのFWはグリーズマンとコレアだけ? その心配はまた後日にすることにして、その日は大丈夫でした。というのもオサスナが後半、チミ・アビラを引っ込め、5人DF制に変えたのも影響せず、17分にはデ・パウルがエリア内に送ったパスをサウールが胸トラップ、落としたボールをシュートして2点目を決めてくれたから。いえ、レマルの負傷で先発予想に入っていたのは19才のバリオスだったんですけどね。意表を突くスタメン出場で、カンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の序列を教えてくれるとはまったく、いい先輩じゃないですか。そして37分にもデ・パウルが閃き、今度はスルーパスをアルゼンチン代表W杯優勝仲間のコレアにプレゼント。こちらもGKエレーラを破り、ようやく4月上旬に病気で亡くなったお母さんに捧げるゴールを挙げることができましたっけ。 結局、コパ・デル・レイ決勝でマドリーに負けた後、アルメリアにはエル・サダルで勝ったものの、アトレティコと競える程、体力気力が残っていなかったオサスナはそのまま一矢も報いることなく、3-0でホームチームが快勝。これでシメオネ監督は11年連続のCL出場を確定したんですが、W杯前のCLグループリーグ最下位敗退イコール、ヨーロッパからの完全撤退を含む、超ダメダメ状態から立ち直り、ここまで辿り着いたのは大いに賞賛されてしかるべきかと。 どうやらこれには、「11月には入院していて、医者にほとんど死んでいると言われていた。Trabajamos día a día, buscando qué podíamos hacer... Nos preocupamos por lo que podíamos mejorar/トラバハモス・ディア・ア・ディア、ブスカンドー・ケ・ポディアモス・アセル…ノス・プレオクパモス・ポル・ロ・ケ・ポディアモス・メホラル(毎日、毎日、働いて、できることを探して、改善できることに取り組んだ)」(シメオネ監督)という、スタッフ、選手全員の地道な努力があったようなんですけどね。この時点で再び、お隣さんを追い越し、アトレティコは2位になったものの、どうせマドリーはバレンシアに勝つだろうし、次節水曜午後10時(日本時間翌午前5時)からのエスパニョール戦でヘタフェの援護射撃ができればいいと、メスタジャでの前半33分、クライファートのシュートをルュデガーもミリトンもクリアせず、ディエゴ・ロペスに先制点を取られたことはあまり気にせず、メトロに乗った私でしたが…。 いやあ、まさか後半15分過ぎに近所のバルに着いたところ、そこからとんでもない展開を目にすることになるとは!ピッチで騒動が始まったのは24分、まさかビニシウスとフルキエがバレンシアのエリア左奥でボールを争っている最中、そこにもう1個、ボールが飛んできたから、ビックリしたの何のって。実はこれ、スタンドから放り込まれたものをキュメルトが邪魔してやろうと蹴ったようですが、いくら降格の危機に瀕しているチームとはいえ、何をどう思えばそうなる?その時はキュメルトにイエローカードが出て、プレーはFKで再開されることになったんですが、一向に始まりません。それはビニシウスがスダンドのバレンシアファンから差別主義的な野次を受けたと抗議して、その張本人を指さしに行ったから。 うーん、彼はメスタジャ入りの時から、「Eres un mono/エレス・ウン・モノ(お前はサルだ)」と歌われていて、ずっとイヤな思いをしていたんですけどね。この時は警察官が猿の真似をしたファンをスタンドから追放して事を収めたんですが、ビニシウスもアンチェロッティ監督の交代した方がいいという勧めに従っていればねえ。この中断のせいで10分と出た長いロスタイム、クロースのFKをparadon(パラドン/スーパーセーブ)で逸らせたGKママルダシビリがビニシウスに突撃したことから、再びピッチはtangana(タンガナ/小競り合い)状態となり、ウーゴ・ドウーロに首を絞められたビニシウスが腕で相手の顔を払い、レッドカードで退場とはもう、メチャメチャですよう。 ロッカールームに引き揚げる時、ビニシウスがVサインを下に向けて、相手の2部落ちをあげつらったのも場内の敵意に拍車をかけたなんてこともあったんですが、こんな状態ではマドリーもお家芸、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を発現することができず、試合はそのまま1-0でバレンシアが勝つことに。勝ち点40を貯めて降格の危険を回避したんですが、とにかく試合後はビニシウスの受けた人種差別的野次の話題一辺倒です。まあ、当人から、SNSで「En Brasil, España es conocida como país de racistas/エン・ブラシル、エスパーニャ・エス・コノシーダ・コモ・パイス・デ・ラシスタス(ブラジルでスペインは人種差別主義者の国として知られている)」とまで書かれては、スペインのマスコミもそうじゃないと言い張るしかないですからね。 