長い週末だった…/原ゆみこのマドリッド

2023.01.24 20:00 Tue
©Atlético de Madrid
「もしや慰めのつもりだろうか」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日、バジャドリー戦が終わった土曜の夜から恐れていた通り、午前中にアトレティコがマルコス・ジョレンテの検査結果を発表。全治15日程の太ももの肉離れにより、今週のマドリーダービー、コパ・デル・レイ準々決勝には出られないとわかってすぐ、カンテラーノ(Bチームの選手)のバリオスが契約を2028年まで延長、トップチーム昇格のお知らせがツィッターに上がっているのに気づいた時のことでした。いやあ、この19才のMFは久々に現れた希望の星で、確かに今年になって出場した大人の試合でもチームに新風を吹き込んでくれてはいたんですけどね。

かといってティーンエイジャーながら、スペイン代表招集常連であるバルサのガビやペドリのように上手いのかと言われると、まだまだ足りないところが散見されるんですが、最近はとにかく、ジョレンテがリーガ優勝した2シーズン前のレベルに戻りつつありましたからね。あのエリア内右奥まで切り込んで、ゴール前に出すキラーパスをモラタが決められるか、決められないかはそれこそ、時の運なんですが、よりによって、今季唯一、タイトル獲得の可能性が残った大会の生き残りを懸けて、お隣さんと一発勝負でぶつかる今、ケガしてくれるとはまったくツイていない。
聞けば、UEFAの大会のようにビジターチームファンへのシート提供パーセンテージが決まっていないコパだけに、アトレティコには4000人ものチケット購入申し込みがありながら、レアル・マドリーはサンティアゴ・ベルナベウのfondo norte(フォンド・ノルテ/北側ゴール裏)4階席の300人強分しか、用意してくれないなんて話もありますしね。8年ぶりとなるコパダービーでは2013年、それこそ敵のお膝元でモウリーニョ監督率いるチームを延長戦で破って戴冠。2014-15シーズンは奇遇にもアンチェロッティ監督のチームを2試合制だった準々決勝で倒したという、いい思い出もない訳ではありませんが、とりわけコパの試合では今季、どこに行っても大勢のファンの声援を受けていたシメオネ監督のチームだけにやっぱり、心細かったりするんですが…。

まあ、憂いてばかりでも仕方ないので、今は先週末のマドリッド勢のリーガ戦がどうだったか、お伝えしていくことにすると。寒波中のマドリッドでも土曜のラージョvsレアル・ソシエダ戦は午後2時キックオフ、お日様が照っているだけに少しはマシかと思えば、吹きつける風が氷のように冷たくてねえ。夜のシビタス・メトロポリターノに備え、極暖ヒートテック着用で挑んでまさに正解だったんですが、エスタディオ・バジェカスでは前半15分から、冷や水を浴びせられることに。ええ、スローインを受けたウナイ・ロペスがぼおっとしていたか、ダビド・シルバにボールを奪われ、37才のドリブルを誰も止めることができず。最後はセルロートにパスが渡り、そのシュートで先制点を奪われてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。

ソシエダは36分にも今度はCKから、イシのマークを振り切ったエルストンドがヘッド、ファーサイドに行ったボールをバレネチェアがネットに収め、前半だけで2点もリードされてしまったとなれば、この逆境を克服できるのは、先日のコパ16強対決ビジャレアル戦ではありませんが、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)DNAを持つ兄貴分だけ?もちろん、ラージョはそんな特異体質ではなく、いえ、イラオラ監督もファルカオ、エヌテカ、アンドレス・マーティンを投入して、ゴールを狙ったんですけどね。
直近のベティス戦の5人FW体制より、ちょっと少ない4人FW体制もシュートの狙いが定まらなくてはどうしようもありません。結局、0-2のまま、ラージョは負けてしまい、リーガのホームゲームでW杯のparon(パロン/停止期間)前にマドリーに勝利して以来、3試合連続白星なしに。まあ、9位でコンフェレンスリーグ出場圏まで勝ち点2差というのは変わっていないため、それ程、焦る必要はないんですが、彼らの次節は30日の月曜試合。ラ・セラミカでのビジャレアル戦ではしっかり勝って、CL出場圏4位をもう1つの兄貴分、勝ち点が同じアトレティコから掠め取ってやろうと狙っているセティエン監督のチームを叩くことができたら、きっと感謝されるんじゃないでしょうか。

