あまりのゴール力に茫然としている…/原ゆみこのマドリッド

2022.11.26 22:00 Sat
©︎RFEF
「やっぱりシメオネ監督だったのね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、W杯開催中のカタールからのニュース映像で最近、ご無沙汰している顔を見かけたなと思ったところ、後々、バケーション中のアトレティコの監督が、CONMEBOL(南米サッカー連盟)がドーハで開いたマラドーナ2回忌追悼の催しに出席していたことをスポーツ紙で確認できた時のことでした。いやあ、折しも前日はガーナとの初戦に挑んだポルトガルでジョアン・フェリックス(アトレティコ)が先発出場。クリスチアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッドとの契約を先日解除)の先制PKゴールをアイェウ(アル・サッド)に帳消しにされた後、後半33分、勝ち越し点ゴールを挙げていたんですけどね。

すでにロナウドとジョアンがベンチに下がっていた頃、ガーナもブカリ(ツベルナ・ズベズダ)のヘッドで2点目を奪ったため、その前にレオン(ミラン)が3点目を決めてくれていたのが幸いした形ですが(最終結果3-2)、アトレティコの試合と違い、代表ではノビノビとプレーしているように見える彼について、シメオネ監督が意見を求められたのは当然だったかと。いえ、一応、クラブでの上司は「Le vi muy bien/レ・ビ・ムイ・ビエン(とてもいいように見える)。この大会はジョアンにとって理想的だ。短期決戦では、彼のような選手がプレーの美しさやスピードでファンを魅了する」と部下を褒めていたんですけどね。
ただ、ジョアンの好調は今に始まったことではなく、今季の野望のかなりの部分が潰えた、10月下旬からの悪夢の5試合連続白星なし期間中、彼は3得点とチームで唯一、ゴールを決められるFWであることを証明。ポルトガル代表に向かう前の最後の試合、コパ・デル・レイ1回戦のアルマサン(RFEF3部/実質5部)戦でもネットを揺らし、今季のアトレティコに残された、たった1つの優勝の可能性がある大会で2回戦に進む手助けをしてくれましたからね。

それだけに金曜午後、「ジョアンは1月にアトレティコを出るつもりで、代理人のジョルジュ・メンデス氏に移籍先を探すよう頼んだ。昨夏は断固、売却を拒否したアトレティコも今回は引き止めるつもりがない」なんて記事がマルカ(スポーツ紙)に出ていたりすると、もしや、今では到底、2019年にベンフィカに払った移籍金1憶2700万ユーロ(約185億円)の元は取れず。それでもW杯で活躍すれば、なるたけ高値で放出して、CL及びヨーロッパの大会からの完全敗退による収入減を少しでも補えるかもというクラブの目論見にシメオネ監督も賛同しているんじゃないかと疑ってしまったのはきっと、私だけではない?

でもそうなると、年末から再開するリーガで来季のCL出場権を獲得するための4位以内をキープ。更に12月22日に開催が決まった2回戦アレンテイロ(RFEF2部/実質4部)戦を皮切りに1月中、32強、16強、準々決勝と続く、コパで勝ち進むためのゴールは一体、誰が決めてくれるのかと、怖くなってくるんですが、実際、W杯グループリーグ1節が終わった金曜時点で得点を挙げたアトレティコのアタッカーはジョアン以外、モラタ(スペイン)だけですからね。
グリーズマン(フランス)、コレア(アルゼンチン)、カラスコ(ベルギー)らは不発となれば、シメオネ監督もカタールでのんびりしていないで、来週月曜に始まる今季2度目のプレシーズン練習をちょっとでも前倒しして、W杯不参加のクーニャやレマル、サウールらにシュート特訓でも課した方がいいのでは?まあ、そんな風に私が思ってしまうのは何と、弟分のラージョがこの木曜から、練習を再開していると知ったせいで、いえ、まだ各国代表の親善試合に参加していたファルカオ(コロンビア)、ディミトリエフスキ(マケドニア)、カメージョ(スペインU21)は戻っていないんですけどね。

彼らはもう、12月20日のコパ2回戦アトレティコ・サングンティーノ(RFEF2部)戦に向けてのロードマップも完璧で、この月末にはトルコツアーに出て、30日にはフェネルバフチェ、12月3日にはガラタサライ、戻って来た10日にはアトレティコ、17日にもニューキャッスルと足慣らしの親善4試合も決定済み。いよいよ、夏の移籍期間後にエスパニョールから河岸を変えたRdT(ラウール・デ・トマス)が1月の公式戦デビュー前にして、ラージョでプレーする姿も見られるはずですしね。それこそ、コンフェレンスリーグ出場圏の7位まで勝ち点差1の8位。同じ勝ち点でアトレティコとベティスが占めるEL出場圏の5、6位までも2差の位置に付ける彼らの野心を感じさせるような、早期プレシーズンスタートと言っても過言でないかと。