ただ、アンチェロッティ監督が「Nunca he visto un estadio entero haciendo un insulto racista/ヌンカ・エ・ビストー・ウン・エスタディオ・エンテーロ・アシエンドー・ウン・インスルト・ラシスタ(スタジアム中が差別主義的侮辱をしているのは見たことがない)」と怒っていたのは、ビニシウスが退場する際、皆が「Tonto, tonto/トント(バカ)」と唱和していたのを「mono(モノ/サル)」と聞き間違えたんじゃないかという、バレンシア側の主張もあったんですが、どちらにしろ失礼は失礼。要は根本的に差別主義者かどうかは別として、そういう野次を飛ばすファンには人に対する礼節が欠けているんじゃないかと思うんですが、さて。 こんな調子でマドリーの敗戦自体についてはあまり問題視されていないんですが、とにかくCL準決勝2ndレグでマンチェスター・シティにボロボロにやられたショックもありますしね。実際、いいプレーもできていなかったため、その辺が水曜に彼らに挑むラージョのつけどころになる?一応、マドリーもCL出場権は確定していますし、ここはリーガの順位に応じた分配金が700万ユーロ(約11億円)程、増えると喜んでいる、あまり裕福ではないお隣さんに2位を譲ってあげてもいいかもしれませんね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.23 20:00 Tue
twitterfacebook
thumb

いきなりシーズンが終わってしまった…/原ゆみこのマドリッド

「こうなるとあと4試合もプレーしないといけないのは辛いわよね」そんな風に私が同情していたのは金曜日、レアル・マドリーのCL準決勝敗退のショックが癒えないというのにもう、週末のリーガ戦が迫っているのに気がついた時のことでした。いやあ、前節ではとうとうバルサの優勝が確定し、それでもマドリーファンが落ち着いていられたのは6月10日、イスタンブールでの決勝でDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)を達成して、宿命のライバルの鼻を明かしてやれる可能性が残っていたせいもあったんですけどね。 それがマンチェスター・シティに昨季のリベンジを喰らい、水の泡になったとなれば、まだ5月半ばだというのにスポーツ紙のマドリーページがこの夏の補強計画で埋まってしまうのも仕方ありませんが、そのせいでしょうか。木曜には何と、天下のユベントスを延長戦で2-1と破り、総合スコア3-2で勝ち抜け。5月31日、ブダペストでのEL決勝でローマを破れば、十八番の大会で自身の持つ最多記録を更新、Septima(セプティマ/7回目のEL優勝のこと)ゲットも夢でなくなったセビージャをやたら、羨ましく思ってしまったのは。 まあ、それには昨年中、CLグループリーグで最下位敗退のアトレティコに先んじて、3位でELに回ったチーム、シャビ・アロンソ監督率いるレバークーゼンが準決勝まで進み、モウリーニョ監督率いるローマに1stレグに取られた1点を2ndレグでも返せず。総合スコア1-0で涙を呑んでいたため、もしシメオネ監督のチームがELに行っていれば、こちらも3度優勝している得意の大会ですから、スペイン勢決勝という嬉しい出来事になっていたかもしれないせいもあったりするんですけどね。たらればを話していても仕方ないので、2月にはとうに今季が終わっていたアトレティコはほっといて、まずは水曜のシティ戦2ndレグを振り返っていくことにすると。 先週、サンティアゴ・ベルナベウでの1stレグを1-1で引き分けた後、エティハド・スタジアムに乗り込んだマドリーだったんですが、さすが準決勝ともなると、行きつけの近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)もキックオフ1時間前にお店に入って、ようやく席を確保できるという賑わいよう。お客さんの半分ぐらいがマドリーのユニを着ていたのにも驚かされたんですが、その頃にはいつも試合2時間前にツィッターなどに上がるマドリーのスタメンはもちろん、シティの方も明らかに。そう、後者が1週間前とまったく同じメンバーだったのに対して、前日記者会見でアンチェロッティ監督がリュディガー先発予告を誤解と訂正していた通り、1stレグでハーランドを完全に封じたCBに代えて、ミリトンが入っていたんですが、問題はそこじゃなかったんですよ。 