え、その試合、ロッカールームからのトンネルを出て、久保建英選手がベンチに歩いて来るのは見たのに、その後、ハーフタイム中も後半もアップする姿さえなかったのは不思議じゃなかったかって?そうですね、イマノル監督によると、「Take lo tenía en el banquillo, pero no estaba para echar una mano/タケ・ロ・テニア・エン・エル・バンキージョ、ペロ・ノー・エスタバ・パラ・エチャール・ウナ・マノ(タケはベンチに入っていたが、チームを助けられる状態ではなかった)。太ももの問題を抱えていたから」とのこと。

いやあ、この日はシルバ、ブライス・メンテス、セルロートも早々にカンテラーノ2人とオジャルサバルに代わり、水曜のコパ準々決勝バルサ戦の準備に余念のないソシエダだったんですけどね。リーガでもこの日の勝利で2位マドリーと同じ勝ち点に並んだ彼らはまさに、週末にはベルナベウで直接対決と、ビッグゲームを立て続けに迎えるだけに、久保選手にもなるたけ早く回復してもらいところでしょうが、こればっかりはねえ。何にしても他にもミケル・メリノら、ケガ人がいるというのに現在、9連勝中というのは羨ましい限りではあります。

そして土曜は更なる寒さに耐える覚悟して、メトロポリターノへ向かった私でしたが、むしろ、冷え冷えしていたのはfondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏)に陣取る応援団の方でした。というのもアトレティコ、バジャドリーの両チームが入場してきた時こそ、いつものように一斉にマフラーを掲げ、アカペラでクラブ歌を熱唱していたんですが、その後はうんともすんとも言わず。顔見知りの番記者に尋ねたところ、またクラブ紋章変更の問題が再燃して、応援のストをしているということでしたが、ちょっとお、今がどんな時か、本当のファンならわからないはずないのでは?

でも大丈夫。序盤こそ、先日のコパのレバンテ戦を彷彿させるように頼りなかったアトレティコでしたが、この日は練習で磨きをかけた決定力がとうとう開花。まずは18分、先発に戻ったコケのスルーパスをグリーズマンがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で繋ぎ、エリア内に入ったモラタがエル・ヤニクをかわして撃ったシュートが決まったから、驚いたの何のって。続いて23分にはナウエル・モリーナがエリア内右奥まで侵入し、そのアシストを受けてグリーズマンが2点目を取ってくれたんですが、いやあ、昨今、MF化が激しく進んでいる当人にとって、フランス代表のW杯も合わせると、18試合ぶりの得点だったとは随分、待たせてくれたじゃないですか。

おまけに28分にはグリーズマンの蹴ったFKをエルモーソがヘッド、一旦はGKマシップに弾かれたものの、自分のところに戻って来たボールを押し込んで、あっという間に3点リードしてしまうって、まさに盆と正月がいっぺんに来た?相手がここ4連敗中、降格圏ギリギリのグループにいるチームだけに反撃をそれ程、恐れることなく、後半は11分から、ケガをしたジョレンテはともかく、グリーズマン、レマル、コケ、モラタと主力を温存することができたのも良かったんですけどね。追加点はなかったものの、無事にメンフィス・デパイもデビューできたんですが、3-0で試合が終了した後もスタンドから、コパダービーに挑むチームを鼓舞するカンティコがまったく聞こえなかったのは残念な限りだったかと。

その一方で日曜には残りのマドリッド勢の試合があったんですが、こちらも午後2時からだったブタルケでは先日、アトレティコに負けて、コパ敗退となったばかりのレバンテがレガネスと対戦。柴崎岳選手も久々に先発したんですが、前半29分には先日、レバンテからレンタル移籍で入ったばかりのフランケサがデ・フルートを倒してPKを献上してしまうことに。おかげでカンパーニャのゴールでリードされてしまったものの、32分にはファン・ムニョスのパスを受け、アルナイスが同点ゴールをゲット。後半18分にも彼は敵のクリアミスで得たボールをゴールに叩き込み、レガネスは2-1と逆転したんですが、返す返す悔やまれるのは前半終盤に得たPKを彼が敵GKに弾かれてしまったこと。

だってえ、アルナイスがハットトリックを達成していれば、後半ロスタイム、こちらは昨季までレガネスにいたロベル・イバニェスが混戦状態のゴール前から撃ったシュートが入っても、レガネスは3-2で勝てていたんですよ。最後の最後に追いつかれ、勝ち点2を失うという悔しい思いはしないで済んだはずですが、まあ、レバンテはこれで15試合無敗の堂々、昇格プレーオフ圏一番上の3位チームですからね。こういうしぶとさが1部復帰には必要なんだと思いますが、今週末も2部首位のエイバルという強敵との対戦が続くレガネスとあって、あと勝ち点4に迫った待望の6位以上プレーオフ圏入りも今しばらく、時間が必要かもしれません。