ちなみに弟分仲間のヘタフェも近日中に12月20日のコパ2回戦、ディオセサーノ(RFEF2部)戦を目指して、練習開始となるはずですが、スペイン・スーパーカップ参加チームとして、まだコパが免除されているレアル・マドリーは12月1日に再開。といってもW杯開幕前に左太ももを負傷して、フランス代表を離脱したベンゼマなどはすでにバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でリハビリに励んでいますし、11人もの選手がカタールに行っているアンチェロッティ監督としては、これ以上、誰もケガして帰ってこないように祈るしかないかもしれません。

え、それより肝心のスペインのW杯初戦はどうだったのかって?いやあ、水曜は先にキックオフとなったドイツvs日本戦をランチがてら、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見ていた私だったんですけどね。案の条、前半33分にギュンドガン(マンチェスター・シティ)のPKで先制されながら、後半の選手交代策が効いて、30分には堂安律選手(フライブルク)、38分には浅野拓磨選手(ボーフム)のゴールが決まり、日本が見事な逆転勝利を挙げるのを喜んでいたのは自分だけ。他のお客さんたちはまったく試合に興味がなかったようで、バルの店員さんまでが、「日本が勝ったの?」と訊いてくる始末だったんですが、それはまあ、置いておいて。

スペインvsコスタリカ戦の方はTVE(スペイン国営放送)でも中継があったため、家に戻って見たんですが、スポーツ各紙の先発予想は完全に外れ、チーム唯一の真正CFだったモラタでなく、ルイス・エンリケ監督はアセンシオ(マドリー)のfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)を採用。それが見事に当たって、開始10分までに彼とダニ・オルモ(ライプツィヒ)がペドリ(バルサ)のラストパスから、シュートしていたんですが、最初にアシストを記録したのは18才のガビ(バルサ)でした。ええ、11分、エリア内のダニ・オルモにボールを送ったところ、敵DFに当たったボールをvaselina(バセリーナ/ループシュート)で決めてくれるんですから、有難いじゃないですか。

いやあ、最初、コスタリカの5人DF制を見た時は膠着した試合展開を恐れた私だったんですけどね。この日のスペインは素早いボール回しで隙間を作り、21分にはジョルディ・アルバ(バルサ)のクロスをアセンシオがワンタッチで決めて、早くも2点目をゲットすることに。スペイン黄金時代の最後のタイトル、2012年ユーロも経験している左SBは30分にも、今度はドゥアルテ(アル・ワフダ)にエリア内で倒されてPKを獲得。「El lanzador de penaltis lo decido yo/エル・ランサドール・デ・ペナルティス・ロ・デシド・ジョ(キッカーを決めるのは私だ)」というルイス・エンリケ監督に指名されたフェラン・トーレス(バルサ)がそのPKをしっかり沈め、現在、交際中の監督の長女さんを失望させることはありませんでしたっけ。

前半だけで早くも3点差としたスペインだったんですが、ロッカールームで「En el descanso hemos hablado de que los goles eran importante/エン・エル・デスカンソ・エモス・アブラードー・デ・ケ・ロス・ゴーレス・エラン・インポルタンテス(ゴールの数は重要だと、ハーフタイムに話し合った)」(カルロス・ソレル/PSG)という彼らは後半もアクセルを緩めず。ええ、9分にはゴール右前でブライアン・オビエド(レアル・ソルトレーク)にボールを取られそうになりながら、諦めなかったフェランがGKケイロル・ナバス(PSG)が出て来たのも幸いして、4点目のゴールを決めてくれます。するとそこから、スペインはローテーションを始め、12分にはフェラン、ペドリがモラタ、ソレルに、18分にはブスケツ(バルサ)、ジョルディ・アルバがコケ(アトレティコ)、バルデ(バルサ)に、23分にはアセンシオがニコ・ウィリアムス(アスレティック)に交代。

それがまたチームに勢いを与えたか、39分には、うーん、せっかくエリア内でボールを受けながら、ケイロル・ナバスに邪魔されて、モラタはシュートを撃てなかったんですけどね。再び回ってきたボールを上げ、「ボクがいるのをモラタが見てくれて、tenía muy claro desde que salió la pelota que iba a darle de primeras/テニア・ムイ・クラーロ・デスデ・ケ・サリオ・ラ・ペロータ・ケ・イバ・ア・ダールレ・デ・プリメーラス(クロスをもらった時から、ファーストタッチで蹴るって決めていた)」ガビにW杯史上3番目の最年少得点者となる栄誉を贈ることに。