というのも前半、早い時間にハーランドの撃った強烈ヘッドはどちらもGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いでくれたからですが、ベルナベウでと同様、相手にずっとボールを持たれていたマドリーは23分、デ・ブライネのスルーパスをベルナルド・シウバに決められて先制されてしまったから、さあ大変!34分には珍しく敵陣に近づいて、クロースのシュートがゴール枠を直撃したなんてこともあったんですが、その3分後、ギュンドガンのシュートはクルトワが弾いたものの、浮いたボールが再び、ベルナルド・シウバに渡り、今度はヘッドで2点目を取られてしまうとは、え?このマドリー、ちょっとヤバくない? といっても昨季の準決勝1stレグでも立ち上がり、前半11分までに2点を奪われながら、その後、ベンゼマの2本とビニシウスのゴールで3点を取って、最後は4-3の負けで終わった彼らでしたからね。おまけにベルナベウでの2ndレグでは後半45分から、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)が始まったとあって、2-0でハーフタイムに入った時はまだ、バルのファンたちもこれならremontable(レモンタブレ/逆転可能)という希望を捨てていなかったんですが、後半序盤はボールを取り戻して、攻めていたマドリーながら、一向にゴールが入る気配はなし。 15分からはモドリッチをリュディガーに、クロースをアセンシオにと選手を代え、チームのリフレッシュを図っても効果が見られないまま、とうとう30分、デ・ブライネの蹴ったFKをミリトンがクリアしようとしてオウンゴールにしてしまうという悲劇まで起きてしまうようではねえ。これでは最後までハーランドにゴールを許さなかったクルトワが、「Este año no nos cae a nuestro lado como sí el año pasado/エステ・アーニョ・ノー・ノス・カエ・ア・ヌエストロ・ラドー・コモ・シ・エル・アーニョ・パサードー(今年は去年のようにウチにいい目が出ない)」と嘆いていたのも仕方なかった? まあ、それを言っちゃえば、CL準々決勝の抽選で、決勝までの2ラウンドの2ndレグをベルナベウで戦えない組み合わせになってしまった辺りから、始まっていた不運の連鎖ですけどね。さすがに3点目を奪われ、その直後のベンチの動きがロドリゴ、カマビンガ、カルバハルから、セバージョス、チュアメニ、ルーカス・バスケスへの3人一斉交代だったことも合わせて、ええ、昨季はこの逆で、後から入ったロドリゴがゴールを決めてくれたんですよ。すると鬼っ子がいなくなって、ようやくグアルディオラ監督もトラウマから解放されたか、この2試合通じて初めての交代を実施。 ギュンドガンをマフレスに、デ・ブライネ、ハーランドをフォーデン、フリアン・アルバレスに代えたところ、ロスタイムにはフォーデンのスルーパスから、フリアン・アルバレスに4点目を決められているんですから、もう目も当てられないとはまさにこのこと?うーん、昨季はエティハドで4-3だったのが、今季は4-0の大敗ですからね。アンチェロッティ監督は「Esta plantilla ha ganado al City en una semifinal el año pasado/エスタ・プランティージャ・ア・ガナードー・アル・シティ・エン・ウナ・セミフィナル・エル・アーニョ・パサードー(このチームは昨年、シティに準決勝で勝った)。今年は彼らの方が良かっただけだ」と言っていたものの、やっぱりベンゼマ、モドリッチ、クロースら、30代の選手たちが年々、劣化していくのに目を背けてはいけないかと。 加えて、シティのウォーカーなども「凄い選手が沢山いるマドリーだが、一番いいのはビニシウス。でも彼が無効化された時、Bプランはあるのかい?」と揶揄していたように、この試合ではグアルディオラ監督が練りに練ったマドリー攻略法への対抗策がまったく見られなかったのも気になるところではありますけどね。前節のエルチェ戦では早くもバケーション気分でプレーして、降格済みチームに負けたお隣さんじゃあるまいし、そのせいで、「Tardamos mucho en hacer faltas, el segundo balón era de ellos, hemos fallado balones fáciles/タルダモス・ムーチョ・エン・アセール・ファルタス、エル・セグンド・バロン・エラ・デ・エジョス、エモス・ファジャードー・バロネス・ファシレス(ウチはファールするのに時間がかかって、ボール争いにも相手が勝ってたし、簡単なパスでもミスしていた)」(クルトワ)となったとは思えませんが、いやあ。 結局は「Hemos jugado con el dolor de un año que hemos tenido en la barriga/エモス・フガードー・コン・エル・ドロール・デ・ウン・アーニョ・ケ・エモス・テニードー・エン・ラ・バリガ(お腹にあった去年の痛みを抱えてプレーした)」(グアルディオラ監督)シティの執念が勝ったということなんでしょうが、彼らの決勝の相手は前日、サン・シーロでの2連戦でミランを総合スコア3-0で破ったインテル。