そして日曜は夕方から、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に缶詰めになった私だったんですが、カンプ・ノウで弟分のヘタフェは善戦したものの、前半35分に守備陣がボール出しに失敗。クリステンセンからラフィーニャに送られ、ペドリがゴール前に突っ込んで決めた1点に泣くことに。いやあ、スペイン・スーパーカップからの疲労が溜まっていたバルサはそれ程、攻撃的にパッとしていた訳ではないんですけどね。

キケ・サンチェス・フローレス監督も「Creo que nos penalizó no estar brillantes en el uno a uno con Ter Stegen/クレオ・ケ・ノス・ペナリソ・ノー・エスタル・ブリジャンテス・エン・エル・ウノ・ア・ウノ・コン・テル・シュテーゲン(テア・シュテーゲンとの1対1で冴えていなかったのがウチに罰を与えることになったと思う)」と言っていたように、3分にはせっかくのゴールをウナルのオフサイドで認められなかったマジョラルがGKテア・シュテーゲンの正面に撃って防がれた上、アレニャがファーサイドに出したラストパスにも届かず。レバンドフスキを出場停止処分で欠いていたバルサが後半、追加点を挙げることはなかったとはいえ、最後のラタサのヘッドまでセーブされているとなれば、1-0で負けてしまったのも仕方なかったかと。

そんなヘタフェにはこの土曜、前回のホームゲームで負けたばかりのエスパニョールに今節負けたベティスを迎える試合で頑張ってもらうしかないんですが、何せ、かろうじて16位で止まっているとはいえ、彼らと同じ勝ち点17のチームはゴールアベレージ差で一番下になったバジャドリーが降格圏に入っていますからね。それでもこのまま堅い守備を維持して、ウナルかマジョラルが当たってくれれば、もう少し、楽に息ができる位置に行けるはずなので、ここはコリセウム・アルフォンソ・ペレスのファンも辛抱強く、応援してあげてほしいですよね。

え、週末観戦5試合目ともなると、もう最後のアスレティックvsマドリー戦の頃には私も相当、疲れていたんじゃないかって?まあ、その通りなんですが、アンチェロッティ監督にはスタメンから驚かされましたよ。というのも難所の1つであるサン・マメスでありながら、モドリッチとクロースを温存。チュアメニもまだ負傷中のため、カマビンガ、バルベルデ、セバージョスで中盤を組み、同じくコパのビジャレアル戦で良かったアセンシオを先発にしていたから。ただベテラン指揮官の勘はバッチリ当たって、前半24分、バルベルデの上げたクロスをアセンシオが後ろにヘッド。そこに駆けつけたベンゼマが見事な腰の捻りでvolea(ボレア/ボレーシュート)を打ち込んで、マドリーは先制点をゲットすることに。

まさに「Karim ha vuelto/カリム・ア・ブエルトー(ベンゼマが戻った)」とアンチェロッティ監督に言わしめるゴールでしたが、それでもスタンドを満員にしたファンに後押しされたアスレティックはメゲることなく、うーん、後から見ると、シュート数も計18本とかなり撃っていたんですけどね。どこぞのチームと同じく、問題は精度で枠内は3本だけ。パレデスのヘッドはGKクルトワにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまいましたし、後半31分にイニャキ・ウィリアムスが入れたゴールもオフサイドで認められない運の悪さもあったんですが、挙句の果てに45分、交代で入ったロドリゴからパスを受けたクロースに止めの2点目を決められてしまってはねえ。この0-2勝利のおかげで、マドリーは首位バルサとの差を勝ち点3のまま保つことができましたっけ。

そう、結局、この18節は上位4チームが全て勝って、順位も互いの勝ち点差も変わらなかったんですけどね。彼らが揃って、この火曜水曜、コパ準々決勝で戦うというのはちょっと見物かと。要はどのチームも気分良く、試合に挑めるということになりますが、それにつけても木曜午後9時(日本時間翌午前5時)のコパダービーはただただ、怖いの一言。アトレティコの方が中1日多いですし、リーガでは出場停止だったサビッチやレギロンも出場可能。逆にマドリーはルーカス・バスケス、アラバ、チュアメニ、カルバハルがケガで出られないとわかっていても…まあ、ここは運を天に任せるしかありませんよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。



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