44分にもニコがゴール前に入れたラストパスをケイロル・ナバスが弾いたボールをソレルが押し込み、「Primero se lo he dedicado a mi novia Marta y luego a Jose/プリメーロ・セ・ロ・エ・デディカードー・ア・ミ・ノビア・マルタ・イ・ルエゴ・ア・ホセ(まずは彼女のマルタに、それからホセに捧げた)」という、軽いネンザでドーハまで来て代表離脱。昨季までバレンシアのキャプテンマークを分けった仲のガジャも喜んだであろうゴールを挙げ、とうとう6点まで行ったスペインだったんですが、良かったですよね。ロスタイム2分にはモラタもエリア内からシュートを決め、ようやく自分のゴールを手に入れられたのは。

いえ、アトレティコの試合なんかだと、私も「3点目以降は次の試合にゴールをとっておけばいいのに」なんて、ケチ臭い考えが浮かんできたりするんですけどね。2006年以来となるW杯初戦白星を7-0というgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で挙げ、試合後はロッカールームを訪問したスペイン国王、フェリペ6世にも祝福されていたルイス・エンリケ監督も、「Está espectacular, a un nivel... pletórico de confianza, ha estado soberbio como 9 en el remate/エルタ・エスペクタクラル、ア・ウン・ニベル…プレトリコ・デ・コンフィアンサ、ア・エスタードー・ソベルビオ・コモ・ヌエベ・エン・エル・レマテ(目を瞠るようなレベルで、自信に溢れていて、シュート時には見事に9番としての役目を果たした)」と褒めていたアセンシオを始め、ゴールづいている選手が多いのは本当に心強い。

もちろん、コスタリカが82%という、スペインでも滅多にない高いボールポゼッションを許し、シュートは1本も撃たず。しかもPSGで出番のないケイロル・ナバスが今季最初の公式戦だったというのも助けになったのは確かですが、これだけ完璧な初戦を見せられては、2010年以来、2回目のW杯優勝を夢見たファンも多かったのでは?1つだけ気になったのは、本職ボランチのロドリ(マンチェスター・シティ)がCBとして、ラポール(同)の相方を務めていたことで、これではエリック・ガルシア(バルサ)やパウ・トーレス(ビジャレアル)が信用できないんじゃないのかと、世間から思われてしまうことですが…。

大丈夫、ルイス・エンリケ監督も「No he repetido nunca una alineación, probablemente no repita/ノー・エ・レペティードーヌンカ・ウナ・アリネラシオン、プロバブレメンテ・ノー・レピタ(私はスタメンをリピートしたことはないから、多分、リピートしない)」と言っていましたし、日曜午後8時(日本時間翌午前4時)からのドイツ戦では、きっと彼らにも活躍の順番が回ってくるのでは?若い選手が多いスペインだけに大勝に過信してしまう懸念もありますが、そこはブスケツ、ジョルディ・アルバ、コケら、ベテランがしっかり手綱を握って離さないはずですしね。予想外の黒星発進で、「日曜にはウチにも最終節で決勝トーナメントに進出できる可能性があることを示さないといけない」(フリック監督)と必勝を誓っているドイツにも決してやる気で劣ることはないかと。

そんなスペインはコスタリカ戦の翌日、カタール大学のグラウンドでリハビリセッションを行った後、金曜は合宿を開始してから初めて練習がお休みに。選手の多くはトルコ人シェフの経営する有名な高級レストランチェーン、ソルトバエにお肉を食べに行ったようですが、家族と午後を過ごした後、夜には寮に戻り、この日、20才のバースデーを迎えたペドリが夕食の時、皆に祝ってもらっていたなんてことも。そうそう、試合当日こそ、予告通り、ルイス・エンリケ監督のライブ配信はなかったものの、また木金と復活していて、いやあ、コスタリカ戦でフェランがゴールを挙げた後、おしゃぶりのポーズをしていたなんてデマが出回ったせいでしょうかね。

ポル第2監督をゲストに迎えた金曜のストリーミングでは、本当にフェランがその、彼女の妊娠を祝うパフォーマンスをしたらと視聴者に訊かれ、「ゴールは嬉しいが、como haga ese gesto lo cambio y no vuelve a pisar el césped. Bromas las justas/コモ・アガ・エセ・ヘストー・ロ・カンビオ・イ・ノー・ブエルベ・ア・ピサール・エル・セスペッド。ブラマス・ラス・フスタス(それをしたら、彼を交代させて、2度とピッチに入れない。冗談もほどほどに)」と答えていましたが、娘の彼氏が代表選手にいるっていうのもやっぱり、ちょっと考えもの?

何はともあれ、ドイツ戦はハーフタイムで交代した久保建英選手(レアル・ソシエダ)も試合後、「Esperemos tener el trabajo hecho antes del ultimo partido ante Espana/エスペレモス・テネール・エル・トラバッホ・エッチョー・アンテス・デル・ウルティモ・パルティードー・アンテ・エスパーニャ(スペインとの最終戦を迎える前にグループ突破を決めたいね)。その試合が決戦にならないように」と言っていたように、日曜にコスタリカ戦に挑む日本共々、スペインも早めに決勝トーナメント行きの切符を手に入れることができるといいのですが…。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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