ここは素直にCL初制覇に向けてシティの健闘を祈るばかりですが、そうそう、金曜からバルデベナス(バラハス空港の近く)での練習に戻ったマドリーには、実はクルトワがヘタフェ戦で上腕三頭筋を痛めながら、エティハドでプレーしていたというビックリなニュースも。 いえ、もうリーガは優勝が決まっていますし、マドリーに日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのバレンシア戦に必勝で挑む義務はないため、別にGKがルニンになっても構わないでしょうけどね。ただ、微妙なのはその相手が未だに残留確定しておらず、降格圏脱出を目指す弟分ヘタフェのライバルの1つであることですが、まずは何を置いてもボルダラス監督のチーム自体が土曜のエルチェ戦で勝たないことには始まらず。ちなみにヘタフェは先週のベルナベウでの兄弟分ダービーで1-0と負けた後、その試合でカマビンガの負傷で、急遽、ピッチを出る選手をアセンシオから変更した件について、alineracion indebida(アリネラシオン・インデビダ/選手出場規則違反)として、競技委員会に提訴。 この訴えが認められれば、ヘタフェの0-3勝ちとなって、14位のバレンシアと並ぶところまで勝ち点も増えるんですが、こういう審理は結論がいつ出るのか、わかりませんからね。とにかく今は、ボルダラス監督も「勝つこと以外、考えていない」と言っていた、マタは累積警告で出られないものの、エースのエネス・ウナルが満員のコリセウム・アルフォンソ・ペレスに戻ってくるエルチェ戦で白星をゲットすることに集中して、早いところ、ファンを安心させてあげられるといいのですが。 そしてもう1つの弟分、ラージョも日曜にこちらはヘタフェより更に下の19位。前節はホームのRCDEスタジアムでのカタルーニャダービーで宿敵に優勝を決められた上、実は試合後、ピッチに乱入して、バルサのお祝いを中断させたウルトラ(過激なファン)たちの目的は応援するチームの不甲斐ない選手たちに抗議することだったという、身も蓋もないオチになっていたエスパニョールをエスタディオ・バジェカスに迎えることに。先週は苦手なアウェイでベティスに負けてしまったイラオラ監督のチームではありますが、セビージャやオサスナの躍進で11位になってしまったとはいえ、7位のジローナとは勝ち点差2とまだまだ、来季のコンフェレンスリーグ出場権を勝ち取れる可能性は残っていますからね。 4試合連続でファンと「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って終われるといいんですが、日曜はそのすぐ後、午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、兄貴分のアトレティコもシビタス・メトロポリターノでオサスナ戦をプレーすることに。いやあ、この1週間で彼らもバケーション気分が抜けてくれていたらいいんですが、何せこの試合を毎年恒例のel Dia del Nino(エル・ディア・デル・ニーニョ/子供の日)に設定。前日土曜の練習もスタジアムでファンに公開して行い、すでにアボナードー(年間指定席保持者)は無料、それ以外には10ユーロ(約1500円)で売り出した見学チケットもすでに1万枚、捌けているのだとか。 もちろん土日を通してメトロポリターノ周辺ではキッズ向けのアクティビティも用意されているんですが、今度はお祭り気分に浸りかねない選手たちとは別にして、懸念の種となっているのはやはり負傷者の増加でしょうか。そう、すでにレイニウド(ヒザの靭帯断裂)、オブラク(頸椎間板ヘルニア)、サビッチ(足指骨折)らが今季絶望となっているのに加えて、メンフィス・デパイ、マルコス・ジョレンテもまだリハビリ途中、更にエルチェ戦ではレマルも筋肉系のケガをして今回、出られませんからね。とりあえず、前線はモラタとグリーズマンでいいとしても、コケ、デ・パウルとご一緒する中盤の選手がとうとう、バリオスかサウールしかいなくなってしまったというのは淋しいかと。 せっかく一時はお隣さんを追い越しながら、前節の敗戦で、また勝ち点差2つけられて、3位に戻ってしまったこともありますしね。いいプレーをして、ゴールをガンガン決めるアトレティコの姿が今季再び、見られるのかどうか、私もあまり確信はないんですが、リーガも残り4試合ぽっきり。せめてあと勝ち点1となったCL出場権確定をファンの前で達成すると同時にラージョの援護射撃をして、マドリッドのサッカーファンの楽しみを増やしてあげられるといいですよね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.05.20 20:00 Sat
twitterfacebook
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly